このブログを検索

2021年2月2日火曜日

ロシア連邦のウファ製油所でガス用タンクが爆発・火災、死傷者2名

 今回は、ロシア連邦のバシコルトスタン共和国の首都であるウファにあるバシネフチ社のウファ製油所で、メタン水素のガス用タンクが爆発し、火災となった事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、ロシア(Russia)連邦のバシコルトスタン共和国(Republic of Bashkortostan)の首都であるウファ(Ufa)にあるバシネフチ社(Bashneft)のウファ製油所(Ufa Refinery)である。

■ 事故があったのは、製油所内のプラントの容量25㎥と容量20㎥の2基のメタン水素のガス用タンクである。

<事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2021125日(月)午後7時頃、製油所内のプラントで爆発があり、火災となった。

■ 事故に伴い、ガス分離装置で働いていた2名の作業員に死傷者が出た。一人は死亡し、もう一人は負傷し、病院に搬送された。

■ 午後720分頃、緊急事態省(Ministry of Emergency Situations EMERCON)は、ウファ製油所から構内の貯蔵タンク2基が火災になったという連絡を受けた。

■ タンク1基は損壊し、2基目のタンクは高さ1015mに達する火柱で燃焼しているという。目撃者によると、異常事態の早い段階で爆発音を聞いたという。

■ 発災に伴い、消防署が出動した。

■ 消防活動は、ガス用タンクなどの設備の冷却作業が行われた。火源であるガスの供給は停止し、残存ガスを燃え尽きさせ、火災を局所化して消火させようとした。火災に隣接するプラント内の構造物を冷却するために12台のモニターノズルが配備された。

■ 火災になった装置以外の主要プラントの稼働は続けられた。

■ 監視カメラによる爆発時の映像がユーチューブに投稿されている。

 (YouTubeAn explosion at the Ufaorgsintez plant in Ufa, Russiaを参照)

被 害

■ プラント内のガス用タンク2基が爆発・火災で損壊した。このほかに装置内の配管などの設備が火災で被災したものとみられる。

■ 作業員2名に死傷者が出た。一人は死亡し、もう一人は負傷し、病院に搬送された。

< 事故の原因 >

■ 未確認であるが、爆発は安全規制の違反によって引き起こされたとみられる。

< 対 応 >

■ 消防活動によって、1月26日(火)午前2時頃、火災は封じ込められ、拡大する恐れは無くなった。午前633分に完全に消火した。

■ 火災対応のため、出動した消防士は127名、消防車両44台にのぼった。

■ 消防活動時の映像がユーチューブに投稿されている。

 (YouTubeMassive fire rages at an oil refinery in Russia‘s Ufaを参照)


補 足

■「ロシア連邦」(Russia Federation)は、通常、ロシアと呼んでいる。ユーラシア大陸北部に位置し、人口約14,600万人の連邦共和制国家である。

「バシコルトスタン共和国」(Republic of Bashkortostan)は、ロシア中央西部に位置し、ロシア連邦を構成する沿ヴォルガ連邦管区に含まれる人口約410万人の共和国である。 

「ウファ」(Ufa) は、バシコルトスタン共和国の首都で、人口約112万人の都市である。


 
■「バシネフチ社」(Bashneft)は、バシコルトスタン共和国に本拠地を置くロシアの国営石油会社である。バシコルトスタン共和国、タタルスタン共和国、ロシア連邦沿ヴォルガ連邦管区オレンブルク州などにある160箇所以上の油田・ガス田で生産を行っている。20093月、ロシアの新興財閥系企業システマがバシネフチ株を25億ドルで取得し、支配株主となっている。

 ウファ製油所は19万バレル/日の精製能力を有する。一方、ウファにはバシネフチ社のUfaneftekhim Refinery22万バレル/日)という製油所があるし、発災事業者をウファオルグシンテス製油所(Ufaorgsintez)と報じているメディアがある。このブログでは、発災事業所をウファ製油所としたが、それが正しいか疑問は残る。

■「メタン‐水素」ガスはメタンと水素の混合物と思われる。 このガスをハイタン(Hythane)と呼ばれることもあり、この場合、天然ガス(7090Vol%)と水素(1030Vol%)のガス混合物であり、主に自動車部門で使用される。しかし、発災のあった「メタン水素」の目的や構成割合は分からない。

■「発災タンク」は容量25㎥と容量20㎥のガス用タンクと報じられているが、プロセス装置の圧力容器と思われる。直径約2.5m×長さ4mの横型タンクが容量約20㎥であるので、この規模のタンクであろう。発災時の消火活動の写真(標題)に鏡板が外れたような横型タンクが見られるが、これが損壊したタンクではないだろうか。

所 感

■ 今回の事故は安全規制の違反によって引き起こされたとみられるので、原因は運転ミスの範ちゅうだと思われる。

■ 消火活動はガス火災であるので、防御的消火戦略がとられ、隣接設備の冷却作業が主体だった。火源であるガスの供給を止め、残存ガスを燃え尽きさせるという適切な対応がとられた。それでも封じ込めに7時間ほどかかっている。被災写真を見ると、まわりは積雪しており、消火活動は厳しい環境で行われた。


備 考

 本情報はつぎの情報に基づいてまとめたものである。

    Industrialfireworld.com, Storage Tank Fire Reported at Russian Refinery,  January  25,  2021

     Tass.com, One individual dies in fire at Ufa plant,  January  26,  2021

     Tass.com, Fire at plant in Ufa contained,  January  26,  2021

     Tellerreport.com, One person died in a fire at a plant in Ufa,  January  26,  2021

     Reuters.com, Russia's Ufaorgsintez refinery catches fire, one dead,  January  26,  2021

     Redditvids.com, An Explosion At The Ufaorgsintez Plant In Ufa, Russia. Two Containers With Methane Hydrogen Are Burning Right Now,  January  26,  2021

     Worldnews.foredooming.com, Massive fire rages at an oil refinery in Russia’s Ufa,  January  26,  2021

     Hazardexonthenet.net, Refinery explosion kills one, injures another in Russia,  January  26,  2021

     Rbc.ru, На нефтехимическом заводе в Уфе произошел взрыв,  January  25,  2021

     Bashinform.ru, Пожар на заводе ПАО «Уфаоргсинтез» ликвидирован – МЧС,  January  26,  2021

     Ufa.aif.ru, «Недосмотрели?» Почему произошел пожар на нефтехимическом заводе в Уфе,  January  26,  2021


後 記: 今回の事故情報には悩まされる記事が多かったという印象です。別に意図的に隠そうというのではなく、発信源が曖昧な情報を出したのでしょう。まず、発災会社がバシネフチ社以外にロスネフチ社と報じているところがありました。どちらもロシアの石油会社です。「補足」に書きましたが、発災事業所もはっきりしませんでした。発災装置もガス分離装置としましたが、何を分離する装置かよくわかりません。タンク内のガスについてもメタン‐水素ということですが、原料のガスなのか製品のガスなのかわかりません。ひとつの用語を切り口にいろいろ検索して調べてみましたが、結局、詳細は分からずじまいです。コロナ禍の報道はなにか割り切れない内容のものが多いですね。ただ、今回の事故では、映像に関してよく公開されていると思います。 





0 件のコメント:

コメントを投稿