2023年11月23日木曜日

ブラジルのサンタカタリーナ州で燃料販売所の貯蔵タンクが3日間火災

 今回は、20231113日(月)、ブラジルのサンタカタリーナ州にある燃料販売を営むマクスル・コンバスティベス社の燃料貯蔵施設で貯蔵タンクが火災になり、3日間続いた事例を紹介します。

< 発災地域の概要 >

■ 発災があったのは、ブラジル(Brazil)サンタカタリーナ州(Santa Catarina )シャペコ(Chapeco)にある燃料販売を営むマクスル・コンバスティベス社( Maxsul Combustives)の燃料貯蔵施設である。この施設には貯蔵タンク13基があり、15,000KLの燃料が保管されている。

■ 事故があったのは、高速SC-480号線沿いにある燃料貯蔵施設内にある燃料タンクである。


< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 20231113日(月)午前630分頃、シャペコの燃料貯蔵施設で炎が高く舞い上がった。火災は燃料を供給していたタンクローリーから発生したもので、すぐに貯蔵タンク1基に延焼した。

■ 発災に伴い、消防隊が出動した。

■ 目撃者によると、事故の間に数回の爆発があったという。現場近くにいたタンクローリーは火災場所から距離をとって移動させられた。

■ 火災はマクスル・コンバスティベス社の保有する燃料タンクや堤内に燃え広がり、火災規模が大きくなった。火災により有害な化学物質が空気中に放出され、風によって近くの地域に運ばれる恐れがあった。

■ 黒煙によってこの地区の交通に混乱をきたし、地元住民に不安を引き起こした。煙はほかの自治体からも見えた。高速道路SC-480号線は発災直後から交通規制が行われた。

■ 火災は、合計約2,000KLのディーゼル燃料、ガソリン、エタノールの入っている貯蔵タンクに燃え広がった。火は容赦のなく燃え上がり、舞い上がる炎は数マイル離れたところからも見えた。この憂慮すべき火災事故の初期の映像は現場に居合わせた軍の消防士によって撮影されたものである。

■ 消防隊は爆発の恐れを避けるために他のタンクやタンクローリーの冷却に全力を注いだ。火災は4基のタンクのある共通の防油堤内に発生しており、消防隊は別に設置された合計8,000KLを貯蔵するタンク群の冷却に努めた。

■ 同州環境研究所(IMA)は発災した1113日(月)から火災とともに油の漏れを監視していた。漏れた油が近くの湿原地域に到達し、水系に達したと発表した。マクスル・コンバスティベス社は油の封じ込めと除去のために業者を雇ったという。

■ 民間防衛局は、火災によって発生した煙が濃く、黒く、有毒であり、地域の住民に影響を与える可能性があると警告し、住民に対して煙との接触を避けるよう勧告した。 

■ 空港消防隊や軍消防隊など近隣の消防署が支援し、50名の消防士が活動にあたった。火災現場から約10km離れたウルグアイ川から取水し、数台の給水車で輸送され、消防活動が行なわれた。今回の事故は、この地域で記録された最大規模の火災のひとつである。

■ 事故に伴う負傷者はいなかった。

■ ユーチューブなどには火災の状況を示す動画が投稿されている。主な動画はつぎのとおりである。

 YoutubeMajor fire at the Maxsul warehouse in the Chapecó of Santa Catarina in Brazil2023/11/13

 ●YoutubeIncêndio na MAxsul em Chapecó2023/11/13

 ●YoutubeIncêndio atinge distribuidora de combustíveis em Chapecó | Bora Brasil2023/11/14


被 害

■ 燃料貯蔵タンク4基が焼損した。タンク内液の燃料油が焼失した。 

■ 負傷者は出なかった。

■ 近くの道路が閉鎖された。

■ 燃料の燃焼によって有害な化学物質が空気中に放出され、環境が汚染された。また、タンクから漏れた油が近くの湿原地域に到達して水系に達し、油の封じ込めと除去が必要になった。


< 事故の原因 >

■ 事故の原因は、タンクローリーへの油移送時のミスによるものとみられる。このミスによって火災が発生し、貯蔵タンクへ延焼したと思われる。

< 対 応 >

■ 1114日(火)、火災から2日目を迎えた。消防隊は、合計2,000KLの可燃性液体が入った4基のタンクに対して24時間を越えて消防活動を行っている。火災は月曜日(13日)午前630分頃に発生し、火曜日の午前630分時点でも、活動がいつ完全に終わるか予測できない状況だった。

■ 消防隊は火災タンク以外の貯蔵タンクを防護して本体温度が上がらないよう防御的戦略を維持した。消防関係者によると、貯蔵タンク13基のうち4基が火災で損傷した。

■ 消防活動は発災から3日間、65時間続けられ、1116日(木)午前120分に火災は消えた。

■ マクスル・コンバスティベス社は、つぎのような発表を行った。「1113日朝の事故による混乱のため、シャペコにある燃料供給基地の稼動を停止しました。期限は未定です。他の基地での積込みの輸送費用は提供しますので、ご理解を賜りますようお願い申し上げます」

