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2024年1月9日火曜日

ギニアの首都コナクリの石油ターミナルで爆発・火災、死者24名

 今回は、20231218日(月)、アフリカの西にあるギニアの首都コナクリでギニア石油の石油ターミナルでタンクの爆発・火災があり、死者24名、負傷者454名を出した事例を紹介します。

< 発災地域の概要 >

■ 発災があったのは、ギニア(Guinea)の首都コナクリ(Conakry)のカロウム地区(Kaloum)にある国営のギニア石油( Société Guinéenne des Petroles)の石油ターミナルである。石油ターミナルには、18基の貯蔵タンクがあり、合計132,600KLの石油製品を貯蔵できる。

■ 事故があったのは、石油ターミナルにある貯蔵タンク群である。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 20231218日(月)真夜中過ぎの午前020分頃、石油ターミナルで大規模な爆発が発生した。

■ 発災に伴い、消防隊が出動した。消防士が現場に急行する中で、大きな災と立ち昇る黒煙は遠くからも確認できた。現場では、数台のタンクローリーが兵士と警察に護衛されて石油ターミナルから出て行った。

■ 発災に伴い、初期調査では爆発によって14人が死亡し、190人が負傷したと報じられた。

■ 爆発により大規模な火災が発生し、近くの住宅地に延焼した。濃い黒煙が空に充満する中、建物の窓ガラスが割れ、多くの人が逃げる事態となった。発災場所から半径1km以内の建物が被害を受けた。

■ 石油ターミナルの従業員のひとりは、船の荷降ろし中に爆発が起きたと話している。

■ 住民のひとりは「眠っているときに笛が鳴るような音が聞こえ、その後耳をつんざくような爆発音が聞こえました」と語っている。 また、別な住民は、「空に何かが見え、突然、大爆発があり、たまらない熱さが襲ってきました。四方八方から飛んでくる物に当たらないよう、すぐに逃げました」と話した。

■ 当局は、兵士によって発災地域に入る交通を遮断した。

■ 石油ターミナルでは13基の燃料貯蔵タンクが使用できなくなった。5基の貯蔵タンクは影響を受けていないという。

■ ギニアは石油生産国ではなく、精製能力もない。ギニア石油は精製製品を輸入しており、そのほとんどはカロウムの石油ターミナルに貯蔵され、タンクローリーやトラックで全国に配送している。

■ 防衛・警備・医療関係者を除く労働者には自宅待機が勧告された。学校やほとんどのガソリンスタンドも閉鎖された。この国にはコナクリ北のカムサールの港に小さな石油貯蔵所があり、主に鉱山会社が使用している。潜在的な燃料不足に対する懸念から、コナクリから約260km離れたマモウの町では住民がガソリンスタンドを包囲した。

■ ギニアのほとんどの発電所、特に首都に電力を供給している発電所はディーゼル燃料で稼働している。 「政府は燃料備蓄が破壊されたため、停電により電力供給が影響を受ける可能性があると国民に通知した」と発表した。

■ 爆発は17基のタンクがあるターミナルの西側で起きたと思われる。

■ ユーチューブには、タンク火災の動画が投稿されている。主なものは、つぎのとおりである。

 Youtube@depot du carburant en feu à kaloum2023/12/18

 ●Youtube Guinea‘s Conakry oil terminal explosion kills at least 11, injures 842023/12/19

 ●Youtube @kaloum en feu2023/12/18

 ●YoutubeGuinée : après l’explosion du principal dépôt, l’approvisionnement en carburants en question2023/12/28

被 害

■ 燃料貯蔵タンク13基が焼損した。タンク内液の燃料油が焼失した。13基のタンクのうち、11基がガソリンで、航空燃料(灯油)が2基である。石油ターミナル構外の800棟の建物や住宅が爆発・火災の被害を受けた。 

■ 死傷者は478名にのぼった。内訳は死者24名、負傷者454名だった。このほか、火災による直接的な影響を受けた被害者は合計で11,000人以上にのぼった。

■ 近くの道路が閉鎖された。

■ 燃料の燃焼によって大気汚染が発生した。住民の健康被害の懸念が出ている。

< 事故の原因 >

■ 事故の原因は調査中で分かっていない。

< 対 応 >

■ 火災は1218日(月)午後に制圧されたと報じられたが、消防士は1219日(火)も活動を続けており、災害現場からは煙が立ち昇り続けた。

■ 隣国のセネガル国防省は、軍医15名と消防専門家8名を含むセネガル救助隊員24名が月曜日遅くに到着したと発表し、さらにチームが続くと付け加えた。フランス外務省は、ソーシャルメディアでフランスの支援・支援チームが派遣されていると述べた。また、国連は声明で、テント、給水タンク、移動トイレ、医薬品、その他の必需品を提供していると発表した。

