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2014年7月21日月曜日

大型石油タンクのハザード評価の方法

 今回は、 ギリシャ・アテネ国立技術大学のアルギュロプロス氏(C.D. Argyropoulos)らが発表した「大型石油タンクのハザード・アセスメントの方法論(A Hazards Assessment Methodology for Large Liquid Hydrocarbon Fuel Tanks)」(2012年)について紹介します。内容は石油貯蔵タンクのハザード評価の方法ですが、日本で一般的に使われているリスクアセスメントやリスクマネジメントを念頭にして読まれるのがよいと思います。また、大型タンク(Large Tank)と表現されていますが、日本の油槽所にあるような石油タンクの大きさを対象にしています。
(写真はIslamtimes.orから引用)
<要 旨 >
 本論文は、事故の原因とその対策に関するチェックリスト方法およびセベソ指令の考え方を適用して、石油貯蔵タンクのハザード評価の方法について系統的にまとめたものである。ギリシャの産業安全の手法に関する研究は活発ではなかったので、筆者らは、ギリシャにおける専門家の組織化を行なって取組んだ。ここでは、これまでに検討してきた結果について述べ、リスクの主要因を判定するためのハザード評価の方法を提示し、分析の方法や安全対策を考える上で役立つものだと思う。

1.はじめに
■ 石油タンク火災の発生はそれほど多くはないが、施設、環境、作業員や地元住民の健康に対して予期せぬ展開に進むことがある。クレッツ氏(Kletz)が述べたことを言い換えれば、「産業安全の進歩はひとつひとつの事故の歴史である」といえる。実際、最近でも重大なタンク火災が起きている。例えば、2005年11月11日のバンスフィールド石油貯蔵所事故、2009年10月23日のカリビアン製油所における大規模なタンク火災事故である。これらの事故は施設に大きな損害を与え、環境へ悪影響を及ぼしたことに間違いはないが、一方、ピットブラド氏(Pitblado)によって類似事故の防止に必要な対策が示された。

■ チャン氏とリン氏(Chang and Lin)は、貯蔵タンクで起こった事故に関する統計分析を実施するため、多くの文献から有用な情報や資料を集め、広範囲な研究を行っている。このほか多くの科学者や技術者のグループが、大規模な石油タンク火災に関する物理的特性や現象を調査し、解明しようと、徹底した研究に取り組んでいる。これらの調査の中には、毒性汚染物質(例えば、煙、二酸化硫黄、一酸化炭素、芳香族炭化水素、揮発性物質)の分散の推算式によって高度での濃度や地表での濃度を推測するものや、地表濃度を既定の安全しきい値と比較して危険ゾーンを特定しようと試みたものがある。

■ 現在、石油化学施設における安全分析に関する標準的な方法は定量リスク分析(QRA)であり、それ以前はいわゆる定性リスク分析と呼ばれるものが先行していた。しかし、定性リスク分析はネグタリング氏とパスマン氏(Knegtering and Pasman)によって長所と短所が明らかにされた。

■ 定性的な方法としてよく知られているのは、チェックリスト方式、 FMEA (Failure Mode and Effects Analysis:故障モードと影響解析)、 HAZOP(Hazard And Operability Study)が使用されてきた。チェックリスト方式は、化学設備の経験が豊富であれば、ハザードを識別するのに最も簡単なツールである。しかし、実際、有効な経験が無ければ、ハザード評価の中で適切な判断ができない。さらに、定量的な方法では、システムや設備に関連するリスクレベルあるいは安全レベルを明確にすることが試みられている。この方法はモンド氏やダウ氏らが取組んできたようにすでにいろいろなものが存在しており、確立したものとしてはフォルトツリー法(FTA)やイベントツリー解析(ETA)がある。この延長線上に、地震地域におけるオフショア設備、大型石油輸入ターミナル、ファイヤー・マネジメント、石油化学工業におけるドミノ効果に関する専用のリスクアセスメント法が作られてきた。しかし、我々の中では、石油貯蔵タンクに関するリスクアセスメント法が欠けているという見解である。この方法が確立すれば、貯蔵タンク設備の安全操業とともに関連する安全の検討や評価に役立つ。

■ これまでの研究から、石油貯蔵タンクの操業に関して適切な運転基準を提示するとともに、ハザード評価の方法を系統的に説明していく。提案の方法は、ギリシャのある石油タンク基地を対象に予備研究として検討し、実施した。これは、ギリシャ開発省に代わって、欧州法規である「セベソ指令」による解析を行なった。1983年以降、EU(欧州連合)ではセベソ指令を実行することによって、経験について多くの情報が蓄積され、さらに、この指令が遂行される地域や支援方法が注目された。その中のひとつに、比較的単純で広く受け入れられたツールの存在がある。このツールは、セベソ検討における評価や成果についてよく理解している専門家の間ではよく知られている。そして、この方法の欠点を見直して改善するため、方法の提案者である筆者らはギリシャ石油化学工業会で経験を積んだエンジニアとともに組織化し、討議を行なった。

■ この論文では、2節で貯蔵タンクの分類と起こりうる事故の種類、3節でハザード評価の方法の提案、4節でギリシャにおける専門家による議論の内容、5節で提案した方法に関する一般的議論と結果について解説する。

2.貯蔵タンクの事故
2.1 貯蔵タンクの分類
■ 石油精製・石油化学工業において、原材料および中間製品または最終製品の保管には大型貯蔵タンクが使用される。貯蔵タンクは、通常、生産施設とは別に限定された区域に設置される。リース氏(Lees)は主要な安全パラメータについて詳細な情報を提示した。化学技術者協会(ICheE)では、燃焼性や可燃性の石油を貯蔵するタンクを大きく3つに分類している。図1を参照。
(1) 固定屋根式またはコーンルーフ式タンク
(2) 上部開放型浮き屋根式タンク(シンプル・ポンツーンまたはダブルデッキ)
(3) 内部浮き屋根式タンク
図1 石油貯蔵用タンクの分類
■ 固定屋根式またはコーンルーフ式タンクは立型円筒の側壁と固定したコーン形の屋根から構成され、それぞれは溶接されている。米国石油協会のAPI規格によれば、この種のタンクは屋根と側壁の溶接継手部を弱く作って、内部爆発時に対処できるようにしている。すなわち、屋根部がタンクから外れ、火災はタンク内の油面部だけに限定される。この型式のタンクは、通常、重油、アスファルト、残渣油のような黒ものと呼ばれる重質油の貯蔵に用いられる。従って、貯蔵油を液状に保つため、この型式のタンクには保温を取付け、スチームコイルなどの加熱源を必要とする。

■ 上部開放型浮き屋根式タンクは、円すい屋根タンクと同様、地上式の立型円筒形である。しかし、円すい屋根の代わりに、ポンツーン型の浮き屋根構造になっており、液面の変化に従って上下に移動する。この構造によって大量の油のベーパーが大気へ放散することを防いでいる。さらに、浮き屋根と側板の間のスペースにはリムシールが設置される。このリムシールは、一般に灯油留分の油で満たされたゴム製のチューブとなっており、火災が発生し始めるのは大抵この部分である。

■ 内部浮き屋根式タンクは、上記2つの型式のタンクを組み合わせたもので、円すい屋根のタンクの油面に直接浮かぶ内部浮き屋根または内部浮きパンを有したタンク型式である。この型式は内部の浮きが引火の可能性を減少させ、タンク火災の発生を回避させることができる。

■ 浮き屋根式および内部浮き屋根式のタンクは、原油および白油製品(ジェット燃料、ディーゼル燃料、ガソリン)のような高揮発性の油に使用される。これらの型式のタンクで重要なパラメーターは、適切な容量をもった防油堤を有し、タンク間あるいは他の施設間に安全距離を有していることである。これらによって油流出時にまわりの施設にある発火源と隔離することができる。

