2019年1月21日月曜日

米国テキサス州でタンク爆発? 実はタンクローリーが爆発、死傷者2名

 今回は、2019年1月15日(火)、米国のテキサス州ミッドランド郡の州間高速道路20号線の近くにある油井用タンク施設のタンクローリー入出荷設備で起こった爆発・火災の事例を紹介します。
(写真はMedia.graytvinc.comから引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、米国のテキサス州(Texas)ミッドランド郡(Midland County)の州間高速道路20号線の近くにある油井用のタンク施設である。施設には、タンク設備のほかタンクローリーの入出荷設備があった。タンクは15基、タンクローリー積み場は3レーンあるが、所要者は報じられておらず、分かっていない。

■ 発災は、ミッドランド郡のFM1788号線の7800区画にあるタンク施設に入構していた油輸送用の大型タンクローリーで起こった。
テキサス州ミッドランド郡の州間高速道路20(左上)付近の油井群
 (写真はGoogleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2019年1月15日(火)午後、タンクローリーの入出荷設備で爆発・火災があった。

■ 当初、州間高速道路20号線の近くにある油井施設の蒸留設備で燃えているという情報が流れたが、これは、タンクローリーの設備近くにタンク設備があったことから勘違いしたものだった。ミッドランド消防署によると、現場で爆発した可能性があると通報を受けたという。その場所は油井用の塩水処理施設であったが、隊員25名が出動中に、発災は大型タンクローリー(エイティーン・ホイーラー;18-Wheeler)2台だと連絡があった。そして、現場に到着すると、タンクローリーは2台とも火災になっていた。

■ 発災は、現場で荷下ろし作業をしていたところ、油を運んでいた2台の大型タンクローリーから火が出たものだった。

■ この事故によって、運転手ひとりが亡くなり、もうひとりの運転手は火傷を負い、ミッドランド記念病院へ運ばれたのち、ラブロック病院へ空輸搬送された。現場には他にもうひとりいたが、火災発生時は建物の中にいて被災をまぬがれた。
 
 被 害
■ 大型タンクローリー2台が焼損したしたほか、タンクローリー入出荷設備が損壊した。 

■ 死傷者2名が出た。運転手1名が死亡し、1名が負傷した。

< 事故の原因 >
■ タンクローリーの爆発・火災を起こした原因は調査中である。

< 対 応 >
■ 事故原因の調査は、米国安全衛生労働局(Occupational Health and Safety Administration;OHSA)およびテキサス州内の油田開発などの行政を行うテキサス州鉄道委員会(Texas Railroad Commission)が行うものとみられる。 
(写真はChron.comから引用)
(写真はMrt.comから引用)
(写真はMrt.comから引用)
(写真はMrt.comから引用)
(写真はCbs7.comから引用)
補 足 
(図はJa.wikipedia.orgから引用)
■ 「テキサス州」(Texas)は、米国南部にあり、メキシコと国境を接し、人口約2,510万人の州である。テキサス州はスピンドルトップで原油が発見されて以来、石油が州内の政治と経済を牽引する存在になってきた。テキサス州一人当たりエネルギー消費量および全消費量で国内最大である。従来、メキシコ湾の海底油田が主であったが、 21世紀に入るとシェールオイル採掘の技術が進歩し、内陸部を中心に石油生産量が増加した。テキサス州を国として見た場合、ロシア、サウジアラビアに次ぐ世界第三位の石油産出国になっていると言われている。
 「ミッドランド郡」(Midland County)は、テキサス州西部に位置し、人口約13万人の郡である。

■ 発災場所の所有者は報じられておらず、分からない。しかし、グーグルマップで調べてみると、タンクローリーの入出荷設備とタンク設備のある場所は特定できた。この施設の運用方法は分からないが、油田生産の塩水処理設備だけでなく、タンクローリーの入出荷設備があるので、生産油の集積場所だとみられる。
           発災施設  (写真はGoogleMapから引用)
■ 「テキサス州鉄道委員会」(Texas Railroad Commission)は、州内の石油・天然ガス産業、ガス公益事業、パイプラインの安全性、液化石油ガスの安全性、および石炭とウラニウムの採掘を管理している。

