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2023年12月26日火曜日

米国テキサスシティのマラソン・ペトロリアム社の製油所でタンク火災

 今回は、20231213日(水)、米国テキサス州テキサスシティにあるマラソン・ペトロリアム社のガルベストン・ベイ製油所の発電所で起こったタンク火災の事例について紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国テキサス州(Texas)テキサスシティにあるマラソン・ペトロリアム社(Marathon Petroleum)のガルベストン・ベイ製油所(Galveston Bay Refinery)である。製油所の精製能力は593,000バレル/日で、米国において 4 番目に大きい製油所である。

■ 事故があったのは、第2発電所(Power 2 unit)にあるサワーウォーター(酸性水)のタンクである。第2発電所は、製油所に蒸気のほか工業用水と燃料ガスを供給している。サワーウォーターは、精製工程で発生する硫化水素やアンモニアなどの化学物質を含む廃水である。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 20231213日(水)午後4時頃、サワーウォーター・タンクで火災が発生した。

■ 発災に伴い、自衛消防隊が出動し、消火活動を行った。

■ 事故に伴う負傷者はいない。

■ 火災はサワーウォーター・タンクの通気口から発生し、それが引き金になって別の第2発電所にあるタンクで爆発・火災を引き起こしたという。

■ マラソン・ペトロリアム社によると、大気モニタリングでは製油所外の大気質への影響は検出されなかったという。

■ 火災による生産への影響はない。

■ 消防隊は、2番目に火災となったタンクで燃え続ける火災を制圧する計画を立てている。

被 害

■ 複数のタンクが火災で損傷した。

■ 負傷者の発生は無い。

< 事故の原因 >

■ 事故や火災の原因は分かっていない。 

< 対 応 >

■ 火災の制圧や鎮火の情報は報じられていない。

■ マラソン・ペトロリアム社は、20235月に火災により改質装置を停止した後、11月に再稼働させたばかりであった。

■ さらに、タンク火災から4日後の20231217日(日)には、ガルベストン・ベイ製油所で操業上の問題により、二酸化硫黄(亜硫酸ガス)が大気中に放出されたことを受け、住民に屋内退避指示が出された。市内全域の空気測定値は正常で、負傷者は報告されていないという。マラソン・ペトロリアム社は以下のような声明を発表した。「マラソン・ペトロリアム社のガルベストン・ベイ製油所は、二酸化硫黄排出量の一時的な増加につながった操業上の問題に対応しています。負傷者は出ていません。地域では大気監視が実施され、テキサスシティは製油所の南側の地域に避難所を設置しました。影響を受けた地域の地図は市のソーシャルメディア・チャンネルで確認することができます。状況の解決に向けて取り組む中で、職員と公衆の安全が最優先事項です」

補 足

■ 「米国テキサス州」(Texas)は、米国南部にあってメキシコ湾岸に面し、メキシコと国境を接する人口約2,900万人の州である。

「ガルベストン郡」(Galveston)は、テキサス州の南東部に位置し、人口約35万人の郡である。

「テキサスシティ」(Texas City)は、ガルベストン湾の南西部に位置し、人口は約51,000人の市である。

■「マラソン・ペトロリアム社」(Marathon Petroleum)は、1998年、石油精製企業のアシュランド社とマラソン・オイル社との間で合弁会社マラソン・アシュランド・ペトロリアム社が設立したのが起源である。2005年、アシュランド社がマラソン社に持ち分を売却したことにより、マラソン・ペトロリアム社となった。本社は米国オハイオ州にあり、製油所のほか、ガソリンスタンドなどでの販売を手がける。 米国で13個所の製油所を保有し、1日当たり約290万バレル精製能力をもっている。

「ガルベストン・ベイ製油所」は、テキサス州テキサスシティのガルベストン湾近くにあり、ヒューストン船舶航路の入り口からは離れている。2018年、ガルベストン・ベイ製油所はテキサスシティ製油所と合併し、593,000バレル/日の精製能力を備えた世界クラスの精製複合施設になった。

 マラソン・ペトロリアム社の事故については、つぎのような事例を紹介した。

 ● 202110月、「米国テキサス州で原油タンクのミキサー取付けフランジから油噴出」

 ● 20238月、「米国ルイジアナ州のマラソン・ペトロリアム社の製油所でナフサタンク火災」

■「発災タンク」は、第2発電所(Power 2 unit)にあるサワーウォーター(酸性水)のタンクというほかに情報以外報じられていない。グーグルマップでガルベストン・ベイ製油所を調べてみたが、用役エリアのボイラ設備とみられるところがあるが、情報が少なすぎて発災タンクの場所は特定できなかった。

所 感

■ 事故要因に関わる事象が報じられておらず、原因は分からない。事故原因だけでなく、事故の状況についても「火災はサワーウォーター・タンクの通気口から発生し、それが引き金になって別の第2発電所にあるタンクで爆発・火災を引き起こした」という事象がどのようなことか理解できない。

■ ガルベストン・ベイ製油所では、20235月の火災により改質装置を停止した後、再稼働させたばかりであったという。今回のタンク火災の4日後には、操業上の問題により、二酸化硫黄(亜硫酸ガス)を大気中に放出させ、住民に屋内退避指示が出されている。このほか202110月に原油タンクのミキサー取付けフランジから油を噴出させるという類のない事故を起こしている。20238月には、マラソン・ペトロリアム社のルイジアナ州ガリービル製油所でナフサタンクの火災を引き起こしている。同社は、元来、情報の開示に消極的であったが、今回のことをはじめ、上記の事故原因について情報を公開していない。事故が教訓として活かされておらず、何かがおかしい。事故の背景は、マラソン・ペトロリアム社の製油所経営のあり方に問題が潜在しているように思う。

■ 消防活動についても語られていない。おそらく、製油所の自衛消防隊だけで対応しているのではないだろうか。公的機関も、市だけでなく郡もあるわけなので、消防活動に関する情報を共有化すべきだと感じる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    Reuters.com, Firefighters battle blaze at Marathon Galveston Bay, Texas, refinery, December  13,  2023

    Bicmagazine.com, Firefighters battle blaze at Marathon Galveston Bay, Texas, refinery, December  13,  2023

    Inspectioneering.com, Firefighters Battle Blaze at Marathon's Galveston Bay Refinery, December  13,  2023

    Qcintel.com, Fire at Marathon’s Galveston Bay refinery, operations unaffected, December  14,  2023

    Xm.com, Firefighters battle blaze at Marathon Galveston Bay, Texas, refinery, December  13,  2023

    Bicmagazine.com, Texas City lifts shelter-in-place order after Marathon refinery releases sulfur dioxide, Texas, refinery, December  17,  2023


後 記: マラソン・ペトロリアム社の事故は疲れます。情報の開示に消極的な会社であり、製油所の事故に積極的でない公的機関ですから事故情報は限られています。(マラソン・ペトロリアム社のウエブサイトには、事故のあった翌日に「従業員と地域住民が、オハイオ州で6,000匹のコウモリを収容できるコンドミニアムを設置した」というニュースを投稿しているのですから、情報の開示に差がありすぎます) それでも事故の多いマラソン・ペトロリアム社ですから当ブログに取り上げることにしました。通常、通信社のロイターが第一報を発信したら、そのほかのメディアが詳細を報じるというのが通常ですが、メディアの事故情報も極端に少ないものでした。それでもしつこく調べていたら、今回のタンク事故の4日後に住民が避難するような別な事故が発生しました。 

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