2.2 タンク火災事故への進展
■ タンク事故において進展する可能性のある火災についてはLASTFIRE(2001年)に記載されている、(図2参照)
(1) リムシール火災
(2) 屋根上火災
(3) 全面火災
(4) 防油堤内火災
(5) ポンツーン爆発
(6) ボイルオーバー
図2 タンク火災のシナリオ例
■ 最も激しい事故が全面火災とボイルオーバーである。上記の火災についてはクリッパ氏(Crippa)らが行なった研究の中で言及されている。 LASTFIREプロジェクトのデータによれば、タンク事故の中で最も共通的で多いのは“リムシール火災”であり、その事故原因で多いのは“落雷”である。チャン氏(Chang)とリン氏(Lin)の研究によれば、タンク事故の原因として最も多いのは落雷であり、タンク事故のうち85%は火災・爆発だという。

■ 一方、事故としては極めて稀であるが、全面火災が時としてボイルオーバーへ進展するということは重要である。 LASTFIREおよびペルソン氏とロンネルマルク氏(Persson and Lonnermark)の文献資料によれば、大規模なボイルオーバーとして記録が残されているのは、四日市(Yokkaichi/日本、1955年)、ペルニン(Pernin/オランダ、1968年)、フィンドリー(Findlay/米国オハイオ州、1975年)、タコア(Tacoa/ベネズエラ、1982年)、ミルフォード・ヘーブン(Milford Haven/英国、1983年)、テッサロニキ(Thessalonica/ギリシャ、1986年)、ポート・エドゥアール・エリオ(Port Edouard Herrot/フランス、1987年)、スキクダ(Skikda/アルジェリア、2005年)である。しかし、ボイルオーバーの可能性に関する科学的な見解について言及されたものはほとんどない。LASTFIREやシャルフ氏とアブドラ氏(Shaluf and Abdullah)の研究によって述べられているような前兆現象があるにしても、ボイルオーバーは危険な事象だといえる。

2.3 蒸気雲爆発
■ バンスフィールド事故について、ハーバート氏はタンク火災事故としての新しい見方を提示した。ジョンソン氏の言う、典型的な空間封じ込めのない状況下での爆発としてこれまでになかった新しい現象だというのも妥当な見方である。石油・天然ガス業界では、可燃性物質の漏洩によって形成する蒸気雲は、通常、障害物に影響されるが、その火炎加速や過圧力の危険性の大きさには経験的に気がついていた。障害物とは、主に多くの施設内で見られるような設備、配管、その他の構造物であるが、バンスフィールド事故では、空間封じ込めのない土地における爆発の様相を呈していた。そこでは植物(木ややぶ)だけの領域における火炎加速の状態にあったと考えられ、このため当該事故が激しい爆発に至ったものとみられる。

■ 実際、石油貯蔵タンクの爆発事故の事例に関して調査した結果では、つぎのような結論が導き出されている。
 (a) 爆発はガソリンの漏洩が続いた状態で起こる。
 (b) その主要因はタンク過充填である。
 (c) 蒸気雲の引火場所は近くである。(漏洩点から50~300m)
 (d) 漏洩が始まってから引火に至るまでの時間は20~90分である。
 (e) 事故前はほとんど無風の条件である。
 (f) 世界的にみると5年間のうちに、この種の事故(壊滅的でないにしろ)が再発している。
 タンク過充填(バンスフィールド型の事例)によって炭化水素の蒸気雲が放出された場合、おそらく爆発事故に至ることは明らかである。このため、関係施設をチェックする必要があり、特に適切な安全保護システムのない商用のタンク基地(石油貯蔵所)では調査すべきである。

3.石油貯蔵タンクのハザード評価
3.1 一般的なステップ
■ 石油燃料を貯蔵するタンク基地は、火災発生の可能性が大きいハザードを有する特別なタイプの化学施設である。ハザード分析は、サントス-レイエス氏とベアード氏(Santos-Reyes and Beard)が提言したような一般的な項目すべてについて行なうべきである。
 ● 全体地図を含めて、地方エリアに関する項目
 ● 保護すべき環境領域とともに、エリアにおける水理地質学的データ、水路学的データ、気象学的データに関する事項
 ● 豪雪や豪雨に関する気象データ
 ● 周辺における危険施設のリスト
 ● プロセス・フロー図とともにプラントおよび/またはタンク基地の平面図
 ● プラント全体計画における生産プロセスに関する項目
 ● 保管するハザード物質のMSDS(物質安全性データシート)の内容とともに、“セベソⅡ”による化学物質の特性

3.2 タンク精査用に提案する方法
■ 本格的な定量分析を論ずる前に、ここでは危険性物質の放出の結果による火災の始まりを容易に識別できる方法について提示する。その方法とは、第1節で述べたチェックリストの考え方である。
 実際、提案したチェックリストはタンクの不具合へ至る原因の一覧に基づいて作成しており、さらに、貯蔵タンク事故を回避する予防的な対策方法や防護的な対策方法のリストを付けている。この2つのリストはタンクの運転と保全に関する過去の経験から抽出されたもので、安全に関わる問題を無くすために必須の条件を考慮している。ある施設がこれらの基準を満たしている場合、総合的なリスクを負うことなく、事故の起こる可能性は極めて低いといえる。時間と資源(人・ツール)がある場合、施設について本格的な定量的リスク分析を実施することができる。付け加えるならば、この方法は政府機関のツールになり得ることででき、前者のチェックリストは、プラント所有者による時間のかかる安全性分析のチェックに役立つ。

3.2.1 タンク事故の失敗原因
■ 固定屋根式および浮き屋根式タンクにおける一般的な失敗原因は、表1に示す見出し項目のように分類できる。詳細は以下に示す。
表1 事故の直接原因
(1) 運転上のエラー
■ これらにはつぎのような事項を含む。
 (a) 荷役作業時において液位計測システムの故障またはヒューマン・エラーによるタンク過充填
 (b) ドレン弁が偶発的に開いたままになったために起こる油の放出
 (c) 固定屋根式タンクにおいて荷役作業中にベント弁が閉止
 (d) 運転ミスによる油漏洩
 (e) 高温の製品油の受入れ
 (f) 禁じられている滞留池への排出
■ 要因(a) (b) (d) (f)では、防油堤内への油漏洩に至り、可燃性混合気の形成につながる。このため、発火源があれば、容易に引火し、防油堤内全体へのプール火災になりうる。要因(c)では、負圧によってタンクが座屈し、このためタンク破損や油漏洩に至ることがある。 要因(e)では、タンク内の温度が上昇し、油のベーパーが放出されることにつながる。

(2) 設備/計器の故障
  この分類にはつぎのような事項が入る。
 (a) 浮き屋根が沈降すると、タンクの全面を覆うような猛烈な火災に至ることがある。
 (b) 液位計器の故障はタンクの過充填に至ることがある。(前記参照)
 (c) 出口弁の故障
 (d) ベント弁の固着で閉止状態になると、前記のような事象に至ることがある。

(3) 落雷
  落雷はつぎのような状態のときに重大な事故の発端になる。
  (a) 直撃雷に対して機能するよう付けられたタンク接地の不良
  (b) 落雷によって火災に至る恐れのある可燃性液の漏れやリムシールの漏れ
 (c) 故障や油漏れにつながるようなタンク側板への直撃雷

(4) 静電気
  静電気によってつぎのような状況に至る。
 (a) 浮き屋根のゴム製シールが切れた状態で、静電気による火花が発生すれば、間違いなくタンク屋根火災に至る。
 (b) 固定屋根式タンクの接地が不良の状態で、生じた静電気はタンク側板とのチャネリングによってベーパーに引火する。
 (c) タンクへの張込み時に、液体(主に白油系)の流れによって生じる静電気は火花発生に至ることがある。特に通常より配管径が細いために流速が速い場合。
 (d) 不適切なサンプリング方法(例えば、適切でない作業靴、手袋、VHF装置)によって生じた静電気も火花を発生させ得る。

(5) 保全上のミス
  保全上のミスが事故の原因に至ることがあるが、例えば、つぎのような例である。
 (a) 防護措置をせずに、火花を発する溶接や切断作業
 (b) 非防爆型のモータやツールの使用
 (c) ケーブルの短絡
 (d) 変圧器のスパーク
 (e) 溶接設備の接地不良
 (f) 汎用および防爆仕様機器の保全不良

(6) タンク本体の破損および割れ
  つぎのような要因によるタンク本体の破損および割れは事故の原因になり得る。
 (a) 溶接不良
 (b) 側板の歪みや凹み(前記参照)
 (c) 屋根や側板の腐食、地盤沈下

