このブログを検索

2026年11月7日土曜日

ブラジルのサンパウロ州で落雷によってエタノール貯蔵タンクが火災

 今回は、2026年10月25日(日)、ブラジルのサンパウロ州ピタンゲイラスにあるバイオマス企業のバイナルクール社が運営する砂糖・エタノール会社の工場内にあるエタノール貯蔵タンクが落雷によるとみられる火災を起こした事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、ブラジル(Brazil)のサンパウロ州(São Paulo)ピタンゲイラス(Pitangueis)にあるバイオマス企業のバイナルクール社(Viralcool)が運営する砂糖・エタノール会社の工場である。

■ 事故があったのは、サンタ・セシリア農場内にあるアンドラーデ工場内のエタノール貯蔵タンクである。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2026年10月25日(日)午前9時頃、アンドラーデ工場内にあるエタノール貯蔵タンクで大規模な火災が発生した。

■ タンク屋根が噴き飛び、タンクから高く燃え上がる炎と黒煙が立ち昇った。

■ 発災の通報を受け、消防隊が出動した。

■ 従業員によると、タンクに雷光が見え、その直後に火災が発生したという。ピタンゲイラス周辺には、日曜日の早朝から雨が降り続いており、この地域を襲った激しい嵐の際に、雷雲が通過していた。

■ 消防隊は、現場に到着して消火活動にあたっている。消防署と民間防衛隊が動員され、地域の工場から派遣された給水車の支援を受けて活動している。消火活動には、消防車3台が出動したが、さらに4台の消防車が消火活動に参画している。

■ この消防活動では、さまざまな緊急対応機関の専門部門が集結し、消火活動中の給水を強化するために給水車による支援も行われる。近隣の製糖工場が冷却作業を支援するために給水車を派遣した。

■ 同社によると、火災の安全な消火に全力を注いだ。同時に、チームは施設内に残る燃料タンクの冷却作業を継続した。

■ 日曜日の午後になっても、緊急対応は継続中だった。

■ タンク火災は落雷によるものとみられる。

■ 事故にともなう負傷者はいなかった。

■ フェースブックなどでは、火災のニュースを伝える動画が投稿されている。

●Facebook、「 Um incêndio atingiu um tanque industrial de uma usina」(2026/10/25)

●Globoplay、「Incêndio atinge tanque de etanol em usina de Pitangueiras, SP」(2026/10/25)


被 害

■ エタノール貯蔵タンクが焼損した。

■ 死傷者は出ていない。 

< 事故の原因 >

■ 落雷によるものとみられる。 

< 対 応 >

■  10月26日(月)午前4時頃、発災から約19時間かかって火災は制圧された。

■ バイナルクール社は​​、エタノール貯蔵タンクの火災を制圧したと発表した。バイナルクール社は、声明の中で消防隊員、近隣の工場、従業員、関係当局の支援に感謝の意を表し、同社の最優先事項は人々の安全確保と工場の設備保全であると述べた。

■ 火災は制圧されたが、消火隊は火災の完全消火(鎮火)と他のタンクの冷却作業を続けた。

補 足

■「ブラジル」(Brazil)は、正式にはブラジル連邦共和国で、南アメリカに位置し、人口約2億1,200万人の連邦共和制国家である。首都はブラジリアである。

「サンパウロ州」(São Paulo)は、ブラジル南東部に位置し、人口約4,440万人の州で、州庁所在地はサンパウロ市である。

「ピタンゲイラス」(Pitangueis)は、サンパウロ州の内陸側に位置し、人口は約4万人の市である。

■「バイナルクール」(Viralcool) は、​​バイオマス企業で、サトウキビからエタノール・砂糖・ エネルギー・酵母を製造し、ブラジル国内外の燃料販売業者、食品業界、化学会社に製品を供給している。ブラジルのピタンゲイラスのほか、サンパウロ州西部のカスティーリョにも拠点を置いている。

■「エタノール」 (エチルアルコール; C2H6O)は、引火性の高い液体で引火点が約13℃で揮発性が高く、室温でも可燃性ベーパーを容易に放出し始め、このベーパーが電気火花、溶接火花、裸火などの発火源に接触すると、激しい爆発を引き起こす可能性がある。密度は0.78g/㎤、燃焼範囲(爆発限界)は3.3~19.0vol%である。

 エタノールには消火を困難にする特殊な特性があり、エタノールは水に溶ける性質がある。すなわち、水ではエタノール火災を消火できないだけでなく、場合によっては液体と混ざることで可燃性ベーパーの拡散を助長する。エタノールの消火には水溶性引火性液体に接しても破泡しない頑丈な泡を形成する耐アルコール泡が必要で、エタノール火災の消火には、AR-AFFF(耐アルコール性)と呼ぶ特殊な消火泡を用いる。この泡は燃焼液の表面に膜を形成し、酸素を遮断し、ベーパーの発生を抑える。

