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2013年6月15日土曜日

ブラジル・リオデジャネイロ州のタンク火災で死傷者8名

今回は、2013年5月23日、ブラジルのリオデジャネイロ州ドゥケ・デ・カシアスにあるペトロゴールド社の石油ターミナルで6基のタンクが火災となった事故を紹介します。
リオデジャナイロ州ドゥケ・デ・カシアスで起こったタンク火災 (写真はFireGeezer.com から引用)
本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいて要約したものである。
  ・Latino.foxnews.com,  1 Dead in Fuel Tank Fire in Rio de Janeiro,  May 23,  2013
      ・TheProvince.com,  Massive Fuel-depot Fire Breaks out in Rio de Janeiro; No Word on Cause, Injuries, May 23,  2013 
  ・GlobalNews.ca, Massive Fuel-depot Fire Breaks out in Rio de Janeiro,  May 23,  2013   
  ・FireGeezer.com, Spectacular Oil Storage Tank Fire in Brazil,  May 23,  2013
    ・Efe.com, 1 Dead in Fuel Tank Fire in Rio de Janeiro,  May 23,  2013
      ・JapanTimes,co.jp, Giant Fuel Depot Blaze on Northern Outskirts of Rio de Janeiro Kills One,  May 24,  2013 

 <事故の状況> 
■  2013年5月23日(木)午前11時頃、ブラジルのリオデジャネイロ州にある油タンク施設で6基のタンクが火災となった。事故があったのは、リオデジャネイロ州ドゥケ・デ・カシアスにあるペトロゴールド社の石油ターミナルで、少なくとも6基のタンクが炎上した。石油ターミナルは燃料油や潤滑油の物流基地として使われていた。この事故により、死亡1名、負傷7名の計8名の死傷者が出ている。火災は消防隊によって約4時間後に制圧された。
         リオデジャネイロ州ドゥケ・デ・カシアスの周辺   (写真はグーグルマップから引用)

■ ドゥケ・デ・カシアス市当局は、石油ターミナルで働いていた作業員1名が死亡し、他に7名がアダオ・ペレイラ・ヌエス病院に搬送されたことを確認しているという。死亡したのは43歳の男性で、救急車が到着したときには有毒ガスを吸い込んでおり、全身の90%に火傷を負って亡くなったものとみられる。
                 燃え上がるタンク群  (写真はJapanTimes.co.jpから引用) 
■ タンクからオレンジ色の炎が高さ50mほど空に舞い上がり、黒煙がもうもうと立ち昇り、火災の火は数キロメーロル離れたところからも見えた。テレビ局が上空から現場を撮影していたが、消防士が年老いた女性を介護しながら避難している姿や、近くに止まっていた燃料油ローリー車に炎上する状況が映し出されていた。
年老いた女性を介護して避難する消防士     タンク横に停車していたローリー車に延焼
(写真はFireGeezer.comの動画から引用) 

延焼防止のため住宅地に放水する消防車 
  
(写真はFireGeezer.comの動画から引用)
■ 午前11時に1基のタンクが火災になった後、5基のタンクに延焼し、1時間後には、隣接していた住宅地へ広がった。このため、爆発の危険性から消防隊は近づくことができず、また輻射熱によって数百メートルの位置まで退却せざるを得ず、消火は困難な状況だった。火災発生に伴い、6つの消防署が出動したが、貯蔵タンク近くで直接的な消火活動ができないため、消防隊は延焼防止を目的とした周辺の家の屋根や庭に放水する活動に留まった。消防署は、現場近くの6つの通りにある家の住民へ避難するように指示を出したほか、リオデジャネイロやテレゾポリスへ通じる高速道路を閉鎖するよう指示した。
        タンクから噴き出す炎  (写真はFireGeezer.comの動画から引用)
隣接する住宅地に拡大する火災              タンクの開口部から噴き出す炎
(写真はFireGeezer.comの動画から引用)

弱まってきた火勢
(写真はFireGeezer.comの動画から引用) 追加
■ ドゥケ・デ・カシアスのアレクサンドリア・カルドーゾ市長は事故の原因調査を命じ、「地元で暮らし、学校へ通っている地域住民にとって、このように時限爆弾を抱えているようなことは断じて許されない」と語っている。リオデジャネイロ州の当局者によると、ペトロゴールド社は操業するための環境ライセンスを持っておらず、すでに連邦警察によって家宅捜査されていたという。現地の操業は裁判所で係争中だった。 