(7) 配管系の破損および漏れ
   配管系の損傷はつぎのような事象へつながることがある。そして、いずれの場合も液体の流出(小規模の場合や大量漏洩の場合がある)に至り、引火すれば、プール火災になる可能性がある。
 (a) バルブまたはポンプの漏洩
 (b) ガスケットからの可燃性液体の漏洩
 (c) 配管材の破損
 (d) 請負者の失敗
 (e) 液体膨張による配管破損

(8) その他の要因
 (a) 地震
 (b) 異常気象
 (c) 配管への車両衝突
 (d) 近くでの裸火またはタバコの残り火
 (e) 別な装置からの影響(ドミノ効果)
 (f) 燃料移送配管系で起こった事故の影響
 (g) 破壊活動または放火(故意の損害)

(9) 安全支援システムの不調
   安全支援システムの不調にはつぎのような事項がある。
 (a) 電源システムの喪失
 (b) タンクの破損へつながるタンク冷却系の喪失
 (c) 消火用水の供給システムの喪失
 (d) 消火水の配管系統の凍結

3.2.2 予防方法および防護方法
 上記に述べた要因に対して、その発生を制限したり、予防したりするための防護方法はある。表2はその方法を示したもので、解説を以下に示す。
表2 対策方法
(1) タンク設計
 (a) 国際的な規格に準拠すべきである。例えば、API(American Petroleum Institute)、ASME(American Society of Mechanical Engineers)、NFPA(National Fire Protection Association)には、材料選定、製作、据付け、検査、補修、安全管理について規定されている。
 (b) タンク上部は過充填防止構造とし、液がタンクへ戻るように改造すべきである。
 (c) 現地の土質や地震などに関するデータを明らかにする現場の検査を含めるべきである。
 (d) 安全距離の基準を尊重すべきである。または、付加すべき防護方法を取り入れる。
 (e) 操業前にタンク容量を明確に定義すべきである。そのことによって操業管理上の過充填防止を図る。

(2) 保全
 (a) 正しい方針に基づく日常検査を行なうべきである。
 (b) 過充填防止システムについては、高液位警報、計測装置、遮断システムなどの定期的な確認テストを実施すべきである。
 (c) ドレン設備とともにベント設備について予防的な点検を行なうべきである。
 (d) 設備(例えば、バルブ)や非防爆ツールは国際的な規格や指針(欧州ATEX指令)に則ったものを使用し、適切な管理のもとに使用すべきである。
 (e) 会社側と請負者の双方にとって適切な火気作業許可システムを管理していくべきである。
 (f) 請負者の手抜きが無いよう、作業計画を適切にチェックすべきである。

(3) 設備
 (a) すべての規格や基準に合致させるべきである。
 (b) 避雷設備(例えば、近くの丘に避雷針)を設置すべきである。
 (c) タンク過充填対策として多重システム(例えば、高高レベルスイッチとレーダー式液位計)をとり、特別な配慮をすべきである。
 (d) 荷役中には、液受取り側が最終的にコントロールできることを確保すべきである。
 (e) 遮断弁はファイヤセーフ型の遠隔で操作できるようにすべきである。
 (f) 配管系は液封対策を講じるとともに、外力、腐食、振動、異常高温、静電気防止(例えば、液入口部のディフューザ)に対応したものとする。

(4) 安全支援システム
      電源、計装空気、警報システムなどタンク基地における主要なユーティリティの供給は、中断することのないよう確保しなければならない。この安全支援システムはつぎのとおりである。
 (a) 火災検知(連続)および注意喚起装置(警報システム)は各タンクに設置し、発災時に計器室へ伝送して警告を発するようにする。さらに、タンク地区には火災警報器を設置し、火災発生時に消防隊がすぐに対応できるようにしておくべきである。
 (b) 消防支援ネットワークには、火災事故時に必要な水供給ポンプ、タンクの冷却系、消火用配管を含む。(水供給はタンクおよび防油堤内を含む) 水の供給系統は、規定された時間内において流量および圧力を連続的に確保できるように設置サイズを決める。消火器は消防支援ネットワークのひとつとして位置づけ、タンク入口プラットフォームや防油堤内の通路に配備する。
 (c) 大型タンク火災(直径>40m)では、消火泡剤の供給・搬送システムを確立しておくべきである。このシステムには、水モニター、水ポンプ装置、 泡モニター、泡ポンプ装置、泡剤搬送車またはコンテナー、大口径ホース、水供給源を含む。(IChemEも参照) 
 (d) 各タンクには冷却システムを装備し、隣接火災からの曝露を防ぐようにする。
 (e) 消火用水タンクおよびディーゼル駆動ポンプの予備を設ける。
 (f) 消防支援ネットワークの配管系統は凍結防止対策を施す。
 (g) 過充填防止システムには、ガス検知システムを付加することは重要である。
 (h) 監視カメラを設置すると、タンク近傍で何が起こっているかを直接見ることができ、計器室のオペレータにとって異常時の対応に役立つ。
 (i) 緊急時対応計画を事前に制定しておく。この中には、過去の成功例や対応事例から基づいてまとめられた個人用保護具やMSDS(化学物質安全性データシート)の知見を含む。

(5) その他
   一般的に配慮すべき事項はつぎのとおりである。
 (a) 侵入防止対策としては、施設エリア境界柵のセンサー、構内監視、訪問者の入構管理、電源施設のセキュリティ高レベル化を行なう。
 (b) タンクへの供給電源の無停電電源装置の付加
 (c) タンク近くでのタバコ厳禁
 (d) 異常気象現象時の防護対策
 (e) 車両衝突への防護対策
 (f) 配管の外力からの防護対策
 (g) 隣接装置からのドミノ効果への対策
  (h) 架空電線の防護対策
  (i)  適切な標示および交通標識
  () 含油排水の適正管理方法
 (k) 消火用水の適正管理方法
 (l) 雨水の適正管理方法
 (m) 5Sにもとづく建物の適正管理
   (5S:整理、整頓、清掃、清潔、躾;Sort, Straighten, Shine, Standardize, Sustain)

3.3 タンク安全評価のためのチェックリスト
■ 上記の解説は研究チームによってまとめられたプロトタイプのチェックリストから引用したものである。このチェックリストは前記のような問題解決に役に立ち、安全専門家や設備所有者にとって有用なツールである。このリストは、表1表2の項目のほかに「評価」および「所見」を記載できるようにしたもので、事故要因を認識し、タンク基地所有者に事故防止方法の実行を促すことができる。評価と所見の欄はタンクの精査を実施する担当者が書き込んでいく。

■ この際、「評価」の欄に精査担当者は実施状況に応じた記号(A、B、C、X)を記入していく。実施状況は、分析に伴って判明したことや提案する防止方法によって判断する。各記号の意味はつぎのとおりである。
 A :全記載済(安全に関する検討において失敗の要因を特定し、防止対策について詳細に記述)
 B :記載に不足あり(安全に関する検討では、失敗の要因または防止対策について完全に記述されていない)
 C :不十分(安全に関する検討は終わっておらず、失敗の要因や防止対策について記述されていない)
 X :不適当(当該設置計画では、失敗の要因特定や防止対策の検討は適用できない)
 「所見」の欄には、失敗の要因特定や防止対策に関して重要だと思われる精査担当者のコメントを記載する。

4.対策方法の検討
■ 対策方法の健全性を確証するため、開発チームはギリシャの大きな製油所やタンク基地における専門家に集まってもらい、対策方法の重要点について議論し、有用な見解をまとめた。グループは運転部門と安全部門の専門家(各現場から2~3名)で組織し、集団討議してもらった。検討チームは、表1・表2の項目と構成について説明し、専門家にいろいろな意見を出してもらい、彼らの見解や提案を記録していった。
各グループの討議は1時間半から2時間行われたが、専門家にはあとで書面で意見を送ることができるようにした。