補 足                                                                          

■「ブラジル」 (Brazil)は、正式にはブラジル連邦共和国(Federative Republic of Brazil)といい、南アメリカに位置し、国土面積は日本の22.5倍を有し、人口約21,500万人の連邦共和制国家である。首都はブラジリアである。

「サンタカタリーナ州」(Santa Catarina)は、ブラジル南部に位置し、東は大西洋、西はアルゼンチンに隣接する人口約624万人の州である。青森県と友好提携を結んでいる。

「シャペコ」(Chapeco)は、サンタカタリーナ州の南西部にあり、人口約22万人の都市である。

■「マクスル・コンバスティベス社」( Maxsul Combustives)は、1994年に設立したブラジルの燃料販売を営む会社で、主にガソリンスタンドと企業や最終消費者向けのディーゼル燃料、エタノール、ガソリンの卸売を行っている。 2000 年にサウスカロライナ州のシャペコに支店を出した。(写真を参照)


 今回の事故でタンクローリーが火災になっており、長いタンク部の被災写真があるが、マクスル・コンバスティベス社では連結のタンクローリーも保有している。(写真を参照)

■「発災タンク」の仕様は報じられていないが、グーグルマップで調べると、火災になった4基のタンクは同径の固定屋根式で、直径は約8.4mである。高さを11mとすれば、容量は約609KLとなる。最初に発災したタンクから隣接タンク3基へ延焼し、火災は、合計約2,000KLのディーゼル燃料、ガソリン、エタノールの入っている貯蔵タンクに燃え広がったとあるので、タンク1基あたりは670KLとなる。したがって、火災になったタンクの1基あたりの容量は600700KL級のタンクとみられる。

所 感

■ タンクローリーへの油移送時のミスによるものとみられる。このミスからタンクローリーと堤内火災が発生し、貯蔵タンクに延焼したものであろう。この初めの火災の被災写真を見ると、燃焼性が高いことからガソリンによる火災と思われる。

■ 発災タンクは激しい堤内火災で座屈したものと思う。発災タンクに隣接したタンク3基のうち1基は屋根から炎が出ており、損傷は大きい。しかし、残りの2基は激しい火災に曝されて、タンク上部通気口から炎が出ているが、タンク本体の損傷程度は意外と大きくない印象である。固定屋根式タンクであるが、内部浮き屋根型とも考えられるが、側板に通気設備がないので、そうではないようだ。

■ 現場では消火用の水源が不足し、10km離れた川から給水しなければならないという悪条件と排水系が不適切な条件が重なり、消火活動は非常に厳しいものだったとみられる。

 消火戦略には、積極的戦略・防御的戦略・不介入戦略の3つがあるが、今回は爆発が起こっていることも考慮して、近くのタンク群に延焼しない冷却を優先した防御的戦略をとられた。しかし、火災は3日間続いて火勢が弱まったとみられる状況下でも泡消火が行われていないと思われ、泡消火をやろうにも泡薬剤が無かったのではないだろうか。

 今回のタンク火災は運がよく、被害を最小に食い止めたという印象である。これで良しとするのではなく、石油施設には適切な消火設備や消火資機材が必要だということを示した事例である。 

備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである

    Tankstorage.com, Fire at one of Brazil’s largest fuel distributors,  November  14,  2023

    Tw.sports.yahoo.com, Fire Breaks Out at Fuel Storage Facility in Southern Brazil,  November  14,  2023

    Brazil.postsen.com, URGENT: Fire at the fuel distributor is extinguished,  November  15,  2023

    Bnn.network/watch-now, Chapeco Fuel Storage Facility Engulfed in Massive Fire, Releases Harmful Chemicals,  November  14,  2023

    Ndmais.com.br, Drone mostra avanço do fogo na distribuidora de combustíveis em Chapecó,  November  13,  2023

    G1.globo.com, Incêndio em distribuidora de combustível com fumaça tóxica em SC chega ao segundo dia,  November  14,  2023

    96fm.fm.br,  VÍDEO: Bombeiros seguem combatendo incêndio em depósito de combustíveis no Oeste,  November  15,  2023


後 記: 今回の事故は被災写真が多く投稿されていました。しかし、火災は3日間にわたっていますので、写真が撮られた日にちと時間の情報が欲しいと思いました。脈絡なく、写真の説明もなく、掲載されていますので、いつの時点のものか分かりません。ブログに載せる写真を選んでいきましたが、似たような写真が多く、半分以上カットしました。つぎにどのような所で火災が起こったかを示す遠景の写真を選び、そのあと時系列のものを選びたかったのですが、意外と分からないということがわかりました。とくに今回は防御的戦略がとられた3日間の写真ですので、いつの時点のものかはっきり分かりませんでした。炎の写っていない鎮火のものが最後で、これだけは分かりました。 

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