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2025年6月24日火曜日

韓国のタイヤ工場で大火災、負傷者3名、廃油タンク爆発の影響は?

 今回は、2025517日(土)、韓国全羅南道の光州広域市にあるクムホタイヤ社のタイヤ製造工場で火災が発生し、3日間燃えて鎮火と発表されましたが、2日後に残り火が再燃するという大きな火災事故を紹介します。この事故では負傷者3名が出たほか、住民へ大きな影響が出ています。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、韓国の全羅南道(チョルラナムド/ぜんらなんどう)の光州広域市(クァンジュこういきし)光山区(クァンサンく)にあるクムホタイヤ社(Kumho Tire)のタイヤ製造工場である。クムホタイヤ社の生産量は韓国国内2位である。

■ 事故があったのは、タイヤ工場の原材料である生ゴムと化学薬品を混合する精錬工程である。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2025517日(土)午前7時頃、タイヤ工場で火災が発生した。

■ 発災にともない、消防隊が出動した。17日(土)15時時点で出動した消防士は355名で装備100台、高性能化学車15台で現場の対応を行った。しかし、火災は弱まらず、消防当局は17日(土)午前10時頃に国家消防動員令を発令、ヘリコプター8台を含む全国の消防装備168台を投入して消火作業を行った。

■ ゴムと化学物質が燃え、煙と粉塵が近くの住宅や商店街などに広がっていった。住民のひとりは、「外に出て呼吸するのも少し困るほどです。とても驚いています。早く消火してほしい」と語った。

■ 光州広域市は、火災で大量の煙が発生したため、住民に窓を閉め、現場周辺を迂回して移動するよう勧告した。クムホタイヤの工場に隣接した32の集合住宅の住民には、保健用マスク10,000個を緊急支援した。

■ 消防当局によると、火災はタイヤ原料の生ゴムと化学薬品(添加剤)を混ぜる工程を行う精錬工場内で起こった。ゴムを予熱する装備から原因不明の火花が出て火災が発生したという。従業員らが初期消火にあたったが、消すことはできず、炎は工場内部に広がった。クムホタイヤ社の関係者は「生ゴムと化学薬品を蒸す産業用オーブン設備で火花が飛び散って火がついた」と語っている。

■ 火がついた場所の周辺には、生ゴム約20トンが積載されており、建物崩壊と廃油タンクの爆発が相次いでおき、消火作業は難航した。

■ 火災が消火できないので、ヘリコプターで空中から水をかけるようにした。地上では消防車両が工場を囲み、消火水を高圧噴射し、大型掘削機で工場外壁を壊して消防隊員の進入路を作った。しかし、17日(土)15時時点では、火災は密集した工場棟の内部に沿って広がっており、消火活動はますます困難になった。

 建物はサンドイッチパネル構造で、火災になっている区域と隣接工場の間を分離しようとしたが、機械設備が相互に接続されており、切離しが難しい状況だった。実際に、最初の発火地点は3回崩壊し、この過程で消防隊員ひとりが負傷して病院に移送された。

■ 光州工場は便宜上、西側と南側に分けられる。17日(土)午後7時時点、サッカー場の約5面分に相当する西側工場の約75%が燃えた。このため、タイヤの生産は全面的に中断された。

■ 事故にともない、従業員1名、消防隊員2名がけがを負い、従業員約400人が避難した。一部の職員は火災初期に避難する案内放送がなかったため、避難に手間取ったと話している。また、工場周辺のマンション住民97世帯182人は大学の体育館に避難した。

■ 火災現場付近の光州松井駅はわずか1kmしか離れていないが、17日(土)午後5時まで列車の運行に支障はないという。

■ 消防用水を散布して火を消しても、再発火することが何度も繰り返され、消防当局は消火が困難だということを経験した。大きな炎の場所は掴んだが、タイヤ材料が燃えている200余りが蘇る状況が繰り返された。残火は、糸のように薄い布を丸く巻いたタイヤ材料の山を燃料として燃えていることが分かった。この材料は火災になっても灰になって体積が減らず、石炭や溶岩のように熱を留めており、時間が経つと再び発火することが分かった。

