2022年4月30日土曜日

ロシアのふたつの石油貯蔵所でタンク爆発・火災、テロ攻撃か

 今回は、2022425日(月)、ロシアのブリャンスクにあるトランスネフチ社の石油貯蔵所、およびこの石油貯蔵所の近くにある軍事施設の石油貯蔵所の2箇所で燃料タンクが爆発・火災を起こした事故について紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、ロシア(Russia)のブリャンスク(Bryansk)にある石油パイプライン運営会社トランスネフチ社(Transneft)のブリャンスク・ドルジバ(Bryansk-Druzhba)石油貯蔵所、およびこの石油貯蔵所の近くにある軍事施設の石油貯蔵所である。ブリャンスクはウクライナとの国境の北東154kmの地点にあり、同施設はウクライナ侵攻作戦で、ロシア軍の兵たん拠点の一つといわれている。

■ 事故があったのは、2箇所の石油貯蔵所内にある燃料タンクである。

<事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2022425日(月)午前2時頃、トランスネフチ社の石油貯蔵所の燃料タンクで火災が発生した。その1015分後、近くにある軍事施設の燃料タンクで火災が発生した。

■ 近くの住民によると、最初の爆発が午前150分に聞こえ、約10分後に2回目の爆発が聞こえたという。

■ 事故発生の連絡を受け、消防隊が出動した。

■ 石油貯蔵所の近くに住む住民が避難を始めた。

■ トランスネフチ社の石油貯蔵所で火災があったのは、容量10,000KLのディーゼル燃料タンクだという。軍事施設で火災があったのは、5,000KLの燃料タンクだという。

■ ロシアの非常事態省は、火災によるけが人はおらず、ブリャンスク市民に避難の必要はないとしている。ロシアのエネルギー省は、ブリャンスクへのディーゼル燃料やガソリン供給に影響はないと述べている。

■ 425日(月)の夜、ブリャンスクの住民が市内のフォキンスキー地区にある2つの石油貯蔵所のタンク火災の状況をドローンで動画撮影し、ユーチューブに投稿している。動画は425日の午後5時頃に撮影されたものだという。Youtube Пожар на нефтебазе в Брянске 25 апреля 2022г(ブリャンスクの石油貯蔵所での火災2022425日)を参照)

■ 426日(火)午前1時時点でも、燃料タンクの燃焼が続いており、ロシア国営のイタル・タス通信は テレグラム(Telegram)に炎と煙を示す写真を掲載した。

■ 425日(月)夕方、ロシアのインターネットメディア・マッシュ(Mash)には、ブリャンスクの石油貯蔵所で1基の燃料タンクの火災の始まりと題するタンク爆発の瞬間を示した動画が投稿されている。Telegram, Начало пожара у одного из резервуаров с топливом на нефтебазе в Брянске.(ブリャンスクの石油貯蔵所で1基の燃料タンクの火災の始まり)2022.4.25を参照) 

被 害

■ トランスネフチ社の石油貯蔵所のタンク1基が焼失し、内部の燃料油が焼失した。軍事施設の石油貯蔵所ではタンク1基が焼失したほか、もう1基も損傷したとみられる。

■ 負傷者は出なかった。

< 事故の原因 >

■ 原因は調査するとし、分かっていない。

< 対 応 >

■ 2022425日(土)、ロシア政府は原因を調査すると表明したのみである。

■ ロシア政府とウクライナ政府は、いずれも今回のタンク火災について要因に関することを語っていない。

■ 2022426日(日)午前7時過ぎ、燃え続けたタンク火災は消えたとみられる。




補 足

■「ロシア」(Russia)は、正式にはロシア連邦といい、ユーラシア大陸北部に位置し、人口約14,600万人の連邦共和制国家である。

「ブリャンスク」(Bryansk)は、ロシアの北西部に位置し、ブリャンスク州の州都で人口約43万人の都市である。西はベラルーシと接し、南はウクライナとの国境がある。

