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2020年8月22日土曜日

スペインの製油所で落雷によって2基のタンクが火災

  今回は、2020年8月10日(月)、スペイン中南部シウダー・レアル県プエルトリャノにあるレプソル社の製油所で落雷によって起こったタンク火災事故を紹介します。

< 施設の概要 >

■ 事故があったのは、スペイン(Spain)中南部カスティーリャ・ラ・マンチャ州(Castilla-La Mancha)シウダー・レアル県(Ciudad Real)プエルトリャノ(Puertollano)にあるレプソル社(Repsol)の製油所である。プエルトリャノ製油所の精製能力は14万バレル/日である。


■ 発災があったのは、製油所のタンク地区にある貯蔵タンクである。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2020年8月10日(月)午前9時50分頃、製油所のタンク地区に落雷があり、タンクが爆発して火災になった。


■ この朝、プエルトリャノ地区に雷雨が通過しており、製油所の3基のタンクに落雷した。このため、2基のタンクが火災となった。この内、ガソリンを貯蔵するタンクが可燃性ガスに引火して爆発・火災になった。もう1基のタンクは落雷の直撃によって火災になったのか、1基目のタンク火災による延焼なのかは分からない。


■ タンクからは大量の黒煙が立ち昇り、30km離れているところからも煙が見えたという。

■ 発災に伴い、製油所の自衛消防隊約50人が出動した。


■ 消防隊は隣接するタンクの冷却を実施した。

■ ソーシャルメディアでは、放出される煙が人の健康に害を及ぼす恐れについて懸念していると投稿されている。

■ 近隣の会社では、予防措置として避難した。レプソル社は、緊急事態対応基準に則り、大気の空気質モニタリングを実施した。地方自治体は、呼吸器疾患のある人は適切な予防策を講じ、必要がない限り、家から出ないように助言した。


■ 警察は、製油所北側通っているCR-504道路の交通遮断を実施した。


■ 事故に伴う負傷者はいなかった。


■ 火災の映像がユーチューブ投稿されているが総体的に映りが悪く、タンクの事故状況を十分には把握できない。(つぎのYoutube.com参照

 A fire broke out at the Repsol Petrochemical plant in #Puertollano ,#Spain after lightning struck2020.8.10

 ●Accidente Repsol Puertollano2020.8.10

 ●Gas Explosion, Puertollano Spain ES 10th aug 2020 Lightning strikes oil tanker2020.8.10

 ●Un rayo provoca un incendio en el centro petroquímico de Repsol en Puertollano2020.8.10


被 害

■ タンク2基が火災によって損傷した。

 また、タンク内の油が焼失した。

■ 事故に伴う死傷者はいなかった。


■ 近隣の会社では、予防措置として避難した。地方自治体は、住民に外出の自粛を助言した。


< 事故の原因 >

■ 事故の原因は落雷による。ただし、製油所の3基のタンクに落雷し、2基のタンクが火災となったが、1基目のタンクが爆発・火災を起こし、もう1基のタンクは落雷の直撃によって火災になったのか、1基目のタンク火災による延焼なのかは分からない。


< 対 応 >

■ シウダー・レアル県緊急事態対処部隊1006が事故対応で出動した。レプソル社の自衛消防隊はシウダー・レアル県緊急事態対処部隊に協力して対応を実施した。


■ 消防活動は、消防車8台、大容量ポンプ2台、その他消防用車両数台が使用された。


■ 発災から約7時間半後の8月10日(月)午後5時30分頃、火災は鎮火した。  


■ レプソル社は火災の原因調査を開始した。 

補 足

■「スペイン」(Spain)は、南ヨーロッパのイベリア半島に位置し、人口約4,500万人の議会君主制国家である。

「シウダー・レアル県」(Ciudad Real)は、スペインの南西部に位置し、人口約52万人の県である。

「プエルトリャノ」(Puertollano)は、シウダー・レアル県にあり、この地域の大部分が田舎の特徴とは対照的に、プエルトリャノは産業活動に力を入れてきた人口約47,000人の市である。

■「レプソル社」(Repsol)は、1987年に設立し、スペインのマドリードに拠点を置くエネルギー会社である。原油・天然ガス産業の探査、生産、精製・石油化学、物流、販売を世界的に展開し、24,000人の従業員がいる。スペインには、14万バレル/日のプエルトリャノ製油所のほか、3箇所の製油所を有している。