補 足 
■ 「ブラジル」は、南アメリカにあり、正式にはブラジル連邦共和国で、連邦共和制の国家である。人口約19,700万人で、首都はブラジリアである。
 「リオデジャネイロ州」はブラジルの26ある州の一つで、ブラジル南東部の大西洋沿いに位置する。人口約1,540万人で、州都はリオデジャネイロである。
 「ドゥケ・デ・カシアス」(Duque de Caxias)は、ブラジルのリオデジャネイロ州の都市で、州都のリオデジャネイロ市と接する。人口約85万人で、石油精製や石油化学工業などの重要な工業を有している。

■ 「ペトロゴールド社」(Petrogold)は、 燃料油および潤滑油の地元の物流会社と思われるが、詳細はわからない。アラブ首長国連邦に同じ名前の石油会社があるが、関係はないと思われる。

■ ブラジルは自然環境の維持と保護のため、ブラジル環境省が国家環境プログラムや環境アスセメントに基づいて厳しく企業の資源開発に対する許認可を行っている。一方、環境保護局の「環境ライセンス」認可が厳しすぎ、プロジェクトの遅延やコストアップにつながっているという意見もあり、現政権は環境ライセンスの規制緩和を行い、国道や港湾整備、電力送電網や石油・天然ガス部門の開発加速化を図ろうとしている。

所 感
■ 石油ターミナルにある6つのタンク全基が火災になるという大きな事故である。しかし、報道される記事では状況を的確に伝えているといえないが、今回の事故では写真やビデオの情報が流れており、これらの映像によって現場の危機感が理解できる。しかし、事故原因はもちろん、油の種類、タンクの大きさ、発災の発端、死傷者と事故の関係、現地の声、消防署の発表、会社側の説明など基本的な情報がないので、危機管理上の貴重な事故情報としては内容に乏しい。現時点で言えるのは、事故の起こる要因はどこでも潜在しており、一旦、タンクが火災事故を起こせば、人に危害を加え、まわりに大きな影響を及ぼすことを示す事例だということである。


後記; 最初に発災場所をグーグルマップで探すことにしています。報道記事に詳しい場所が記載されていれば、簡単にわかりますが、そうでない場合、マップを動かして探します。今回は場所特定の情報に乏しく、高速道路沿いを追っかけてみましたが、わかりませんでした。報道の見出しに「リオデジャネイロ」とありますが、実際はリオデジャネイロ州の「ドゥケ・デ・カシアス」です。リオデジャネイロ市としては違うと言いたいでしょうが、有名料でしょうね。発災場所が特定できないと、何となく気持ちのおさまりが悪いので、日を改めて探すことにしていますが、結局見つからず、今回はあきらめました。

2013年6月9日日曜日

中国の大連製油所で残渣油タンクが爆発して死傷者4名

 今回は、2013年6月2日、中国遼寧省の大連にあるペトロチャイナ(中国石油天然気)大連石化にある残渣油タンクで、爆発・火災があり、4名の死傷者が出た事故を紹介します。
大連石化の残渣油タンクの爆発・火災事故で消火活動を行う消防隊 (写真はEnglish.Sina.comから引用)
本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいて要約したものである。
  ・English.Sina.com, Two Missing after Blasts at Dailian PetroChina Refinery,  June 2,  2013
      ・Best-News.us, PetroChina Dailian Petrochemical Company, a Joint Workshop No.939 Tank Fire Has Been Extinguished Fire,  June 2,  2013
      ・English.PeapleDaily.com, Oil Tank Blast Causes Casualties in NE China,  June 3,  2013
      ・Cina.org.cn, 2 Missing after Blasts at Refinery,  June 3,  2013
      ・English.CNTV.cn, Probe Underway into Dailian Oil Tank Explosion,  June 4,  2013
      ・FireDirect.net, Two Missing after Blasts at Dailian PetroChina Refinery,  June 4,  2013
      ・Best-News.us, PetroChina Dailian Enterprise 4 Years 5 Fires Casualties 8 Peaple,  June 3,  2013