 ロシアのタンク事故には、つぎのような事例がある。

 ● 20138月、「ロシア・シベリアの石油施設でタンク火災」

 ● 20141月、「ロシア・ムルマンスクの石油施設でガソリンタンク火災」

 ● 20205月、「ロシアのシベリアで発電所の燃料タンク底板部から大量流出(原因)」

■「トランスネフチ社」(Transneft)は、1993年にロシア連邦政府によって設立され、ロシアを拠点とする石油とガス輸送を行う会社である。約70,000kmのパイプラインと500以上のポンプ場を運営し、バルチックパイプラインシステム、バルチックパイプラインシステム-2、東シベリア太平洋石油パイプライン、パープサモトラーパイプラインシステムなどの石油輸送システムを運営する。ポーランド、ハンガリー、スロバキア、ラトビア、中国、ウズベキスタン、ベラルーシなど、国内外の市場でサービスを提供し、国内に多数の子会社がある。

■「発災タンク」は、トランスネフチ社の石油貯蔵所の方が容量10,000KLで、軍事施設の石油貯蔵所の方が容量5,000KLだと報じられている。グーグルアースで調べてみると、トランスネフチ社の石油貯蔵所の方が直径約32mであり、高さを12.5mと仮定すれば、容量は10,000KLとなる。軍事施設の石油貯蔵所の方は直径約22mであり、高さを12mと仮定すれば、容量は4,500KLとなる。また、このタンクに隣接するタンクがすでに座屈して火災は消えているが、発災タンクのひとつとみられる。このタンクは直径が約15mであり、高さを10mと仮定すれば、容量は1,700KL程度となる。まとめると、両石油貯蔵所の発災タンクはつぎのような大きさとみられる。

 ● トランスネフチ社の石油貯蔵所; 直径約32m×高さ12.5m×容量10,000KLのディーゼル燃料用の固定屋根式(ドームルーフ)タンク

 ● 軍事施設の石油貯蔵所; 直径約22m×高さ12m×容量4,500KLの固定屋根式(コーンルーフ)タンク、直径約15m×高さ10m×容量1,700KLの固定屋根式(コーンルーフ)タンク、いずれも内部の石油は不明である。

所 感

■ タンク火災の原因は調査中で分かっていない。「貯蔵タンクにおける事故の発生頻度」201512月)によれば、固定屋根式タンクの内部爆発・全面火災の発生確率はタンク1基・年間当たり9.0×10-5である。あまり小さ過ぎてピンと来ないが、タンク100基・10年間でみれば発生頻度は0.09回である。このように発生頻度は小さいが、隣接する2箇所の別な石油貯蔵所でタンク爆発・火災がほぼ同時に起こる頻度はこの2乗と極めて低く、原因は人為的な要因だと推測できる。

■ 今回のタンク火災について海外メディアの中には、ロシアの戦略施設に対するウクライナの攻撃の成功か、ウクライナを非難するためのロシアの偽旗​​(にせはた)作戦のいずれかの可能性という見方をしている。しかし、両国が関与について言及していない中で、爆発瞬間の映像がフェーク動画でなく、事実だとすれば、撮影場所など周到に練られ、かなり強烈なロケットランチャー(個人携行式対戦車ミサイル)を使用したロシア国内のテロ攻撃ではないかと感じる。

■ 消防活動はまったく報じられていない。今回、ドローンによる映像がユーチューブに投稿されたのが、唯一の情報である。発災が午前2時で撮影が午後5時というので、すでに15時間が経過した段階である。消火ホースのノズルが主な消火活動であり、効果は出ていないように見える。火が消えたのは426日(火)の午前7時と言われているので、ドローン映像が撮られたあとも14時間燃え、燃焼時間は29時間である。消火活動によって火を消したというより、燃え尽きて消えたという印象である。タンク火災に加えて堤内火災があり、且つ同時2箇所の対応が必要で困難な状況だったことは理解できるが、ロシア国内の消火体制や消火資機材が充実していないことをうかがわせる事例である。


備 考

 本情報はつぎの情報に基づいてまとめたものである。

    Jp.reuters.com,  ロシア西部の石油貯蔵施設で大規模火災、ウクライナ国境近く,  April  25,  2022

     News.yahoo.co.jp,  西部の燃料貯蔵施設で火災 ロシア非常事態省,  April  25,  2022

     Tankstoragemag.com, Fuel tanks in Bryansk catch fire,  April  25,  2022

     Reuters.com, Russia investigates large oil depot fire in region near Ukraine,  April  26,  2022

     Tass.com, Fire breaks out at oil depot in Bryansk — officials,  April  25,  2022

     Gordonua.com, Пожары на нефтебазах в Брянске сняли с дрона. Они продолжаются более суток. Видеo,  April  26,  2022