 当局は、タイヤ材料の山が少しでも積み重なっていると、互いに化学反応を起こして再発火すると判断し、山を解体して消火することにし、掘削機と消防隊員を工場内部に投入した。掘削機で山を解体して消防ホースを持つ消防隊員が火を消すという方法である。しかし、この作業では、23階の床と天井が傾くなど、崩壊の初期症状が現れ、消防士と装備を撤収した。当局は、安全上、内部に進入する消火方式が難しい判断し、工場建物の外から水を放射する方法で作業を進めた。また、過去の韓国タイヤ火災鎮圧作戦に投入された隊員に直接ノウハウを聞くための措置も行った。

■ 栄山江(ヨンサンガン)流域環境庁によると、火災発生の17日(土)午前に大気から1級発がん物質であるエチレンオキサイドが基準値以下の少量が検出されたが、夜には有害化学物質は検出されていないという。光州広域市は、火災が鎮火しても12週間は大気質測定とモニタリングを継続する方針である。

■ 518日(日)午前8時の時点で、消火率は80%になり、火災は23日以内に完全に消火できると予想された。

■ しかし、519日(月)、火災から3日目になったが、消火率は95%で、前日夜と同様だった。消防当局者は、「残り火はゴムの蓄積の一部に残っている」と述べている。

■ 火災後に周辺地域の大気質も大きく悪化したことがわかった。韓国環境公団によると、火災発生日である17日(土)に光州地域の大気中の鉛濃度は18 μg/㎥を測定した。これは同地域の平常時の平均6 μg/㎥より3倍ほど大きい数値である。粒子状物質濃度は火災3日目である19日(月)に124 μg/㎥に上昇し、“非常に悪い” の基準値である76 μg/㎥を大きく上回った。

■ 火災現場では消火作業に使われた水による汚染問題も発生している。クムホタイヤ社の光州工場は永山川と黄龍江合流部と接したところに位置するが、当局は汚染水が流出しないように工場内の管路を遮断し、排水門周辺にオイルフェンスなどを設置した。

■ ユーチューブなどでは、タイヤ工場の火災を報じる動画が投稿されている。主なものはつぎのとおりである。

 ●Youtube「광주 금호타이어 공장 대형 화재국가소방동원령 (2025.05.17/뉴스특보/MBC)2025/05/17

Youtube[속보] 금호타이어 광주공장 화재 완진까지 수 일 걸릴 듯소방청 "국가소방동원령 발령"/2025 5 17()/KBS2025/05/17

 ●Youtube「광주 금호타이어 공장에서 불...대응 2단계 격상 / YTN2025/05/17

< 被 害 >

■ タイヤ工場の建物や原材料などが損壊・焼失した。

■ 3名の負傷者が出た。

■ 周辺の住民が避難した。

■ 火災によって大気の汚染問題が出た。また、消火水による河川の水質問題が出た。 

< 事故の原因 >

■ 火災の原因は、タイヤ原料の生ゴムと化学薬品(添加剤)を混ぜる工程を行う精錬工場内で、生ゴムと化学薬品を蒸す産業用オーブン設備で火花が飛び散って火がついたとみられる。

 発災時、火災検知器は火災を感知し、従業員らが初期消火にあたったが、消すことはできず、炎は工場内部に広がった。

< 対 応 >

■ 517日(土)午前8時前に放射能力45,000 L/minクラスの大容量泡放射システムが派遣された。さらに午前11時頃、放射能力30,000 L/minクラスの大容量泡放射システムが追加派遣された。しかし、大容量泡放射システムは出動したが、水源が乏しく、火災最盛期には有効に働かなかった。

■ 517日(土)夕方、消防ヘリコプターで消火活動が実施されたが、上方からでは、炎を消すには不十分だった。

■ 火災はゴムと特殊材料が混ざり合ったタイヤ原料のためなかなか消えなかった。消防当局関係者は「現在発生中の煙のほかに火炎が拡散したり、被害が広がる可能性は小さい。ただ、建物崩壊の懸念などで消防隊員が火に近付けず、完全鎮火までに時間がかかる」と語った。

■ 519日(月)、火災は3日目に入り、消防隊は残り火の消火に難航した。  

光州消防本部によると、19日(月)午後2時時点で消火率は95%に達するが、工場各所に残り火がみられた。消防当局は前日崩壊が進んだ工場裏手で消防隊員と掘削機などを投じて残り火の鎮火に総力を注いだ。

 消防当局は、消火率が前日に90%を超えた状態でも残り火が消えない理由として、タイヤの材料を挙げている。薄い生地を丸く巻いたタイヤ材料が燃料となって燃えているからだという。タイヤを作る材料は焼けても灰にならず、溶岩のように火を含み再発火する特性を持っている。 また、消防隊員が進入しにくい工場内部6080m区間で火が燃えているのも鎮火が困難な理由だという。消防当局は、残り火の地点まで距離が遠い上に人命被害の恐れがあり、特殊装備を動員して残り火を消している。