 <事故の状況> 
■  2013年6月2日(日)、中国遼寧省の大連にある製油所の油タンクが爆発して死傷者を出す事故が起こった。事故があったのは、遼寧省大連甘井子区のペトロチャイナ(中国石油天然気)の大連石化分公司にある残渣油の貯蔵タンクで、爆発によって作業員2名が死亡し、2名が負傷した。 事故直後は2名が行方不明と報じられていたが、死亡が確認された。
■ 爆発があったのは、ペトロチャイナの大連石化プラント地区からすぐ近くにあるタンク地区にある2基の残渣油タンクが午後230分頃に爆発したと、中国中央テレビは海事事務所の劉(リュウ)氏の話を引用して報じた。人民日報によると、爆発は1基の残渣油タンクで起こり、その火炎によって隣接していた別なタンクが爆発したと伝えている。新華社は、火災は午後4時に鎮火したと報じている。
大連石化のタンク爆発・火災現場を見つめる住民   (写真はChina.org.cnから引用

■ 爆発音はかなり遠くまで聞こえた。発災現場周辺は、大きな煙に包まれ、黒い煤が飛散し、地面は油で覆われていた。火災現場から立ち上る黑煙は数キロメートル先からも見えた。劉氏によると、韓国船が近くの水域にいたが、爆発後すぐに沖に出たという。
 タンクは残渣油のタールなどを貯蔵するために使用されており、爆発当日はNo.939ワークショップと呼ばれるメンテナンス中だったと劉氏は語った。加えて爆発の原因はまだわかっていないという。ペトロチャイナの当局者によると、爆発のあったタンクは改修されており、同社が保有し、今年後半に生産を再開する予定だったという。
大連石化のタンク火災の状況   (写真はEnglish.PeapleDaily.com.cnから引用)
■ 発災時に現場には4人の作業員がいた。負傷した2人の作業員はただちに病院へ搬送されたが、医者によると、容体は厳しい状況だという。
■ 劉氏は、「施設は海岸沿いにあり、近くに住民はほとんどいないので、基本的に爆発による市民生活への影響はないでしょう」と話している。常時モニタリングでは大気や水質の汚染は認められていない。しかし、グローバル・タイムズの取材を受けた地域住民の二人は、濃い煙で刺激臭がしたといい、「真っ黒い煙が我々の家の方に流れてきたので、窓をしっかり閉めた」と話している。環境当局は、近くの海域に汚染はないが、近くの共同住宅地区ではヒュームによる影響がみられると言っている。施設近くの海域には予防措置としてオイルフェンスが張られ、地方自治体は近くの住民に窓を閉めるように呼びかけた。
■ 発災後、約100台の消防車と300名以上の消防士が現場へ出動し、消火活動を行った。それとともに大連市の李万才(リ・ウワンカイ)市長も現地を訪れた。市の緊急司令本部の関係者によると、事故の原因はわかっておらず、調査中だという。
大連石化の火災現場に向かう消防車 (写真はEnglish.PeapleDaily.com.cnから引用)

■ プラントの近くの住む漢林(ハン・リン)さんは、次から次に事故が起こっているので、プラントの安全性について心配しているといい、「できれば、プラントから遠く離れたところに引っ越したい」と話している。この3年間、ペトロチャイナの当支部では6回の火災を起こしている。当支部の前の総経理であった蒋凡(ジェン・ファン)氏は10年近く務めていたが、2011年8月に同ポストを解任された。また、4件の火災事故はヒューマンエラーだったとし、事故に関する責任者として34人の当局者が、行政上または党規律上、処罰された。
記者会見する大連市
 (写真はCCTVの動画からから引用)
■ 63日(月)、市当局は記者会見を行い、事故時の情報を提供し始めた。爆発は、4人の作業者が現場のタンクで何らかの作業を行っていたときに起こったという。大連市安全生産監督管理局の李浩(リ・ハオ)副局長は、「62日(日)の午後、ペトロチャイナ出口において残渣油の入ったタンク1基が爆発したため、近くにあった別なタンク3基が爆発・炎上するに至った。火災は2時間後に鎮火した」と発表した。爆発したタンクは、事故当日、検査とメンテナンスが行われていたという。
 事故による経済的な損失は大きい。李副局長は、「直接的な経済損失は580,000元(9,200千円)である。事故による環境汚染はなく、海への油流出もない」と語った。
■ 消防隊が撮影した現場の映像を見ればわかるように、突然の爆発はすさまじかった。大連石化で働く王光郁(ワン・カンユー)さんは、「爆発音は3回聞きました。2回目のときは背中に熱い空気の流れを感じました。そのとき、誰かが走り出しました。爆発の前には、私たちは近くの別なタンクで塗装作業をやっていました」と話している。
大連石化のタンク火災の消火活動状況 (写真はjp.xinhuanet.comから引用)
大連石化のタンク火災現場と消火活動   (写真はCCTVの動画からから引用
タンクへ接近する消防隊   (写真はCCTVの動画からから引用)

