2023年12月31日日曜日

米国バージニア州のプレインズ社のタンク基地でリムシール火災

 今回は、米国バージニア州ヨーク郡にある石油物流会社;プレインズ社のタンク基地で浮き屋根式タンクのリムシール火災が起こった事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国バージニア州(Commonwealth of Virginia)ヨーク郡(York County)のグッドウィン・ネック通り(Goodwin Neck Road)沿いにある石油物流会社;プレインズ社(Plains)のタンク施設である。

■ 事故があったのは、グッドウィン・ネック通り沿いにあるプレインズ・マーケティング燃料タンク基地(Plains Marketing Fuel Tank Farm)のガソリン用の貯蔵タンクである。貯蔵タンクの貯蔵能力は80,000バレル(12,700KL)であるが、発災当時は3,000バレル(480KL)しか入っていなかった。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 20231216日(火)正午頃、プレインズ・マーケティング燃料タンク基地のガソリン用貯蔵タンクで火災があった。

■ 火災が発生したという通報を受け、ヨーク郡消防署の消防隊が出動した。

■ 貯蔵タンクには3,000バレル(480KL)のガソリンが入っており、火災は貯蔵タンクのリムシール部で起こっていた。火災は貯蔵タンクのベーパーシール領域で燃えていた。

■ 発災による負傷者は報告されていない。

被 害

■ タンクのリムシール部が損傷した。内部のガソリンが焼失した。

■ 負傷者はいなかった。 

< 事故の原因 >

■ 火災の原因は火災の原因は調査中で、分かっていない。

< 対 応 >

■ 消防隊は午後4時までには消火したとみられる。しかし、消防隊の消防士は現場にとどまり、引き続き事故の監視を続けた。

補 足

■「バージニア州」(Commonwealth of Virginia)は、米国東部にあり、大西洋岸の南部に位置する州(コモンウェルス)で、人口は約863万人である。

「ヨーク郡」(York County)は、バージニア州の南部に位置し、人口約65,000人の郡である。

■「発災タンク」は、ガソリン用で貯蔵能力が80,000バレル(12,700KL)と報じられている。グーグルマップでグッドウィン・ネック・ロード沿いにあるプレインズ・マーケティング燃料タンク基地の浮き屋根式タンクを見てみると、西側エリアに直径約46mのタンクが複数基ある。高さを10mと仮定すれば。容量は16,600KLとなる。このほか東側エリアに直径約36mの浮き屋根式タンクが多数ある。このタンクの高さを10mと仮定すれば、容量は10,200KLとなる。正確な高さは分からないが、発災タンクは直径約46mまたは36mの浮き屋根式タンクのいずれかである。

■「プレインズ社」(Plains) は、1981年設立にし、原油、液体天然ガス (NGL)、天然ガスなどの物流サービスを行っている石油物流会社である。北米の米国とカナダを主要市場とし、タンク貯蔵、パイプライン輸送、タンクローリ輸送などを行っており、日量 600万バレル以上の原油や NGLを取り扱っている。プレインズ社はテキサス州ヒューストンに本社を置き、カナダでの事業拠点はアルバータ州カルガリーにある。保有している貯蔵タンク能力は14,000バレル、車両は6,000輌、パイプラインは18,300マイルなどの資産があり、子会社が運用している。


 プレインズ社の事故としては、子会社のプレインズ・オール・アメリカン・パイプライン社によるつぎのような事例がある。

 ● 20155月、「米国カリフォルニア州で原油パイプライン漏洩による海上流出」

 ● 20188月、「テキサス州ウィチタ郡の貯蔵タンク基地でリムシール火災」

■「リムシール火災」は、浮き屋根タンクの屋根ポンツーンの外周部、すなわちリムシール部の火災で、「リング火災」とも呼ばれる。日本では、シール部にエンベロープ(カバーシート)内にウレタンフォームを圧縮した状態で包み込むフォーム・ログ・シール方式である。一方、米国には、メカニカルシール方式(パンタグラフ・ハンガー式またはメタルシール)を採用した浮き屋根式タンクがある。このタンクのシャンツやメカニカルシールに関する問題は2010年のAPIタンク会議で発表されており、本ブログでは20115月に「可燃性液体の地上式貯蔵タンクの避雷設備」として紹介している。

 また、日本では、タンクには固定式泡消火設備を設けることになっており、リムシール火災への別な対応方法は考えられていない。海外では、固定式泡消火設備のないものがあり、リムシール火災への対応方法が考えられている。「テキサス州ウィチタ郡の貯蔵タンク基地でリムシール火災」20189月)補足を参照。

所 感

■ リムシール火災は浮き屋根式タンク特有な火災であるが、今回の事例は発生状況が報じられていないし、被災写真が無く、詳細は分からない。リムシール火災の原因としては、落雷またはメカニカルシールの金属接触の火花によるものが多い。ある分析によると、リムシールを保有する全タンクの0.16%は使用期間中にリムシール火災に遭うといわれている。

