今回は、2026年1月26日(月)、スペインのムルシア州カルタヘナにあるレプソル社のカルタヘナ製油所において古い簡易常圧蒸留装置の原油貯蔵タンク付近で爆発が発生し、火災になった事例を紹介します。
< 発災施設の概要 >
■ 発災があったのは、スペイン(Spain)ムルシア州(Murcia)カルタヘナ(Cartagena)にあるレプソル社(Repsol)のカルタヘナ製油所である。製油所の精製能力は22万バレル/日であるが、2023年に再生可能燃料の大規模製造装置を稼働させた。
■ 事故があったのは、製油所内の古い簡易常圧蒸留装置の原油貯蔵タンク付近とみられる。
<事故の状況および影響>事故の発生
■ 2026年1月26日(月)午後6時頃、カルタヘナ製油所で原油貯蔵タンク付近で爆発が起こり、火災が発生した。現場にいた目撃者によると、 事故発生時に3回の爆発音が聞こえたという。
■ 現場から巨大な黒煙が立ち昇り、カルタヘナ住民が衝撃を受けるほどだった。黒煙を見て数十件を超す緊急通報が寄せられた。
■ 事故は製油所内の最も古いセクションの一つであるトッピング3ユニットと呼ばれる簡易常圧蒸留装置で発生した。火災現場が発生した地区は主要な生産プラントとは離れており、火災が広がる危険性は少ないとみられた。
■ 最初の爆発から火炎・濃い黒煙の組み合わせは、近隣の住民に不安を引き起こした。火災による黒煙について、当局は、重炭化水素の不完全燃焼から生じる潜在的に有毒な雲と表現した。このため、地方政府は、工場敷地外の住民に影響を及ぼす可能性のある産業事故の対応として、同地域の化学部門を対象とした外部緊急時対応計画を発動することとした。
■ カルタヘナ製油所は発災後、直ちに社内緊急時対応計画を発動し、自衛消防隊で火災を制御可能であり、負傷者の報告はなく、火災が製油所構外に広がる危険性はないと騙った。
■ カタルヘナ製油所の自衛消防隊は、この種の火災の対応基準どおりに対応をとった。炭化水素の供給を遮断し、すでに放出された燃料を制御された方法で消費させ、隣接する領域を冷却して、他の機器やタンクへの延焼を防止した。
■ 当局は、カルタヘナ市の消防隊と地元警察を現場に派遣した。製油所内の自衛消防隊の活動と並行して、カルタヘナ市消防局の消防隊と地元警察とによる予防的配置が製油所の所外に設置され、必要に応じて介入できるようにした。市当局によると、最初の数時間は主に監視と支援が彼らの役割だった。
■ 州政府は、民間防衛警報システム(ES-Alert) を通じて近隣のアルンブレス、エスコンブレラス、ポルトマンを含めた住民に対して屋内に留まり、ドアと窓を閉めるよう指示し、車を運転中の人には周辺地域を避けるよう指示した。また、健康に害を及ぼす可能性のある煙が漂っていることについて明確に警告した。
■ カルタヘナ市長は、技術者と警備員を伴って、事故発生時に製油所を訪れ、工場関係者と面会し、状況を聞いた。
■ レプソル社のカルタヘナ製油所はプレスリリースで、「本日午後5時50分、カルタヘナ工業団地の3号機上部で火災が発生しました」と発表し、「新たな情報が入り次第、引き続き最新情報を提供していきます」と付け加えた。
市議会は、住民に対し警戒を怠らないよう呼びかけ、「直ちに危険はありませんが、念のため屋内に留まり、ドアと窓を閉めてください」というメッセージを出した。
■ 事故にともなう死傷者はいなかった。
■ 主要なアクセス道路は通行規制が行われた。
■ 爆発は、簡易常圧蒸留装置に付帯する原油貯蔵タンクで発生したとみられる。または、原油をディーゼル燃料に加工する簡易常圧蒸留装置の設備かもしれないという。
■ 地方政府とカルタヘナ市議会は、住民は市政ポータルなどの公式ソーシャル・メディア・アカウントといった公式のチャンネルを通じてのみ情報を入手すべきだと主張した。同時に、カルタヘナ市議会の市民保護局職員が動員され、現場の住民との直接的なコミュニケーションを強化した。
また、屋内に留まり通気口を閉じるというES-Alertのメッセージによる勧告は午後9時まで有効だったが、市議会は現場に最も近い地域では、夜間もこれらの予防措置を維持するよう求めた。
■ ユーチューブなどでは、火災のニュースを伝える動画が投稿されている。
●Youtube、「 ÚLTIMA
HORA | Se incendia una refinería de Repsol en Cartagena y piden evitar
desplazamientos」 (2026/01/27)
被 害
■ 爆発・火災で簡易常圧蒸留装置に付帯する原油貯蔵タンクまたは装置内の設備が損壊した。
■ 住民に対して屋内に留まり、ドアと窓を閉めるよう避難指示が出された。
■ 道路の通行規制が出された。
< 事故の原因 >
■ 爆発・火災の原因は調査中である。爆発・火災の発生場所は、簡易常圧蒸留装置に付帯する原油貯蔵タンクまたは原油をディーゼル燃料に加工する簡易常圧蒸留装置の設備で発災したとみられる。
