今回は、2026年4月7日(火)、北海道ニセコ町にあるホテル鶴雅別荘 杢の抄でボイラーの燃料用タンクから重油約2,000リットルが流出し、近くのニセコアンベツ川に流れ出て、水質汚染を起こした事例を紹介します。
< 発災地域の概要 >
■ 発災があったのは、北海道ニセコ町のニセコ昆布温泉にある鶴雅ホールディングス㈱が経営する高級温泉ホテルの鶴雅別荘(つるがべっそう)杢の抄(もくのしょう)である。ホテルは2013年に開業し、1級河川の尻別川に流れ込むニセコアンベツ川沿いに建っている。
■ 事故があったのは、ホテル内に設置されていたボイラー用の容量15,000リットル/基の燃料タンク2基である。
< 事故の状況および影響
>
事故の発生
■ 2026年4月7日(火)午後3時頃、ホテル“鶴雅別荘
杢の抄”でボイラーの燃料用タンクから重油が流出しているのを従業員が確認した。
■ 発災にともない、消防、北海道、ニセコ町などに連絡が入り、出動した。
■ 漏洩した重油は約2,000リットルで、近くのニセコアンベツ川に流れ出た。ホテルから南に約4km離れたニセコアンベツ川と尻別川の合流地点付近でも流出した重油が確認された。
■ 油の拡散を防ぐため、北海道とニセコ町などが現場にオイルフェンスを展張し、吸着シートを設置した。オイルフェンスなどを設置した現場では、川や周辺住民への影響を調べている。
■ 当日のホテルによる重油漏洩の経緯は、つぎのように語っていた。
「当日、午前9時30分頃から午前中にかけて、外部の請負会社の作業員が燃料タンク2基に14,000リットルの重油を供給した。タンクへの受入れ作業が終了した後、請負会社は撤収した。正午頃、警告ブザーが感知して鳴った。しかし、見回りをしたが、異常は見つからなかった。午後3時頃、請負会社から“給油時に特に問題は無かった”と連絡があった。午後3時30分頃、ホテルの従業員が入り口の自動ドアの辺りでオイルの臭いを感じた。調べると、燃料タンクの通気口から玄関横に敷設していたパイプを通じて重油が漏れているのを発見した。
タンク2基に重油を受け入れた後、ホテルの作業員がタンクに入った油量を調整していた。しかし、何らかの理由で片方のタンクに過剰に重油が送られ、その結果、タンクの空気を逃がすために設置されていた通気口から側溝へ流出した」
■ メディアの中には、漏洩の要因についてつぎのように報じているところがある。
● タンクに重油を補充した後、タンク2基間の油量調整装置が作動したままになっていたため、装置の給排気口から重油が漏れ出たとみている。
● 漏洩は、ホテル内に設置されていた2基のタンクの重油の量を調整していた従業員が、内容量の多い方に油を足したため通気口からあふれたという。
■ 当日、ホテルには26人が宿泊していたが、体調不良を訴えた人はいなかった。
■ ホテルは原因究明のため、翌日から自主休業した。ホテル側は「現状をしっかり把握し、住民や関係者への説明に努めたい」としている。
■ ユーチューブでは、事故を伝える映像が投稿されている。
●Youtube、「ボイラーの燃料重油約2000リットルが漏れ、近くの川に流出 北海道ニセコ町のホテル」(2026/04/09)
●Youtube、「ホテルで燃料用重油流出 約2000L川に 北海道 ニセコ町(2026年4月9日)」(2026/04/09)
●Youtube、「北海道ニセコ町のホテル ボイラーの燃料用重油約2000リットルが周辺の河川に漏れ出る」(2026/04/09)
被 害
■ 燃料の重油が約2,000リットル外部に流出した。
■ 河川が重油で汚染された。
< 事故の原因 >
■ 事故原因は、燃料移送ポンプの操作ミスである。
ホテル側の調査結果では、「2基の燃料タンク(容量15,000リットル×2基)を接続し、双方の油量を調整するポンプを作動させたまま、従業員がその場を離れた。その結果、メーターの容量超過を適時に確認できず、燃料タンクの容量以上の重油が供給されてオーバーフローを引き起こし、タンク通気口から外部へ漏出した」という。
< 対 応 >
■ 4月8日(水)、ホテル経営者の鶴雅ホールディングス社は、お詫びとともに事故の状況を同社ウェブサイトに掲載した。
■ 4月9日(木)、鶴雅ホールディングス社は、事故原因の調査結果を同社ウェブサイトに掲載した。
● 事故発生経緯はつぎのとおり。
・12:00頃; 施設1階予約事務所の重油監視メーターにて警告ブザーが鳴動。地下タンク給油口および機械室側タンクを目視確認したが、その時点では異常は確認されず。
・15:15頃; ロビーにて重油臭を確認。調査の結果、タンク通気口からの重油漏れを発見。
・15:30頃; 施設横の流水溝への重油流出を確認し、速やかに管轄消防署へ通報。消防隊が到着。土嚢および吸着シートにて河川への流出拡大の阻止作業を開始。
・16:30頃; タンク通気口からの重油漏れが停止。
・17:00頃; ニセコ町役場職員と消防隊による河川流出状況の調査(蘭越町方面)を開始。並行して、役場手配の専門業者が流水溝および駐車場に滞留した重油の回収。
● 事故の発生原因はつぎのとおり。
・当社従業員による燃料移送ポンプの操作ミスが主たる原因である。
・2基の燃料タンク(容量15,000リットル×2基)を接続し、双方の油量を調整するポンプを作動させたまま、従業員がその場を離れた。その結果、メーターの容量超過を適時に確認できず、燃料タンクの容量以上の重油が供給されてオーバーフローを引き起こし、タンク通気口から外部へ漏出した。