■ 今回の事例では消火活動の状況もわからない。しかし、タンクに固定泡消火設備が設置されていないようなので、消防士がタンク側板の階段頂部に昇り、泡モニターによってリムシール部に消火泡を投入して消火させたものだろう。

 日本では、固定泡消火設備が設置されているので、リムシール火災については対策はとれている。一方、固定泡消火設備が壊れた場合、大型化学消防車や大型高所放水車などによって、手前でタンク側板裏の死角になる部分にうまく泡放射できるだろうかという疑問は残る。また、フォーム・ログ・シール方式の屋根シールでは、シール(ウレタン)がすぐに燃えてしまい、かなり大きな全周のリムシール火災になる可能性がある。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

   13newsnow.com, Firefighters battle blaze at York County fuel tank far,  December  19,  2023

   Wavy.com, Fuel tank catches fire in York County,  December  19,  2023

   News.yahoo.com, Fuel tank catches fire in York County,  December  20,  2023


後 記: プレインズ社はウエブサイトを保有し、ニュースルームを設けていますが、投資家向けの良いニュースを発信しているだけです。バージニア州ヨーク郡などの公的機関の情報もごく限られたもので、メディアによる取材も深堀していません。新型コロナウイルス感染が収まりましたが、メディアの関心はタンクの事故のような事象には向いていないようです。この事故だけではなく、米国の最近の傾向は同じようなものです。タンク事故のような一部の分野からしか見ていませんが、米国がおかしくなってきているのは感じます。

2023年12月26日火曜日

米国テキサスシティのマラソン・ペトロリアム社の製油所でタンク火災

 今回は、20231213日(水)、米国テキサス州テキサスシティにあるマラソン・ペトロリアム社のガルベストン・ベイ製油所の発電所で起こったタンク火災の事例について紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国テキサス州(Texas)テキサスシティにあるマラソン・ペトロリアム社(Marathon Petroleum)のガルベストン・ベイ製油所(Galveston Bay Refinery)である。製油所の精製能力は593,000バレル/日で、米国において 4 番目に大きい製油所である。

■ 事故があったのは、第2発電所(Power 2 unit)にあるサワーウォーター(酸性水)のタンクである。第2発電所は、製油所に蒸気のほか工業用水と燃料ガスを供給している。サワーウォーターは、精製工程で発生する硫化水素やアンモニアなどの化学物質を含む廃水である。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 20231213日(水)午後4時頃、サワーウォーター・タンクで火災が発生した。

■ 発災に伴い、自衛消防隊が出動し、消火活動を行った。

■ 事故に伴う負傷者はいない。

■ 火災はサワーウォーター・タンクの通気口から発生し、それが引き金になって別の第2発電所にあるタンクで爆発・火災を引き起こしたという。

■ マラソン・ペトロリアム社によると、大気モニタリングでは製油所外の大気質への影響は検出されなかったという。

■ 火災による生産への影響はない。

■ 消防隊は、2番目に火災となったタンクで燃え続ける火災を制圧する計画を立てている。

被 害

■ 複数のタンクが火災で損傷した。

■ 負傷者の発生は無い。

< 事故の原因 >

■ 事故や火災の原因は分かっていない。 

< 対 応 >

■ 火災の制圧や鎮火の情報は報じられていない。

■ マラソン・ペトロリアム社は、20235月に火災により改質装置を停止した後、11月に再稼働させたばかりであった。

■ さらに、タンク火災から4日後の20231217日(日)には、ガルベストン・ベイ製油所で操業上の問題により、二酸化硫黄(亜硫酸ガス)が大気中に放出されたことを受け、住民に屋内退避指示が出された。市内全域の空気測定値は正常で、負傷者は報告されていないという。マラソン・ペトロリアム社は以下のような声明を発表した。「マラソン・ペトロリアム社のガルベストン・ベイ製油所は、二酸化硫黄排出量の一時的な増加につながった操業上の問題に対応しています。負傷者は出ていません。地域では大気監視が実施され、テキサスシティは製油所の南側の地域に避難所を設置しました。影響を受けた地域の地図は市のソーシャルメディア・チャンネルで確認することができます。状況の解決に向けて取り組む中で、職員と公衆の安全が最優先事項です」

補 足

■ 「米国テキサス州」(Texas)は、米国南部にあってメキシコ湾岸に面し、メキシコと国境を接する人口約2,900万人の州である。

「ガルベストン郡」(Galveston)は、テキサス州の南東部に位置し、人口約35万人の郡である。

「テキサスシティ」(Texas City)は、ガルベストン湾の南西部に位置し、人口は約51,000人の市である。

■「マラソン・ペトロリアム社」(Marathon Petroleum)は、1998年、石油精製企業のアシュランド社とマラソン・オイル社との間で合弁会社マラソン・アシュランド・ペトロリアム社が設立したのが起源である。2005年、アシュランド社がマラソン社に持ち分を売却したことにより、マラソン・ペトロリアム社となった。本社は米国オハイオ州にあり、製油所のほか、ガソリンスタンドなどでの販売を手がける。 米国で13個所の製油所を保有し、1日当たり約290万バレル精製能力をもっている。