■ 政府は声明で、火災の原因は不明であり、火災の原因と責任者を特定するために調査が開始されると述べた。

■ 安全保障大臣が調整する危機対策組織が設置された。情報省によると、負傷者を支援するための健康緊急計画も用意されているという。

■ 救急隊や病院で治療を受けた負傷者のうち113人が1218日(月)に退院した。

■ 1219日(火)になっても、ターミナルの上空には黒煙の高い柱が立ち込め、ガソリンスタンドには車とバイクが何時間もの行列ができ、コナクリの通りは渋滞した。政府はこれに先立ち、パニック買いを抑制するために多くの企業に休業を命じていた。

■ 当局が住民に自宅待機を呼びかけたことを受け、一部の労働者が1219日(火)に出勤したが、別の労働者はさらなる爆発を恐れた。

■ 1219日(火)、政府は全国で燃料供給が再開されたと発表したが、燃料不足への懸念から全国各地でガソリンスタンドが一時閉鎖され、多くの人が車を利用することができなかった。

■ 政府によると、大気質に関してカロウム地区の測定値は改善傾向が示されているが、依然としてマスクの着用を推奨しているという。

■ 1223日(土)、石油ターミナルの火災は完全に鎮火した。1218日(日)から23日(土)にかけて、合計132,600KLの石油製品を貯蔵する18基の貯蔵タンクのうち、13基が完全に焼損した。最悪だったのは、失われた13基のタンクのうち、ガソリンが入っていた11個のタンクと、航空機用の灯油が入っていたタンクだったということである。火災が制圧された時点で、石油ターミナルには軽油の入ったタンクが4基と重油の入ったタンクが1基だけ残っただけだった。

■ 1223日(土)、政府はガソリンの配給を再開し、車両1台あたり25リットル、オートバイと三輪車1台あたり5リットルの配給とし、缶による提供は禁止した。また、隣国シエラレオネからのタンカーの往来は護衛の下で再開された。

■ 初期の調査では、被害を受けた建物は800棟が確認されており、そのほとんどが発災現場から500m以内にあった。政府によると、460世帯が国の配布した食料キットの恩恵を受けており、影響を受けた2,141世帯への配布は引き続き行われているという。また、火災による直接的な影響を受けた被害者は合計で11,000人以上にのぼった。

■ 1227日(水)、ギニア政府の発表では、石油ターミナルの事故による死者が24名、負傷者が454人になったと報告した。死者数は24名にのぼるが、このうち11名の遺体は依然身元が不明となっており、医療機関に入院した負傷者454名のうち、31名が現在も入院中で、423人が退院した。

■ 1227日(水)、燃料不足の状態になっているギニアに対して隣国のコートジボワールは月間5,000万リットル(50,000KL)のガソリンを供給すると発表した。一方、 経営の失敗が事故の要因として挙げられている中で、ギニア石油の株主で経営に共同責任を負っている多国籍企業や会社が沈黙していることに反感をもつ意見が出ている。

■ 石油ターミナルから濃い黒煙が出て街を覆って大気の質を悪化させたが、引き続き住民に影響を与えている。事故から2週間近く経った1229日(金)、浮遊粒子が持続的に呼吸器疾患や頭痛を引き起こすことが明らかになった。

補 足                                                                          

■「ギニア」(Guinea)は、正式にはギニア共和国で、西アフリカの沿岸に位置し、人口約1,420万人の国である。以前はフランス領ギニアだったが、1958 年に独立した。このため、ギニアの公用語はフランス語である。西は大西洋、南東はコートジボワール、南はシエラレオネとリベリア、北西はギニアビサウ、北はセネガルとマリに接している。ギニアビサウや赤道ギニアなど同名地域と区別するために、コナクリギニアと呼ぶこともある。

「コナクリ」(Conakry)は、ギニアの西の沿岸部に位置し、ギニアの首都であり、人口約166万人のギニア最大の都市である。港湾都市であり、ギニアの経済、金融、文化の中心地である。

「カロウム地区」(Kaloum)は、ギニア政府の首都機能が多数あり、大統領官邸、国民宮殿、多くの省庁、大使館、銀行が含まれているほか、コナクリ港や漁港があり、人口約63,000人の地区である。

■「ギニア石油」( Société Guinéenne des Petroles SGP)は、1990年に設立されたギニア国営の石油会社で、主にコナクリ市に燃料を提供する中規模の石油ターミナルを保有している。ギニア石油はギニア国家が7%の株を保有しているが、大半は多国籍企業のトタール社(Total)などが所有している。コナクリ市にある別な石油ターミナルで201711月に燃料を盗難しようとしていて火災になった事例がある。

