目 次
1.石油貯蔵タンクにおける落雷のリスク 4.タンク落雷時のリスク軽減策
2.落雷に関するリスク解析の方法 5.アブダビ石油精製会社(TAKREER)における実例
3.タンク落雷時の現象 6.まとめ
< 1.石油貯蔵タンクにおける落雷のリスク >
■ 世界的規模でみれば、タンク火災は年間15~20件発生している。このうち、落雷によるものが三分の一を占め、原因の分かっている中で最も多い。
タンク火災の原因
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■ NASA(アメリカ航空宇宙局)では、世界の雷の発生頻度をまとめた“雷マップ”
を公表している。つぎの図がその例である。
NASAによる世界の雷マップ
(年間の1平方キロメートル当たりの雷光数)
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■ 落雷による損害やリスクに関する最近の状況は、つぎのとおりである。
● 米国落雷安全研究所(National
Lightning Safety Institute)の調査によれば、落雷に関連する損害は、2008年の一年間に50億ドル(6,000億円)を超えるという。
● リバプール・ジョン・ムアーズ大学(Liverpool
John Moores University)のアサートン氏(Atherton)らの2006年の調査によると、貯蔵施設の操業において根本原因が明確になっている事故のうち61%が落雷によるという。
● ロイズ保険研究所(Loyds
Insurance Institute)の調査によれば、2009年から2010年にかけて落雷に関連した損害は15%増加したという。
■ 落雷による損害やリスクに関して将来はつぎのようにいわれている。
● 英国保険協会(Association
of British Insurers)が2007年に発表したところによると、2040~2060年代、英国における天候による自然災害は、現在の2倍になる可能性があるという。
● NASAの研究者プライス氏(Price)らが1994年に発表したところによると、世界の表面温度が1℃変化すると、世界の雷活動は5~6%増加することが予想されるという。
● ブラジルの国立宇宙研究所(National
Institute of Space Research)が2013年に発表したところによると、温度が1℃増加すると、落雷の頻度は10~20%増加するだろうという。
■ 過去における落雷によるタンク火災としては、つぎのような事例がある。
● 2012年、中国鶴山市、チャイナ・ペトロケミカルのタンク火災
● 2007年、米国オクラホマ州、ワインウッド製油所のタンク火災
● 2007年、南アフリカ、エンゲン製油所のタンク火災
● 2007年、米国ニュージャージー州、サノコ社イーグル・ポイント製油所のタンク火災
● 2003年、豪州、ブリスベン製油所のタンク火災
● 2002年、アフリカ・ナイジェリア、エッシュラヴォスタンク基地の火災
● 2002年、ポーランド・マウォポルスカ県、トシェビニャ製油所のタンク火災
● 2001年、米国ルイジアナ州、オリオン製油所のタンク火災
● 1996年、カナダオンタリオ州、サノコ製油所のタンク火災
● 1995年、インドネシア・チラチャプ、プルタミナ製油所のタンク火災
● 1987年、米国オハイオ州、ニューポートのタンク火災
● 1984年、ドイツ・ヘルネ市、ケミッシェ・ヴェルケ・ハルスのタンク火災
● 1971年、ポーランド、チェホビツェ・ジェジツェ製油所のタンク火災
米国オクラホマ州、ワインウッド製油所のタンク火災
内部浮き屋根式タンク 2007年6月、落雷により火災
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ワインウッド製油所のタンク火災
3,200KLのガソリンと8,000KLのディーゼル燃料を焼失し、 36時間続いた火災
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オクラハマ州グレンプールのタンク火災
外部浮き屋根式タンク、容量20,000KL、 2006年6月、落雷により火災
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■ 落雷が原因のタンク火災における損害額の例は、つぎのとおりである。
● 2008年、米国カンザス州、マゼラン・パイプライン社のタンク火災: 約1,000万ドル(12億円)
● 2007年、米国オクラホマ州、ワインウッド製油所のタンク火災: 操業損失約1,500万ドル(18億円)
(設備被害額は含まない)
● 1995年、インドネシア・チラチャプ、プルタミナ製油所のタンク火災: 操業損失約7,300万ドル
(87億円)(設備被害額は不明)
(87億円)(設備被害額は不明)
■ タンク火災について考えておかなければならない事項はつぎのとおりである。
● タンクのサイズが大きくなるに従い、火災の状況はより厳しく、より危険となる。