■ 消防当局は、工場火災が始まって3日目の520日(火)正午前に鎮火したと発表した。しかし、その発表から2日後の522日(木)午後6時前に残り火が再発し、消火作業を続けた。

■ 光州広域市によると、525日(日)午前11時時点で、クムホタイヤ社光州工場の火災による住民被害は合計10,049件寄せられた。このうち、頭痛と筋肉痛、皮膚発疹、のどの痛みなどを訴える人的被害が5,863件で全体の58%に達した。このほか、車や住宅のベランダに煤煙が積もるなどの物的被害が32%の3,188件で、周辺商店街で営業できないなどのその他被害も10%の999件寄せられた。

■ 光州広域市は二次被害を最小化するために実務部署を中心にクムホタイヤ火災対策特別作業班を構成して支援する計画だ。住民被害補償に向け光山区と共同で被害規模を把握し、労働者解雇など雇用不安に対する支援対策も用意した。クムホタイヤ社が従業員を一方的に解雇できないよう労使協議会を稼動して交渉も進める。また、協力企業への代金支払いが先送りされる場合、経営安定資金支援を通じて影響を最小化する計画だ。  

■ 消防当局は再発火の可能性をなくすため、工場建物を全て撤去する方策で火種をすべて除去する計画を立てた。

■ 火災現場復旧作業は数か月かかる見込みだ。クムホタイヤ光州工場の関係者は「工場を撤去するのに1か月ほどかかり、捜査機関の調査や被害金額算定のための現場調査まで考えれば、いつ復旧が可能かを明確にいうことができない状況だ」と話した。

■ 火災に弱い建築構造の補強または代替を検討する必要がある。サンドイッチパネルは費用対効果が高く、建設が容易で産業施設に広く使用されているが、火災の際に急速に燃焼し、有毒ガスを発生させる。危険物取扱施設は耐火構造で設計し、既存施設の場合は防火システムを強化する必要がある。

■ 2023年、タイヤ21万個が被害に遭った韓国タイヤ大田工場の火災も完全に消火するのに58時間かかっている。

■ 616日(月)、クムホタイヤ光州工場火災で発生した多量の汚染物質が夜明け時間帯に雨水と混じって近隣の黄龍江に流出したが、会社側は流出事実さえ知らなかったことが確認された。河川に流れ込んだ汚染物質は50トンに達しているとみられ、経緯はつぎのとおりである。

2日前の 614日(土)午前7時過ぎ、光州広域市光山区職員が黄龍江周辺を巡回中、クムホタイヤ社の火災残骸が河川に流出した事実を確認した。前日から光州に80mmを超える雨が降り、河川に火災残骸などの流入を懸念してパトロール活動を行っていた。光州広域市光山区は午前740分に汚染物質が流出しているとクムホタイヤ社に知らせた。クムホタイヤ社はすぐに排出ポンプの作動を停止した。

 汚染物質はクムホタイヤ光州工場の排水施設から流れ出たことが確認された。ここには火災鎮圧に使われた消火泡と火災で発生した各種残留物が雨水と混じっていた。クムホタイヤ社は「廃水施設に大量の雨水が流れ込み、汚染物質をろ過するセンサーが故障した」といい、「排出システムを自動から手動に切替え、この過程で汚染物質などが放流されたものとみられる」と説明した。 黄龍江から回収した汚染物質は車両3台分(50トン)であるという。しかし、クムホタイヤ側は汚染物質がいつから、どれだけ流出したのか把握できずにいる。これに対してクムホタイヤ関係者は、「一定量の雨水が排出されるシステムだが、途中で過剰な浮遊物質が貯水施設に入ってきてため一緒に排出されたものと見られる」とし、「どのくらいの量が出たのか推定が難しい」と話した。

補 足

■「韓国」は、正式には大韓民国で、 東アジアに位置し、人口約5,120万人の共和制国家である。首都はソウル特別市である。

「光州広域市」(クァンジュこういきし)は、朝鮮半島の南西部に位置する全羅南道にあり、人口は約147万人の市である。

「光山区」(クァンサンく)は、光州広域市の西に位置し、人口約39万人の区である。

■「クムホタイヤ社」 (Kumho Tire)は、韓国2位の自動車用タイヤを生産しており、現代自動車、起亜自動車をはじめとする韓国内の完成車5社に新車用タイヤを供給している。国内に3つの工場(光州、曲城、平沢)、中国に3つの工場(南京、天津、創春)、米国とベトナム工場など計8つの生産工場を運営している。