現場でクリーンアップ作業を行う作業員
 (写真はCCTVの動画からから引用)
現場では、クリーンアップ作業が行われている。これまで、会社側は爆発の原因について何も語ろうとしていない。過去の事故記録が示すように、今回の事故が最後になるかどうか住民は懸念をもってながめている。


<過去の主な事故記録> (2010年~2013年)
① 2010年7月16日 「大連パイプラインの爆発事故」
■  2010年7月16日午後6時50分頃、大連新港にあるペトロチャイナ系の大連保税区インターナショナル・ロジスティック社の原油パイプラインが爆発して火災となり、大量の原油が漏れ出した。このため、パイプラインや周辺の施設が延焼したほか、漏れた油の一部が近くの海に流出し、海が油によって汚染された。労働者の被害はなかったが、消防活動中に1名が行方不明、献身的な活動を行った消防士1名が重傷を負った。事故による資産の直接損失は223,301,900元(3,530百万円)であった。
 注記;事故原因は原油から不純物の硫黄や硫黄化合物を除去する脱硫剤をパイプラインに注入する作業を請負った業者が、タンカーからの荷卸を終了した後も、強い酸化剤を含む脱硫剤を流し続けたことが爆発を誘引したとされた。タンカーの荷卸し終了の連絡が、ペトロチャイナから脱硫剤の注入現場まで伝わらなかったうえ、脱硫剤自体の安全性も確認せず、安全作業規定もなかったという。流出した原油量は1,500トンを越え、大連新港は一時閉鎖され、油回収作業が行われた。
2010年7月16日、大連パイプラインの爆発事故   (写真はFireDirect.netから引用)

② 2010年10月24日 「撤去作業中に大連のタンクが爆発・火災事故」
■  2010年10月24日午後、大連新港にあるペトロチャイナ大連インターナショナル・ロジスティック社において同年7月16日に火災となったタンクの撤去作業中、タンク内にあった残油が着火し、火災となった。2度目となる火災だったが、負傷者は出なかった。
2010年10月24日、撤去作業中に大連のタンクが再び炎上(写真はEpochTimes.jpから引用) 

③ 2011年7月16日 「大連石化の減圧蒸留装置で油漏洩して火災事故」
■  2011年7月16日午後14時25分頃、ペトロチャイナの大連石化にある減圧蒸留装置の熱交換器から油が漏れて火災となった。ただちに消防隊が出動し、制圧した。この事故による負傷者はいなかった。
2011年7月16日、大連石化の減圧蒸留装置で油漏洩による火災事故
  (写真はJapanese.China.org.cnから引用)
大連石化の減圧蒸留装置の火災事故   (写真はJapanese.China.org.cnから引用) 
減圧蒸留装置の火災に対応する消防隊   (写真はJapanese.China.org.cnから引用) 
④ 2011年8月29日 「大連石化のタンクで火災事故」 
■  2011年8月29日午前10時6分頃、ペトロチャイナの大連石化にあるディーゼル燃料油用のNo.875タンクが火災を起こした。原因はわかっていない。火災は制圧され、事故による負傷者はいなかった。
2011年8月29日、大連石化のタンク火災事故  (写真はEpocTimes.jpから引用)
⑤ 2011年11月22日 「大連新港で落雷によるタンク火災」 
■  2011年11月22日、大連新港にあるタンク施設で落雷があり、タンク2基が火災となる事故があった。
2011年11月22日、大連新港で落雷によるタンク火災  (写真はEpocTimes,jpから引用)