● タンク火災が一旦起これば、極めて大きな損害が出る。すなわち、物的損害、製品の損失、操業の機会損失、環境汚染、世論からの非難などである。
● タンク火災を制圧するには、特別に必要な消火資機材を確保しなければならない。
< 2.落雷に関するリスク解析の方法 >
■ リスク解析の方法のひとつに、IEC
62305 「Protection Against Lightning Part 2: Risk Management」(雷保護
パート2:リスク・マネジメント)がある。この規格は、極めて詳細に規定されているが、非常に複雑でもある。例えば、構造物の形状、場所、内容、使用材質など多くのデータを入力する必要がある。リスク対コストを定量化することができる。
■ 他のリスク解析の方法としては、NFPA
780 「Standard for Installation of Lightning Protection Systems Annex
L: Risk Assessment」(雷保護システムの設置に関する規格 添付書L:リスク・アセスメント)がある。この規格は詳細に記載されているが、やや複雑である。この方法は多くのデータを入力する必要がある。
落雷リスクについて許容リスクと比較することができる。
■ 落雷リスクの回避方法を定めた推奨基準としては、API
RP 545 「Recommended Practice for Lightning Protection of
Aboveground Storage Tanks for Flammable or Combustible Liquids」(可燃性・燃焼性液体の地上式貯蔵タンクにおける雷保護の推奨方法)がある。この基準は外部浮き屋根式タンクのすべてに推奨される。ただし、将来的には、落雷の極めて少ない地域のタンクを対象外にしたり、高引火点(揮発性が小さい)の内容物のタンクを対象外にする計画があるという。
< 3.タンク落雷時の現象 >
■ タンクへ落雷して火災に至るようなときの雷の特性はつぎのとおりである。
〇 ピーク電流、負極性第一雷撃(50%) 30kA
〇 ピーク電流、負極性第一雷撃(95%) 80kA
〇 フラッシュ時間、負極性フラッシュ(50%) 13
ミリ秒
〇 フラッシュ時間、負極性フラッシュ(95%) 1.1
秒
〇 フラッシュ当たりの電撃数の範囲 1~30
〇 フラッシュ当たりの平均電撃数 4
〇 ピーク温度 >28,000℃
■ タンクへ直撃雷があったときの電流の流れの例を図に示す。また、タンク近くに落雷した場合に電流の流れの例を図に示す。屋根と側板には境界があるが、側板に落雷した場合でも境界を越えて雷電流は流れるし、屋根に落雷したときにも境界を越えて雷電流は流れる。また、タンク近くに落雷した場合にも、屋根と側板の境界を越えて雷電流は流れる。この雷電流がすべての状況下で屋根/側板の境界を越えて流れるというのは、API(米国石油協会)のオフィシャルの考えである。
直撃雷の電流の流れ
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タンク近くに落雷した場合の電流の流れ
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■ 屋根の位置による相対的なリスクをみると、屋根が高い位置のときは雷電流が集中するため、タンクは最も危険に曝されているといえる。また、屋根が低い位置のときは雷電流が分散するので、タンクのリスクは最も低いといえる。
屋根の位置が高い場合、雷電流が集中しやすい
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屋根の位置が低い場合、雷電流は分散しやすい
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< 4.タンク落雷時のリスク軽減策 >
■ タンク落雷時のリスクを軽減する方法については、API(米国石油協会)から推奨基準が出されている。
API RP 545は石油貯蔵タンクの雷保護を定めたもので、検討プロジェクトは1999年に始まり、2009年に推奨基準(Recommendation Practice)として発行された。他の規格であるNFPA
780 「Standard for the Installation of Lightning Protection
Systems」(雷保護システムの設置に関する規格)は取り入れられている。 将来、API RP 545は規格(Standard)にされる予定である。
■ 浮き屋根式タンクにおいて、屋根と側板の間の雷電流を流すための接続方法はつぎの2つがある。
● シャンツ(Shunt)方式: 屋根に取付け、側板と接触させるショート・コンダクター
● バイパス・コンダクター(Bypass
conductor)方式: 屋根と側板の間を、直接、ケーブルで接続