 火災のあった光州工場は1974年に建てられ、約2,200人の従業員がいる。クムホタイヤ社が国内で1年に生産できる計2,730万個のタイヤのうち、約58%である1,600万個を作れる能力を備えている。

 クムホタイヤ社のタイヤ製造プロセスはわからないが、他社のタイヤ製造プロセスの例はつぎのとおりである。火災の発端になった精錬工場の生ゴムと化学薬品を蒸す産業用オーブン設備の相当設備がどこかは分からない。

所 感

■ 今回の事例は、発火点が認識されており、社内で消火作業を行っていたにも関わらず、大きな火災になってしまったという印象の火災事故である。廃油タンクが爆発した事象があるようだが、火災が広範囲に延焼したのは、この廃油タンクの爆発が大きく影響したのではないだろうか。

■ 油に比べると、ゴムは着火しにくい材料であるが、一旦、燃え始めると、消火が困難であるということを認識させられる。本来は、火災点に近づいて消火するのがよいが、今回は建物の崩壊の危険性があり、効果があまり期待できないヘリコプターによって水をかけざるを得なかったようだ。また、大容量泡放射砲を出動させたが、ほかの消防ホースへの水供給を優先させる必要があり、火災最盛期には使えなかったとみられる。最後のダメ押し消火の際、大容量泡放射砲が使用されているが、“大容量泡放射砲システム” としての水供給方法が不備だったと思われる。地図を見ると、近くに川があり、対応できただろうに大容量泡放射砲への認識不足だろう。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

       Japanese.joins.com, 3日間続く韓国錦湖タイヤ工場火災「頭痛く、悪臭」326,  May  20,  2025

       Mk.co.kr,  国内2位のクムホタイヤの光州工場で17日、大型火災が発生し、生産が全面中断された,  May  17,  2025

       News.yahoo.co.jp, 韓国タイヤ大手の光州工場で火災 鎮火まで数日かかる見通し,  May  18,  2025

       Sentrevue.fr,  錦湖で大火災:韓国最大のタイヤ工場が閉鎖,  May  18,  2025

       World.kbs.co.kr,  韓国タイヤ大手の光州工場で火災 発生から76時間でようやく鎮火,  May  20,  2025

       Ja.namu.wiki,  2025年 クムホタイヤのグワンジュ工場の火災,  June  15,  2025

       Chosun.com,  금호타이어 광주공장 화재 76시간 만에 완진 "공장 철거에만 한 달,  May  20,  2025

       Yna.co.kr,  금호타이어 광주공장 화재, 사흘 만에 완전 진압,  May  20,  2025 

       Sisain.co.kr,  검게 탄 타이어 공장, 먹구름 드리운 광주 지역경제 [포토IN],  May  26,  2025

       Ohmynews.com,  [단독] 금호타이어, 화재 오염물질 50톤 유출...뒤늦게 알았다,  June  16,  2025

       Safety1st.new,  금호타이어 광주공장 정련 공정서 대형 화재, 고무 예열장치에서 발화 추정,  May  17,  2025

       Khan.co.kr, [속보]광주 금호타이어 공장 대형 화재…“검은 연기, 창문 닫아라,  May  17,  2025

   ・Imnews.imbc.com,  광주 금호타이어 공장 대형 화재진화 어려움 겪어,  May  17,  2025

       Hankyung.com,  금호타이어 광주공장 대형 화재공장 절반 '전소 위기,  May  17,  2025

       News.mt.co.kr, "폐유 저장탱크 폭발" 소방대원도 부상금호타이어 공장 화재 진화 난항,  May  17,  2025


後 記: 今回の事故は“廃油タンクが爆発”と報じたメディアがあったので、調べることとしました。しかし、いろいろ調べても廃油タンクの爆発経過を報じる情報はありませんでした。韓国2位のタイヤ製造会社の工場が火災になり、今後のタイヤ供給の経済面の影響を報じる記事が多く、それ行けどんどんの韓国を示しているようで、2023年の韓国タイヤ大田工場の火災事故は活きていないなあと感じました。これは私の感覚ですが、世の中の景気がよくなってくると、今回のような事故が増えてきます。

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