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2023年11月13日月曜日

ロシア連邦のコミ共和国で清掃中のタンクが爆発・火災、死傷者3名

 今回は、20231029日(日)、ロシア連邦のコミ共和国ウシンスクの近くにある石油会社;ルクオイル・コミ社の石油施設で、清掃工事中の貯蔵タンクが爆発・火災を起こし、死傷者3名を出した事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災施設は、ロシア連邦(Russia)コミ共和国(Komi)のウシンスク地区(Usinsk)ヴェルフネコルヴィンスク村(Verkhnekorvinsk)の近くにあるロシアのエネルギー企業;ルクオイル社(Lukoil)の子会社であるルクオイル・コミ社(LukoilKomi)の石油施設である。

■ 発災があったのは、ヴォゼヤ油田のブースターポンプ場(BS -7)にある貯蔵用のRVS-5000タンクである。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 20231029日(日)午前1130分頃、貯蔵タンクが爆発し、火災となった。

■ 発災に伴い、消防隊が出動し、消防士51名と18台の消防機材で対応した。タンク内の火災の局所化と周辺施設への延焼を防ぐための消防作業が行われた。消防隊は、通報によってRVS-5000のタンクで行っていた作業中に火災が発生したとの報告を受けていた。

■ 貯蔵タンクは空で清掃工事中であり、残留ガスが爆発した可能性があるとみられている。

■ 火災になったタンクは崩壊し、隣接した油の入った別なタンクに延焼したと報じられた。別なタンクには、57mのレベルまで油で満たされているという。

■ フォームリフターが火災に巻き込まれ、隣接するタンクを冷却するために放水モニターが設置された。

■ 事故に伴い、タンクの定期補修を行っていた請負会社エコライフ社(Ecolife)の従業員2名が負傷した。1名は火傷の負傷で、病院へ搬送された。このほか、別の従業員が行方不明という情報が報じられている。のちに、火災当時タンク内にいたとされるエコライフ社の従業員が死亡したという。

被 害

■ 貯蔵タンク1基が損壊した。このほか、周辺の配管が火災で被災した。

■ 3名の死傷者は出た。死傷者のうち、ひとりが死亡し、ふたりが負傷した。

■ 火災と黒煙が立ち昇り、環境汚染の恐れが出た。

< 事故の原因 >

■ 事故原因は安全規則違反である。しかし、安全規則違反の内容は分からない。  

< 対 応 >

■ 事故の原因は安全規則違反と報じられている。

■ コミ共和国天然資源省は火災が近隣の貯蔵タンクに延焼したと報じたが、後に消防隊はなんとかタンクの延焼を阻止したと明らかにした。しかし、貯蔵タンクの遮断弁近くの配管から火災が起こった。

■ 消防隊は増強され、消防士80人以上と25台の消防機材で対応した。

■ 消防隊は、9時間以上消火活動を続け、1029日(日)午後8時頃までに火災を制圧し、午後921分に鎮火させた。消火活動には、圧縮空気泡システム(Compressed Air Foam System)も使用された。火災エリアは360㎡だった。

■ 事故後、石油施設のブースターポンプステーションDNS-7の運転は停止された。

■ コミ共和国での火災事故について、メディアの中には、ロシアの石油産業を悩ませていると指摘している。ロシアのクラスノダール地方にあるアフィップ製油所で最近発生した火災は、ウクライナの2機のドローンによって引き起こされたと伝えられており、企業内部の安全上の欠陥と外部の脅威の両方に対する業界の脆弱性を浮き彫りにしたという。

 ■ ロシアのメディアの中には、記事中に発災時の動画を添付しているところもある。主な記事はつぎのとおりである。

 Fontanka.ru, Ситуация осложнилась. Под Усинском в Коми загорелся второй резервуар для хранения нефти2023/10/29

 ●Life.ru, В Коми один человек погиб и двое пострадали при пожаре на нефтяном резервуаре2023/10/29

補 足

■ 「ロシア連邦」(Russia)は、通常、ロシアと称し、ユーラシア大陸北部に位置し、人口約14,600万人の連邦共和制国家である。

「コミ共和国」(Komi)は、ロシア連邦中北部の共和国で、1921年にコミ・ジリャン自治州として設置され、1936年にコミ自治ソビエト社会主義共和国になった。ウラル山脈の西部、東ヨーロッパ平原の北東部に位置し、原油、天然ガス、石炭、金、ダイヤモンドなどを産し、主要産業は石油精製、木材加工などである。人口は約101万人で、ロシア人が約60%、コミ人が約25%、ウクライナ人が約6%、タタール人が1%などで、公用語はコミ語とロシア語である。