■「発災タンク」の大きさなどの仕様は分からない。爆発・火災を起こしたタンクの内液もメディアによって異なり、ガソリン、石油残渣油、原油、ディーゼル燃料の名前が挙がっていた。落雷によって爆発・火災が起きているので、ガソリンまたは原油と判断し、タンクも大型タンクではなさそうなので、ガソリンとした。グーグルマップで調べたが、情報が不足し、特定できなかった。なお、直接、関係はないが、プエルトリャノ製油所の浮き屋根式タンクの屋根上は汚れており、中には油と思われる黒い汚れがあり、保守が行き届いていない。

所 感

■ 落雷によるタンク火災の事故であろう。 発災状況は被災映像があるが、通常の落雷によるタンク火災とは様相が異なる。多くの映像はタンク全体が黒煙で覆われており、堤内火災が生じているように見える。火災は真っ黒な煙を噴き上げており、燃焼性の良い燃料ではないように感じる。

 映りは悪いが、タンク火災と分かる映像のものが燃焼性の良いガソリンタンク火災ではなかろうか。これが1基目のタンク火災で、2基目の火災タンクは何らかの要因(タンク側板損傷や配管損傷など)で堤内火災を起こしたのではないだろうか。この場合、内液が石油残渣油またはディーゼル燃料ということが考えられる。

(燃料の違いによるタンク火災の例は、「インド・ジャイプールのインディアン石油でタンク火災(2009年)」を参照)


■ 多くのメディアによって報じられているが、これほど大きなタンク火災にかかわらず、事故の状況が分からない事例は稀である。最近の事故では、ドローンによる映像が投稿されるが、今回の事故では使用されておらず、ドローンによる映像があれば、もっと多くの情報が得られただろう。


■ 消火活動は行われており、映像では大容量の消火水(または泡消火)が放射されている。発災から約7時間半後に鎮火しているが、どのような活動によって消火させたのかを知りたいところである。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

   ・Industrialfireworld.com, Lightning Strike Ignites Fire at Spanish Oil Refinery,  August  11,  2020

    ・Tankstoragemag.com, Lightning causes fire at Repsol plant in Puertollano,  August  11,  2020

    ・Euroweeklynews.com, BREAKING: Explosion Rips Through Petrol Tank in Spain as an Unlucky Lightning Bolt Sparks Emergency Firefighter Plan,  August  10,  2020

    ・Cmmedia.es, Extinguido el incendio en la planta de Repsol de Puertollano,  August  10,  2020

    ・Tanknewsinternational.com, Fire caused by a lightning strike broke out at Repsol’s Puertollano plant,  August  13,  2020

    ・Reuters.com, Fire at Repsol's Puertollano plant under control, no production hit,  August  10,  2020

    ・Junipersports.com, Lightning causes the fire of two fuel tanks in Puertollano,  August  10,  2020

    ・Newsbreak.com, Lightning strikes Repsol’s petrochemical plant and sets off fire in Puertollano, Spain,  August  10,  2020

    ・Thecanadian.news, Lightning explosion in a diesel tank at Repsol’s Puertollano refinery,  August  10,  2020

    ・Moneytrainingclub.com, Lightning sets fire to a diesel tank at the Repsol complex in Puertollano,  August  10,  2020

    ・Tekdeeps.com, Lightning catches fire at petrochemical complex in Spain – World,  August  10,  2020 

 


後 記: 今回の事故情報は、調べていっても、内容が深まりませんでした。まず、落雷が3回あり、2回が火災になったという情報です。これまで複数の落雷によるタンク火災という例は聞いたことがありません。雷が別な箇所に落ちることはあるでしょうが、それぞれがタンク火災に至ることがあるというのは疑問です。つぎに、発災タンクですが、グーグルマップで調べても特定できませんでした。メディアの中に写真のように「赤い枠が火災の影響を受けた領域」という情報があり、特定できるだろうと期待しました。確かに4基並んだタンク群の場所は分かりましたが、ほかの被災写真と見比べると方向やタンク配置状況が異なり、結局、違うという判断をしました。



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