■ 専門家の貴重な意見書を含めた討議結果によって、失敗要因と対策案の順序付けができるようになったが、これは実際の施設における最新の方法の中で、何が重要かということに基づいたものである。参加した人の多くは多国籍企業(シェル、エッソ)や国際的な企業の所属であり、討議結果がギリシャ以外の国にも適用可能だと研究チームは考えている。何人かの施設所有者に聞いたところ、バンスフィールド事故以降の国際的な方法として、ほとんどの安全問題に対して的確であることが確認できた。なお、専門家の討議では、文献に書かれていることや新たな提案について話し合われ、つぎのような事項を確認した。
 (a) すべての専門家が極めて重要だと位置付けているのは、統合型自動システムの過充填防止である。すなわち、緊急遮断弁の連動有無にかかわらず、独立型の自動レベルスイッチ高-高およびレベルスイッチ低-低システムである。 
 (b) 雷に対する防護策は極めて重要で、各タンク個別に十分効果的な接地システム(帯水層に達する)を設けることは不可欠である。この際、タンク基地内に適切な高さと距離をとった避雷針との組合せが有効である。
 (c) ガソリン、原油、ケロシンの貯蔵に使用される浮き屋根式タンクで最も頻度の多い火災要因はリムシール火災とみている。その特徴のひとつは比較的燃焼時間が短かいことであるが、一方、燃焼中には、かなり大きな熱的負荷が生じている。
 (d) 固定屋根式タンクの頂部に取り付けられるベント装置は、鳥の巣などの理由によって容易に閉塞する可能性があるので、定期的に点検すべきである。
 (e) 耐風設備は計画的な保全を行なうようにし、耐風強度を確保する。
 (f) 浮き屋根の沈降(比較的容易に起こる)は絶対回避しなければならないので、ポンツーン、リムシール、屋根排水システムの一体的な点検を定期的に実施する。
 (g) 事故が起こったとしても、常時の運転監視とタンクから適時の水抜きを行えば、製油所においてボイルオーバー事故が起こることはほとんどないと言えよう。しかし、商用のタンク基地で適正な管理ができていなければ、起こらないとは言えない。
  (h) 突然の集中豪雨のような異常気象現象は、含油排水系の溢流原因になることがあり、その結果、環境へ炭化水素汚染を広げることになるかもしれない。
 (i) 油を高温で受け入れただけでは、それが事故の原因になることはないとみている。

■ 一方、石油貯蔵タンクの安全性を世界規模で保証するという観点から、将来的に考慮すべき見解について専門家の中でも分かれた事項がある。その事項はつぎのとおりである。
 (a) 防油堤の壁、底部、継目部の安全保護の必要性。ひとりの専門家は、堤内エリアへの特定仕様設計車以外の車両乗入れを禁止すれば、タンク側壁への衝突という事態は回避できるという意見だった。
 (b) 蒸気雲爆発シナリオの事前検討。バンスフィールド事故調査委員会によって明確に推奨されているからといって、このようなシナリオを安全性検討の標準として考慮すべきかどうかという意見である。
 (c) 貯蔵タンクに冷却システムを設置することの是非。タンクに冷却システムの設置が絶対必要だという見解を強く支持する専門家はわずかであった。一方、他の専門家は、ギリシャの法令で遡及適用されていないこともあり、必要条件とは考えないという。逆に、タンクの壁側に使用した冷却水から消火泡の層を守る必要のあることが指摘された。燃料のガス相を覆っている泡の層に浸入するということは、マスキング効果を失わせることになるからだという。
 (d) 貯蔵タンク上部や防油堤境界に設置する火災検知システムに対する過小評価。このシステムは誤発報がたびたび起こるので、設置してもすぐに信頼性を失ってしまう。  
 (e) 処理を誤ると環境への重大な脅威になりうる消火排水の回収方法と処理方法については議論にならなかった。(実際の対応方法が定められていないところもあり) 
 (f) 実際的な現行規則(NFPA)が無い時代に建設されたタンク基地では、貯蔵タンク間距離を補完するために義務化された冷却システムのような特定安全基準に則ることが無いこと。

5.  まとめ
■ 本論文では、石油貯蔵タンクのハザードに関する網羅的な説明と有効な対策について述べ、石油タンク基地においてリスク評価の方法を適用する際の参考になることを期待した。特に「セベソ指令」などEU規制の適用を受ける対象国を念頭においた。方法の説明では、潜在するリスクについて施設所有者にとって有用な知見を示し、タンク事故の進展に伴うリスクの重大性について順位付けの考え方をとった。

■ 石油貯蔵タンクにおいて事故に至る最も共通的な起因現象についてリスト化するとともに、予防対策と防護対策を示した。本研究の中で革新的なところは、安全エンジニアや安全評価担当者に有用なチェックリストの考え方を示したことであり、これによって、容易にリスクの主要因を明らかにでき、詳細な分析を進めることができる。

■ リスク評価の方法に関する提案をした筆者らは、ギリシャ石油化学工業界から経験豊富な安全エンジニアを招き、いくつかのグループ討議の場を設定して、提案した方法に不足している点の修正や改善を試みた。この試みは非常に有効で、専門家チームの聞き取りから石油貯蔵タンクの操業における多くの知見や経験を得ることができ、タンク施設の操業の裏に潜む重要な点を正確に知ることができた。専門家たちも、この対策方法が石油貯蔵タンクの安全操業の評価を行なうのに簡単で大いに役立つとみている。討議された中で付け加えておくべきことは、専門家の見解で上位にランクされなかった問題にも、やはり注目しなければならない事項があり、安全評価のセベソⅡタイプの枠組みの中で検討すべき事項があった。特に、蒸気雲爆発シナリオは徹底的に分析して追加すべき予防対策や防護対策を提起すべきである。これによって、結果として大災害に至るような事故の可能性を最小にすることができると思っている。

■ さらに、安全対策や専門知識が大規模な製油所のものに匹敵しないような商用のタンク基地では、安全管理について、例えば監視カメラによるタンク受入れ時のモニタリングなど、追加の手段をとるべきである。

■ 筆者は、提案したハザード評価の方法が安全エンジニア、安全評価担当者、安全監察官、プロセス会社の人たちにとって有益で、石油貯蔵タンクの安全検討に関する準備や評価に携わる際に役立つことを望む。

補 足                 
■ 「セベソ事故」は1976710日、イタリアのミラノ郊外セベソにある化学工場で、猛毒物質であるダイオキシンの放出事故が起こった。バッチ作業の終了時に、運転指示書を無視した条件で停止した。そのため、温度上昇と暴走反応によるダイオキシンの大量生成、さらに破裂板が作動し、ダイオキシンを含む内容物が大気に拡散した。1,800ヘクタール(東京都新宿区に相当)の土壌が汚染され、22万人が被災し、後遺症に苦しんだ。暴走反応やダイオキシンの発生ついて正しい知識が研究者や工場になかったことが原因である。
 親会社の研究所では5日後にダイオキシンの存在を確認したが、直ちに地元自治体に連絡しないで、さらにその5日後に再度の確認ができてから漏洩物がダイオキシンを含んでいる旨を地元自治体に連絡した。連絡が遅れたため、この間、周辺住民はダイオキシンに被ばくし、被害が拡大した。 直接取られた対策は汚染範囲1,800ヘクタールの表土を全て除去して、そこに客土をした。汚染土壌は大きな穴を掘って埋め、さらにコンクリートで覆った。

■ 「セベソ指令」とは、セベソ事故を教訓として当時のEC(欧州共同体)が定めた化学工場の安全規制である。1982年、EC(欧州共同体、現在の欧州連合EU)は、有害物質による汚染を減らし、人々の安全を守るための規制である「特定産業活動による大規模事故災害に関する理事会指令(82/501/EC)」(「セベソ指令」と呼ぶ)を発行し、1985年までに実施するよう加盟各国に求めた。
 その後、1996年に改正された「大規模事故災害防止指令(96/82/EC) 」(セベソ指令II)が採択されている。この指令の目的は、危険物質を伴う大規模災害を予防し、災害が発生した際の人間や環境への危害を最小限にすることにある。対象となるのは、特定の産業活動に従事する者および一定量の危険物質を保管する者で、対象者は安全管理計画および事故時計画を策定しなければならず、公衆へこの情報を公開しなければならない。対象となる施設の新設または改築においては、設置場所が加盟国により管理され、交通の要衝、人口密集地からは遠ざけられる。加盟国は対象となる施設を年1回立入り調査することになっている。
 「セベソ指令Ⅱ」に関しては、英国安全衛生庁(Health and Safety Executive:HSE)の化学工業部Tom Maddison博士による講演「化学工業における重大事故の管理 欧州の法制度と適切なリスク評価テクニックの利用」が行われており、その概要が日本語訳で紹介されている。