「ガルベストン・ベイ製油所」は、テキサス州テキサスシティのガルベストン湾近くにあり、ヒューストン船舶航路の入り口からは離れている。2018年、ガルベストン・ベイ製油所はテキサスシティ製油所と合併し、593,000バレル/日の精製能力を備えた世界クラスの精製複合施設になった。

 マラソン・ペトロリアム社の事故については、つぎのような事例を紹介した。

 ● 202110月、「米国テキサス州で原油タンクのミキサー取付けフランジから油噴出」

 ● 20238月、「米国ルイジアナ州のマラソン・ペトロリアム社の製油所でナフサタンク火災」

■「発災タンク」は、第2発電所(Power 2 unit)にあるサワーウォーター(酸性水)のタンクというほかに情報以外報じられていない。グーグルマップでガルベストン・ベイ製油所を調べてみたが、用役エリアのボイラ設備とみられるところがあるが、情報が少なすぎて発災タンクの場所は特定できなかった。

所 感

■ 事故要因に関わる事象が報じられておらず、原因は分からない。事故原因だけでなく、事故の状況についても「火災はサワーウォーター・タンクの通気口から発生し、それが引き金になって別の第2発電所にあるタンクで爆発・火災を引き起こした」という事象がどのようなことか理解できない。

■ ガルベストン・ベイ製油所では、20235月の火災により改質装置を停止した後、再稼働させたばかりであったという。今回のタンク火災の4日後には、操業上の問題により、二酸化硫黄(亜硫酸ガス)を大気中に放出させ、住民に屋内退避指示が出されている。このほか202110月に原油タンクのミキサー取付けフランジから油を噴出させるという類のない事故を起こしている。20238月には、マラソン・ペトロリアム社のルイジアナ州ガリービル製油所でナフサタンクの火災を引き起こしている。同社は、元来、情報の開示に消極的であったが、今回のことをはじめ、上記の事故原因について情報を公開していない。事故が教訓として活かされておらず、何かがおかしい。事故の背景は、マラソン・ペトロリアム社の製油所経営のあり方に問題が潜在しているように思う。

■ 消防活動についても語られていない。おそらく、製油所の自衛消防隊だけで対応しているのではないだろうか。公的機関も、市だけでなく郡もあるわけなので、消防活動に関する情報を共有化すべきだと感じる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    Reuters.com, Firefighters battle blaze at Marathon Galveston Bay, Texas, refinery, December  13,  2023

    Bicmagazine.com, Firefighters battle blaze at Marathon Galveston Bay, Texas, refinery, December  13,  2023

    Inspectioneering.com, Firefighters Battle Blaze at Marathon's Galveston Bay Refinery, December  13,  2023

    Qcintel.com, Fire at Marathon’s Galveston Bay refinery, operations unaffected, December  14,  2023

    Xm.com, Firefighters battle blaze at Marathon Galveston Bay, Texas, refinery, December  13,  2023

    Bicmagazine.com, Texas City lifts shelter-in-place order after Marathon refinery releases sulfur dioxide, Texas, refinery, December  17,  2023


後 記: マラソン・ペトロリアム社の事故は疲れます。情報の開示に消極的な会社であり、製油所の事故に積極的でない公的機関ですから事故情報は限られています。(マラソン・ペトロリアム社のウエブサイトには、事故のあった翌日に「従業員と地域住民が、オハイオ州で6,000匹のコウモリを収容できるコンドミニアムを設置した」というニュースを投稿しているのですから、情報の開示に差がありすぎます) それでも事故の多いマラソン・ペトロリアム社ですから当ブログに取り上げることにしました。通常、通信社のロイターが第一報を発信したら、そのほかのメディアが詳細を報じるというのが通常ですが、メディアの事故情報も極端に少ないものでした。それでもしつこく調べていたら、今回のタンク事故の4日後に住民が避難するような別な事故が発生しました。 

2023年12月20日水曜日

イランの簡易製油所で15基のコンデンセートタンク等が火災・爆発、48時間燃焼

  今回は、20231210日(日)、イラン南ホラーサーン州ビールジャンド市にあるアザラン・サナート・バルサヴァ社の簡易製油所で、コンデンセート(ガス田凝縮油)のタンク群が火災・爆発を起こした事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、イラン(Iran)南ホラーサーン州(South Khorasan Province)ビールジャンド市(Birjand)経済特別区にあるアザラン・サナート・バルサヴァ社(Azaran Sanaat Barsave Com.)の簡易製油所である。製油所は、コンデンセート(ガス田凝縮油)を使用して軽質および重質の炭化水素を製造する。 

■ 事故があったのは、製油所内にあるコンデンセートの容量250KLタンク群である。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 20231210日(日)午前830分頃、製油所でコンデンセートのタンク1基で火災が起こった。

