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2019年2月7日木曜日

米国テキサス州で油タンクが爆発して堤内火災

 今回は、2019年1月29日(火)、米国テキサス州リバティ郡のデイセッタにあるサラトガ・オイル社油井施設のタンク設備で起こったタンク爆発・火災事故を紹介します。
(写真bluebonnetnews.comから引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、米国テキサス州(Texas)リバティ郡(Liberty County)のデイセッタ(Daisetta)にあるサラトガ・オイル社(Saratoga Oil Company)の油井施設である。
 サラトガ・オイル社は、家族経営の小規模な油井会社である。当該油井施設は1日当たり1~4バレル(0.15~0.6KL)ほど油を生産していた。

■ 発災があったのは、デイセッタの町の南にある郡道2018号線の近くにある油井施設のタンク設備である。
       テキサス州リバティ郡デイセッタ付近  (矢印が発災場所) (写真はGoogleMapから引用)
                デイセッタ南の発災場所 (写真はGoogleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2019年1月29日(火)午前11時頃、油井施設のタンク設備で爆発が起こった。2基ある油タンクの1基が火災となった。油タンクから空に向かって黒煙が立ち昇った。

■ 発災に伴い、リバティ郡消防署の消防隊が出動した。大きな火災になったため、近くのデイセッタ消防署、ハーディン消防署、リバティ消防署、バトソン消防署の応援が要請された。

■ 火災は2基目の油タンクへ延焼した。その後、火災は防油堤全域に広がった。この火災状況がドローンによる空撮映像としてインターネットのユーチューブで流された。(YouTube;「Drone video captures fire after oil tank explosion in Liberty County」

■ ハイウェイ770号線近くの郡道2018号線沿いで現場から1マイル(1.6km)内にいる住人には、消火活動をしている間、避難するよう求められた。事故に伴うケガ人は無かった。

■ 火災は午前11時40頃には消された。火災がおさまった後、タンクの形はほとんど無かった。

■ 消火されたので、住民の避難は解除された。

■ 油タンクを保有している所有者によると、300バレル(48KL)の油が焼失したという。 
(写真はClick2houston.comから引用)
(写真はIsssource.comから引用)
(写真はBluebonnetnews.comから引用)
(写真はBluebonnetnews.comから引用)
被 害
■ 油タンク2基が爆発・火災によって損壊した。このほか3基のタンクが焼損した。油が約48KL焼失した。  

■ 負傷者はいなかった。近くの住人には、消火活動をしている間、避難するよう求められた。

< 事故の原因 >
■ 原因は調査中である。

■ 油タンクを保有している所有者によると、 静電気による爆発の可能性が高いという。 

< 対 応 >
■ 事故の原因についてテキサス鉄道委員会(Texas Railroad Commission)が調査を始めた。

■ 施設の保有者は、「私たちは大量の油を焼失しました。ここから立ち直るまで1年はかかるでしょう。ガレキを片付けてきれいにするまで、油井は全部止めることになるでしょう。それから新しい貯蔵タンクを搬入することになります。試練の時間を過ごしそうです」と語った。
(写真はAbc13.comから引用)
(写真はAbc13.comから引用)
(写真はAbc13.comから引用)
(写真はAbc13.comから引用)
補 足
■ 「テキサス州」(Texas)は、米国南部にあり、人口約2,870万人の州である。
 「リバティ郡」(Liberty County)は、テキサス州東部に位置し、人口約75,000人の郡である。リバティ郡の経済は主に農業と石油である。
 「デイセッタ」(Daisetta)は、リバティ郡の東部に位置し、人口約970人の町である。
           テキサス州リバティ郡の位置(赤枠)  (写真はGoogleMapから引用)
■ 爆発・火災を起こしたタンクの大きさは分かっていない。グーグルマップで調べると、発災場所のタンク設備には5基の固定屋根式タンクがある。うち3基は火災後、タンク形状が残っていないので、鋼製でなく、塩水用のグラスファイバー製ではないかと思われる。油タンク2基のうち1基は完全に座屈・損壊している。1基はタンク下部だけが残っている。いずれのタンクも直径は約5mである。グーグルマップでは、影の長さが違うので、高さを5~7mとすると、容量は98~130KLとなるので、100KL級のタンクとみられる。
 一方、発災写真を見ると、噴き飛んだ屋根を含むタンク上部が防油堤の外にころがっている。発災時の強烈な爆発をうかがわせるものである。この噴き飛んだタンク上部は下側が火を被った跡があり、堤内に残った下部タンクの上部ではないだろうか。座屈・損壊しているタンクが発災して内部液が堤内に漏れ出し、その火にあぶられて、タンク上部が噴き飛んだのではないだろうか。
           発災したタンク設備  (写真はGoogleMapから引用)
所 感
■ この事故は油井用タンクの弱点を示す事例である。揮発性の高い原油を固定屋根式タンクに保有するので、爆発混合気によって爆発する可能性は高い。過去の事例でも、この種のタンクは落雷による火災事故が多い。今回の場合、タンク設備の保有者は静電気による爆発の可能性が高いと語っているが、タンク内外での火気工事以外の静電気などによる引火源で火災が生じることがある事例といえる。

■ ドローンによる発災映像を見ると、完全に堤内火災の様相を呈している。塩水と油がタンク外に出て堤内に一杯になり、浮いている油が燃えているという状況である。土を盛り上げただけの防油堤であるが、外に溢れ出すことは防いでいる。消火活動は行われていないが、消火泡を投入することによって防油堤から油が溢流するのを避けるためであろう。鎮火後の被災写真を見ると、消火泡が投入された痕跡があるが、これは火勢が衰えたあと、堤内から溢れるおそれが無くなってからのダメ押しの処置だと思われる。

備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  Chron.com, Drone Video Captures Massive Oil Tank Explosion in Liberty County, January 30, 2019 
   ・Abc13.com , Fiery Oil Tank Explosion Caught on Drone Camera in Liberty County, January 29, 2019
    Click2houston.com, Shelter-in-place Lifted after Oil Tank Explosion, Fire in Liberty County, January 29, 2019
    Bicmagazine.com, Oil Tank Explosion in Liberty County, Texas, January 29, 2019
    Bluebonnetnews.com, Oil Tank Explosion in Daisetta, January 29, 2019
   ・Easttexasmatters.com, Explosion Reduces Oil Tanks to Ash and Rubble, January 29, 2019
    Hazmatnation.com, Shelter in Place Lifted after Oil Tank Explosion, January 29, 2019
   ・Isssource.com, Blast, Fire Flattens TX Oil Tanks, January 31, 2019
    Kshnfm.com, Firefighters Battle Oil Tank Blaze near Daisetta, January 31, 2019


 後 記: ブログをまとめていて感じることは、事故情報が少ない時期と多い時期があることです。今は多いですね。昨年暮れ当たりは少なかったのですが、1月に入ってから事故が多くなっています。世界的にみているので、偶然ではありますが、不思議に思います。
 
 ところで、本ブログとしては異質な「米国アリゾナ州の山火事で消防士19名死亡」(2013年7月)を投稿していますが、このヤーネルヒル事故をもとにして制作され、昨年、劇場公開された映画「オンリー・ザ・ブレイブ」(勇者のみ)がDVDとなっているのを知りました。早速、レンタルDVDを借りてきて見ました。森林火事の専門消防士(ホットショット)のことは知っていましたが、日常の生活や訓練のことは初めて聞く話で、興味深く見ることができました。(「面白かった」と書こうとしましたが、隊員20名中、19名が亡くなるという痛ましい物語なので、面白いの表現はまずいですね)



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