< 対 応 >
■ 火災は午後9時頃までに制圧されたと報じられた。一方、消防署の職員によると、午後9時頃、自衛消防隊は火を封じ込めたものの消し止めることはできず、さらに火災現場を冷却する作業を行っていたという。
■ 通行規制が出されていた幹線道路は、午後9時以降に煙が収まると、規制が解除された。
■ カタルヘナ製油所は、当局に対し、火災は23時5分から23時26分頃に完全に鎮火したと報告した。
■ 地元の消防隊、警察、民間防衛隊が現場に待機していたが、再燃や延焼の恐れがなくなったことが確認され、対応に介入する必要はなかった。このため、午後11時30分までに全隊が基地に戻った。
■ 製油所の火災は鎮圧されたが、煙が町にまで達する恐れがあるため、予防措置として近くの住民には、引続き、外出禁止令が出された。
■ 爆発・火災の原因は調査中である。レプソル社は、事故の正確な原因を明らかにし、原油貯蔵または処理エリアでの最初の爆発の正確な発生源を特定し、すべての安全システムと検知システムの運用を再検討するため、社内調査を開始したと発表した。
■ 火災の鎮火後、安全状況が確認され、カタルヘナ製油所の操業は通常の状態に戻った。
■ 一方、エコロジスト・イン・アクションなどの環境保護団体は、地方行政とカルタヘナ市議会に徹底的な調査と情報ファイルの公開を求めた。これにより、特に空気質による近隣住民の健康への影響に関して、潜在的な責任の決定と事故の実際の影響の評価が可能になる。
エコロジスト・イン・アクションは、このような出来事は、汚染物質の排出に対する国民による規制強化の必要性を浮き彫りにし、通常の操業状況と事故発生時の両方において、石油化学やエネルギー施設に関連するリスクについて国民に透明性のある情報を提供する必要があると主張している。
■ カタルヘナ製油所火災では負傷者は出ず、数時間で鎮火したが、この事故により、産業安全と地元地域の住民保護に関する議論が再び注目を集めている。また、効果的な緊急時対応計画、ES-Alertなどの迅速警報システム、大規模な炭化水素処理施設に伴う環境・健康への潜在的な影響の厳格な監視の重要性も浮き彫りになった。
補 足
■「スペイン」(Spain)は、欧州のイベリア半島に位置し、人口約4,859万人の議会君主制国家である。首都はマドリード(人口約325万人)である。
「ムルシア州」(Murcia)は、スペインの南東部に位置し、人口約142万人の自治州で、州都はカルタヘナである。
「カルタヘナ」(Cartagena)は、ムルシア州の南部にあり、地中海に面し、人口約21万人の港湾都市である。
■「レプソル社」(Repsol)は、総合石油・ガス会社である。主な事業は、油井の探査、開発、原油の生産・精製、LPガスやCNG(圧縮天然ガス)の販売、炭化水素の取引、その他の特殊製品の製造である。レプソル社は、北米、アフリカ、欧州、ラテンアメリカ、アジア、オセアニアの卸売、小売、産業顧客に製品を提供しており、スペインのマドリードに本社を置いている。スペインとペルーで製油所を運営している。
カルタヘナ製油所は1950年に操業を開始し、精製能力は22万バレル/日で、カルタヘナのエスコンブレラス港から原油を受け入れている。一方、 2023年に再生可能燃料の大規模製造装置を稼働させ、国内産や欧州産の使用済み食用油などの有機廃棄物 30 万トンから高付加価値製品に変換し、年間 25 万トンの燃料を生産する能力を備えている。
■「発災場所」ははっきりしない。爆発・火災の発生場所は、簡易常圧蒸留装置に付帯する原油貯蔵タンクまたは原油をディーゼル燃料に加工する簡易常圧蒸留装置の設備で発災したとみられる。原油貯蔵タンクとすれば、貯油エリアの大型貯蔵タンクではなく、簡易常圧蒸留装置に付帯し、圧力変動を緩和・安定させるために使用される小型のタンク(容器)ではないかと思われる。グーグルマップで調べても、情報が少なすぎて、場所を特定できなかった。
所 感
■ 事故原因はわからず、調査中である。爆発・火災の発生場所は、簡易常圧蒸留装置に付帯する原油貯蔵タンクまたは原油をディーゼル燃料に加工する簡易常圧蒸留装置の設備で発災したとみられている。
一般にプロセス装置の火災は、燃焼源の供給を停止すれば、大きな火災にはならない。しかし、被災写真を見ると、火炎は大きく、発災時間は3時間(午後6時~9時)を超す火災になっているので、貯蔵タンクまたは圧力容器の火災ではないかと思う。貯油エリアの大型貯蔵タンクからの供給原油を停止しても、発災タンク(容器)から流出する原油が燃焼して比較的長い火災になったのではないだろうか。爆発は原油タンク内に爆発混合気が形成し、静電気などの引火源によって発災したものだろう。または、設備の不具合で原油が流出して何らかの引火源によって爆発したのではないだろうか。
