今回は、2026年7月6日(月)、イギリスのウェールズのミルフォード・ヘブンにあるインパラ・ターミナルズ・インフラストラクチャーUK社のロベストン・ウェスト・ターミナルで廃止されていた石油タンクが解体中に大規模な火災を引き起こした事例を紹介します。ロベストン・ウェスト・ターミナルはかつてのミルフォード・ヘブン製油所の跡地にあり、現在は石油製品の貯蔵と流通に使用されています。
< 発災施設の概要 >
■ 発災があったのは、イギリスのウェールズ(Wales)ペンブルックシャー州(Pembrokeshire)ミルフォード・ヘブン(Milford Haven)
にあるインパラ・ターミナルズ・インフラストラクチャーUK社(Impala
Terminals Infrastructure UK Ltd)のロベストン・ウェスト・ターミナル(Robeston
West Terminal)である。ロベストン・ウェスト・ターミナルは、かつてのミルフォード・ヘブン製油所の跡地にあり、現在は石油製品の貯蔵と流通に使用されている。
■ 事故があったのは、ロベストン・ウェスト・ターミナル内にあった廃止されていた石油タンクなどの設備である。
<事故の状況および影響>
事故の発生
■ 2026年7月6日(月)午後5時過ぎ、ロベストン・ウェスト・ターミナルの敷地内で大規模な火災が発生した。
■ 丘陵地帯にいた住民は煙を目撃したといい、「私は岸辺に座ってクレダウ川の景色を眺めていました。そのとき、細い煙の筋が見え始め、それが次第に大きくなり、濃い黒色の刺激臭のある煙の大きな雲となって地平線に沿って漂っていきました」と語っている。
■ 火災の通報を受け、ミッド・アンド・ウェスト・ウェールズ消防隊が出動した。
■ 地域一帯に濃い黒煙が空高く立ち昇り、近隣住民に安全に関する注意喚起が行われ、緊急対応が開始された。ソーシャルメディアで拡散された写真には、工業地帯の上空に黒煙が立ち上る様子が写っており、近隣住民の間で懸念が高まった。
■ 現場には、ミッド・アンド・ウェスト・ウェールズ消防隊のほか、ダイフェッド・ポウィス警察および地元機関が出動した。ミルフォード・ヘブン、ヘイバーフォードウェスト、ペンブローク・ドック、タンブル、カーマーゼン、アマンフォードの各消防隊が現場に出動した。
■ 警察は道路封鎖を実施し、火災による煙のため、周辺住民には屋内待避が指示された。
■ 火災は、廃止された石油タンク内で発生したもので、タンクには残留原油があった。このほか、プロパンガスボンベと酸素ボンベの混合物を含む約60本のボンベが保管されていた。
■ タンクは解体作業中で、当時切断装置が使用されていたという。タンクは空だったとみられるが、構造物の下または内部に油の残留物やスラッジが残っていた可能性があるという。
■ 消防隊は、70mmジェット14本、45mmジェット3本、現場の放水銃、泡消火用消防車を用いて、水と泡で消火活動を行った。
■ ミッド・アンド・ウェスト・ウェールズ消防救助隊は、煙が漂っているため、近隣住民に対し窓やドアを閉めておくよう勧告した。
■ 事故にともない、1名が現場で軽傷の手当てを受けた。
■ 近くの住民は、火災が少し弱まった時点で、つぎのように語った。「私が知っているかぎり、この辺にいる人はみな安全です。煙が薄れてきているので、消防隊は火災を制圧できていると思います。警察はすぐに道路を封鎖しましたし、緊急サービスもテキパキと対応していました」といい、「以前はプーマ・オイルという会社だったけど、今はインパラという名前になっています。古い石油貯蔵タンクを解体しているところだと聞いています」と語った。
■ フェースブックでは、タンクの火災の状況を伝える動画が投稿されている。
●Facebook、「
Decommissioned oil tank caught fire at IMPALA TERMINALS in Milford Haven, UK (6
July 2026) #foamfatalesefs #storagetanks #fireprotection 」(2026/7/7)
●Facebook、「 HERALD BREAKING NEWS LARGE FIRE AT IMPALA ..」(2026/7/7)
被 害
■ 解体中のタンク1基が火災で損傷した。
■ 1名が現場で軽傷の手当てを受けた。
■ 周辺の道路が封鎖された。また、火災による煙のため、周辺住民には屋内待避が指示された。
< 事故の原因 >
■ 廃止されて解体中のタンク内で発生したもので、タンクには残留原油があった。火災の原因は分かっていない。
< 対 応 >
■ 一時的に重大事態宣言が発令されたが、後に解除された。
■ 火災は、その日の夜遅く午後10時過ぎに消火された。
■ 当該地域の道路封鎖は事故当日の夜に解除された。
■ インパラ・ターミナルズ・インフラストラクチャーUK社は、「ミルフォード・ヘブンのターミナルでの事故は解決しました」と述べた。
■ 緊急対応部隊は現場に5時間以上留まり、現場の安全が確認した後、インパラ・ターミナルズ・インフラストラクチャーUK社に引き渡された。
■ 事故後、インパラ・ターミナルズ・インフラストラクチャーUK社は、緊急対応が終了した後、ターミナルの残りの部分は通常通り稼働を続けたと述べた。
■ 火災の原因は分かっておらず、調査は継続中である。
■ 火災のあった施設の場所は、新たなグリーンエネルギー計画の予定地でもある。開発業者によると、5000万ポンド規模のグリーン水素製造施設が建設される予定で、最大70人の地元雇用が創出される可能性があるという。 2026年1月には、グリーンエネルギー生産プロジェクトに関連する全長1.5kmの水素ガスパイプラインの建設計画が承認されたという。ウェストウェールズ水素プロジェクトの一環であり、ミルフォード・ヘブンのインパラ・ターミナルズ・インフラストラクチャーUK社に20MWの新たな水素製造施設を建設するための計画許可が下りたという。
■ また、この施設には、かつてミルフォード・ヘブン製油所があった場所で、1983年にタンク火災があり、ボイルオーバーが発生した事故として知られている。事例は、「ミルフォード・ヘブンの原油タンク火災事故(1983年8月)」(2014年12月)、「石油貯蔵タンク火災の消火戦略 - 事例検討(その1)」(2014年10月)を参照。
補 足