■ 火災は制御不能で、すぐに数基のタンクに延焼し、爆発が2回起こった。

■ 発災に伴い、消防隊が出動した。消防隊が現場に到着する時には、黒煙が遠くまで広がっていた。

■ さらなる爆発の危険が継続しているため、消防隊は500mの距離をおく必要があるとし、一時的に現場から撤退した。

■ 当局は近くの工場に避難指示を出した。

■ 事故による死傷者は出ていない。アザラン・サナート・バルサヴァ社は、爆発が起こるまでに人的被害を避けるために従業員を避難させていた。

■ 制御不能な火災によって、製油所にある18基のコンデンセート油のタンクのうち15基のタンクに延焼していき、3基が残っただけという。当局によると、火災の初期段階で、すでに1,500KLの燃料油が焼失したという。

■ 1210日(日)の夕方になっても火災は続いていた。当局は、火災は部分的に鎮火したと発表した。

■ 南ホラーサーン環境保護局長は、ビールジャンド経済特別区の簡易製油所から排出される煙が市内の大気に及ぼす影響について、1210日(日)の午後9時までのデータに基づいて、ビールジャンド市の大気環境は許容範囲内にあると発表した。しかし、天候の変化の可能性と、コンデンセートを燃やした煙がビールジャンド市に入る可能性を考慮し、市民は屋内に留まり、家から出ないことを勧めている。また、外出時には三層構造の医療用マスクの使用を推奨している。

■ 州の危機管理局長は、簡易製油所の近くにある別な製油所に延焼するようなものではなく、危険性はないと述べている。

■ この製油所はイランの労働福祉大臣による250億トーマン・プロジェクトにより新しく建設されたものであるが、立上げから1年も経たないうちに爆発・火災事故が起こったことになる。

■ ユーチューブでは、爆発の瞬間を撮った映像が投稿されており、その中のひとつはつぎのとおりである。

 ●YoutubeFire causes two huge explosions at a oil refinery in eastern Iran2023/12/11

被 害

■ 製油所内のプラント内にあるタンク15基が火災で損壊した。

■ タンク内のコンデンセートと燃料油が4,500KL焼失した。

■ 南ホラーサーン州民事副調整官は、「ビールジャンド経済特別区の簡易製油所のタンク火災により、7,000億リアル(約24億円)以上の損害が生じていると予想される」と述べている。

< 事故の原因 >

■ 事故原因は分からない。

 爆発は熱交換器に取付けられたバルブが不適切なために起こったものではないかという指摘があり、設備不良とそれを見逃して対応をしなかった運転ミスの可能性がある。

< 対 応 >

■ 専門家がオンラインで行った火災の分析によると、爆発は熱交換器に取付けられたバルブが不適切なために起こったもので、熱風トーチのような効果を生み出し、タンクに点火し続けて爆発を引き起こしたものではないかという。

■ 簡易製油所には22基のタンクがあり、そのうち18基にはコンデンセートと燃料が入っており、これらのタンクの15基が火災に遭った。

■ 1210日(日)の夜、火災は一部制圧されたものの、タンク3基が爆発する可能性があるため、必要な措置を準備しているという。

■ 1211日(月)、タンク3基はまだ爆発には至っていない。一部は燃えているが、消防隊はこれら3基のタンクを泡薬剤の放射によって爆発の危険から守るために従事しているという。

■ 消防隊は、現在の消火活動がより近い距離から実施され、状況が改善すれば、1211日(月)の正午までに火災を鎮火することができる可能性があるという。

■ 結局、火災は1212日(火)までの2日間続き、48時間にわたった。

■ 火災によって、製油所あったコンデンセート油と燃料の4,500KLが焼失したという。

■ メディアの中に、つぎのような諭評をしている。

 ● この火災は世論、社会活動家、州の専門家の間で多くの疑問を引き起こした。第一に、事故原因が世論に十分かつ明確に説明されず、世論の心をもてあそぶ非公式の投機市場が過熱した。

 ● 第二に、多くの人が、ここ数週間のガスの臭いの問題が今回の火災と関係があるのか​​どうか、また、この地域に関係があるのであれば、災害を防ぐためにどのような対策が講じられたのかを知りたがっている。

 ● 第三の問題は、なぜ州、市、および製油所自体の環境に、ガスおよびコンデンセートの火災を消火するための特別な設備が装備されていなかったのか、また、同様の事象が、たとえば石油会社の貯蔵施設で発生した場合に事故が起こったかということである。 

 ● 第四の問題として、このような事故が起こらないよう、本事業の運転を許可する前に、現場に立入り、安全基準やタンク間の安全な距離などを確認は行われたのか。

■ 近年、イランの石油、石油化学、工業で多くの火災事故が発生しているが、そのほとんどは低い技術、低い品質の中国製設備の使用や構造物の老朽化などが起因していると指摘するメディアがある。