補 足
■ 「中国」は、正式には中華人民共和国で、1949年に中国共産党によって建国された社会主義国家である。人口約134千万人で、首都は北京である。
 「遼寧省」は、中国東北部に位置する省で、人口約4,370万人、省都は瀋陽である。
 「大連」は遼寧省の南部に位置する地級市(地区クラスの市)であるが、経済的重要性から省クラスの自主権をもつ副省級市に指定されている。市区人口は210万人であるが、大連市域の総人口は約600万人を越えているといわれる。
 
■ 「ペトロチャイナ(中国石油天然気)」は、中国の国有石油企業である中国石油天然気集団公司( China National Petroleum Corporation:CNPC)の主要な子会社で、事業再構築の過程で、中国国内の資産や事業のほとんどを移譲され、民営化された石油会社である。ペトロチャイナは、2000年に香港証券市場およびニューヨーク証券市場に上場しているが、CNPCが株式の90%を保有している。
 「大連石化分公司」は「ペトロチャイナ」の大連における製油所・石油化学工場を操業する会社である。製油所の精製能力は10年前に22万バレル/日であったが、現在は40万バレル/日の規模に増強されており、製油所増強に伴い、製油所構内や大連新港地区にタンクが増設された。2010年のパイプラインおよびタンク火災事故は、この増強工事で建設されたものだった。

所 感
■ 重質油貯蔵タンクでの事故がまた起こった。今年になって、①2013年3月7日(木)、韓国の慶尚北道亀尾市にある韓国鉱油の重油貯蔵タンクの爆発事故、②2013年3月29日、中国山東省にある青州李浩恒石油化学社のスラリー(アスファルト)貯蔵タンクの爆発事故、③2013年5月21日、フィリピンのパンパンガ州アパリットにあるアスファルト・プラントのバンカーオイルタンクの爆発事故に続くものである。
 今回の事故原因は調査中であるが、人為ミスが関連していたことは明らかである。過去の事故からいえることは、重質油やアスファルトは引火しにくいという予断があり、ミスが重なったものであろう。

■ 今回感じることは、中国の情報公開がかなりオープンになったということである。2010年7月のパイプラン爆発事故時には報道管制が敷かれた。今回の事故情報の内容(質)は濃いとはいえないが、写真や映像が多く流れており、記事を補っている。これは、2010年以降の一連の事故によるペトロチャイナと当局の責任者処分によるものが背景にあると思われる。
 特に印象深いのは、発災タンクまわりにおける消防士の行動である。消防隊は、状況によっては危険な対応を最少人数で行うことがあるが、今回のように防油堤内に入って多くの消防士がタンクへ接近するということはない。これは消火戦略や消火戦術の考え方の違いがありそうである。消防士は兵士と同じで、敵となる火災に対してとる攻撃的な消火戦術だと思われる。消防士の献身的な行動であるが、2次災害を考えると、参考にすべき点ではない。


後 記; 情報公開について考えさせられた事例でした。中国の報道関係はかなりオープンに情報を流していますし、自治体の当局が記者会見し、テレビで放映されています。一方、当事者である民間会社がまったく沈黙しています。 このあたりに社会主義国家であることを感じますね。
 ところで、この事故をまとめているときに、東京電力福島第1原子力発電所で汚染水の地上タンクから漏水があったというニュースがありました。テレビや新聞が一斉に報じましたが、これは東京電力のまとめた報道陣向けの配布資料がもとになっています。当ブログの東京電力福島原子力発電所の地下貯水槽から汚染水漏れ」(2013年4月)で紹介したように、地下貯水槽はもちろん、地上タンクも、もともと土木工事の水の仮設保管用として設計されたものですから、漏れるのが当たり前という設備です。情報公開という観点では、テレビや新聞より東京電力が作成した資料の方がわかりやすいといえますので、報道陣向けの配布資料の1ページ目を紹介しておきます。