■ 製油所内の自衛消防隊による消火活動の状況はあまり報じられておらず、はっきりとはわからない。「火災は午後9時頃までに制圧されたと報じられた一方、消防署の職員によると、午後9時頃、自衛消防隊は火を封じ込めたものの消し止めることはできず、さらに火災現場を冷却する作業を行っていたという」というので、消火戦略は、積極的戦略をとらず、防御的戦略で冷却を主にしたのではないか。火災はほとんど燃料が燃え尽きる状態で消えたものだったと思われる。もともと発災は爆発で始まり、事故発生時に3回の爆発音が聞こえたというので、発災現場は爆発の危険性のある火災であり、消防士の安全を考慮した防御的戦略をとるのが適切だったと思う。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Murcia.empresas.de, Una explosión en un tanque de crudo provoca un
incendio en la refinería de Escombreras,
January 26, 2026
・Murciatoday.com, Fire breaks out at Escombreras refinery, now fully
extinguished, January 26,
2026
・Euroweeklynews.com, Repsol fire sends
massive plume of smoke over Cartagena and nearby towns, January
27, 2026
・Joiff.com, SPAIN – Fire at Escombreras refinery brought under
control with no injuries, January 28,
2026
・En.meteorologiaenred.com, Everything we know about the fire at
Repsol's Cartagena refinery,
January 28, 2026
・Elinconformista.com, Extinguen un incendio en la refinería de Repsol
en Cartagena, January 27,
2026
・La7tv.es, Repsol abre una investigación para esclarecer el origen
del incendio en Escombreras,
January 27, 2026
・Cope.es, Un incendio en la refinería de Repsol en Cartagena provoca
una gran columna de humo y Protección civil manda una alerta a los móviles de
los ciudadanos de la zona, January 26,
2026
・20minutos.es, Extinguido el incendio en la refinería de Repsol en
Cartagena, que obligó a enviar un mensaje Es-alert a la población, January
27, 2026
・Murcia.empresas.de, Una explosión en un tanque de crudo provoca un
incendio en la refinería de Escombreras,
January 26, 2026
・Cadenaser.com, Extinguido el incendio en la factoría de Repsol en
Cartagena que supuso enviar un ES-ALERT a la población cercana a
Escombreras, January 26,
2026
後 記: 今回の事例は煙による人体への影響が懸念される可能性があるというアラームが出されたので、報道は住民の避難指示に関することが中心になりました。このためか、事業者への気遣いもあり(?)、大きな事故でありながら、なぜ起こったのかという事故原因への深堀が浅いように感じました。「スペインのバルセロナの貯蔵施設で酢酸メチルタンクが爆発・火災、死傷者5名」(2025年1月)の事例で感じていたことと同様です。ただ、今回はドローンによる映像はありませんでしたが、発災現場に比較的近いところから撮った写真(標題の写真)があったのは救いです。と言っても、何が火災になっているのかは判別できませんが。








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