ロシア・ムルマンスクの石油施設において炎上するガソリンタンク
(写真はBarentsNova.comから引用)
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<事故の状況>
■ 2014年1月21日(火)午後4時過ぎ、ロシアのムルマンスクにある石油施設のタンクで火災の起きる事故があった。事故があったのは、ムルマンスクにあるOOO(トリプル・オー)・パーヴィ・ムルマンスキー・ターミナル社の所有する石油施設で、ガソリンタンク1基から火災が発生した。
ロシアのムルマンスク南部地区 (下方の丘陵地にタンク群が見える)
(写真はグーグルマップから引用)
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■ 火災警報が鳴ったのは現地時間14時06分で、8つの消防隊が出動し、火災と戦った。発災したのはタンク#12で、中には1,800KLのガソリンが入っていた。隣接タンクには放水され、水が流れていると、ムルマンスク緊急事態省は報告している。
■ メディアの報道では、一人の男性従業員が負傷したと報じている。爆発の危険性はないが、火災は複雑な様相を呈しているという。火災の複雑さレベルは5段階の中で第2レベルだった。火災に伴い、周辺地区は警察によって封鎖された。
■ 火災のあった石油貯蔵施設は、漁船やトロール網漁業への安定した燃料供給のため70年代から操業を行ってきている。施設は丘陵地区にあり、石油タンクのある場所は上下2段になっている。火災のあったタンクは上段側に設置されていたものである。
■ 同日21時11分、火災は鎮火した。イタルタス通信(ITAR TASS)は、緊急事態省による情報としてムルマンスクの港にある石油施設で起こった火災は完全に制圧されたと報じた。同省の説明によると、火災タンクは冷却中で、これから油を移送する予定だという。
■ 消火活動は2時間半に及んだという。14個の消防機材と50名以上の消防士が従事した。
補 足
■ 「ロシア」は、正式にはロシア連邦で、ユーラシア大陸北部に位置する大統領制の共和制国家である。人口は約1億4,300万人で、首都はモスクワである。1991年、ソビエト連邦の崩壊によってロシア連邦が成立した。ロシア連邦は、ソビエト連邦構成国の連合体である独立国家共同体加盟国のひとつとなったが、ソビエト連邦が有していた国際的な権利(国連の常任理事国など)や国際法上の関係を基本的に継承して大国としての影響力を保持している。
「ムルマンスク」は、ムルマンスク州の州都で人口約307,000人である。ムルマンスクはモスクワから北へ約2000kmで、バレンツ海からコラ湾を50kmほど南に入った東沿岸にあり、ノルウェーやフィンランドとの国境に近い。北極圏最大の都市で、漁業と海運業を主産業とするロシア最大の港湾都市のひとつである。暖流である北大西洋海流の影響で海は1年中凍結することがなく、世界最北の不凍港として昔から軍港として知られ、現在もロシア海軍の基地がある。冬の最も寒い1月は平均気温-8~-13℃ほどで、夏は冷涼で、7月の平均気温が15℃に達しない。
ロシア北西部の地図(印A部がムルマンスク付近) (写真はグーグルマップから引用)
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■ 「非常事態省」は英語でEmercom(Emergency
Commandの略)と呼ばれる。ロシア非常事態省は、正式には「ロシア民間防衛問題・非常事態・自然災害復旧省」(Министерство
по делам гражданской
обороны, чрезвычайным
ситуациям и ликвидации
последствий стихийных бедствий、略称:МЧС)で、ロシアの民間防衛、自然災害対策などを管掌する機関である。
■ 「OOO(トリプル・オー)・パーヴィ・ムルマンスキー・ターミナル社」(OOO Pervy
Murmansky Terminal)は、ムルマンスクの港湾施設にある石油施設であるが、詳細はわからない。
OOO Pervy Murmansky
Terminal(First Murmansk Terminal)と表記する情報もあり、実体は不明である。
グーグルマップによれば、ムルマンスクの南部丘陵地区に2段地のタンク施設が見られるので、この施設が火災のあったタンク基地と思われる。このタンク群は直径約23m級のものが多い。タンク高さを10mと仮定すると、容量は約4,000KLとなる。発災タンクの油量1,800KLは液レベル約4.3mとなり、タンクの半分ほどだったと思われる。
ムルマンスク郊外の石油施設のタンク群
注:写真からタンクは直径約23m級が多いことがわかる。
(写真はグーグルマップから引用)
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ムルマンスクの南部地区の幹線道路
注:写真の右の丘陵地帯にタンク施設がある。
(写真はグーグルマップのストリートビューから引用)
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■ 「イタルタス通信」(ITAR TASS)は、以前は「タス通信」の名前で知られているロシアの国営通信社である。1992年にイタルタス通信として開設された。
所 感
■ 今回の事故は住宅地から離れた場所であったためか、火災が起こったという簡単な報道情報のみだった。このわずかな情報とグーグルマップから発災状況を推測してみる。
■ タンクはガソリンタンクであるが、浮き屋根式でなく、固定式コーンルーフ型(または内部浮き屋根式)で、直径23m、高さ10m、容量4,000KL、液量1,800KL、液高さ4.3mとみられる。ガソリンの場合、燃焼速度を30cm/hとすれば、発災(14時過ぎ)から鎮火(21時過ぎ)まで約7時間の間に約2.1m分の油が燃焼したことになる。このため残油量は2.2mで、約900KLとなる。鎮火後に油を移送予定と報じられていることに符号する。
■ 標題の写真を見ると、全面火災の様相を呈しており、固定屋根部材が障害物になっている可能性があり、比較的小型のタンクではあるが、積雪の中、「障害物あり全面火災」として消火活動の難しいパターンだったことが想像できる。
備 考
本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・BarentsNova.com, Murmansk
Oil Storage Facilities on Fire, January 21, 2014
・Rupaper.com, Oil Depot
in Murmansk Extinguished, January 22, 2014
後 記: ロシアのタンク火災情報を取り扱うのは、
2013年8月21日に起きたロシア・シベリアの石油施設における原油タンク火災事故以来、2件目です。前回の情報量は多くはありませんでしたが、動画の情報もあり、消火活動について考えるデータだけはそろいました。今回も調べれば、情報が出てくるかと思いましたが、予想外れでした。今月、ロシアのソチで冬季オリンピックが開催されますが、ムルマンスクはソチから随分離れたところで、不凍港とはいえ厳しい気候のところのようです。郊外の丘陵地にタンク施設があり、積雪と低温の中で火災の消火活動をしている人たちの苦労を感じましたね。
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