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2025年3月19日水曜日

米国テキサス州のパイプラインで油窃盗中に爆発火災、石油生産施設へ延焼

 今回は、202535日(水)、米国テキサス州リーブス郡を通っているウェスタン・ミッドストリーム・パートナーズ社のパイプライン施設が爆発し、火災となり、石油生産施設に延焼した事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国テキサス州(Texas)リーブス郡(Reeves County)を通っているウェスタン・ミッドストリーム・パートナーズ社(Western Midstream Partners LP)のパイプライン施設である。

■ 事故があったのは、リーブス郡オーラ(Orla)近くの国道285号線と郡道436号線付近にあるパイプライン施設である。パイプラインはウェスタン・ミッドストリーム社の石油生産施設敷地内にあった。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 202535日(水)午後1130分頃、パイプラインが爆発し、石油生産施設内で火災が発生した。

■ 発災にともない、消防隊が出動した。

■ リーブス郡保安官代理とともに消防隊が現場に到着し、油が燃えているのを確認した。近くには、真空タンカー(バキューム・トラック)が2台停車していた。

■ パイプラインは運転が停止されたが、遮断された距離は約2.5マイル(4km)あり、残液が燃え尽きるまでに時間を費やす必要があった。

■ 火災は激しく、死傷者が出たかどうかは不明であった。パイプラインの監督は従業員全員が無事であることを確認しており、爆発時に現場には他に誰もいなかったはずだと述べた。しかし、念のため、リーブス郡保安官事務所は石油会社に対し、トラックの在庫台数を確認し、不明者がいないことを確認するよう求めた。

■ 当局は、現場まわりの通行について追って通知があるまで避けるよう注意喚起した。

■ 保安官事務所は爆発の原因を調査している。

■ インスタグラムでは、事故を伝えるニュース映像が投稿されている。主なものはつぎのとおりである。(今事例ではユーチューブに投稿されたものはなかった)

 Instagram.comA couple of thieves are behind the pipeline explosion and tank battery fire in Reeves County, Texas2025/03/10

被 害

■ パイプラインが火災になり、一部焼損した。

■ パイプラインの火災によって近くの石油生産施設に延焼した。

■ 負傷者は出なかった。

■ 現場まわりの道路の通行が制限された。  

< 事故の原因 >

■ 原因は、パイプラインから油を窃盗しようとして引火し、爆発・火災が起きたものである。

< 対 応 >

■ 310日(月)、 リーブス郡保安官事務所の発表によると、パイプラインの爆発・火災は石油窃盗犯ふたりによる犯行だという。

■ 捜査の結果、2台の真空トラック(バキューム・トラック)でパイプラインのメンテナンス用に設計されたステーションから石油製品を盗もうとしていたことが判明した。捜査では、現場から回収された証拠品から、窃盗犯の容疑者が安全性を無視して行ったため、静電気が蓄積して引火し、高圧のパイプラインで火災が起こり、続いて爆発に至ったとみられることが分かった。

■ リーブス保安官事務所は、今回のような窃盗は公共の安全にとって最大の懸念事項であるといい、「この火災が人口密集地域に広がる前に、あるいは天然ガスパイプラインに接触する前に鎮火できたのは、非常に幸運でした。油田地帯のコミュニティーには、こうした危険な事故を防ぐために、疑わしい動きがあれば、通報してほしい旨呼びかけています。今回、事故発生時に被害が大きくなるのを防ぐために協力してくれた人に感謝したいと思います」と語っている。

補 足

■「テキサス州」(Texas)は、米国南部にあってメキシコ湾岸に面し、メキシコと国境を接する人口約3,050万人の州である。

「リーブス郡」(Reeves County)は、テキサス州の西部に位置し、人口約13,000人の郡である。

「オーラ」(Orla)は、リーブス郡の国道285号線沿いにある非法人の町で、人口は約2万人ほどと推定されている。

■「ウェスタン・ミッドストリーム・パートナーズ社(Western Midstream Partners LP) は、 20071月に設立され、原油や天然ガスの収集・圧縮・処理・加工・輸送を行うエネルギー会社である。テキサス州、ニューメキシコ州、コロラド州、ユタ州、ワイオミング州で活動しており、子会社には、Western Midstream Operation GP, LLCWestern Midstream Services, LLCWestern Midstream Services Holdings, LLCWestern Midstream Operation, LPがある。

