爆発後の火災に対して消防活動が行われているガス充填プラント
(写真はAristeguinoticias.comから引用) |
<事故の状況>
■ 2013年10月16日(水)午後18時30分頃、メキシコのプエブラ州にある天然ガス供給施設で爆発があり、死傷者の発生する事故が起こった。事故があったのは、中央メキシコに位置するプエブラ州プエブラ市チャチャパ工業団地のトムザ・ガス社所有のガス充填プラントにある枕型の天然ガス貯蔵タンクが爆発して、周辺地区を巻き込んだ火災が発生し、少なくとも6名が死亡し、2名が負傷した。
中央の施設がトムザ社のガス充填プラント (写真はグーグルマップから引用)
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■ 爆発・火災事故発生に伴い、半径3km範囲内の事務所および住宅に居る人は避難させられた。爆発した時間が午後6時30分頃ということで、大半の労働者は仕事を終えて帰っており、被災者が比較的少なかったという見方を当局者はしている。トムザ・ガス社は販売業者で、家庭用、商業用、工業用に天然ガス貯蔵タンクを保有している。
■ 発災現場の近くを走っている幹線道路はメキシコシティとベラクルス間で閉鎖され、消防隊が火災を制圧するまでの約4時間以上、交通遮断が行われた。
■ 爆発後、火災が発生したが、消防活動の結果、約3時間後に鎮火した。爆発の原因はわかっていない。プエブラ州国民保護局長であるイエス・モラレス・ロドリゲス氏は調査過程の中で、「荷役時の配管操作ミスがあったという話などいろいろな情報が出ています。これは一つの仮説ですし、地方自治体の専門家による最終結論を待つべきだと思っています」と述べている。ロドリゲス局長によると、爆発したのは2基のタンクで、その容量は250KLだという。
■ 爆発後、4人の遺体はすぐに見つかったが、2人の遺体はプラント瓦礫の中で発見された。被災者は工場の従業員だという話もあるが、身元は明らかになっていない。
■ ホステルや簡易テントで夜を過ごした約100名の避難住民は帰宅が許された。ラファエル・モレノ・ヴァッレ知事は早速、翌日に現地を訪れている。
■ メキシコでは、天然ガスに関係した事故が続いている。今年5月、メキシコシティ郊外のハイウェイでガス用ローリー車が爆発し、20名以上の死者を出す事故が起こっている。2012年9月には、レイノサにある国営石油会社のペメックス社のガスプラントで火災があり、26名が死亡する事故が起こっている。
(写真はExcelsior.comから引用) |
(写真はEa2cpg.blogspot.jp から引用) (写真はDiariocambio.com.mx から引用) |
(写真はThePeninsulaqatar.comから引用) (写真はUnionpuebla.mxから引用) |
事故後、現地を訪れたラファエル・モレノ・ヴァッレ知事
(写真はEleconomista.co.mx
から引用) |
(写真はPoblanerias.com から引用)
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(写真はe-consulta.com から引用) |
(写真はCaMBIO Televisionの動画から引用) |
(写真はCaMBIO Televisionの動画から引用) |
補 足
■ 「メキシコ」は、正式には「メキシコ合衆国」で、北アメリカ南部に位置する連邦共和国家である。人口は約1億900万人で、首都はメキシコシティである。
「プエブラ州」は中央メキシコの南部にあり、人口約570万人の州である。州都は「プエブラ市」である。
「プエブラ市」は、標高2,100mの高地に位置し、人口約148万人の都市である。メキシコシティとベラクルスの港を結ぶ交通の要として栄え、現在は自動車産業などが盛んで、フォルクスワーゲンの工場があり、北米や日本向けのVW車の大半はプエブラの工場で生産されているという。
■ 「トムザ・ガス社」(Tomza
Gas)は、天然ガスおよびLPガス供給を行っているメキシコのエネルギー会社で、40年の歴史を有する。従業員10,000人を擁し、メキシコだけでなく、近隣のグアテマラ、エルサルバトル、コスタリカ、ホンジュラスへの供給も行い、80箇所の貯蔵施設を保有している。プエブラには、貯蔵タンクとガスローリー車へのガス充填プラントがある。
トムザ社の典型的なガス充填プラントの例
(写真Tomza社の資料から引用) |
トムザ・ガス社のプエブラのガス充填プラント
グーグルマップから推定すると、大型タンクはおよそ直径3.6m×長さ25m×容量250KL、
小型タンクは直径2.7m×長さ6.3m×容量35KLと見られる。
(写真グーグルマップのストリートビューから引用) |
所 感
■ 今回の事故については原因は勿論、発災の状況も明確ではない。写真を含めた情報を整理すると、つぎのとおりである。
● ガス充填プラントには長さ25mクラスの大型の枕型タンクが2基あり、1基の推定容量は250KLであるが、冷却放水が行われており、発災を免れていると思われる。
● 長さ6mクラスの小型の枕型タンクがあるが、完全に破裂して噴き飛んだタンクや横転したタンクが見られ、発災の起点になった可能性が考えられる。
● ガス充填プラントには、ガス用ローリー車やガスボンベ積載車があり、爆発・火災によって延焼したり、あるいは爆発したものがあると思われる。
● 荷役時の配管操作ミスという情報があるように、多くの死傷者を出している状況からすれば、ガス充填プラントはまだ盛んに荷役作業が行われている時間帯だったと思われる。荷役時の何らかの運転ミスがあった可能性は高い。
■ 天然ガス(またはLPガス)施設の爆発・火災事故であり、火を消すことはかえって危険なため、隣接タンクなどの冷却放水を主とした消防活動だったと思われる。タンクの容量が比較的小さかったため、燃え尽きる時間が短く、また、消防活動中にBLEVE(Boiling
Liquid Expanding Vapor Explosion)の起こることがなかったようで、よく3時間で鎮火できたと思う。
備 考
本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・BBC.co.uk, Deadly
Explosion at Gas Storage Tank in Central Mexico, October 16, 2013
・ThePeninsulaqatar.com,
Four Dead in gas Explosion in Mexico, October 16, 2013
・OnlineNewsSunitedKingdom.com, Deadly Gas Explosion in Mexico, October 16,
2013
・NamNewsNetwork.org, Six Killed in Deadly Explosion at Gas Storage
Tank in Central Mexico, October 17, 2013
・Latin
Times.com, Mexico Explosion 2013: At
Least 5 Killed in Puebla Natural Gas Tank Blast, October 16, 2013
・VietnamBreakingNews.com, Mexico Gas Blast Death Toll Rises to Six,
October 17, 2013
後記: 今回はスペイン語圏のメキシコで起こった事故なので、英語の情報源は比較的少ない状況でした。特に、事故の写真は夜の暗闇に上がる炎の状態のものが多く、中には2013年5月のガスローリー車の爆発事故の写真が掲載されているものもありました。さすがにメキシコ国内のテレビでは、翌日の事故現場から放送しており、注目されたニュースだったようです。しかし、日本では取り上げたメディアはなく、インターネット検索でも話題にしたブログはありませんでした。ところが、ベトナムのメディア(英語)がこの事故情報を扱っています。経済発展が著しいベトナムですので、世界にアンテナを張っていろいろな情報を入手しようという意識が高いのでしょう。日本の新聞は字を大きくしたり、誌面を少なくしたりして、段々取り上げる記事が制限されているようです。紙の新聞はやむ得ないかも知れませんが、デジタル化したインターネットではもっと記事の件数を増やしたり、内容を深めるようになれば良いなと思いつつ、まとめました。
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