■ 「エイティーン・ホイーラー」(18-Wheeler)とは、輸送用の大型トラックにつけられた愛称である。元々トラックに付いているタイヤホイール数の18からきているが、タイヤが18個を超える大型トラックも「エイティーン・ホイーラー 」といっている。 
 日本でも30KL級タンクローリーが走るようになったが、 いわゆる「エイティーン・ホイーラー 」 ではない。しかし、宇部興産専用道路(宇部市から美祢市を結ぶ高速道路:約32km)は私道のため、規制がなく、 40トン積みトレーラーを2両連結したダブルストレーラーを牽引しているので、34輪の連結トラックが走っている。
大型トラック・タンクローリーの例
■ 大型タンクローリーが入出荷設備で爆発事故を起こした事例としては、201055日(水)、米国ベア郡サンアントニオにあるAGE石油(AGE Refining)の製油所敷地でエイティーン・ホイーラーの大型タンクローリーが爆発して火災になった事故がある。  
米国ベア郡サンアントニオのタンクローリー爆発・火災事故
 所 感
■ この事故は、油井関連施設においてタンクローリーがタンクに積み下ろしするような設備での事故であり、日本では起こりえないものである。しかし、一般にタンクローリーへの油積込作業中に漏洩したり、火災を起こした事例は少なくない。
 ● 2010年5月、米国ベア郡サンアントニオにあるAGE石油のエイティーン・ホイーラーの爆発・火災」  
 このような中で、危険物保安技術協会の第11回危険物事故防止対策論文(2013年)では、「タンクローリー輸送事故防止に向けての提言」が奨励賞を受賞している。
 
■ タンクローリーの輸送中の事故も多いが、このブログで取り上げたつぎの事故は記憶に新しい大きな事故である。


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
   ・Hazmatnation.com, Crews Respond to Tank Battery Fire near Midland, TX,  January  16  2019
     ・Newswest9.com. Officials Identify Victims of Fire on FM 1788 South,  January  15  2019
     ・Cbs7.com. Victims Identified in Deadly Midland County fire,  January  16  2019
     ・Yourbasin.com. One Killed in Midland County Crash,  January  15  2019
     ・Mrt.com. County Fire Marshal: 1 Person Dies in Tanker Truck Fire,  January  15  2019
     ・Chron.com. Victims in Midland County Tanker Truck Fire Identified,  January  16  2019


 後 記: 本事故情報の最初はタンク・バッテリーの火災ということで、調べ始ましたが、タンクではなく、タンクローリーの爆発・火災だということが分かりました。ブログ投稿はやめようかと思いましたが、「エイティーン・ホイーラー」の事故だということで、続けて調べることとしました。日本では 「エイティーン・ホイーラー」 の車両はありませんので、紹介を兼ねて調べることにしました。 「エイティーン・ホイーラー」は、映画「ターミネーター」で主人公が追いかけられる大型タンクローリーです。(古くて見ていない人も多いかな)  エイティーン・ホイーラーのような大型のトラックは日本で走っていないとお思いでしょうが、補足で書いたように山口県の宇部興産専用道路では、ダブルストレーラーを牽引する34輪の連結トラックが走っています。しかし、米国では3台のトレーラーを牽引する連結トラック(46輪)が公道を走っています。(写真参照)
 ところで、肝心の事故情報ですが、死傷者が出ているのもかかわらず、詳しい内容の報道記事などは出てきませんでした。広大な土地に13万人しかいない郡で、至るところに油井があるような地域ですが、米国の報道状況の変化を感じる事故でした。
(写真はBlog.nittu-soken.co.jpから引用)




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