■ 今回の事故は周辺環境への影響が懸念される。重油が流れ込んだ尻別川は、国交省が水質調査のBOD値(生物化学的酸素要求量)をもとに毎年発表する1級河川の水質ランキングの中で、水質が最も良好な河川としてこの10年で8回選ばれている。国交省が25年7月に発行した資料では、直近10年で4回以上“水質が最も良好な河川” に選ばれた20河川のひとつとして紹介され、上位6番目に尻別川(8回)が入っている。
このように清流として知られており、今回の重油流出の事故で鶴雅ホールディングス社は「今回の事態を厳粛に受け止め、被害の拡大防止と環境回復に誠心誠意取り組んでまいる所存でございます」といい、河川汚染の広がり、臭気による周辺住民の影響を精査していると説明していた。
補 足
■「北海道」は、日本の北に位置し、人口約498万人の47都道府県の中で唯一の“道” である。道庁所在地は札幌市である。
「ニセコ町」は、北海道西部の虻田郡(あぶた郡)にあり、人口約5,670人の町である。
「ニセコ昆布温泉」は、ニセコアンヌプリの南西麓に位置する自然に囲まれた温泉郷で豊かな湧出量を誇る自家源泉で、国の国民保養温泉地に指定されている。多くの宿泊施設が敷地内に独自の源泉を持っている。
「鶴雅別荘(つるがべっそう)杢の抄(もくのしょう)」は、ニセコ昆布温泉の中にあり、部屋数24室で、旅館とホテルの良さを活かしたハイブリッド型の客室を有する高級ホテルである。
■「鶴雅ホールディングス㈱」は、 1953年に設立し、1955年に阿寒グランドホテルを創業したホテル業を経営する会社である。
■「発災タンク」は、ボイラー用の容量15,000リットル/基の燃料タンク2基と報じられている。しかし、タンク型式は大気圧(常圧)タンクと容器型タンクに大きく分かれるが、今回の事故はどちらのタイプであったか報じられていない。また、ホテルの屋外の映像はあるが、室内に設置されている燃料タンクの写真は無い。おそらく地下式の容器型のタンクではないかと思われる。通常、容量15,000リットルのタンクサイズの目安は地下貯蔵タンク型で直径1.8m×長さ6~7mである。
所 感
■ 事故の原因は、燃料移送ポンプの操作ミスという。発災事業者(鶴雅ホールディングス社)は事故発生から3日目に調査結果をウェブサイトに投稿し、速い対応だと思う。
一方、つぎのような疑問点もある。
● タンクには、高液位で警報の鳴るシステムが設置されていたのではないだろうか。このシステムが機能しなかったのか。人はミスをするが、そのミス防止の計装を設置するのが通常である。
● 当日の報道では、“タンク2基間の油量調整装置を作動”という記事がみられるが、発災事業者の調査結果では“油量調整装置”という記述はない。油量調整装置の機能や作動状況について触れられていないのはなぜか。
● 調査結果では、“2基の燃料タンクを接続し、双方の油量を調整するポンプを作動させたまま、従業員がその場を離れた”とあるが、油がタンクから漏洩するまでには相当な時間経過があったとみられ、これは“操作ミス”というより、“失念”したレベルである。失念するほど、ホテルではいろいろな作業で忙しかったのではないだろうか。この作業の振り分けはどのようになっていたのか。
● 通気口の排出先が側溝につながっていることによって流出の影響(河川の汚染)が大きくなったとみられる。なぜ、このような設計になっているのか。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである
・News.yahoo.co.jp, 重油2000リットルが川に流出 ニセコ「杢の抄」従業員が2基のタンクの重油量を調整中に 川や周辺住民への影響調査中, April 11,
2026
・Htb.co.jp, ボイラーの燃料重油約2000リットルが漏れ、近くの川に流出 北海道ニセコ町のホテル, April
09, 2026
・Hokkaido-np.co.jp, ニセコ「杢の抄」で重油流出 川に2千リットル 7日発生、鶴雅発表, April
08, 2026
・Mainichi.jp, 温泉旅館で重油2000リットル流出、川に流入 北海道・ニセコ, April
10, 2026
・Tsurugagroup.com, 重油流出事故の発生に関する調査報告(鶴雅グループ、ニセコ昆布温泉鶴雅別荘
杢の抄), April 09,
2026
・News.yahoo.co.jp, ニセコで「重油」約2000L流出事故、高級温泉旅館から流れた先は... 「水質が最も良好な河川」でお馴染みだった, April 10,
2026
後 記: テレビの全国版放送によって事故が報じられましたので、調べることとしました。ホテルの付帯的設備の燃料タンクですから詳しい事故状況が報じられるか疑問でしたが、ニセコの自然豊かなところできれいな河川を汚染したため、北海道の地元のメディアなどが取上げていました。事業者の事故発覚後の公表対応は良かったと感じますが、所感では産業プラントの見方で疑問を列記しました。規模は違いますが、バンスフィールド事例と同様のタンクへの過充填事故です。[「最近の貯蔵タンク過充填事故からの教訓」(2015年8月)を参照してください]






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