今回は、2025年7月23日(水)、米国インディアナ州ラファイエットにあるスウィフト・フューエルズ社でトルエン用タンクが爆発・火災を起こした事例を紹介します。
< 発災施設の概要 >
■ 発災があったのは、米国インディアナ州(Indiana)ティッペカヌー郡(Tippecanoe County)ラファイエット(Lafayette)にあるスウィフト・フューエルズ社(Swift Fuels)の施設である。
■ 事故があったのは、ティッペカヌー郡道400号線と国道52号線の近くにあるスウィフト・フューエルズ社の施設内にある容量10,000ガロン(38KL)のトルエン用タンク設備である。
<事故の状況および影響>
事故の発生
■ 2025年7月23日(水)午後12時30分頃、スウィフト・フューエルズ社の施設にあるタンク設備が爆発し、火災になった。
■ 発災にともない、消防署の消防隊が出動した。少なくとも3つの消防署から出動した。
■ 爆発当時、容量10,000ガロン(38KL)
のタンクには1,000~2,000ガロン(3.9~7.6KL)のトルエンしか入っていなかった。
■ 消防隊は隣接するタンクに放水して冷却し、延焼を防止した。
■ スウィフト・フューエルズ社はジェット燃料を製造しており、トルエンはジェット燃料を製造するための成分のひとつとして使用されていた。
■ 事故にともなう負傷者はいなかった。
■ ユーチューブでは、タンク火災の状況を伝える動画が投稿されている。
●Youtube、「Tanker
fire at SwiftFuels in Lafayette contained quickly」(2025/07/24)
●Youtube、「Reported tanker explosion causes road closure in Tippecanoe County」(2025/07/24)
被 害
■ 容量10,000ガロン(38KL)の円筒タンクが焼損した。内部に入っていたトルエンの一部が焼失した。
■ 負傷者は出なかった。
< 事故の原因 >
■ 原因は分かっていない。
< 対 応 >
■ 消防隊が出動から約30分後、火災は鎮火した。
■ 現場の消防隊は消防局に泡薬剤の追加要請をしていたが、取り消した。
補 足
■「米国インディアナ州」(Indiana)は、米国の中西部に位置し、人口約678万人の州である。
「ティピカヌー郡」(Tippecanoe County)は、インディアナ州の西部に位置し、人口約186,000人の郡である。
「ラファイエット」(Lafayette)は、ティピカヌー郡の中部に位置し、人口約70,700人の都市であり、ティピカヌー郡の郡庁所在地である。地元ではラーフィーエットと発音している。
ところで、インディアナ州の事例の紹介は、つぎのとおりである。
●「米国ホワイティング製油所の装置爆発で貯蔵タンク70基に延焼(1955年)」(2017年4月)
●「米国インディアナ州の石油タンク施設に落雷して火災」(2017年7月)
■「スウィフト・フューエルズ社」(Swift Fuels)は、価値の低い炭化水素を価値の高い燃料に変換することに特化した独自の技術を有しており、具体的には、①軽質の炭化水素のC2~C5成分を高付加価値燃料に変換、②低質油を高オクタン価ガソリンブレンド油に改質、③改質油を芳香族化合物の特殊燃料および石油化学製品化などを製造している。
■「トルエン」(Toluene)は、芳香族炭化水素に属する有機化合物で、化学式はC7H8、無色透明の液体で水には極めて難溶だが、アルコール類、油類などには極めて可溶である。トルエンはペイントシンナー、接着剤などの製品に使用されている溶剤である。常温で揮発性があり、引火性を有する。日本では、消防法による危険物に指定されている。人体に対しては麻酔作用があるほか、毒性が強く、日本では毒物及び劇物取締法により劇物にも指定されており、管理濃度は20ppmである。
トルエンは原油中にも少量存在するが、通常は粗製ガソリンであるナフサのエチレンプラントでの熱分解、石炭からのコークス製造で生成する粗軽油やコールタールのクラッキングにより製造する。
■「発災タンク」は施設の中の小型円筒タンクとみられる。グーグルマップで調べると、タンク直径は3.5m程度であり、容量が10,000ガロン(38KL)と報じられており、高さは約4.0mとなる。発災当時トルエンは1,000~2,000ガロン(3.9~7.6KL)入っていたといわれており、液高さは0.4~0.8mである。
しかし、発災タンクは消防隊が出動から約30分後に鎮火したと報じられている割にタンク側板全面が真っ黒に焼けている。これは実際には火災時間が長かったと思われることと、液高さが0.4~0.8mと低く、燃焼が激しかったためだろう。また、発災時の爆発でタンクはやや傾いており、これも燃焼の激しさを物語る。
所 感
■ タンク爆発の原因は分かっていない。タンク内液は満杯時の10~20%しか入っていないので、爆発の前に液を抜き、タンク内に空気が入って爆発混合気が形成されたものとみられる。これに何らかの引火源が作用して爆発したものだろう。しかし、発災タンクの焼け方はひどいが、隣接タンクは黒煙による汚れなどは見られず、発災経緯に疑問は少なくない。
■ 消火戦略には積極的戦略・防御的戦略・不介入戦略の3つがあるが、まわりがタンク間距離の小さいタンク群があり、積極的戦略をとっている。消防隊は隣接するタンクに放水して冷却し、延焼を防止するとともに火災タンクには泡薬剤による消火を実施した。消防隊は泡薬剤が途中で切れることを懸念して、追加要請をしていたが、自署の泡薬剤で消火できると判断して取り消しているのは好判断である。また、毒性のあるトルエンの火災に対して前線の消防士はボンベを背負い自給式呼吸器を着用している。基本的な安全対策をきちんと実施しているという印象である。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Jconline.com, Fuel tank on U.S. 52 explodes; fire quickly doused
with no injuries, July 23,
2025
・Wlfi.com, New details on Lafayette fuel tank explosion, July
25, 2025
・Msn.com.com, Fuel tank on U.S. 52 explodes; fire quickly doused with
no injuries, July 23,
2025
後 記: 今回の事例は米国のローカルで早く消火できたため、事故の詳細な経緯は報じられていませんが、インディアナ州でタンク事故が少ないのか分かりません。しかし、はっきり言えることは、近年、テキサス州やルイジアナ州などでは事故報道の質が深堀りしないことです。そして、それはインディアナ州でも同じだなあと感じています。
ところで、最近、日本の大阪の火災で消防活動中にふたりの消防士が殉職されました。発災原因の追究することはもちろんですが、なぜ消防士が亡くなってしまったかについても同様に調査が必要でしょう。直接関係があるわけではありませんが、今回、米国ラファイエットの消防士が耐火服を着てさらに自給式呼吸器のボンベを背負っているのをみると、いかにも体力ありそうだなと感じました。
0 件のコメント:
コメントを投稿