米国の浮き屋根式タンクでは、シャンツを設けているものが多い。しかし、このシャンツには、屋根から上の空中部分においてアーク発生の問題があることが分かった。APIによる実証テストの結果、シャンツの清浄度、新旧度、保全度にかかわらず、すべての条件でアークが飛ぶことが証明されている。
シャンツおよびバイパス・コンダクターの例
(左:シャンツ 右:バイパス・コンダクター)
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シャンツ方式による接続方法の問題 |
■ API RP 545では、3つの主要な推奨事項を提起している。
① 屋根周囲の3m毎に浸漬式のシャンツを設ける。
〇 既設タンクでは、液面下にシャンツを再配置する。
〇 シャンツは液面から30cm以上深い位置にする。
② タンクのシール部およびゲージ・ポール部は電気絶縁を施し、雷電流がシャンツやバイパス・コンダクターを通じて流れやすくする。
〇 絶縁レベルは1kV以上とする。
③ タンク円周まわりには、少なくとも30m毎にバイパス・コンダクターを設ける。
〇 バイパス・コンダクターはできる限り短くすべきである。
浸漬式シャンツ
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メカニカルシールにおける電気絶縁の例
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バイパス・コンダクターの間隔 |
■ 新設タンクでは、標準設計のひとつとして浸漬式のシャンツを位置づけている。既設タンクでは、タンク開放検査時に改造する。また、新設タンクでは、標準設計としてシール部およびゲージ・ポール部の電気絶縁を行うものとし、既設タンクでは、タンク開放検査時に改造する。
■ バイパス・コンダクターは、比較的安価で取付けも簡単なので、新設および既設にかかわらず設けることができる。従来のバイパス・コンダクターは通常のケーブルやワイヤーを使用したものである。一方、ばね式リールを用いた格納式コンダクター(Retractable
Bypass Conductors)は、導線の長さを最短にすることができるバイパス・コンダクターの型式である。なお、バイパス・コンダクターは、タンク円周の長さが30m未満でも、少なくとも2個設ける。
バイパス・コンダクター
(左:従来型 右:格納式)
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< 5.アブダビ石油精製会社(TAKREER)における実例
>
■ アブダビ石油精製会社(Abu
Dhabi Oil Refining Company: TAKREER)は、UEA(アラブ首長国連邦)のアブダビ国営石油会社(Abu
Dhabi National Oil Company: ADNOC)の子会社で、石油精製部門を担うために1999年に独立した。国内に、ルワイス製油所(1982年操業、処理能力
12万バレル/日)とアブダビ製油所 (1976年操業、処理能力
8.5万バレル/日)の2つの製油所を保有している。ルワイス製油所には、陸上ガス田からのコンデンセート・スプリッター装置14万バレル/日×2系列を有している。
■ ルワイス製油所は
91基の貯蔵タンクを保有している。さらに、製油所では、精製設備の増強計画がある。120基のタンクが増える予定だという。アブダビ石油精製は、環境・健康・安全を重視する方針を出している。一方、大小にかかわらず火災事故が起こって、一部の装置でも停止することは許容できない状況だという。また、この地域では雷の活動が活発になっているという。
■ アブダビ石油精製は安全に関する公約を掲げ、安全第一の認識共有化を進めるとともに、防火設備と安全システムへの投資を増やし、火災予防対策を積極的に推進するという。特に、雷については火災の主要な原因のひとつとして認識されている。
格納式バイパス・コンダクター(LEC社のRGA型)
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■ 検討に際して、アブダビ石油精製は、雷保護の種類、主要な国内会社や国際的な会社との相互交流、雷保護関連のLEC社(Lightning
Eliminators & Consultants, Inc.)やコンシリアム社(Consilium,
Inc.)との打ち合わせ、API RP 545の推奨基準などについて調査を行った。その結果、すべての浮き屋根式タンクに格納式バイパス・コンダクター(LEC社のRGA型)を設置すると決めた。
■ 雷保護の実施は、第一段階として84基の浮き屋根式タンクが対象とされた。工事はタンクの操業を停止することなく、運転中に行うこととされた。機器の取付けを操業中のタンクで行うため、アブダビ石油精製の立会のもとで厳しい安全基準に従うこととされた。
LEC社は運転中の取付け方法を提案し、文書化し、内容の調整が行われた。
■ 運転中の浮き屋根式タンクで作業が行われるので、作業開始前に、すべての基準と現場の安全対策を遵守することが確認された。例えば、個人保護装置、作業許可証、安全作業基準などである。
■ RGA型格納式バイパス・コンダクターを設置するためには、取付け用の孔を必要とする。