■ 「ハザード」と「リスク」は一般に以下のように分けられる。
 「ハザード」とは、対象物が持っている火災爆発の危険性、人の健康障害の原因となる有害性、環境への影響をいい、「ハザード評価(ハザードアセスメント)」とは、そのハザードを分類し、その程度を評価することをいう。 「リスク」とは、ハザード評価の結果に加えて対象物の製造・取扱条件、使用条件、人の曝露、環境への排出を考慮した場合に生じる危害をいい、「リスク評価(リスクアセスメント)」とは、リスクの程度を解析・評価することをいう。「リスクマネージメント」とは、リスク評価により把握されたリスクが許容される水準を超えないよう適切に管理することをいう。許容される水準を超えるおそれのある場合は、積極的に有効かつ実効性のあるリスク低減対策を実施する。
 一方、本論文では、貯蔵タンクをハザードの対象とし、ハザードの評価、リスクの評価、リスクマネジメントを対象とした対策方法を含めた取組みを「ハザード評価の方法」(Hazard Assessment Methodology)と称している。従って、上記でいう「リスクマネージメント」の概念に近い。
 「ハザード」(Hazard)も「リスク」(Risk)も日本語では「危険」と訳され、区別が曖昧であるが、たとえとして、ライオンはハザードであるが、ライオンだけではリスクは伴わない。ここに人間が居れば、リスクが生じるという話はイメージしやすい。

■ 「リスクアセスメント」は、狭義にいうと、リスクの程度を解析・評価するまでであるが、日本でよく言われているリスクアセスメントの手法には、リスク低減策の検討まで含まれている。リスクマネジメントに関するガイドラインはいろいろ出されているが、インターネットで入手できて参考になる資料は、「メーカのための機械工業界リスクアセスメントガイドライン」(社団法人 日本機械工業連合会、2010年3月)、「リスクアセスメント・ハンドブック(実務編)」(経済産業省商務流通グループ製品安全課、2011年11月)がある。
リスクアセスメントおよびリスク低減の概念図の例
(図は「メーカのための機械工業界リスクアセスメントガイドライン」(日本機械工業連合会)から引用)

所 感
■ 最初はハザードアセスメントやセベソ指令など日本の貯蔵タンク分野ではなじみのない用語が出てくるので、取っ付きが悪いが、「補足」の資料を併読していくと、なかなか興味深い内容である。特に、リスク評価から始めるのではなく、設置場所、気象条件、配置図、保管物質など一般的なハザードの分析から始めるという網羅性にある。既設の貯蔵タンク施設が当時の関係法令・規格に準拠して建設されているとしても、これが安全性の保証にはなり得ない。その後の事故などの情報から法令や規格が改正されても、遡及適用されなければ、施設の安全性は過去と変わっていない。見過ごされた事故があれば、リスクが潜在したままとなる。
 本論文のようなハザード評価を一度、行っておけば、既設の貯蔵タンクの安全レベルを認識することができる。法令や規格の改正あるいは新規の事故情報があったとき、既設施設の安全レベルに与える影響を知り、弱点とリスク低減策を知ることができる。この取組みは相当な労力を要するとみられるが、将来へ続く安全性を確保する観点から見れば、非常に有用な方法(評価)になると思う。

■ もうひとつ印象的なことは、欧州にとって英国バンスフィールド事故(2005年)の影響が大きいということである。著者はギリシャの人であるが、タンクの過充填と蒸気雲爆発シナリオの事前分析に過度と思えるくらいのこだわりがある。それほどバンスフィールド事故の蒸気雲爆発はありえないと思っていたことが、現実には起こったことを示しているように思う。この点、日本では、欧州から遠く離れているせいか、タンクの過充填や蒸気雲爆発の危険性への感度が鈍いように感じる。

備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Elsevier.com, A Hazards Assessment Methodology for Large Liquid Hydrocarbon Fuel Tanks, Journal of Loss Prevention in the Process Industries, 2012
         Authors
            C.D. Argyropoulos (National Technical University of Athens, CFD Unit, School of Chemical Engineering)
            M.N. Christolis (National Technical University of Athens)
            Z. Nivolianitou (National Centre for Scientific Research “Demokritos”)
            N.C.Markatos (National Technical University of Athens)


後 記: 石油タンク施設に対して、ハザード評価やリスクアセスメントを行なうことは有用だと感じています。それは、蒸気雲爆発の事前分析を行うか否かは別として、石油タンクの持つハザードやリスクは限定的であるからです。確かに、石油タンクは火災発生の可能性の大きいハザードを有する特別な施設です。限定的とは、原子力発電所(放射性物質)の持っている制御不能で何年も消えることにないハザードやリスクと比べてということです。最近、日本の原子力発電所が“新しく” 「確率論的リスクアセスメント」 (PRA:Probabilistic Risk Assessment)に取り組むという報道記事が出ています。しかし、別に新しいものでなく、以前から世界の原子力分野では知られた手法です。
 本来の確率論的リスクアセスメントは、事故の起こる確率の高い要因のリスク低減対策に活かすことと、過酷事故時の放射性物質飛散に伴う被害予測と避難計画の立案に活かすためのものです。英国では、比較的シビアに運用しようという考えがありますが、米国では、過酷事故には触れず、事故の起こる確率が低いという結果を出し、原発推進のための理由に利用してきました。日本でも、昔から推奨されていましたが、運用されてこなかっただけです。東京電力福島原発の過酷事故発生によって、確率論的リスクアセスメントの手法が破綻しているのは自明です。このような状況の中で、倉の中のほこりをかぶった古い資料(お宝?)を引っ張り出してきた感じは拭いきれませんね。

2014年7月13日日曜日

ナイジェリアの石油ターミナルで落雷、タンク火災、その後油流出

 今回は、ナイジェリアのアクワ・イボム州にあるエクソンモービル社のモービル・プロデューシング・ナイジェリア社のクワイボエ・ターミナルにおいて、2014627日、落雷によるタンク火災があり、6月30日に再び落雷があり、停電し、油流出が起こったという一連の事故を紹介します。
落雷による事故のあったナイジェリアのクワイボエ・ターミナル
(写真はグーグルマップから引用
 <事故の状況> 
■  2014年6月27日(金)正午頃、ナイジェリアのアクワ・イボム州(Akwa Ibom)にあるエクソンモービル社の石油ターミナルで落雷による火災があった。火災があったのは、モービル・プロデューシング・ナイジェリア社のクワイボエ・ターミナル(Mobil Producing Nigeria、 Qua Iboe Terminal)で、貯蔵タンクのリムシール部で発生した。
モービル・プロデューシング・ナイジェリア社のクワイボエ・ターミナル付近の風景
(写真はグーグルマップから引用)
■ エクソンモービル社は、雷を伴った嵐によって627日(金)にアクワ・イボム州にあるモービル・プロデューシング・ナイジェリア社クワイボエ・ターミナルにおいてタンク1基が火災を起こし、 629日(日)に油流出があったことを発表した。この事故に伴う死傷者は出ていないという。

■ 会社によると、火災によって大量の油が焼失したといい、流出した油量は分かっていないという。会社の発表では、6月27日(金)現地時間の正午頃、タンクに落雷があり、火災が発生したが、その日のうちに鎮火したという。6月29日(日)再び、ターミナルに落雷があり、停電となり、その結果、油流出が起こった。会社の発表では、油封じ込めの緊急対応システムが発動され、海岸の環境復元作業を開始し、関係機関と地域社会のリーダーに連絡したという。

■ 米国の石油巨大企業であるエクソンモービル社は、ナイジェリアのニジェール・デルタ東部地区においてクワイボエ・ターミナルを操業しているが、取扱量はナイジェリアの国内生産量の20%に相当し、主に輸出されている。この施設は原油生産が沖合であるため、ほかの地区で起こっているような破壊活動や油の窃盗は見られない。