2013年6月5日水曜日

米国で9日間に3箇所のタンク施設で落雷による火災発生

 今回は、2013年4月下旬から5月上旬にかけて、米国メキシコ湾岸の州において発生した3件の落雷によるタンク火災の情報を紹介します。
5月2日ルイジアナ州デナムスプリングの落雷によるタンク火災現場 (写真はNOLA.comから引用
本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいて要約したものである。
  ・LightningProtection.com, Three Lightning Strikes Hit Three Storage Facilities in Nine Days,  May 9,  2013
      ・FireGreeer.com,  Lightning Ka-Boom Houston Oil Storage Tanks, April 28,  2013 
  ・KHOU11.com,  Fire Marshal Says Lightning May Have Started Fire at Oil Storage Facility, April 27,  2013   
  ・Reuters.com, Two Denbury Resources Crude Oil Tanks on Fire in Louisiana, May 3,  2013
    ・NOLA.com,  Oil Tank Explodes near Denham Springs, Homes Evacuated, May 2,  2013
      ・UPI.com, No Injuries Reported in Louisiana Oil Tank Explosion, May 3,  2013
      ・Examiner.com, Lightning Investigaed as Cause of Oil Tank Explosions in Louisiana, May 4,  2013

 <多発する落雷頻度とタンク火災> 
■  メキシコ湾岸付近の米国本土では、落雷の頻度が増えており、たびたび強烈な雷撃を眼にすることがある。不安定な天候はだんだん日常化し、気候の変化がはっきりわかるようになり、石油・ガス分野では直接的な影響が出始めている。問題の根は気温の上昇と異常な天候パターンにある。一回の落雷によって大きな被害を受けることもある。場合によっては、数百万ドル分の製品を失い、すぐに生産活動に影響する。4月下旬から5月上旬の2週間は、このような状況が現実のものとなった。メキシコ湾岸地区では、落雷によって3基のタンクが爆発する事故が起こっている。このうち2件はテキサス州で、もう1件はルイジアナ州で起こった。

■ 応用工学分野のコンサルタント会社を経営し、エンジニアでもあるピーター・カーペンター氏はつぎのように語っている。
「この41年間の中で、こんなに短かい期間に同じ州の貯蔵タンクが直雷を受けるような状況を経験したことがありません。実際、気象観測会社ヴァイサラが集積したデータから最近のテキサス州における落雷件数を入手しましたが、ある12時間の間にあった落雷件数は年間の落雷件数より多かったのです」

■ 4月24日(水)の早朝、テキサス州ヒューストン港の近くにある鉱油の入った貯蔵タンクに落雷があった。ヒューストン消防署はサウス・コースト・ターミナルに出動し、火災のあったタンクの消火に対応した。
 その3日後の4月27日(土)、テキサス州ハリス郡サイプレスで落雷があり、数基の原油タンクが爆発するという事故になった。消防隊がただちに出動し、まだ落雷の危険性のある不安定な天候の中で消火活動を行った。幸い、爆発があったにもかかわらず、負傷者は出なかった。

■  5月2日(木)夜、ルイジアナ州リビングストン郡デナムスプリングでオイルタンクに落雷があり、火災となり、2基のタンクが爆発を起こす事態となった。このため、近くにある20世帯以上の住民が3日(金)朝まで避難することとなった。2基のタンクには2,300バレル(365KL)の原油が入っていたが、中の油とガスが漏れ出して火災となった。消防隊が、丸一日火災の制圧に努めた結果、消火することができた。火災鎮火後、消防隊は、落雷によって爆発が起こったものと判断している。

■ 雷対策コンサルタント社(Lightning Eliminators & Consultant Inc.)の最高経営責任者 (CEO)であるアブラハム・サンダース氏は、「歴史上、このように落雷の発生件数の多い状況は見たことがありません。もはや落雷は異例な出来事ではなく、温暖化現象によるということがはっきりしており、落雷による事故は多発すると予想されます」と語った。

■ この話題は、まさに昨夜(5月8日)、ヒューストン・ペトロリアム・クラブにおいて開催された雷対策サミットで議論された。コノコフィリップス社、ノーブル・ドリリング社、アメリカ石油協会(API)およびその他の石油・ガス会社の役員を含めたペトロリアム・クラブの会員は、最近の多発傾向にある落雷の状況と影響について学んだ。コロラド大学のアル・J・ガジースキ教授によって最新のデータと研究が発表され、マサチューセッツ工科大学(MIT)のアール・ウィリアムズ教授が論評した。
 参加者は、雷対策の“最善策”や世界で行われている対策について十分理解して帰った。参加した役員やエンジニアは、石油・ガス工業分野における落雷対策の必要性や地球温暖化による天候パターンの変化について親密に議論を行っていた。 

