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2024年2月10日土曜日

カナダのアルバータ州の原油生産施設でタンク火災と堤内火災

 今回は、2024130日(火)、カナダのアルバータ州ミンバーン郡にある原油生産施設で火災が発生し、4基のタンク設備が被災した事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災施設は、カナダ(Canada)アルバータ州(Alberta)ミンバーン郡(Minburn)にある原油開発会社ライコス・エナジー社(Lycos Energy Inc.)の原油生産施設である。

■ 事故があったのは、 ハイウェイ881号線と619号線沿いにある原油生産施設のタンク設備である。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2024130日(火)午前1140分頃、原油生産施設で火災が発生した。

■ 火災による黒煙は何マイルも離れた遠いところからも確認することができた。

■ ライコス・エナジー社は、アルバータ州エネルギー規制当局(Alberta Energy Regulator)へ火災発生の通報をした。

■ 原油開発会社へ土地を貸している住民は、火曜の朝遅くにコーヒーを飲んでいたとき、黒煙が自宅のある南東に向かって流れていることに気がついたという。住民は、クリスマスの前から原油開発会社が掘削しているのは知っていたが、しばらく様子を見たあと、普通ではないので車で行ってみたと話している。現場では、土地の一部から火が噴き上がっていたという。

■ 近くの農場の住民のひとりは、牛にエサをあげていたとき、緊急車両が行き交うのを目にしたといい、「大量の煙が出ているのを見たんですが、真っ黒でした。時折、大きな炎が上がっているが見えました。びっくりするような出来事でした」と語っている。

■ 発災に伴い消防隊が、約50名の消防士と15台の消防車を伴って出動した。ミンバーン郡消防署だけでなく、近隣のバーミリオンリバー郡消防署、ウェインライト町の消防署などが支援で出動した。

■ 消火活動は防御的戦略をとり、火災になっていないタンクへの冷却放水が行われた。消火用水が不足するので、民間の水輸送会社が手配された。

■ 火災は燃えていないタンクへ延焼し、火災となったのはタンク4基である。

■ 火災によって有害な煙が空気中に噴出し、大気質が悪化したため、アルバータ州ミンバーン郡は、130日(火)午後515分、マンビルの南東約23kmにある原油生産施設の近隣の町に緊急警報を発令した。エドモントンの東175kmにあるバーミリオンやウェインライトなどの地区に大気汚染警報が発令された。

■ 事故に伴う負傷者はいなかった。

 

■ 原油生産施設のタンク設備などが火災で被災した。内液が9時間にわたって焼失した。

■ 負傷者はいなかった。

■ 近隣の人々に大気汚染警報が発令された。

< 事故原因 > 

■ 事故原因はわかっていない。

< 対 応 >

■ 原油生産施設のトラブルに対し制圧する専門家がアルバータ州ブラックフォールズ(Blackfalds)から派遣された。

■ 午後645分頃、消防隊は原油生産施設の火災を制圧した。アルバータ州エネルギー規制当局(Alberta Energy Regulator) の査察官は現場に留まり、状況を監視し、緊急対応や地元当局と協力して公衆の安全を確保しているという。 

■ 午後7時過ぎ、アルバータ州ミンバーン郡は発令していた緊急警報を解除した。 当局は、火災から有害な煙はもう出ていないと述べた。しかし、屋内退避の指示は解除したが、状況を解決するために現場で作業している消防隊などの対応メンバー安全のため、一般の人々は引き続きこの地域を避ける必要があると述べている。

■ 火災は9時間近く続き、午後9時頃、消防隊などによって消された。

■ アルバータ州エネルギー規制当局は、規制上の責任に従って、用地を貸している所有者の土地について修復と浄化への取組みを監督することになっている。

補 足

■「カナダ」(Canada)は、北アメリカの北部に位置し、10の州と3つの準州からなる連邦立憲君主国家で、英連邦加盟国である。人口は約4,052万人で、首都はオンタリオ州のオタワである。

「アルバータ州」 (Alberta)は、カナダ西部に位置し、人口は約475万人である。肥沃な農業地帯が広がるが、第2次大戦後、石油が発見された産油地域でもある。近年はオイルサンド採掘で得られる重質原油の生産が主力になっている。

「ミンバーン郡」(Minburn)は、アルバータ州中央部に位置し、エドモントン市から東に143 kmの距離にあり、人口約3,000人の郡である。

■「ライコス・エナジー社」(Lycos Energy Inc.)は、2006年に設立した原油・天然ガスの探査・開発・生産に携わっているエネルギー会社で、本部は カナダのカルガリーにある。

■「発災タンク」の詳細仕様は報じられていない。グーグルマップでハイウェイ881号線と619号線沿いの原油生産施設を見ても、被災写真にあるような4基のタンクが設置されているところは見当たらない。クリスマス頃に生産井を掘削していたという情報があり、グーグルマップにはまだ掲載されていないのかも知れない。被災写真から大きさを推測すれば、直径約5m×高さ約8mで容量は150KLクラスである。

所 感

■ 事故の状況は原因を含めてよく分からない。被災写真では、炎がはっきりとした爆発的な写真もあれば、黒煙が激しく噴出している写真もある。火災は9時間続いており、爆発と火災を交互に繰り返していたのではないだろうか。被災したタンクの事故後の状況を見ると、タンク側板は長時間炎に曝されたときに生じるような座屈を起こしていない。このことから、タンクには水やケミカルなどが主で油分は少なかったとみられる。

 このような状況から、火災は油井から流出した油の堤内火災が主で、堤内にあったタンクに延焼したものだろう。原油生産施設のトラブルに対して制圧する専門家が派遣されているというので、油井の流出を停める方策に時間がかかったものと思われる。 

■ 消火戦略には積極的戦略・防御的戦略・不介入戦略の3つがあるが、今回の消火活動は放水によるタンクの冷却に集中する防御的戦略が優先されている。消防隊は、タンクの内部流体や油井からの油流出について情報が把握されていたと思われる。制圧には発災から9時間を要しているが、消火用水の不足を解消させるため、民間の水輸送会社を手配するなど冷静な判断が行われている。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

   Cbc.ca, Emergency alert cancelled for area near fire at central Alberta oil lease site,  January 30, 2024

   Edmonton.ctvnews.ca, Oilfield fire that caused toxic smoke alert under investigation,  February 01, 2024

   Globalnews.ca,  Air quality alert cancelled after fire at eastern Alberta oil lease site,  January 31, 2024

   Mylakelandnow.com, Dangerous oil lease fire sparks investigation in County of Minburn,  February 01, 2024


後 記: 今回の事故はメディアも発災場所について混乱していました。グーグルマップで最初に見た報道記事とあとから出てきた報道記事では、まったく違う場所でした。タウンシップ・ロードやレンジ・ロードの情報でしたが、エドモントン市の東側と西側に別れました。被災写真の風景を見ると、広大な土地であることが理解できます。事故現場の場所がはっきりしないことなど日本では考えられないことです。まあ、あの辺りで起きたということが分かればいいんでしょうね。しかし、懲りずに発災タンクの場所を特定しようと、グーグルマップを細かく見ていきましたが、やはり無駄な努力でした。

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