■ 6月30日(月)のエクソンモービル社広報担当は、落雷による停電のために起こった油流出は“極く少量”だと語った。

■ 原油の流出はわずかだっという会社側の簡単な発表に対して、地元住民は漏れた原油がイベノ海岸線に広がっている証拠があると主張している。地域社会のリーダー達は、責任回避のため流出があったことを否定するかのような会社側を非難している。いくつかの沿岸地域では、大量の油流出による影響を受けていると付け加えた。

■ イベノ地域社会のイウオ・オクポム・コミュニティの長であるオコン・アクパヌボング氏は、エクソンモービル社の子会社であるモービル・プロデューシング・ナイジェリア社によって操業されているタンク基地から確かに油が流出していると語った。アクパヌボング氏は、会社の経営者として流出油のクリーンアップを早急に終わらせるべきだと強く主張し、さらに経営陣は現場を査察して、コミュニティに対して復旧を約束すべきだと語った。
 ナイジェリア職人漁師協会のイベノ地区コーディネータであるジョン・エティム氏は、今回の油流出によってイベノ地区漁業コミュニティは言い表せないほどの難儀を受けることになると語った。この地域の魚たちは隣国の領海の方へ移動していくことになり、この地域の漁業は今後数か月、悪い影響を被ることになるだろうと、エティム氏は語った。

■ 油流出によって、アクワ・イボム州イベノ地区のヌクパナ、エイェット・イコット、エスカ・エケメの3つのコミュニティが影響を受けている。村長(むらおさ)は、会社が進出して以来、一連の流出事故があり、このような形でモービル社への信頼が失われることは非常に残念だと語っている。村長の話によると、「土曜(6月28日)の夜、激しい豪雨と雷雲が通過した後、貯蔵施設から別な大量流出があった。流出は海へ流れ、沿岸のコミュニティ地域へ漂着した」という。

■ モービル・プロデューシング・ナイジェリア社クワイボエ・ターミナルのアカニヌィエンス・エシエレ広報部長は、構外に流出した油の量は約12バレル(2KL)だと語った。同社は、先週、火災事故があったことを報告しているが、落雷のせいだとしている。今回の流出事故が落雷や火災事故に関連しているのかはっきりしていない。

■ 環境保護団体のピース・ポイント・アクションは、今回の流出事故についてつぎのように伝えている。
 「エクソンモービル社のナイジェリア部門であるモービル・プロデューシング・ナイジェリア社は、アクワ・イボム州の操業基地において、また別な流出事故を起こした。流出は2014年6月29日(日)に起こったもので、地元コミュニティによると、漏れ量は15,000バレル(8,850KL)で大西洋の海岸線に流れ出ている。地元コミュニティのニュース源によれば、油流出は夜の漁に出かけた漁師によって最初に発見されたという」

■ 7月6日(日)、エクソンモービル社のタンク基地には、多くのデモ隊が押し寄せ、環境復元作業に失敗した会社側へ抗議をいい、地域コミュニティへの賠償を要求した。この騒ぎの背景には、2012年8月13日の大量流出事故の経緯がある。油流出の影響は海岸線35kmにわたったが、伝えられるところによると、エクソンモービル社は、最初、油流出事故を否定していた。その後、地域コミュニティにクリーンアップを約束し、賠償に応じるとした。しかし、流出対応は最小の努力しか行われず、賠償も払われていないと、この地区のコミュニティ・リーダー達は不満を述べている。この最初の流出事故以来、小さな油流出は何度も起こっているが、地域コミュニティはエクソンモービル社から何の賠償も受け取っていないという。
                   海岸に漂着した油膜   (写真はsaharareporters.com から引用)
注:死んだ魚が写っているが、油汚染によるものかは疑問が残る。
補 足                 
■ 「ナイジェリア」は、アフリカ西部に位置し、正式にはナイジェリア連邦共和国で、イギリス連邦加盟国である。南部は大西洋に面しており、かっては奴隷海岸と呼ばれていた。人口は1億7,400万人で、首都はアブジャである。
 「アクワ・イボム州」(Akwa Ibom)は、ナイジェリア南部に位置し、大西洋に面しており、人口は約480万人、州都はウヨ(Uyo)である。アクワ・イボムの名称はクワイボエ川(Qua Iboe River)からとったもので、近年、ナイジェリア国内で最大規模の石油・ガス生産の州として知られている。
■ 「ニジェール・デルタ」は、ナイジェリア南西部に位置するニジェール川の三角州地帯である。1950年代後半に始まった油田開発以降、ニジェール・デルタは産油地帯となり、アフリカ最大の石油産出国となり、生産量は日量200万バレルに上る。
 一方、ニジェールデルタ地域の大半は沼地という脆弱な環境にあり、原油の流出が頻繁に起きている。環境保護団体は規制取締りの手ぬるさに加え、パイプラインから日量15万バレル以上の原油を盗む犯罪集団を非難している。このように石油生産に伴う環境破壊が深刻な上に、石油収入の配分の偏りなどから国内紛争の要因のひとつになっている。
                     ニジェール・デルタの油汚染の例   (写真はourworld.unu.ed から引用)
■ 「モービル・プロデューシング・ナイジェリア社」(Mobil Producing Nigeria)は、エクソンモービル社とナイジェリア国営石油公社(Nigerian National Petroleum CorporationNNPC)の合弁企業で、1955年に設立された。権益はナイジェリア連邦政府が60%、残り40%をエクソンモービル社が持っている。モービル・プロデューシング・ナイジェリア社は、ビアフラ湾の3060km沖合から日量40万バレルのクワイボエ原油を生産し、アクワ・イボム州のクワイボエ・ターミナル(Qua Iboe Terminal)へ海底パイプラインを通じて送油している。クワイボエ・ターミナルはクワイボエ川東岸に位置し、原油タンク9基で71KLの貯蔵能力を有する。着船能力312,000DWT、水深22mの桟橋を有している。(グーグルマップによると、直径約90mの浮き屋根式タンクが見え、容量は8KL級となる。このほか6基の大型タンクが見える)
モービル・プロデューシング・ナイジェリア社のクワイボエ・ターミナル(奥側)
(写真はpanoramamio.comから引用)
所 感 
■ 世界で最も雷活動の高い地域は中央アフリカであり、このほかアフリカでは、ナイジェリアを含め、大西洋に面した沿岸国も雷活動は高い。ナイジェリア付近は落雷の多い米国メキシコ湾岸の各州と同じレベルにある。(「NASAによる世界の雷マップ」を参照) まわりの樹木などの状況によるが、ナイジェリアの石油タンクで落雷による火災が起こっても不思議ではないといえる。
NASAの雷マップ
■ 今回のモービル・プロデューシング・ナイジェリア社で起こった落雷によるタンク火災は、消火活動の状況を含めてよく分からないが、リムシール火災でとどまったようである。直径90m、容量8KL級の大型原油タンクであり、火災が進展すれば、ボイルオーバー発生の危険性もあり、全面火災にならなかったことは幸いだった。

■ 今回、落雷によるタンク火災が収まったのち、油流出事故が起こっている。この事故の方は状況がまったくはっきりしない。今回の報道と過去のナイジェリア国内の石油汚染状況も加味して総合的に考えると、つぎのように推測する。
 ● 石油ターミナルから構外への油流出は6月29日(日)に起こった。この要因が落雷による停電が本当に関係しているかはわからないが、おそらく、雨水排水系統から少量の油(会社発表で2KL)が漏れたものと思われる。
 ● 6月28日(土)に海岸線を汚染する油が漂着しているが、当日も激しい豪雨があり、これはクワイボエ川を通じて流れ出た上流の油田地帯における汚染油ではないかと思われる。(地元コミュニティによると8,850KLとあるが、量の信ぴょう性は疑問)
 過去の油流出事故後の対応のまずさから、地元住民とモービル・プロデューシング・ナイジェリア社の信頼関係は希薄になっており、問題が複雑化した。本来は、ナイジェリア国営石油公社ーナイジェリア政府が前面に立って、実際に汚染されている海岸線のクリーンアップを行なうべきであろう。(上流の油田地帯の汚染をクリーンアップする必要性に発展するが)