<タンク火災の状況> 
① 4月24日 「テキサス州ヒューストンの落雷によるタンク火災」
  当ブログ「米国ヒューストンで落雷によるタンク火災」を参照。

② 4月27日 「テキサス州サイプレスの落雷によるタンク火災」
4月27日テキサス州サイプレスの落雷によるタンク火災
(写真はFireGeezer.comから引用)
■ 2013年4月27日(土)の午後、テキサス州ハリス郡を猛烈な嵐が襲った。このとき、サイプレスにある石油貯蔵施設に落雷があり、タンクが爆発・火災を起こした。事故があったのは、ハリス郡サイプレスの農道FM529号線近くにある石油貯蔵タンク施設で、午後3時15分頃に起こった。ハリス郡消防署が出動し、第一陣が現場へ到着したときには、数基のタンクが火に包まれていた。火災によって空に大きな黒煙が流れていた。

サイプレスの落雷によるタンク火災の黒煙
(写真はKHOU.comから引用) 
■ 警察および消防署は午後3時過ぎに911番緊急通報を受けたが、爆発のたびに通報が寄せられた。ハリス郡消防署の消防保安官であるディーン・ヘンズレー氏は、「タンクの何基かは爆発していたように見えました。火のついていないタンクもありましたが、火災を起こしたタンクでは内部の油が燃え続けていました」と語った。あとで分かったことは、大きさのいろいろな違うタンク6基が爆発していたということである。
 事故は2アラーム火災として対応され、消防署の出動によって火災は比較的容易に鎮圧できた。ホットスポットによる再燃を警戒して、タンク地区全エリアに防護用の消火泡膜が張られた。
■ この事故に伴う負傷者はいなかった。

③ 5月2日 「ルイジアナ州デナムスプリングの落雷によるタンク火災」
5月2日ルイジアナ州デナムスプリングの火災現場
(写真はNOLA.comから引用
■ 2013年5月2日(木)午後10時30分頃、ルイジアナ州デナムスプリングの石油貯蔵施設に落雷があり、タンクが爆発・火災を起こした。事故があったのは、デナムスプリングにあるデンバリー・リソース社の原油タンク施設で、木曜の夜にタンクの1基が爆発したあと、金曜に入って2基の原油タンクが火災になった。
 木曜夜はかなり強い低気圧がルイジアナ州の南東地区を通過し、ところによって雨と雷が発生していた。

タンク火災で近隣地区を警備する警察
(写真はNOLA.comから引用
■ ルイジアナ州国土安全保障・緊急防災本部は、木曜の夜の爆発後、近くの住民30世帯ほどに避難指示を出した。結局、この2基のタンク火災による負傷者は出なかった。火災のあったタンクは容量が約2,300バレル(365KL)で、最初の火災は5月2日(木)午後10時30分頃に発生した。炎は30フィート(9m)の高さにまで上がった。原油はタンク内あるいは周囲の防油堤内に留まったが、火災となり、火災エリアは200平方フィート(18㎡)になった。火炎からの熱によって消火泡が効力を発揮できる状況ではなかったため、タンクに水をかけて冷却し、泡が使用できるようになるまで待った。消火泡剤は午前1時頃から到着し始めた。2回目の爆発は5月3日(金)午前12時30分頃に起こったという。


■ 避難地区の近くに住むキム・ブラッドリーさんは、最初、自宅の木が倒れたと思ったといい、「家の中にいたけど、突然、ドーンと大きな音がして、窓ガラスが揺れたわ」と当時のことを語った。別な住民のドナルド・デヴィッドソンさんは、「家全体が揺れ、壁がガンガン鳴ったよ。最初、雷のような音が聞こえ、外へ出てみると、大きなファイアボールが消えかかっているのを見ました」と話している。