■最初の「発災タンク」は不明であるが、爆発は石油ターミナルの西側で起きたと報じているメディアがある。グーグルマップで調べると、石油ターミナルの西端には直径約25mの固定屋根式タンクが2基あり、その隣に直径約1417mの固定屋根式タンクが11基並んでいる。東端には被災を免れた直径約40mの固定屋根式タンクが3基ある。焼損したタンク13基のうち、ガソリンタンクが11基と報じられており、直径約1417mの固定屋根式タンクがガソリンタンクとみられる。13基のうちの残りの2基が西端にある直径約25mの固定屋根式タンクが航空燃料(灯油)用であるとみられる。直径約17mのタンクの高さを10mとすれば、容量は約2,270KLである。

 発災が激しいものになった要因のひとつにタンク間距離がある。ガソリンタンクのタンク間距離はタンク直径の0.300.40である。航空燃料(灯油)タンクもタンク直径の0.22程度である。ギニアの基準が分からないが、たとえ満足していても、今回のような複数タンク火災では、延焼する可能性は高い。


所 感

■ 石油ターミナルでガソリンタンク11基の複数火災は、最近に無い激しいタンク火災である。原因は調査中で分からないが、2005年の英国バンスフィールド事故や2009年プエルトリコのカリビアン石油事故を思い出させる。目撃証言の中に「船の荷降ろし中に爆発が起きた」というのがあり、推測であるが、ガソリンの荷下ろしにおいてガソリンタンクへの過充填があり、ガソリンが防油提内に流出し、蒸気雲爆発を起こし、それに続いてタンク群が火災になったのではないか。バンスフィールド事故やカリビアン石油事故のタンクには、オペレーターが充填状況を監視できる液面計器が付いていたし、タンクが過充填になれば、自動で受入れを停止する独立した高液位スイッチが付いていたが、両方の事故とも機能を喪失していた。これらの事故の教訓は、つぎのブログを参照。

 ●「最近の貯蔵タンク過充填事故からの教訓」20158月)

 ●「最近の石油貯蔵タンク火災からの教訓」201212月)

■ 消火活動の状況はほとんど報じられていない。被災写真の中に消防隊が写っている写真もあるが、傍から見るとほとんど活動していないようにしか見えない。実際にそれに近いだろう。しかし、タンク複数火災がいかに困難かは「英国バンスフィールド油槽所タンク火災における消火活動(その2)」 20167月)を参照。 また、大容量泡放射砲が使われた複数タンク火災の状況は「インドネシア西ジャワ州で製油所の大型ガソリン・タンクが複数火災」20214月)を参照。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである

     France24.com,  Death toll rises after explosion and fire at Guinea fuel depot,  December  20,  2023

     Voanews.com, 13 Killed in Guinea Oil Terminal Blast; Extent of Damage Unclear,  December  18,  2023

     Reuters.com,  Guinea oil terminal blast kills at least 13, fire largely contained,  December  19,  2023

     Lemonde.fr, Explosion and fire at Guinea fuel depot kills 14 and injures 190,  December  18,  2023

     Africanews.com, Guinea: fire at Conakry fuel depot "completely extinguished" (government),  December  27,  2023

     Apnews.com, At least 13 dead, 178 injured after a massive fuel depot explosion in Guinea’s capital,  December  19,  2023

     Reliefweb.in, Guinea: Kaloum explosion DREF Operation MDRGN016,  December  28,  2023

     Crisis24.garda.com, Guinea: Officials responding to fuel depot explosion and fire in Kaloum, Conakry,  December  18,  2023

     Reporterre.net, L’explosion d’un énorme dépôt pétrolier secoue la Guinée,  December  29,  2023

     Lefigaro.fr,  Au moins 14 morts et 190 blessés après l'incendie d'un dépôt d'hydrocarbures à Conakry,  December  19,  2023

     Mosaiqueguinee.com, Explosion du dépôt pétrolier de Kaloum: Baraka, Résilience et Solidarité,  December  27,  2023     


後 記: アフリカで起こった大きな事故だったので、多くの情報が報じられていました。被災写真も多く投稿されていました。しかし、首都にあった石油ターミナルで起こったため、多くは燃料不足の問題に関する報道でした。また、発災時間が真夜中ということで、状況がつかめない内容の記事が多かったですね。普通は発災写真で把握できるのですが、何かが燃えているというものが多く、タンク火災であるかわかりづらいものでした。火災は23日間にわたっていますので、何度も言うようですが、写真の撮られた日にちと時間の情報が欲しいと思いました。脈絡なく、写真の説明もなく、掲載されていますので、いつの時点のものか分かりません。今回の事故で何気ない目撃談が重要だと感じました。「船の荷降ろし中に爆発が起きた」、「ターミナルの西側で起きたと思われる」という談話を報じているのはメディア1社でした。事故状況がつかめない中、このような目撃談から事故原因を推測してみました。

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