備 考
 本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。
   Bloomberg.com,  Exxon Mobil Reports Fire, Oil Spill at Nigeria’s Terminal,  June 29, 2014
       Nasdaq.com, Exxon Mobil Confirms Small Oil Spill, Fire at Nigeria Operation,  June 30, 2014   
   ・Nigeriannet.com, Fire at Exxon-Mobil Nigeria’s Qua-Iboe Facility, June 30, 2014
         ・Saharareporters.com, Fresh Oil Spill Recorded in Ibeno Local Government Area of Akwa Ibom State, July 01, 2014
         ・Shipsandports.com, Mobil’s Oil Spill Pollutes 3 Communities in Akwa Ibom, July 04, 2014
         ・Sciencythoughts.blogspot.jp, Exxon Mobil Facility in Akwa Ibom State, Nigeria, Occupies by Protestors, July 07, 2014
         ・Leadership.ng, Oil Spill: Akwa Ibom Community Shuts Down ExxonMobil, July 07, 2014


後記: 今回のナイジェリアにおける事故の最初の報道は簡単なものでしたが、一週間ほど経つと社会問題化した報道に変わりました。ナイジェリアの石油汚染、破壊活動、油の窃盗の問題は複雑で、容易に踏み込めない領域です。いうことで、この点の情報は最小限にとどめました。
新幹線の車窓からの風景 
 ところで、以前の後記で出光徳山製油所のプラント解体工事を紹介しましたが、そのときプラントに沿って新幹線が走っているので、車窓からよく見えるのではないかと書きました。先日、新幹線に乗る機会があり、注視していましたが、クレーンは見えても、緑地帯の樹木の影になり、解体状況はほとんどわかりませんでした。木々は40年ほど前に植樹されたものですが、プラントは衰退していくのに比べ、木は随分大きくなるものですね。 


2014年6月25日水曜日

米国イリノイ州メイコン郡で落雷によるタンク火災

 今回は、2014年6月1日(日)、米国イリノイ州メイコン郡ディケータ郊外にあるプロダクション・エナージー社所有の油井用施設で、落雷を受けてタンクが火災を起こした事例を紹介します。
  イリノイ州メイコン郡で落雷による火災で被災したタンク (写真はIllinoishomepage.net から引用
 <事故の状況> 
■  2014年6月1日(日)午後、米国イリノイ州にあるタンク施設で落雷による火災があった。事故があったのは、イリノイ州メイコン郡(Macon County)ディケータ(Decatur)郊外にある油井用のタンク施設で、落雷を受けてタンクが火災を起こした。

■ 消防署は、油井近くの住民から、午後3時25分頃、雷雲が通過している際、タンクが火災になったという通報を受けた。油井はディケータ市街地から南へ約2マイル(3km)のエルウィン通りとボウマン通りの交差点近くにあった。
           イリノイ州メイコン郡ディケータ郊外の風景  (写真はグーグルマップから引用)
■ 炎は15フィート(4.5m)の高さまで舞い上がり、火炎から2フィート(0.6m)の間隔しかないタンク群は加熱され、爆発の恐れがあった。実際、ある時点では、強烈な輻射熱によってタンク内の圧力が上昇し、危険なほどタンクが膨らんだ。

■ 南メイコン消防署のエド・オーカンプ署長によると、消防隊が到着したとき、渦巻く黒煙と舞い上がる大きな火柱に直面したという。オーカンプ署長はマウント・シオン消防隊の相互応援を要請したと語った。マウント・シオン消防隊には専用の泡消火剤搬送車を保有していた。「泡剤は手に入ったが、それで十分でないことは分かっていた」とオーカンプ署長は語っている。
 ヒッコリー・ポイント消防隊が別な専用の泡装置を持ってきた。さらにサウス・ウィートランドおよびブルー・マウントから相互応援の部隊がやってきた。「我々は40人規模になった。また、メイコン郡保安官事務所が支援してくれたし、ディケータ救急隊が待機していてくれた。幸い、けが人が出ることのなかったことに感謝している」とオーカンプ署長は付け加えた。

■ 消防隊は午後5時45分頃まで現場で活動した。タンクが噴き飛ぶ状況になる前に、火災は消火された。 保安官事務所のジェイミー・ベルチャー副官は、消防隊が活動している間、エルウィン通りの一部を閉鎖したと言い、「そのときは、他のタンクが爆発するような状況だったとは知らなかった」と語っている。

■ 日曜の夕方になって、油井の操業を行っているプロダクション・エナージー社の社員が現場へ入り、影響を受けた油井を閉止させ、タンク群を空にした。被災したタンクから油が漏出したが、 オーカンプ署長によると、土盛り堤内に溜まったのは全体の5%で、すべて堤内に留まったという。

■ 現場では、プロダクション・エナージー社によるクリーンアップが始められた。同社によれば、6月3日(火)までには終わる見込みだという。
                      被災したタンク施設  (写真はIllinoishomepage.net から引用)
                      被災したタンクの例    (写真はIllinoishomepage.net から引用)
補 足                                                        
■ 「イリノイ州」は米国中西部に位置し、人口約1,280万人で、人口では国内5番目の州である。州都はスプリングフィールドで、最大の都市はシカゴである。イリノイ州は石炭の埋蔵量は多いが、石油は小さな油田がある程度である。イリノイ州は農業が盛んで、大豆、トウモロコシの生産高は国内でも12位である。
 「メイコン郡」(Macon County)は、イリノイ州の中央部に位置する郡で、人口は約110,000人である。
 「ディケーター」はメイコン郡の郡庁所在地で、人口約76,000人の都市である。
アメリカ合衆国イリノイ州 の位置
■ 油井の所有会社は「プロダクション・エナージー社」(Production Energy)と報じられているが、会社の詳細はわからない。ディケーター郊外にあるタンク施設は天然ガス井に見られるような配置であるが、はっきりしない。タンク側板には溶接線が見られるので、鋼製と思われる。しかし、標題写真の被災タンクは鋼製ではなく、FRPのような樹脂タンクのようにも見えるが、これもはっきりしない。また、記事の中で「強烈な輻射熱によってタンク内の圧力が上昇し、危険なほどタンクが膨らんだ」とあり、被災タンク写真の中に底部が丸くなった形状のものがあるが、これが膨らんだ跡かどうかもはっきりしない。なお、グーグルマップから推測すると、タンクの直径は約3mであり、容量は3040KL級とみられる。
             火災のあったタンク施設(被災前)   (写真はグーグルマップのストリートビュー から引用)
所 感 
■ 20145月に、テキサス州で落雷によるタンク火災が続いた。この点、イリノイ州の落雷によるタンク火災は珍しいが、NASAによる世界の雷マップ」によると、イリノイ州は雷の少ない地域ではない。最近は、メキシコ湾岸の州だけでなく、中西部の州において落雷によるタンク火災が起こっている。異常気象による雷雲発生の頻度が増えていることと、内陸地での小規模の油井(天然ガス)が増えているためと思われる。従って、今後も米国における落雷によるタンク火災が減ることはないだろう。

■ 油井関連施設のタンク火災は燃え尽きさせる戦略をとることが多い。今回のタンク火災は大きな都市の郊外で起こったので、泡消火剤は確保できたとみられる。火災を起こしたタンクまわりには同種のタンクが数多くあったので、延焼していく可能性は高かった状況からすれば、被害は最小に留められたと思う。消防署の相互応援が機能しているし、おそらく、今回のような火災事故に対する訓練が行われていたものと思う。
1k㎡当たり年間平均の雷光回数
備 考 
  本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。
   ・Herald-review.com,  Lightning-indused Oil Tank Fire Stopped,  June 02 , 2014
       ・Illinoishomepage.net, Oil Tank Explodes after Lightning Strike,  June 02 , 2014   
   ・Wics.com, Lightning Sparks Oil Tank Fire, June 02 , 2014


後 記: 雷シーズンが来ると、米国での落雷によるタンク火災は必ず起きます。しかし、日本でも、616日に青森県で漁に出ていた船に雷が落ち、死亡事故が起こっています。漁を早めに切り上げて帰ってきた人によると、洋上から徐々に雷が近づいてきて、稲光がはっきり見え、怖くなったと語っています。落雷は設備の損傷につながったり、人命にかかわったり、怖いですね。
 ところで、先日、山登りに行ってきました。幸い、雷雲に遭うことなく、きれいな風景に接してきました。今回、初めて試みたのは、足の靴ズレ・まめ防止にワセリンを使ったことです。正解でした。私は甲高の幅広でまめのできやすい足で、いつも悩まされていましたが、足に直にワセリンを塗ったあとにソックスを履いて歩くと、まったくまめができませんでした。これは、あるトレイルランの番組を見て、インターネットで調べると、ちゃんと載っていました。情報はありがたいものです。  

