2019年1月11日金曜日

米国コロラド州で工事作業中にタンク爆発・火災、負傷者3名

 今回は、2018年10月27日(土)、米国コロラド州ウェルド郡にあるマーラード・エクスプロレーション社のタンク設備で起こった爆発・火災の事故について紹介します。
(写真はGreeleytribune.comから引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、米国のコロラド州(Colorado)ウェルド郡(Weld County)にあるマーラード・エクスプロレーション社(Mallard Exploration)の施設である。

■ 発災があったのは、コロラド州道14号線沿いでウェルド郡道83号線近くにある油井施設のタンク設備である。施設はブリッグスデール(Briggsdale)の東にあり、10エーカー(40,460㎡:約200m四方)の敷地に新しく建設されているものである。現在、この土地に生産油井はないが、タンクは6基ある
コロラド州ウェルド郡ブリッグスデール付近(中央部に郡道14号線)
 (写真はGoogleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2018年10月27日(土)午前9時頃、マーラード・エクスプロレーション社のタンク設備で爆発・火災が起こった。

■ 発災場所に比較的近いところの住民によると、家が地震にあったように揺れたという。そして、すぐに真っ黒い煙が流れているのに気がついた。

■ 発災に伴い、ウェルド郡保安官事務所とブリッグスデール消防署が対応に出動した。ウェルド郡保安官が現場に到着したときには、タンク設備は火に包まれていた。

■ 火災はブリッグスデール消防署によって消された。

■ この事故に伴い、請負会社の作業員3名が負傷した。ノースコロラド医療センターに2名は救急車で搬送され、1名は重度のやけどのためヘリコプターで搬送された。3名は、事故当時、タンク設備付近で作業をしていた。

■ 6基のタンクのうち1基は形が崩れて黒焦げになっていた。破片が四方に散らばっていた。タンクの屋根板が現場から約100フィート(30m)の距離に噴き飛んでいた。タンクは一般の建物から2,000フィート(600m)以上離れていた。

被 害
■ タンク1基が爆発・火災によって損壊した。 

■ 負傷者が3名出た。

< 事故の原因 >
■ 作業者のひとりが供用中でなかった貯蔵タンクの作業をしていたとき、電動工具からの火花がタンク内に残留していたベーパーと油に引火したものとみられる。  

< 対 応 >
■ 事故の調査のため、 コロラド州原油・天然ガス保全委員会(Colorado Oil and Gas Conservation
Commission)が現場に入った。また、米国安全衛生労働局(Occupational Safety and Health Administration)も事故の対応のため現地を訪れた。
(写真はGreeleytribune.comから引用)
(写真はThedenverchannel.comから引用)
(写真はDenver.cbslocal.comの動画から引用)
(写真はThedenberchannel.comから引用)
(写真はDenver.cbslocal.comの動画から引用)
補 足 
■ 「コロラド州」(Colorado)は、米国西部にあり、州の南北にはロッキー山脈が貫いており、州全体の平均標高が全米で一番高い山岳地帯で、人口約503万人の州である。州都および人口最大都市はロッキー山脈の東側にあるデンバー市(人口約60万人)である。
 「ウェルド郡」(Weld County)は、コロラド州北部に位置し、人口約25万人の州である。

■ 「マーラード・エクスプロレーション社」(Mallard Exploration)は、コロラド州デンバーに本拠を置き、原油・天然ガスの生産に携わっている石油企業である。

■ 爆発・火災を起こしたタンクの仕様(大きさ、内容物)は分かっていない。グーグルマップで探してみると、コロラド州道14号線付近には油井用のタンク設備が多々ある。これらのタンクは同じくらいの大きさで、直径約4.3mであり、発災タンクの大きさを類推できる。高さを約6mとすれば、容量は80KL級である。
 
所 感
■ この事故は、「作業者のひとりが供用中でなかった貯蔵タンクの作業をしていたとき、電動工具からの火花がタンク内に残留していたベーパーと油に引火したもの」とみられており、明らかに「タンク内外の火気工事における人身事故を防ぐ7つの教訓」(米国CSB;化学物質安全性委員会)が活かされていないものだろう。
 米国では、石油の油井が至るところにあり、タンク設備のオーナー(所有者)としての安全管理は希薄で、従って、タンク周辺の工事は請負会社任せになっているものと思われる。広大な人が住んでいない場所でのタンク工事に対する危険物の意識が弱くなっていると感じる。

 発災タンクの写真を見ると、いろいろな疑問がある。
 ● タンク周辺には防油堤がない。
 ● 新しく建設されていると思われるタンクに、なぜ可燃性ガス(油)が入っていたのか。
 ● 発災タンクの側板下部にはスラッジ抜出し用のマンホールがあり、空いている。
 ● 発災タンクの後側にあるタンク設備の地面が掘削されている。
 ● タンク設備には保温が施工されているが、この種のタンクには珍しい。
   (発災タンクの保温がバラバランに飛び散っている)
 ● 周辺には、油井もなく、タンク設備の用途がわからない。


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Greeleytribune.com, Three Injured, One Seriously Burned in Tank Battery Fire near Briggsdale,  October 27  2018
    ・Denver.cbslocal.com, 3 Hurt In Weld County Oil Tank Battery Fire ,  October 27  2018
    ・Kdvr.com, 3 workers injured in oil tank battery fire in Weld County,  October 27  2018
    ・K99.com, Weld County Oil Tank Battery Fire Injured Three Workers,  October 29  2018
    ・Thedenverchannel.com, 3 injured in Oil Tank Battery Fire East of Briggsdale in Weld County,  October 28  2018
    ・9news.com, 3 Injured after Oil Tank Battery Catches Fire in Weld County,  October 28  2018



後 記: 本情報の入手は遅かったため、ブログ投稿も遅くなりました。ところで、最近、米国の油井施設のタンク設備やパイプラインの事故を見るたびに感じることは、米国の原油・天然ガスの開発へのあくなき挑戦(欲望と言っていいかも)ですね。石油メジャーが独占していた原油・天然ガス開発は、現在では中小の独立した石油開発会社が担っています。ガソリン価格は日本の半分程度ですし、広大な土地を見れば、地球温暖化がフェークニュース扱いになってしまう素地はあるなあと思ってしまいますね。今回の事故も請負会社の不注意で済まされ、忘れ去られるのではないでしょうか。教訓が活かされない土壌ができつつあることを危惧しながら、まとめました。


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