油漏洩のあった製油所 (2010年撮影、手前が雨水貯留池と湿地)
(写真はBloximages.newyork1.vip.townnews.comから引用)
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< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、ルイジアナ州(Louisiana)プラークミンズ教区(Plaquemines Parish)ベルチャス(Belle Chasse)にあるフィリップ66社(Phillips
66)のアライアンス製油所(Alliance Refinery)である。製油所の精製能力は
253,600バレル/日である。製油所は、ニューオリンズ(New Orleans)から南へ約25マイル(40km)のところにあり、ミシシッピ川沿いにある。
■ 発災のあった製油所は、ニューオリンズ(New
Orleans)から南へ約25マイル(40km)のところにあり、精製能力が
253,600バレル/日で、ミシシッピ川沿いにある。
ルイジアナ州ニューオリンズの周辺(矢印が発災場所) (写真はGoogleMapから引用)
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フィリップ66社アライアンス製油所付近(左が北側) (写真はGoogleMapから引用)
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< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2019年10月2日(水)、アライアンス製油所で油漏洩の事故が起こった。漏洩は製油所にあるパイプラインから漏れたもので、漏洩量は50,000ガロン(189,000リットル=189KL)とみられている。油の大半は製油所の雨水排水系の雨水貯留池と湿地へ流れ込み、構外への流出はなく、封じ込まれた。
■ 油漏洩に伴い、クリーンアップ作業が実施されている。
■ 発災に伴う負傷者は無かった。
■ 当初、ミシシッピ川周辺の野生生物への被害は報告されておらず、製油所は野生動物への影響が無いよう州の野生生物当局者と協力して進めているといっていた。
被 害
■ 漏洩によって50,000ガロン(189,000リットル=189KL)
の油が喪失した。(一部は回収)
■ 漏洩事故による人的被害は無かった。しかし、油の漏洩したエリアに入ってきた野鳥が被害を受け、少なくとも3羽が死んだ。
< 事故の原因 >
■ 油漏洩はパイプラインから漏れたものであるが、漏れの原因は発表されていない。
< 対 応 >
■ 製油所は10月3日(木)の朝までにパイプラインの漏洩箇所を特定し、油漏洩対策を施した。
■ 10月8日(火)、ルイジアナ州油流出調整官事務所は、漏洩した油のほとんどは回収されたと発表した。油漏洩による製油所外への流出はなかった。
■ 10月10日(木)、漏洩した油にさらされている鳥が約20~30羽いることが分かった。被害にあったのは野生のアヒルやシギチドリで、原油が付着し、少なくとも3羽が死んだという。油付着のひどい3羽はリハビリテーションを受けている。
■ 野生生物当局者は、ほかの鳥が汚染地区に降り立たないよう
鳥おどしの“スケア・キャノン”(Scare Cannon)を発射するようにしている。
< 対 応 >
■ 製油所は10月3日(木)の朝までにパイプラインの漏洩箇所を特定し、油漏洩対策を施した。
■ 10月8日(火)、ルイジアナ州油流出調整官事務所は、漏洩した油のほとんどは回収されたと発表した。油漏洩による製油所外への流出はなかった。
鳥おどしの“スケア・キャノン”(LPG使用)の例
(写真はReedjoseph.com
から引用)
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■ 10月10日(木)、漏洩した油にさらされている鳥が約20~30羽いることが分かった。被害にあったのは野生のアヒルやシギチドリで、原油が付着し、少なくとも3羽が死んだという。油付着のひどい3羽はリハビリテーションを受けている。
■ 野生生物当局者は、ほかの鳥が汚染地区に降り立たないよう
鳥おどしの“スケア・キャノン”(Scare Cannon)を発射するようにしている。
補 足
■ 「ルイジアナ州」(Louisiana)は、米国南部に位置し、メキシコ湾の面した人口約466万人の州である。州の土地の多くはミシシッピ川を流下する堆積物から形成し、豊かな生物が暮らしている。
「プラークミンズ教区」(Plaquemines
Parish)は、ルイジアナ州の東にあり、メキシコ湾に面した人口約23,500人の教区(郡)である。
「ベルチャス」(Belle Chasse)は、ミシシッピ川西岸にあり、人口約13,000人でプラークミンズ教区で最大の町である。
■ 「フィリップ66社」(Phillips 66)は、米国テキサス州ヒューストンに本社を置く石油精製と販売に従事する石油企業で、2012年にコノコフィリップスより分離独立した。国内に14箇所の製油所を保有している。
「アライアンス製油所」(Alliance
Refinery)は、 1971年、2,400エーカー(970万㎡)の土地に建設された。ミシシッピ川沿いにあり、主に軽質で低硫黄の原油を処理している。アライアンス製油所の精製能力は253,600バレル/日で、
1系列の製油所で流動接触分解装置、アルキレーション装置、コーキング装置、水素化脱硫装置などの装置を保有しており、従業員は850名である。
アライアンス製油所の雨水貯留池付近の公道 (写真はGoogleMapのストリートビューから引用)
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フィリップ66社アライアンス製油所では、次のような事例がある。
● 2012年9月、「米国ルイジアナ州の製油所でハリケーン襲来後に油漏出」
所 感
■ 油漏洩の原因はパイプラインからの漏れとみられるが、パイプラインの漏れ原因は分かっていない。
漏洩量は50,000ガロン(189,000リットル=189KL)というので、結構な量であり、パイプラインのピンホール漏れやフランジ漏れのレベルではない。開口または割れによる漏洩だと思われる。
フィリップ66社アライアンス製油所では、2012年9月に「米国ルイジアナ州の製油所でハリケーン襲来後に油漏出」の事故が起こっている。同事故については歯切れの悪い見解だったが、今回の事故についても多くを語っておらず、会社の隠蔽体質(情報隠し)は変わっていないように感じる。
■ ルイジアナ州の石油会社が情報公開に関して無関心な訳ではない。ルイジアナ州南部の火災と安全に関して責任のある人たちが、相互応援コミュニティーをいかに強化するかについて話し合い、
“ハイアード・ガン・ギャング”(Hired Gun Gang)というグループを1987年に結成させている。この経緯については「米国ルイジアナ州における消防活動の相互応援の歩み」(
2016年3月)を参照。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Nola.com,
Oil leak reported
at Belle Chasse refinery; more than 50,000 gallons spilled, contained, October 08, 2019
・Nola.com,
Dozens of birds exposed to oil after refinery leak near Belle Chasse; three
have died, October 10, 2019
後 記: 製油所の油漏洩という情報を知り、インターネットを調べましたが、今回の事故を伝えたのは、野生生物保護に積極的な一社のみでした。
ルイジアナ州では、人口が少なく、住民に関係のない企業内での事故については興味がなく、関心も薄いのでしょうか。ルイジアナ州は2005年のハリケーン・カトリーナなど何度も大型のハリケーンに襲われたため、移転する州民が多く、他の州に比べて人口が伸び悩む傾向にあるといいます。さらに余談ですが、ベルチャスはプラックマイン教区にありますが、他の州では教区(Parish)でなく郡(County)という言い方を使っており、今もParishという言葉使っているのはルイジアナ州だけだといいます。関係ありませんが、「ルイジアナ・ママ」という歌が1960年代にヒットしましたね。
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