■「ウェールズ」(Wales)は、は、グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国(イギリス)を構成する4つの構成国(Country)のひとつで、人口は約310万人である。
「ペンブルックシャー州」(Pembrokeshire)は、ウェールズ南西部に位置する州で人口約25,000人である。
「ミルフォード・ヘブン」(Milford Haven)は、ペンブルックシャー州にある天然の良港を持つ町である。
■「インパラ・ターミナルズ・インフラストラクチャーUK社」(Impala Terminals Infrastructure UK Ltd)は、石油製品やエネルギー資源の備蓄・流通インフラストラクチャーを担う英国法人で、英国国内で大規模な石油・液体バルクの貯蔵施設(タンクやターミナル)を保有・運営している。
今回の発災場所である「ロベストン・ウェスト・ターミナル」(Robeston West
Terminal)は、ミルフォード・ヘブンの近郊のロベストン・ウェストにある石油・燃料貯蔵流通ターミナル(油槽所)で、インパラ・ターミナルズ・インフラストラクチャーUK社によって運営されている。同ターミナルは、旧ミルフォード・ヘブン製油所(Milford
Haven Refinery)の一部だった。旧ミルフォード・ヘブン製油所は2014年に製油所としての機能が閉鎖された後、2015年にプーマ・エナジーへ売却され、石油製品の保管および流通に特化したプーマ・エナジー・ターミナルへ生まれ変わったあと、インパラ・ターミナルズ・インフラストラクチャーUK社のロベストン・ウェスト・ターミナルへ変わった。
■「発災タンク」は、使用を廃止し、解体中のタンクと報じられているだけである。グーグルマップと被災映像で調べると、敷地南部の貯水池が4つある近くのタンクだとわかる。元のタンクの直径は約73mで、高さを20mとすれば、容量約83,600KLの浮き屋根式タンクだった。
所 感
■ 今回の事例は、事故の状況を理解しがたいタンク事故である。“火災は、廃止された石油タンク内で発生した。タンクは解体作業中で、当時切断装置が使用されていた。タンクは空だったが、タンク近辺あるいは内部に残留原油が残っていたとみられる。このほか、プロパンガスボンベと酸素ボンベの混合物を含む約60本のボンベが保管されていた”という。タンクは半分以上解体されており、このような中で残留原油やプロパンガスボンベが保管されていたという不安全な管理状況は過去に記憶がない。
■ 強いて挙げれば、タンク事業者と解体工事会社の意思疎通がまったく無かったのだろう。このタンクを解体するにあたって、内部の残留原油を抜いた際、別な容器に入れたが、そのまま放置され、解体作業の火花によって容器に入った残留原油が火災になったとしか考えられない。しかし、火災の燃焼を見ると、燃えている原油はかなりの量で、なぜ、タンク内部の底板付近に漏れ出たのか不可解な状況である。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Countytimes.co.uk, What happened after huge Milford Haven oil
terminal fire?, July 7, 2026
・Hazardexonthenet.net, Disused oil tank fire prompts major incident
at Milford Haven terminal, July 7, 2026
・Tankstorage.com, Major fire at Welsh oil refinery, July 8,
2026
・Walesonline.co.uk, Black smoke fills the air as fire breaks out at
former oil refinery, July 7, 2026
・Westerntelegraph.co.uk, Major incident stood down after Milford
Haven terminal fire, July 7, 2026
・Isssource.com, 1 Injured in Fire at Decommissioned Oil Tank, July 14,
2026
・Au.news.yahoo.com, Major incident declared after oil tank fire at
Milford Haven terminal, July 7, 2026
・Tenby-today.co.uk, Large fire at Milford Haven oil terminal sends
black smoke skyward, July 7, 2026
・Swanseabaynews.com, MILFORD HAVEN: Major incident declared as fire
sends black smoke over town — the second major industrial blaze in the region
in weeks, July 7, 2026
・Pembrokeshire-herald.com, Large fire breaks out at Impala Terminal
in Milford Haven, July 7, 2026
・Metro.co.uk, Huge inferno sweeps over oil refinery site as villagers
urged to stay back, July 7, 2026
・Pressreader.com, Blaze at former oil refinery turns sky black with
smoke, July 7, 2026
後 記: ミルフォード・ヘブンというと、1983年に起きた製油所タンクの大火災を思い浮かべます。ボイルオーバーという事象がいかに激しいかを知りました。今回の事例を知り、調べていくと、タンクエリアの配置は大部分が当時の製油所のままであり、言い方は適切ではないですが、昔懐かしいという気がします。しかし、当時とは事業者は変わっていますが、またしても変なタンク火災が起こりました。日本流にいうと、呪われたというか、縁起の悪いタンクエリアで、お祓いをして邪気払いをするでしょう。











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