補 足

■「イラン」(Iran)は、正式にはイラン・イスラム共和国といい、西アジア・中東に位置し、人口約8,792万人のイスラム共和制国家である。

「南ホラーサーン州」(South Khorasan Province)は、イランにある31の州のひとつで、東部に位置し、人口約76万人である。

「ビールジャンド市」(Birjand)は、南ホラーサーン州の中部に位置し、人口約20万人の州都である。

 イランにおける事例は、つぎのとおりである。

  ● 20167月、「イランの石油化学工場でナフサ貯蔵タンク火災」

  ● 20167月、「イランの石油化学工場でまた貯蔵タンク火災」

  ● 201610月、「イランでサイバー攻撃が疑われる中、精油所でタンク火災」

  ● 20172月、「イランのテヘランで石油施設に落雷後、タンク火災」

  ● 20218月、「イランのハールク島にある石油化学でガソリンタンク火災」

  ● 20237月、「イランの製油所でタンクローリーによるプラント内の石油タンクが火災、負傷8名」

■「アザラン・サナート・バルサヴァ社」(Azaran Sanaat Barsave Com.)はどのような会社なのか分からない。インターネット検索しても何も出てこない。立上げから1年も経っていないというので、グーグルマップでビールジャンド市を調べても、該当しそうな簡易製油所やタンクは出てこない。

■「コンデンセート」は、 一般に、ガス田から液体分として採取される原油の一種で、地下では気体状で存在しているが、地上で採取する際、凝縮する液体をコンデンセートという。コンデンセート油とも称し、原油として化学原料として利用される。コンデンセートはナフサの成分とよく似ており、引火性で燃焼性の高い液体である。

■「発災タンク」は、容量250KLとみられるだけで仕様は分からない。被災写真を見ると、黄色の帯の付いた竪型円筒形で固定屋根式タンク群があり、これらのうちの1基が発災タンクではないかと思われる。仮に直径5m×高さ10mとすれば、200KLクラスのタンクである。

所 感

■ 事故原因は分からない。しかし、爆発は熱交換器に取付けられたバルブが不適切なために起こったものではないかという指摘があり、また多くの人がガスの臭いの問題を指摘していたとみられるので、設備不良とそれを見逃して対応をしなかった運転ミス(判断ミス)ではないだろうか。

■ 爆発の危険があるため、消防隊は500mの距離をおく必要があるとし、一時的に現場から撤退したと報じられており、消火戦略は積極的戦略・防御的戦略・不介入戦略のうち、不介入戦略をとっている。火災制圧には発災から48時間かかっており、火災になった15基のタンク内液(コンデンセートと燃料)はほとんどが燃え尽きたものとみられる。一方、コンデンセートの火災を消火するための特別な設備が装備されていなかったのかという指摘があるが、タンクの消火設備だけでなく、消防隊の消火資機材も適切なものとは言えないと思われる。

■ 爆発の映像を見ると、コンデンセート(ナフサに類似)の燃焼性の激しいことを物語っている。この事故で死傷者が出ていないが、事業所は爆発が起こるまでに人的被害を避けるために従業員を避難させており、消防隊は現場から撤退しており、この時点の判断は正しかったといえよう。  


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Reuters.com,  Fire causes two explosions at refinery in eastern Iran,  December 11, 2023

    Iranintl.com,   Fire Breaks Out In Eastern Iran's Birjand Refinery Reservoirs,  December 11, 2023

    Pune.news,   Huge fire erupts at mini-refinery in iran,  December 13, 2023

    Crisis24.garda.com, Iran: Emergency response ongoing after fire breaks out at oil refinery in Birjand, South Khorasan Province,   December 10, 2023

    Myind.net, Massive explosion rocks hydrocarbon refinery in Iran's Birjan Special Economic Zone,   December 11, 2023

    Firemiddleeastmag.com, FIRE CAUSES EXPLOSION IN EASTERN IRAN FACILITY,   December 13, 2023

    Radiofarda.com, پالایشگاه بیرجند کمتر از یک سال بعد از افتتاح دچار «انفجار و آتشسوزی»,   December 11, 2023

    Irna.ir,  آتشسوزی در مینی پالایشگاه بیرجند کنترل شد/ انفجار ۱۵ مخزن,   December 11, 2023

    Rajanews.com, نفجار-مجدد-در-مینی-پالایشگاه-بیرجند-آتش-به-همه-مخازن-رسید,December 11, 2023

    Isna.ir, علت آتشسوزی مخازن مینی پالایشگاه هیدروکربن در بیرجند هنوز مشخص نیست,December 11, 2023

    Aafheeghtesad.ir, مینی خطاهای پالایشگاه بیرجند حادثه عظیمی آفرید + عکس December 16, 2023


後 記: イランで起こったタンク事故を調べましたが、相変わらず事故内容は深まりませんでした。州の幹部などが情報を出しており、事故を小さく見せようというのか、事実が届いていないのか、不確かな情報が多く、記載できなかった記事が多かったですね。しかし、これまでのインターネット記事にはないようなわたしが疑問に思っていることを論評をしている内容のものがありました。イランの事故でこのような批判的な記事をみたのは初めてです。いくら火災は制圧したと発表しても被災映像が出てくれば、本当ではないと感じるのが通常の人でしょう。イラン国内の情勢が変わってきたのでしょうか。