■ デンバリー社のコリンズ氏によると、タンクには同社が操業しているロックハート・クロッシング油田から生産し、パイプラインを通じて送られてきた油が入っていたという。なお、現在、パイプラインは閉止されているという。なお、ロックハート・クロッシング油田の生産量は1日当たり約1,100バレル(175KL)であり、事故による油田生産への影響はないという。ただし、油田のすぐ近くには貯油タンクがない。デンバリー社はロッキー山脈とメキシコ湾岸で事業展開している独立系の石油・ガス会社である。同社のウェブサイトによれば、同社はミシシッピー州とモンタナ州の両州において最大の石油および天然ガスの生産者だといい、2011年末において石油換算で462百万バレル(73百万KL)の総確認埋蔵量を保有しているという。
5月3日デナムスプリングのタンク火災現場  (写真はExaminer.comから引用
■ 調査官によると、現場にあった油を保有していた2基のタンクのうち1基は破裂し、火災を起こして爆発したものだと見ている。当局によると、2基目のタンクは爆発を起こしていなかったが、爆発時の熱によってわずかに変形したという。
 火災が収まった後、住民は自宅へ帰り始めた。ルイジアナ州環境保全局は現場に残り、2・3日間、焼け跡から出るフュームの大気への影響をモニタリングした。消防隊によると、現場のクリーンアップは5月4日(土)にかけて行われるという。
事故前のデナムスプリングの原油タンクと近隣住宅  (写真はグーグルマップから引用
補 足
■ 「テキサス州」は米国南部にあり、メキシコ湾岸にある州で、人口は約2,510万人と全米第2位である。「サイプレス」はテキサス州南東部に位置し、ハリス郡にあり、人口約12万人で、ヒューストン郊外都市となっている。
 「ルイジアナ州」は米国南部にあり、テキサス州東側と州を接するメキシコ湾岸の州である。人口は約453万人で、州都はバトンルージュである。「デナムスプリング」はルイジアナ州の中央部東に位置し、リビングストン郡にあり、人口約10,200人の町である。

■ 「雷対策コンサルタント社」(Lightning Eliminators & Consultant Inc.)は、1971年にピーター・カーペンター氏がコロラド州ボールダーで設立した会社で、接地システム、サージ保護、革新的な特許である電荷移送技術などを活用して総合的な雷保護や避雷設備を提供するとともに、落雷に関する問題解決を行うことを業務としているコンサルタント会社である。
 「雷対策サミット」(Lightning Protection Summit)は「雷対策コンサルタント社」が開催した会議で、2013年5月8日、テキサス州ヒューストンのヒューストン・ペトロリアム・クラブ(The Petroleum Club of Houston)において石油・ガス工業分野の関係者を対象に午後5時30分~8時30分の間、ディナー形式で行われた。

所 感
■ 貯蔵タンクの事故原因の三分の一は落雷によるものである。米国で落雷によるタンク火災が多いのは、油田掘削後に貯油しているタンクは浮き屋根式でなく、コーン屋根式が多く、可燃性ガスを形成する可能性が高いことが要因の一つである。
 そして、以前、当ブログの「 NASA(アメリカ航空宇宙局)による世界の雷マップ」で紹介したように、米国はメキシコ湾岸の州を中心に落雷の多い国である。しかし、その米国でも、今年の不安定(異常)な天候による落雷の多さに驚いている。落雷が多ければ、その分、タンクの落雷による火災発生の頻度は増えることは自明であるといえる。
■ 今回、3件の落雷によるタンク火災があったが、幸いなことに落雷時および火災消火活動において負傷者が出ていない。ルイジアナ州デナムスプリングの落雷によるタンク火災では、いち早く、住民の避難を行っている。また、消火活動については詳細を伝えていないが、いずれの事故でも比較的冷静に対応しているように感じる。
 日本でも、最近、猛烈な集中豪雨と強烈な落雷が発生するようになっており、落雷による(タンク)火災が起こりうると想定して、危機管理を行う必要がある。


オクラホマ州の竜巻
後記; 米国オクラホマ州で5月20日に巨大竜巻が発生し、死者24名を出す被害があり、日本でも大きく報道されました。さらに、5月31日に再び、巨大竜巻が発生し、ストームウォチャー(竜巻追跡人)と呼ばれる竜巻研究者3名を含む10人の死者を出しました。今回の落雷によるタンク火災事故の情報を調べると、不安定な天候で雷を伴う嵐により米国内でも異常と思えるほどの多くの落雷が発生していたことがわかりました。オクラホマ州巨大竜巻の前触れであったようです。一つの情報から思わぬところに結びついていると感じながらまとめていました。