「ヴェルフネコルヴィンスク村」(Verkhnekorvinsk)は、コミ共和国のウシンスク地区(Usinsk)にあり、人口約1,300人の村である。

■「ルクオイル・コミ社」(LukoilKomi)は、ロシアのエネルギー企業であるルクオイル社(Lukoil)の子会社で、 20014月に設立された。ルクオイル・コミ社は主にコミ共和国で事業を行っている。主な活動は油田・ガス田の探査、建設、開発であり、生産地の一部は北極圏の上に位置している。生産油の半分以上は粘度が高いという特徴を持ち、生産が難しく、特別な高価な抽出技術が必要であるといわれている。

■「発災タンク」は番号RVS-5000タンクと報じられているだけで、詳細は分からない。また、コミ共和国のウシンスク地区のヴェルフネコルヴィンスク村にある石油施設の場所をグーグルマップで調べたが、特定できなかった。タンクは被災写真を見るかぎり容量3,0005,000KLクラスと思われる。

■「圧縮空気泡システム」(Compressed Air Foam System CAFS;キャフス)は、圧縮空気泡消火装置で、水と消火薬剤を高圧の空気で混ぜて泡を作り、消防ホース経由して消火ノズルで噴射する。日本でも東京消防庁や横浜消防本部など地方自治体の消防署に配備されているところが出ている。 CAFSは世界的に採用され始め、このシステムを車両の中に組み込んだ自走するものが出ている。今回、コミ共和国で使用された圧縮空気泡システムははっきりしないが、標題の写真に載っている空港用化学消防車の一種ではないだろうか。

所 感

■ 今回のタンク事故はつぎつぎと変更された内容が報じられ、状況がはっきりしない。事実(らしい)状況と被災写真をつなぎ合わせれば、つぎのような経緯ではなかったかと思う。

 ● 発災タンクであるRVS-5000は清掃工事を行うために開放された。タンクは完全に空でなく、内部には原油スラッジが残っていたとみられる。2006年に起こった「太陽石油の原油タンク清掃工事中の火災事故」 20173月)のように「原油スラッジ中の軽質油分の気化ガスがタンクマンホールの開放に伴う通気によって爆発混合気を形成し、清掃工事用の機工具類などによる何らかの着火源によって引火して火災になったものとみられる」と同様、人がタンク内に入り、爆発が起こったのではないだろうか。この事象によって死傷者3名が出てしまった。

 ● 発災タンクの爆発で、タンクは火災になり、タンク側板を座屈させた。また、爆発によって底板と側板の接続部の一部が外れ、配管接続フランジ部が破損して、油が漏れ、堤内火災が発生したのではないだろうか。

 ● 堤内火災は、隣接したタンクに延焼するのではないかと思うほど大きな火災になった。このとき、隣接タンクの遮断弁は開放状態で接続フランジ部が緩み、タンクと配管内部の油が漏れて堤内火災が大きくなったのではないだろうか。

 ● 堤内火災はタンクと配管内部の油が燃え尽きるほど続き、約9時間後に火災を消すことができた。

■ 消火戦略は、①積極的(オフェンシブ)戦略、②防御的(ディフェンシブ)戦略、③不介入戦略の3つのうちいずれかを選択する。今回は、タンクと配管からの漏れによる堤内火災と思われるので、安易に消火させても再燃しやすい。従って、隣接タンクへの延焼を防ぐ防御的戦略をとったと思う。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

       Pravda.com.ua, Oil reservoirs on fire in Komi Republic, Russia,  October 30,  2023

       Censor.net, Oil tanks burning in Russia’s Komi Republic, one dead and one injured,  October 29,  2023

       Bnn.network, Fire at Komi Republic Oil Reservoir: A Stark Reminder of Industry Risks,  December 29,  2023

       Fontanka.ru, Ситуация осложнилась. Под Усинском в Коми загорелся второй резервуар для хранения нефти, October 29, 2023

      Ria.ru, В Коми взорвался нефтяной резервуар,  October 29,  2023

      Neftegaz.ru, По факту возгорания резервуара на УПСВ ДНС-7 Возейского месторождения возбуждено уголовное дело,  October 30,  2023

      Usinsk.bezformata.com, 30 октября вместе с Главой Республики Коми Владимиром Уйба побывали на месте возгорания выведенного из эксплуатации нефтяного резервуара в посёлке Верхнеколвинск,  October 31,  2023      


後 記: 今回ほどつぎつぎと内容が変わって報じられた事故はありませんでした。ほかのタンクへ延焼したと認識していたところに、消防隊が延焼を食い止めたという情報が出てきて、わたし自身の頭が混乱しました。しかし、再度、発災写真をよく見ていくと、遠くから撮った映像はタンクから上がっている炎ではなく、堤内火災という方がよいように感じ始めました。崩壊したタンクまわりの火災は明らかに別なタンクの火災ではありません。石油施設のあるコミ共和国のウシンスクはすでに雪が積もっていますし、グーグルマップでコミ共和国を見ていくと、北極圏に近く、うら寂しいところです。このようなところにメディアが取材に訪れることはないでしょう。報じられる内容が変化していくのもやむを得ないだろうなと思いながらブログをまとめました。

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