■「発災タンク」は、「エタノール貯蔵タンク」と報じられているだけで、大きさなどの仕様は分からない。グーグルマップで調べると、発災タンクは、コーンルーフ型固定屋根式タンクで、直径約32mである。高さを10m~15mとすれば、容量は約8,000KL~12,000KLとなる。被災写真(標題)を見ると、タンク屋根が近くのタンクの側板部に当たっているようなので、アルコール特有のかなり激しい爆発だったと思われる。


所 感 

■  ブラジルでは、2026年2月にもエタノールタンクによる事故があったばかりである。(「ブラジルでエタノールタンクの保全工事中に爆発、死傷者3名」 を参照)

 今回の事故原因は落雷によるタンク火災とみられる。 ブラジルでは、バイオマス事業としてエタノールを生産しているところが多く、火気管理を十分安全に施さないと、タンク火災のリスクは高い。しかし、日本でも2026年4月に「広島県三次市で工事中にエタノールタンク2基が爆発・火災、負傷者5名」(2026年5月)が起こっており、 “他山の石”ではない。

■ 消防活動について事業者は“火災の安全な消火に全力を注いだ。同時に、チームは施設内に残る燃料タンクの冷却作業を継続した“とあり、積極的戦略の消火活動をとった記事になっている。しかし、被災写真を見ると、冷却放水は行っているが、泡放射の泡消火活動をとったようにみえない。事業者であるバイナルクール社は、エタノールの消火方法は熟知しているはずである。エタノール火災の消火には、AR-AFFF(耐アルコール性)の特別な消火泡を用いなければならない。おそらく、発災直後にはAR-AFFF(耐アルコール性)を用いた消火活動を試みたが、タンク屋根が噴き飛び全面火災の様相を呈したので、消防資機材が不足して防御的戦略に切り替え、燃え尽きるのを待ったと思われる。

■ 今回のタンク火災は、エタノール用直径約32mの大型タンクの全面火災に関する課題提起の事例である。日本の基準でいえば、直径34m以上の浮き屋根式タンクは泡放射能力10,000L/minの大容量泡放射砲システムが必要となる。今回のタンクは直径34m未満であるが、ほぼ同じ規模である。しかも、日本で対象にしているナフサやガソリンなどの油種と異なり、エタノール(アルコール)の全面火災時にAR-AFFF(耐アルコール性)の泡が有効に機能するかは分かっていない。大容量泡放射砲システムの要否を含めて課題と対策を検討する必要がある。

備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     ・Novacana.com, Incêndio atinge tanque de etanol em usina em Pitangueiras (SP); suspeita é que raio tenha provocado chamas,  October  26, 2026

     ・G1.globo.com, Incêndio atinge tanque de etanol em usina em Pitangueiras, SP; suspeita é que raio tenha provocado chamas,  October  25, 2026

     ・Spdiario.com, Incêndio atinge tanque de usina em Pitangueiras e mobiliza bombeiros,  October  25, 2026

     ・Noticiasaominuto.com.br, Incêndio atinge tanque de etanol em usina no interior de SP,  October  25, 2026

     ・Meon.com.br, Tanque de etanol pega fogo após ser atingido por raio em usina de Pitangueira,  October  25, 2026

     ・Novacana.com, Incêndio atinge tanque de etanol em usina em Pitangueiras (SP); suspeita é que raio tenha provocado chamas,  October  25, 2026

     ・Petroleoegus.com.br, Brigadistas e bombeiros passaram o domingo (25) resfriando os tanques da Viralcool em Pitangueiras (SP) depois que um raio incendiou um reservatório de etanol por volta das 9h, com 7 viaturas e caminhões-pipa de usinas vizinhas,  October  25, 2026

     ・Estruturalonline.com, Incêndio de grandes proporções atinge tanque de etanol em usina no interior de São Paulo,  October  25, 2026

後 記: 2026年10月に「ブラジルのサンパウロ州の化学工場でタンク火災、住民約150名が避難」をこのブログに紹介したばかりで、再びブラジルのサンパウロ州のタンク火災だったので、こんがらがりそうでした。最近はAIによる加工した映像が出ているので、被災写真の真偽に気をつけました。今回は、特にInstagramやFacebookのほかにTikTokを使った映像が多数ありました。一次情報としては役に立ちますが、メディア情報ではないので、疑心暗鬼に見ていました。サンパウロ州でも内陸側の4万人の田舎町(失礼)だったので、意図的な嘘は無かったように感じています。