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2020年6月19日金曜日

この10年間の「世界の貯蔵タンク事故情報」について(その2)

 「世界の貯蔵タンク事故情報」と称して事故情報を紹介し始めたのが、20115月からです。その後、タンク施設以外で世間の耳目を集めるような事故があり、タンク以外の事故情報も投稿してきました。20204月で十年になるのを機にこれまでの事故情報のデータベースをもとに考察することとしましたが、今回はその2回目で、事故の地域別、場所別、設備別、原因別、事故形態別に分析した結果を紹介します。

< はじめに >

■ 「世界の貯蔵タンク事故情報」と称して当ブログで事故情報を紹介し始めたのが、20115月からである。当初は名の通り貯蔵タンクと関連施設の事故を対象としていたが、タンク施設以外で世間の耳目を集めるような事故があり、タンク以外の事故情報も投稿してきた。20204月で十年になるのを機に、これらの事故情報のデータベースをもとに考察してみることとし、今回はその2回目で、事故の地域別、場所別、設備別、原因別、事故形態別に分析する。


< 地域別の事故件数の割合 >  

■ 世界を地域別に分けた事故件数は、図のとおりである。地域は「貯蔵タンク事故の研究」に掲載されている5つの分類と同じにした。

 ● アジア・豪州; 日本、韓国、中国、インド、オセアニア、中東、その他

 ● 北 米; 米国、カナダ、メキシコ、

 ● 欧 州; イングランド、フランス、ロシア、その他

 ● 南 米; ブラジル、ベネズエラ、アルゼンチン、その他

 ● アフリカ; ナイジェリア、ケニア、リビヤ、エジプト、その他

地域別の事故件数の割合

■ この分類によると、事故件数は「北米」と「アジア・豪州」の2地域で8割を占める。しかし、近年の事故発生をみると、この分類では「アジア・豪州」が大枠すぎるので、細分化した。また、「北米」について「米国」を単独に分類した。この細分化した分類による地域別の事故件数は図のとおりである。

細分化した地域の事故件数の割合

■ 細分化した地域別の事故件数では圧倒的に「米国」が多い。これは米国では、陸上における小規模な油田施設やタンクターミナルが多く、これらの施設における事故が多いためである。アジアでは、「日本」のほか「中国」の事故件数が多くなっており、また、その他のアジア(図の「アジア」)で多く、アジア全域で事故が起こっているのが注目される。さらに、最近、新たに目立つのが「中東」における事故件数である。

< 場所別の事故件数 >  

■ 場所(施設)別にみた事故件数は、図のとおりである。 場所(施設)の区分は「貯蔵タンク事故の研究」に掲載されている分類、すなわち、「製油所」、「タンクターミナル」、「化学工場」、「油田」、「パイプライン」、「その他」の6つの分類に合わせた。

場所別の事故件数

■ もっとも事故が多い場所(施設)は、「製油所」や「化学工場」ではなく、「タンクターミナル」の28%だった。しかし、事故はひとつに片寄るのではなく、相対的に6つの分類に分散している。このブログでは、貯蔵タンクだけでなく、世の中で注目された事故を取り上げているので、「その他」の分類の事故件数が多くなった。


< 設備別の事故件数 >  

■ 設備別の分類による事故件数は、図のとおりである。設備の区分は、「タンク」、「配管」、「プラント」、「その他」の4つに分類した。

設備別の事故件数

■ このブログの主目的である「タンク」が263件の78%と大半を占めるのは当然といえよう。


■ 一方、世の中で注目された事故を取り上げた「その他」が7%となったが、その詳細設備をみると、図のとおり、タンクローリーと船舶がそれぞれ6件で、貨物列車が2件と物流設備関係での大きな事故があった。  

設備別の事故件数

< 原因別の事故件数 >  

■ 原因別の事故件数は図のとおりである。原因の区分は「貯蔵タンク事故の研究」に掲載されている分類を参考にして、「落雷」、「保全/火気工事」、「運転ミス」、「設備の故障」、「故意の過失」、「割れ/腐食」、「漏れ/配管破損」、「静電気」、「直火」、 「自然災害」、「異常反応」、「その他」、「不明」の13分類に分けた。

原因別の事故件数

■ 分類では、「不明」が38%と圧倒的に多かった。事故情報をインターネットの報道記事を主体にしているので、事故直後では調査中で原因が不明な事故が多くなっているためである。また、この段階では、「静電気」と「異常反応」は0件だった。


■ 「不明」を除いた事故件数を分類してみると、図のとおりである。日本では、「落雷」による貯蔵タンクの事故は少ないが、世界的にみると、「落雷」による事故件数が多い。続いて、「保全/火気工事」、「漏れ・配管破損」、「運転ミス」が多い分類だった。

「不明」を除く原因別の事故件数 

■ 最近の傾向としては、「自然災害」と「故意の過失」による事故件数が多い。特に、台風/ハリケーンや豪雨による事故が目立ってきている。また、中東におけるテロ攻撃による「故意の過失」の事故件数が多い。


< 原因推定別の事故件数 >  

■ 調査中として原因不明の事故情報について、事故の状況から原因を類推してみた。この原因推定別の事故件数は図のとおりである。原因不明の事故件数は2/3程度減ったが、それでも「不明」は41件残った。

原因推定別の事故件数 

■ 原因推定別の事故件数では、「落雷」を抜いて「保全/火気工事」がトップとなった。これに「運転ミス」と「漏れ・配管破損」が続いた。


■ 原因別ではゼロ件だった「静電気」と「異常反応」がそれぞれ10件と2件出てきた。


< 事故の形態別の事故件数 >  

■ 事故の形態別の事故件数は図のとおりである。事故形態の区分は「貯蔵タンク事故の研究」に掲載されている分類を参考にして、 「火災」、「爆発」、「漏洩」、「その他」に区分し、新たに「環境汚染」を追加し、「毒性ガス流出」は「環境汚染」または「漏洩」の区分とした。

事故の形態別の事故件数 

■ 事故件数の割合は「爆発」が「火災」を上回った。従来の認識では、「火災」の方が多いと思う。これは、発災時に爆発が伴った火災は「爆発」に分類したことが要因にあるかもしれない。


■ 事故の形態として「その他」の分類の中で、最近の特異な形態を2つあげてみた。ひとつは地方全体が停電になるという「大停電」(ブラックアウト)で、もうひとつは故意の過失の範ちゅうに入るテロ攻撃(サイバー攻撃)の「コンピューター被害」である。 



備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    ・Tank-accident.blogspot.com, May 2011 – April 2020


後 記: 今回の分析の中でもっとも悩んだのが、「原因別」です。もともと事故原因として調査中のものが多かったのですが、分析するとデータが中途半端なものになってしまったという思いがありました。そこで、事故内容をもう一度全件読み直し、「原因別」のほかに「原因推定別」の項目に分けました。この作業が意外に時間を費やしましたが、おかげで半端さは少し薄くなりました。

 この過程で感じたのは、事故を起こした事業者や事故を伝えるメディアが事故を教訓にしようという意識が希薄なのではないかということです。一方、事故後に内容のある報告書をまとめ、情報公開するところがあります。また、ローカルのメディアで地元で起こった事故を追跡し、なんども記事にし、事故の内容を伝えるところがあります。良いこと、悪いこと、いろいろなことを振り返りながらまとめました。

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