● タンク側板上部のリム・アングル部にRGAの取付け孔を2個設ける。
● タンク屋根のフォーム・ダム部にRGAケーブル用の取付け孔を2個設ける。
この際、通常の工具類を使用すると、可燃性ベーパーに引火するような火花を発生させる恐れがある。安全対策として、火花発生の可能性を無くすため、手動式の孔開け用パンチ・ツールを使用する。
■ 具体的な孔の位置はつぎのとおりである。(図を参照)
● A部:リム・アングル部の壁頂部に2個の孔
● B部:フォーム・ダムの屋根部に2個の孔
手動式の孔開け用パンチ・ツールの例
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■ 手動式の孔開け用パンチ・ツール、例えば“ハンド・パンチ”を使用すれば、火花の発生を防ぐことができる。
● 格納式バイパス・コンダクターのRGAを取付けるために必要な孔径は7/16インチ(11mm)である。
● 7/16インチ用のパンチとダイスをセットした“ハンド・パンチ”では、厚さ1/2インチ(12mm)までの軟鋼板に孔を開けることができる。
● “ハンド・パンチ”は取扱いが簡単で、ひとつの孔を開けるのに5分もかからない。
●
“ハンド・パンチ”によってくり抜かれた金属片は触ると温かいが、素手で取扱える温度である。
■ RGAを取付ける前に、電気経路となる表面についてつぎのような処置を行わなければならない。
● タンクとRGAの接合面は塗料とゴミをきれいに取り除くこと。RGAのブラケット(腕木)とケーブルはタンクの側板と屋根の金属素面に接触させておかなければならない。
● 金属素面は腐食抑制剤を塗布する。
この際、金属面をきれいにするため電動工具類を使用すると、火花が発生してしまう。このため、安全対策として使用するのは手工具のみとする。また、腐食抑制剤は標準的なエアロゾル式塗布器でよいが、薬剤メーカーの取扱説明書に従って実施する。
RGAの部品の例
(写真はLightningprotection.comから引用)
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■ RGAブラケットの固定時の留意事項はつぎのとおりである。
● 側板のリム・アングルに設けた孔にRGAブラケットを取付ける際、RGAの水平度を調整する。
● 付属している金具とともにブラケットを固定する。
● 金具およびブラケット/タンクの接合面は腐食抑制剤を塗布する。
この際、ブラケットや手工具を落としてしまう恐れがあるので、取扱いに注意するほか、必要ならば工具落下防止ロープを使用する。
■ RGAユニットを取付ける際の留意事項はつぎのとおりである。
● RGAユニットを持ち上げ、ブラケットに収める。
● 付属している金具を用いてRGAのシャフトのロックバーを固定する。
この際、RGAユニットや手工具を落としてしまう恐れがあるので、取扱いに注意するほか、必要ならば工具落下防止ロープを使用する。
■ RGAユニットの内部ばねモータのプレテンションの調整は、つぎのように行う。
● ケーブルの延びる方向にRGAを手で回す。ケーブルを引っ張って延ばさないこと。プリテンションに必要な回す数を決めるには、取扱い説明書を参照すること。
● ケーブルをタンク屋根まで延ばす。
この際、ばねモータを勝手な方法で巻き戻したりすると、BGAユニットの故障原因になる可能性がある。ケーブルをタンク屋根に固定するまで、注意しながらRGAの回転を手で調整していく。RGAユニットはブラケットから外さないこと。
■ RGAユニットの設置工事は2か月で完了した。取付け後に行う確認テストはつぎのとおりである。
● 機械的な回転状況と動き
● 屋根の位置が最上端と最下端での点検
● タンク壁とRGAブラケット間の抵抗値の測定
● フォーム・ダムとアース線までの抵抗値の測定
● 結果の妥当性検証
格納式バイパス・コンダクターRGAの設置俯瞰図の例
(図はLightningprotection.comから引用)
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■ RGA設置後、アブダビ石油精製は、既設設備および新設設備においてRGAの導入を標準化した。例えば、
RGAが導入されるのはつぎのとおりである。
● ルワイス製油所における未設置分の既設タンク
● ルワイス製油所増強計画における地上式浮き屋根タンク38基
● インター・リファイナリーズ・パイプライン・プロジェクト(Inter
Refineries Pipelines Project: IRP Project)のムサファ・ターミナル(Mussaffah
Terminal)の地上式浮き屋根タンク(設置済)
● IRPプロジェクトにおけるその他のターミナル(設置中)
< 6.まとめ >
① タンク火災は稀でなく、タンク火災の原因の三分の一が落雷によるものである。
② 従来の屋根-側板シャンツ+バイパス・コンダクター方式は、高いインピーダンス接続になっている。
③ API RP 545はバイパス・コンダクター方式を推奨している。