2014年6月14日土曜日

米国テキサス州アタスコサ郡で落雷によるタンク火災

 今回は、2014年5月26日、米国テキサス州アタスコサ郡プレザントンにある油井用のタンク施設において落雷を受けてタンクが火災を起こした事例を紹介します。
      テキサス州アタスコサ郡で火災のあったタンク施設 (写真はKsat.com から引用
 <事故の状況> 
■  2014年5月26日(月)朝早く、米国テキサス州にあるタンク施設で落雷による火災があった。事故があったのは、テキサス州アタスコサ郡(Atascosa County)プレザントン(Pleasanton)にある油井用のタンク施設で、落雷を受けてタンクが火災を起こした。
       テキサス州アタスコサ郡プレザントン付近の風景   (写真はグーグルマップから引用)
■ 526日午前4時頃、ボランティア型のプレザントン消防署とジョルダントン消防署はウィリアムズ通り近くのカウランの発災現場へ出動した。

■ プレザントン消防署のチャック・ギャリス署長によると、昨夜から襲来していた嵐による雷が数基あったタンクの1基に落ち、引火して火災になったという。ギャリス署長によると、タンク施設は2つの区域に分かれ、ひとつは塩水排出タンク群で、もう一方は油タンク群だという。

■ ハイウェイ281号線から少し離れた地方の貯蔵タンクの現場にいたひとりの作業員は、発災後、トラックへ走り、火災の難を逃れるために急いで脱出した。この作業員にケガは無かった。

■ 火災は4基のタンクへ燃え広がり、貯蔵されていた数百バレル(およそ80KL程度)の原油が焼失した。このほか、塩水排出タンク17基にも延焼した。

■ ギャリス署長は、近くのアタスコサ川に危険性物質が流入しないように火災に伴って流れ出る液の監視を州の担当者が行っていると語った。また、州の担当者は大気の汚染状況もモニタリングしている。州担当者によると、周辺地区に差し迫った脅威はないとみられるという。

■ 消防隊は、数時間はかかるが、燃え尽きさせる方法に期待していた。しかし、正午頃、70マイル/時(31m/s)の激しいダウンバーストが現場を襲ったとき、火炎の勢いが増した。ギャリス署長は、「燃え尽きさせるよりも火災を消してしまう方が危険が大きいと判断しました」と語った。燃え跡にはホットスポットがいくつか見られたが、その後、残り火は再燃することもなく消失したと、ギャリス署長は付け加えた。

■ 施設のうち塩水排出タンクの所有者はベロー・ワイリー氏で、油タンクの所有者はロン・リッカウェイ氏である。
                火災のあったタンク施設   (写真はKsat.com から引用)
                    炎上するタンク施設    (写真はNews4sanantonio.comから引用)
補 足                                                         
■ 「テキサス州」は米国南部にあり、メキシコと国境を接している州で、人口は約2,510万人と全米第2位である。テキサス州には254の郡があり、米国50州中で最も数が多い。
 「アタスコサ郡」(Atascosa County)は、テキサス州中南部に位置し、人口約45,000人で郡庁所在地はジョーダントン市(人口約3,800人)である。同郡で最大の都市はプレザントン(人口約9,000人)である。郡名はアタスコサ川にちなんで名付けられた。
 2014年5月9日、米国テキサス州カーンズ郡にある石油タンク施設が落雷を受けてタンクが爆発・火災を起こした事例があるが、カーンズ郡とアタスコサ郡は隣接している。
テキサス州アタスコサ郡
■ 油タンクの所有者はロン・リッカウェイ氏で、塩水排出タンクの所有者はベロー・ワイリー氏と報じられている。油井は天然ガス井で、生産された油(天然ガス)の所有者がロン・リッカウェイ氏で、油井の掘削作業や塩水処理に関わる工事を別会社に委託しているものと思われる。ベロー・ワイリー氏は、以前、 トロージャン・バキューム・サービス社(Trojan Vacuum Services)にいた関係で塩水排出タンクを保有しているものと思われる。なお、塩水処理施設は、天然ガス井の生産で付随してきた塩水を(タンクローリー車などで)集積して、油水分離し、水(塩水)はポンプで地下に戻すプロセスである。タンクは鋼製もあるが、大半はFRP製である。
 発災施設のグーグルマップによる写真では、油タンクらしいタンク3基と、塩水処理施設のタンク群22基が見える。火災になった油タンクが4基になっているので、増設されたものか、あるいは塩水処理施設中の油タンクを入れたものと思われる。塩水排出タンクの被災数が17基と多いのは、材質がFRP製のため、熱に弱いためであろう。なお、油タンクはグーグルマップから推定すると直径約3.5mで、高さを6mと仮定すると、容量は50KL級と思われる。焼失原油は数百バレル(およそ80KL程度)と報じられているが、タンク容量から考えれば、もう少し多いかもしれない。
                 テキサス州アタスコサ郡のタンク施設  (写真はグーグルマップから引用)
所 感
■ 今回の事故は、 201459日、同じテキサス州で隣州のカーンズ郡にある石油タンク施設が落雷を受けた事例「米国テキサス州カーンズ郡で落雷によるタンク爆発・火災」とよく似ている。落雷の多い州でであり、この種の落雷によるタンク火災は多くなる傾向だといえる。
■ 2013年11月7日のメサ・オイル・サービス社が所有する油井関連施設の塩水処理装置で13基のタンクが被災した 「米国ノースダコタ州の石油施設で爆発、タンク13基が被災」事例を紹介した際、所感で「最近、米国では、油井関連施設のタンク事故が目立つ。今回も天然ガス井の塩水処理施設におけるタンク爆発・火災事故である。これまでは油・ガス井に付帯する貯蔵タンクの事故で、運転管理に問題があると思っていたが、今回は塩水処理を専門とする会社における事故であり、問題は根深いように思う。米国内で課題化されるのではないだろうか。対応策がとられなければ、事故が再発するのは必至だと感じる」と述べた。今回は塩水処理施設の運転管理上の問題ではなかったが、天然ガス井施設が雷に弱いという弱点をつかれた事例といえる。米国では、小規模な天然ガス井が増えていると思われ、落雷によるタンク火災は増えていくと感じる。

■ 油井関連施設のタンク火災は燃え尽きさせる戦略をとることが多い。消防資機材や消火用水の供給を考えると、燃え尽きさせるしかないと思われる。また、発災から短時間で周囲に延焼しており、周囲に何もない状況から、無理に消火させる必要はないと判断したと思われる。ただし、タンク火災に伴って出る排液や燃焼ガスについて監視やモニタリングが行われており、環境汚染への考慮は行われている。

備 考
  本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。
   ・News4sanantonio.com,  Crews to let Storage Tank Fire Burn Itself out,  May 26 , 2014
   ・Foxsanantonio.com, Oil Storage Tank Fire South of Pleasanton,  May 26 , 2014  
   ・PreasantonExpress.com, Oil Tank Batteries Engulfed in Earlymorning Fire,  May 28 2014



後 記: テキサスの地方の消防署は大変だと思います。ほとんどはボランティア型の消防署であり、今回の事例では、午前4時(多分、嵐の中)に出動して落雷によるタンク火災に対応しなければならないのですから。西部の開拓精神がなければ、やっていけないと思いますね。
 ところで話は変わり、地元周南市の周陽中学校の生徒が陸上100mで中学新記録(10秒56)を出したニュースがテレビや新聞で取り上げられました。写真のように周南市長への報告が記事になっていますが、この中で「坂道ダッシュ効果」と話しています。この坂道は私の家からすぐ近くにあり、周南緑地への道路で、車が通れないようになっています。高校生や中学生がこの坂を使ってダッシュの練習をよくやっていましたが、この坂道での練習から日本一の中学生が生まれるとは思ってもいませんでした。
(記事は朝日新聞から引用)