■「発災場所」は、テキサス州リーブス郡オーラ近くの国道285号線と郡道436号線近くと報じられており、グーグルマップで調べた。しかし、この周辺には石油生産施設が点在しており、発災場所の特定には至らなかった。

 爆発は、「パイプラインのメンテナンス用に設計されたステーション」と報じられている。一般にパイプラインのステーションは、ブロックバルブ・ステーション、ポンプ・ステーション、コンプレッサー・ステーションなどパイプラインの保守と操作に使用されるステーションをいうが、今回のメンテナンス用ステーションの詳細はわからない。

 ■「窃盗の方法」の詳細は報じられていない。石油パイプラインの窃盗事例は本ブログでつぎのような事例を紹介した。

   「メキシコで原油パイプラインからの油窃盗失敗で流出事故」 20149月)

   「メキシコの石油パイプラインで油窃盗中に爆発、死傷者6名」20179月)

 「メキシコの石油パイプラインで違法な油採取中に爆発、死者99名」20191月)

  石油パイプラインの窃盗は、違法な「ホットタッピング」によるものが多い。 「ホットタッピング」は、本来、パイプラインの内容物を抜かずにバルブを切れ込んだり、バイパスラインを設置するために開発された工法で、パイプラインに枝管(バルブ付き)のノズル部を溶接し、ホットタッピング・マシンという特殊な穿孔機を使用してパイプラインに孔を明け、抜出し口を設ける。通常はパイプラインの流れを一時的に止め、内圧を下げてから溶接工事や穿孔工事を行なう。パイプラインからの油窃盗では、内圧がかかったままであるので、極めて危険な工事である。今回は、パイプラインのステーションから石油製品を盗もうとしていたと報じられており、 「ホットタッピング」の方法ではなく、既存設備を使ったものだと思われる。

所 感

■ 今回のパイプライン事故原因は当初わからなかった。このため、停車していた真空タンカー(バキューム・トラック)はパイプライン会社所有の車だという認識で対応している。しかし、捜査の結果、パイプラインから油を窃盗しようとしていたことがわかった。これまでメキシコでパイプラインからの石油窃盗はあったが、米国では聞いたことがない。

■ 前々回に紹介した「米国テキサス州のパイプライン火災の原因は自殺者の車による破壊」20252月)の事例では、テキサス州のパイプラインの安全対策に問題があるという指摘をするメディアが多く、日本では考えられないほど甘い印象だったが、今回はさらに深刻な指摘どおりの事例といえよう。

■ 消火活動についてはほとんど報じられていない。火災の写真をみると、パイプラインの内液は天然ガスと思われ、燃え尽きるまでの不介入戦略をとったものとみられる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

Yourbasin.com, Pipeline explosion in Reeves County sparks massive fire; casualties unknown, March 06, 2025

    Newswest9.com, Active pipeline explosion and tank battery fire in Reeves County, officials say, March 06, 2025

    Newswest9.com, Thieves cause tank battery fire, explosion in Reeves County, officials say, March 10, 2025

    Conchovalleyhomepage.com, Reeves Co: Tank battery explosion caused by petroleum thieves, March 10, 2025

    Firstalert7.com, Pipeline explosion after attempted robbery of petroleum products, March 11, 2025

    Sanangelolive.com, Pipeline Explosion and Fire Erupt in Reeves County, Cause Unknown, March 06, 2025

    Chron.com, Static charge causes explosion during attempted petroleum theft in Reeves County, March 10, 2025

    Ktsm.com, Reeves Co: Tank battery explosion caused by petroleum thieves, March 10, 2025

 

後 記「米国テキサス州のパイプライン火災の原因は自殺者の車による破壊」20252月)や今回の油窃盗事例を見ると、「おい、おい、アメリカさんよ、しっかりしてくれ」と言いたくなりますね。 米国大統領は掘って、掘って、掘りまくれDrill, Baby, Drill)と言っていますが、パイプラインをDrillすると解釈?) したのでしょうか。冗談はさておき、現在の米国はパイプラインの安全対策について真剣に考える必要があります。(日本は偉そうなことが言えるのかという反論が聞こえてきそうですが)

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