④ 格納式バイパス・コンダクターは、屋根と側板の間を低いインピーダンス結合の機能を提供する。
⑤ 格納式バイパス・コンダクターは、運転中のタンクにおいて安全に設置することができる。
補 足
■ 貯蔵タンクの避雷設備や雷保護などについて当ブログで紹介してきたが、主なものはつぎのとおりである。
● 2011年 5月、「可燃性液体の地上式貯蔵タンクの避雷設備」
● 2012年 6月、「NASAによる世界の雷マップ」
● 2014年 1月、「中国における石油貯蔵タンクの避雷設備」
● 2014年10月、「米国テキサス州ベイタウンで落雷によるタンク爆発・火災」
貯蔵タンクの雷保護には言及していないが、最近の日本における落雷傾向や雷対策についてわかりやすく解説した資料としては「雷保護対策の技術動向について」(
エンジニアリング協会 第113回 ビジネス講演会資料、2015年5月、㈱サンコーシャ)がある。
■ 「UAE」は通称で、正式には「アラブ首長国連邦」
(United Arab Emirates)である。アラビア半島のペルシア湾に面した地域に位置する7つの首長国からなる連邦国家である。人口は約920万人で、首都はアブダビである。「NASAによる世界の雷マップ」によると、UAEの雷発生は日本と同程度とみられる。
なお、UAEに関して当ブログで紹介した情報につぎのようなものがあり、貯蔵タンクの知識や技術について関心が高いと思われる。
● 2014年4月、「浮き屋根式貯蔵タンクのボイルオーバー」
UAEの位置(マーク部) (図はグーグルマップから引用)
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NASAの雷マップ(部分) (図はNASAの雷マップから引用)
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所 感
■ 今回の資料は、貯蔵タンクの雷保護(避雷設備)についてわかりやすくまとめられている。落雷によるタンク火災の事故例から落雷のリスクまで幅広い視点で述べたあと、実際の雷保護の方法について実例をもとに解説している。特に、格納式バイパス・コンダクター(格納式接地装置)の取付け方法を細かく紹介しているので、これまで写真など一部の情報しか知らなかった人にも、よく理解できるようになっている。
■ これまで日本では、地上式貯蔵タンクの落雷による火災事故がなく、消防法でも貯蔵タンクの雷保護に関する規定はほとんど無いと言ってよい。しかし、近年、日本でも雷活動が活発になっており、落雷の頻度も増えている。日本では、タンクの全面火災は起こらないと言っていた安全神話が崩れたように、落雷によるタンク火災は起こらないと断言することはできない。落雷によるタンク火災が起これば、この資料は参考にされようが、問題が起こる前に危険予知として読んでもらいたい資料である。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Easyfairs.com
, Lightning Risk and
Storage Tank Protection, STOCEXPO, March 20, 2013
Joseph
A. Lanzoni ,
V.P. of Operations, Lightning
Eliminators & Cons.
Manoj
K. Nambier,
General Manager, Consilium Middle East
つぎのインターネット情報は参考にした。
・Lightningprotection.com,
RETRACTABLE GROUNDING ASSEMBLY (RGA™) RISK MANAGEMENT FOR FLOATING ROOF STORAGE
TANKS, 2013, Lightning Eliminators & Consultants, Inc.
後 記: 今回の資料は、貯蔵タンクターミナルに関する見本市のStocExpoで行われた講演会のため、パワーポイントによって作成されたもので、原文は要点の言葉を列記したものです。これを敢えて文章化しました。写真や絵が多いので、説明文の方がよいと思ったからです。
講演者は格納式バイパス・コンダクターを製造しているLEC社と雷保護コンサルティング会社のコンシリアム社の方ですが、単に雷保護の製品を紹介するのではなく、広い取り上げ方に感心しました。格納式バイパス・コンダクターを多く販売する意図から、運転中の設置が容易だということを細かく説明されています。意図がわかっていても、従来の講演会や文献にない内容なので、逆に新鮮に感じました。
この格納式バイパス・コンダクターを全面的に設置しようとしているのが、UAE(アラブ首長国連邦)のアブダビ国営石油会社(ADNOC)です。
ADNOCは今やスーパーメジャーと言われており、20世紀における従来のスーパーメジャーから代替わりしつつあるという気がしますね。
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