 ところで、最近話題になっているChatGPTの能力について、前回のユタ州のタンク事故を例に聞いてみました。 ChatGPTへの依頼事項とその回答は、前回のユタ州のタンク事故のブログ後記に追記しました。回答はまたたく間に返ってきましたし、内容も雑多な情報の中から、違反の歴史があると指摘するなどなかなかのものです。(「米国ユタ州の化学施設でケミカルタンク爆発、負傷者2名」20231212日 を参照)

2023年12月12日火曜日

米国ユタ州の化学施設でケミカルタンク爆発、負傷者2名

 今回は、2023725日(火)、米国ユタ州ソルトレークシティにある化学会社であるサッチャー社の製造施設においてケミカルタンクが爆発し、負傷者2名を出した事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国ユタ州(Utah)ソルトレークシティ(Salt Lake City)にある化学会社であるサッチャー社(Thatcher Co.)の製造施設である。サッチャー社は多角的に化学薬品の製造・販売を行っている。

■ 事故があったのは、サッチャー社のソルトレークシティ工場内にあるケミカルタンクである。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2023725日(火)午前530分頃、サッチャー社のソルトレークシティ工場内でケミカルタンクが爆発した。

■ ソルトレークシティの1905Wフォーチュン通りで大きな爆発音を聞いたという複数の通報があった。

■ 発災に伴い、ソルトレークシティ消防署の消防隊が出動した。

■ 爆発が起きたとき、複数の従業員が通常の準備作業を行っていた。ケミカルの入った複数のタンクの1基が爆発したとき、従業員が近くにいた。爆発によって建物が損傷し、従業員2名が軽傷を負った。うち1名は治療のため地元の病院に搬送された。もう一人は治療を受けて解放された。

■ ソルトレークシティ消防署は、地域社会への危険はなく、化学物質が空気中に放出されたことはないと発表した。

■ 原因調査のため、工場近くの道路の一部が交通遮断された。  

被 害

■ 工場内のケミカルタンク1基が爆発で損壊した。

■ 負傷者が2名出た。

■ 近くの住民に影響は出なかったが、道路の一部が交通制限された。

< 事故の原因 >

■ 爆発の原因は分かっていない。

< 対 応 >

■ サッチャー社の事故は今回だけでない。2019年、工場で二酸化硫黄が漏洩し、少なくとも56人の労働者に影響が及んだ。過去20年間にわたり、労働安全衛生局はサッチャー社を違反容疑で何度も告発してきた。2004 年に2件、2013年に2件の重大な違反を発見し、2019年の事故後は19 件の重大な違反と4件の故意の違反があることが分かった。

補 足

■「ユタ州」(Utah)は、米国西部に位置し、ロッキー山脈、グレートベースン、コロラド高原という3つの地形的に特徴のある地域がある人口約327万人の州である。

「ソルトレークシティ」(Salt Lake City)は、ユタ州の北部にあり、 人口約20万人の州都である。2002年には冬季のソルトレイクシティ・オリンピックが開催された。

■「サッチャー社」(Thatcher Co.)社は、1967年にソルトレークシティに設立され、多角的な化学薬品の製造・販売会社で、食品、乳製品、農業、石油とガス、製薬、鉱業、建設などの業界にサービスを提供している。

■「発災タンク」は、ケミカルの入ったタンクというだけで、タンク内液や大きさなどの仕様は報じられていない。爆発して損壊しているが、火災になっていないとみられる。発災時のタンク被災写真もなく、グーグルマップで調べても特定できなかった。

所 感

■ 事故要因に関わる事象が報じられておらず、原因は分からない。爆発が起きたとき、複数の従業員は通常の準備作業を行っていたということから、その日の準備作業時の運転に関わる不具合やミスではないかという印象である。

■ タンクは爆発して損壊しているが、火災になっていないとみられる。消防隊が出動したが、消火作業や冷却作業をした様子はなく、消火活動は行っていないと思われる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    Powderbulksolids.com, Tank Explosion Injures 2 at Chemical Plant,  July  25,  2023

    Abc4.com,   2 people injured in explosion at Salt Lake chemical company,  July  25,  2023

    Kslnewsradio.com, Chemical explosion in Salt Lake injures two, fire officials say there’s no threat to the public,  July  25,  2023

    Fox13now.com, Site of Salt Lake City chemical plant explosion no stranger to violations,  July  25,  2023


後 記
: 最近、米国でのタンク事故を紹介していない中で、これまでユタ州の事例を扱っていない事故だったので、紹介することとしました。しかし、発災日から時間が経っていることもあってか、事故の状況を報じたメディアが少なく、内容は淡泊なものになってしまいました。

追記; 最近、話題になっているChatGPTについてこの事故について聞いてみました。

Chat GPTへの依頼事項

つぎのインターネット情報に基づいて、事故の概要をまとめてください。

Powderbulksolids.com, Tank Explosion Injures 2 at Chemical Plant, July 25, 2023

Abc4.com, 2 people injured in explosion at Salt Lake chemical company, July 25, 2023

Kslnewsradio.com, Chemical explosion in Salt Lake injures two, fire officials say there’s no threat to the public, July 25, 2023

Fox13now.com, Site of Salt Lake City chemical plant explosion no stranger to violations, July 25, 2023

 Chat GPTの回答

さまざまな情報源から提供された情報に基づいて、事件の概要は次のとおりです。

日 付: 2023 7 25

場 所:ソルトレイクシティ

事 件: ソルトレイクシティの化学工場で爆発が発生し、2 名が負傷した。この事件は 2023 725日に発生し、Powderbulksolids.comAbc4.comKslnewsradio.comFox13now.com などの複数の報道機関によって報道されました。

負傷者: 爆発により 2 名が負傷したと報告された。提供された情報には負傷の程度は明記されていない。

回 答: 消防当局は、爆発にもかかわらず、公衆に対する差し迫った脅威はなかったと述べた。これは、緊急対応チームが状況をある程度まで抑えることができ、周囲のコミュニティが差し迫った危険にさらされていないことを示しています。

過去の違反: Fox13now.com は、ソルトレイクシティの化学工場爆発現場には違反の歴史があると報告しました。これは、この施設で以前に安全上または規制上の問題があった可能性を示唆しており、安全プロトコルや規制の順守に疑問が生じています。

提供された情報は限られており、事件を包括的に理解するには、爆発の原因、関与した特定の化学物質、負傷者の状態など、さらなる詳細が必要になることに注意することが重要です。

2023年12月6日水曜日

ブラジルで塗装工事中のトルエン貯蔵タンクが火災、死傷者7名

 今回は、2023622日(木)、ブラジルのサンパウロ州にある石油化学大手のブラスケム社のサントアンドレ生産施設においてトルエン用の貯蔵タンクが塗装工事中に火災を起こした事例を紹介します。

< 発災地域の概要 >

■ 発災があったのは、ブラジル(Brazil)サンパウロ州(Sao Paulo)にある石油化学大手のブラスケム社(Braskem)のサントアンドレ(Santo Andre)生産施設である。

■ 事故があったのは、サントアンドレ生産施設内にあるトルエン用貯蔵タンクである。


< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2023622日(木)午前9時頃、サントアンドレ生産施設内にある貯蔵タンク付近で爆発があり、火災となった。

■ 発災に伴い、消防隊が消防士33名と消防車両11台で出動した。

■ 貯蔵タンクはトルエン用であったが、タンクの塗装工事中で、内液は空にしていたという。塗装作業はタンクの外で行われていた。

■ ブラスケム社は、安全上の理由から施設の従業員全員を現場から移動させた。

■ 事故に伴い、7名の死傷者が出た。ひとりが亡くなり、6名が負傷した。死傷者の内、5名は請負会社テネンゲ社(Tenenge)の従業員である。その後、2名が亡くなり、死亡者は計3名となった。負傷した2名はブラスケム社の従業員で軽傷だった。

被 害

■ 燃料貯蔵タンク1基が焼損した。タンク内液のトルエンが焼失した。 

■ 死傷者が7名出た。うち3名が亡くなり、負傷者は4名である。

■ タンク内液の燃焼によって有害な化学物質が空気中に放出され、環境が汚染された。

< 事故の原因 >

■ 事故の原因は調査中で、分かっていない。

< 対 応 >

■ 火災は、4時間半を経た622日(木)午後130分頃に制圧された。 

■ サンパウロ州環境局(CETESB – Companhia Ambiental do Estado de São Paulo)は、発災直後から石油化学コンビナートの環境状態をモニタリングしているが、火災が消えた後も指導と監視を継続するという。

■ サンパウロ州環境局は、メンテナンス中のタンクには可燃性物質のトルエンが残留しており、消火に使用した水と廃棄物を混ぜて処理する予定だと述べた。調査によると、化学製品トルエンのベーパーが入った空のタンクがメンテナンス中に爆発したことが判明したという。トルエンは揮発性で引火性の高い物質である。火災は消防隊によって鎮圧され、消火活動からの出た廃水はブラスケム社の構内の排水系に保持され、SAO(水と油の分離システム)に送られ、その後処理プラントに送られる。

補 足                                                                          

■「ブラジル」 (Brazil)は、正式にはブラジル連邦共和国(Federative Republic of Brazil)といい、南アメリカに位置し、国土面積は日本の22.5倍を有し、人口約21,500万人の連邦共和制国家である。首都はブラジリアである。

「サンパウロ州」(Sao Paulo)は、ブラジル南東部の位置し、人口約4,630万人の州である。州庁所在地はサンパウロ市である。

「サントアンドレ」(Santo André)は、サンパウロ州の南部に位置する人口約72万人の都市である。サンパウロ市から18km南にあり、住宅地と工業地が混在した地域である。

■「ブラスケム社」(Braskem)は、 2002年に設立したサンパウロ市に本社を置く石油化学事業を営む会社である。2008年には、ラテンアメリカで最大、南北アメリカ大陸においてもエクソン・モービル、ダウ・ケミカルに次ぐ第3位の事業規模にまで成長した。ブラスケム社は、13個所の石油化学プラントを保有しており、サントアンドレ生産施設では、トルエンなどの芳香族化合物やポリマーを含む 12 の製品を生産している。

■「トルエン」(Toluene)は、化学式C7H8、の芳香族炭化水素液体で、水を1としたときの比重は0.87である。無色透明、引火点約4℃、爆発範囲1.27.1%、沸点約111℃と常温で揮発性があり、引火性が高く、特徴的な臭気を持ち、人体に対しては麻酔作用があるほか、毒性が強い。水には極めて難溶だが、アルコールや油類などには極めて可溶なので、溶媒として用いられる。主な用途は、染料、香料、火薬(TNT)、有機顔料、合成クレゾール、漂白剤、ベンゼンやキシレンの原料、医薬品、塗料・インキ溶剤などである。 工業的な製造法は、ベンゼンと同じで、改質ガソリンのナフサの接触改質、エチレンプラントのスチームクラッキングからの生成物がほとんどである。

 トルエンの関わったタンク事故は、20224月に起こった「韓国で開放工事中の内部浮き屋根式タンクが爆発、死傷者2名」(2023年11月)がある。

■「発災タンク」は、トルエンを貯蔵しているというだけで、タンクの仕様は報じられていない。グーグルアースで調べると、発災タンクが特定でき、タンクは固定屋根式で、直径は約18mである。高さを18mとすれば、容量は約4,580KLとなる。グーグルアースを見る限り、内部浮き屋根用の通気口が見当たらないので、浮き屋根型固定屋根式タンクではないとみられる。

所 感

■ 事故原因は調査中ということで発表されていない。空のタンクがメンテナンス(塗装)中に爆発したと報じられている。一方、メンテナンス中のタンクにはトルエンが残留していたと報じられているように、タンク内のトルエンのベーパーがタンク通気口を通じて漏れ、何らかの引火源によって爆発し、火災になったのではないだろうか。

 疑問点は、塗装工事の準備作業において内部の液を空にするのが基本だったのか。あるいは、空にせず液面を下げるだけだったのか。工事前にタンク通気口まわりや作業エリア付近のガス検知は行わなかったのか。印象としては、日常から同じ準備作業を行っていたが、たまたま事故が起こらなかっただけのような気がする。(事故の発生確率は「米国の石油貯蔵タンク基地におけるハザード評価」20161を参照)

■ 発災タンク側板の外周足場には養生シートが掛けられていたのがわかる。グーグルアースを見ると、ほかのタンク塗装工事において側板外周だけでなく、屋根を覆う養生シートがかけられているのがわかる。日本では、養生シートの目的は、塗装工事における足場からの墜落事故防止と塗料ミスト飛散によるトラブル防止のためである。しかし、ブラスケム社のプラントで使用されている養生シートは厚く、内部の作業環境は良くないように思う。なにか別な意図があるのかも知れない。屋根の通気口などは開口しているが、今回の事故では漏れたベーパーが養生シート内にとどまり、人災事故を大きくしたのではないだろうか。

■ 消火戦略は、積極的戦略・防御的戦略・不介入戦略のうち、放水によるタンクの冷却に集中する防御的戦略をとっていると思われる。それでも、火災制圧には発災から4時間半しかかかっていないところをみると、タンクの内液は燃え尽きたものとみられる。このことから、塗装準備作業はタンク内液の液面を下げただけだったように思う。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである

     Icis.com,   Explosion at Brazil’s Braskem Santo Andre site leaves one worker seriously injured,  June  22,  202

     Mrchub.com,  Explosion at Braskem’s Petrochemical Complex leaves workers injured in the ABC region of São Paulo,  June  26,  2023

     Estadao.com.br,  Explosion at Braskem’s Petrochemical Complex leaves workers injured in the ABC region of São Paulo,  July  03,  2023

     Vnezuela-news.com, Incendio en planta Braskem de Brasil deja un fallecido y seis heridos,  June  22,  2023

     Otempo.com.br,  Incêndio em Polo Petroquímico da Braskem deixou 1 morto e 4 feridos,  June  23,  2023

     Jornalcruzeiro.com.br, Morre segunda vítima de incêndio em tanque da Braskem em Santo André,  June  23,  2023

     Reporterdiario.com.br, Explosão em tanque da Braskem deixa um morto e pelo menos sete feridos,  June  22,  2023

     Diarioregional.com.br, Tanque da Braskem pega fogo e deixa um morto e seis feridos,  June  22,  2023


後 記: 今回の事故では、発災タンクを調べるのにグーグルマップでなく、グーグルアースを見ることによって特定できました。グーグルマップでは、これではないかということまでしか分かりませんでした。グーグルアースではタンクの側板を見ることができます。被災写真はいろいろなところから撮ったものが多く、側板に記載してあるタンク番号を確認することのできるタンクがあります。このタンク番号とタンク配置から発災タンクが特定できました。今回のような例は初めてです。しかし、日本から遠く、地球の裏側にあるタンク火災の位置まで知ることができるなんて改めて技術の進歩を感じてしまいました。