     English.nv.ua, How the fires at oil depots in Bryansk may affect the Russian army,  April  26,  2022

     Themoscowtimes.com, Fire Engulfs Key Russian Oil Depots Near Ukraine,  April  25,  2022

     Theweek.com, Fires break out at Russian oil depots near border with Ukraine,  April  25,  2022

     Inews.co.uk, Bryansk fire: Oil depot blaze breaks out in Russian city where Kremlin accused Ukraine of helicopter strikes,  April  25,  2022

     Mil.in.ua, Two oil storage depots in Russia’s city of Bryansk catch fire,  April  25,  2022


後 記: 今回のロシアの石油貯蔵所に関する事故情報では、欧州のメディアの活発さが目立ちます。ただ当然ですが、“ロシアのウクライナ侵攻” による影響を受けた定性的な記事が多いですね。このブログで関心のあるタンクの具体的な情報や被災状況は少なく、内容が曖昧です。その中で、ロシア住民によるユーチューブへの動画投稿が出てきてびっくりしました。いま、ロシアの人がユーチューブに投稿することが許されるのか、またフェーク動画ではないだろうかと初めは疑心暗鬼になりました。しかし、これだけでなく、ロシアのインターネットメディアのマッシュ(Mash)に投稿された動画やロシアのソーシャル・ネットワーキング・サービスのVKには、ロシア国営のイタル・タス通信の無味乾燥な報道にない自由さが残っていることを初めて知ることができました。ただ、マッシュの爆発瞬間の動画の真偽は一抹の不安が残りますが、本物として扱いました。





2022年4月25日月曜日

メキシコのペメックス社の製油所でガソリン・タンク火災

  今回は、2022415日(金)、メキシコのオアハカ州サリナ・クルス市にあるペメックス社のサリナ・クルス製油所でガソリン・タンクの火災が起こった事故を紹介します。


< 発災施設の概要 >

■ 事故があったのは、メキシコ(Mexico)のオアハカ州(Oaxaca)サリナ・クルス市(Salina Cruz)にあるメキシコ国営石油会社ペメックス社(Petroleos Mexicanos Pemex)のサリナ・クルス製油所である。

■ 発災があったのは、製油所の貯蔵タンク地区にある容量10万バレル(15,900KL)のガソリン貯蔵タンクである。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2022415日(金)午後230分頃、ガソリン貯蔵タンクで火災が発生し、製油所内から煙が立ち上った。ペメックス社によると、火災はタンクの上部から始まったという。

■ 火災に伴い、ペメックス社の自衛消防隊が出動した。消防隊は泡消火活動とタンクの冷却作業を実施した。

■ 416日(土)、火災は現場から何キロも離れたところからも確認できた。火災によって放出される黒煙による大気汚染と相まって、火災が収まらないので、近くの住民は心配になってきた。

■ ペメックス社は、火災が収まらないため、安全のため製油所のプラント操業の停止に入った。

■ 地方自治体と警察は、トラブル発生を避けるため、この地区の封鎖を行った。近くの住民には避難指示が出された。

■ 火災の状況がユーチューブに投稿されている。YouTubeSalina Cruz se declara en emergencia por incendio de refinería en Oaxaca(サリナクルスがオアハカの製油所火災による緊急事態を宣言)、Incendio en refinería de Salina Cruz, Oaxaca - Sábados de Foro(オアハカのサリナクルス製油所で火災-土曜日 2022/4/17)を参照)

被 害

■ 容量10万バレル(15,900KL)のガソリン貯蔵タンクが焼損した。内部のガソリンが33,000バレル(5,200KL)焼失した。

■ 事故に伴う負傷者はいなかった。

■ 近くの住民には避難指示が出された。(150世帯と報じられている)

■ 石油の燃焼で排出される有害物質による大気汚染が発生した。

< 事故の原因 >

■ 原因は調査中である。

■ 火災は分配配管に関する技術的ミスが発端だという情報や、プレートの切断作業時の火花で火災が起こったという不確かな情報がある。

< 対 応 >

■ ペメックス社は、発災翌日の416日(土)、同社のウェブサイトにサリナ・クルス製油所のガソリン貯蔵タンク(TV-102 )で火災があったことを発表した。

■ 火災の消火活動は、当初、ペメックス社の自衛消防隊だけで行っていたが、その後、火災の勢いが増したため、地域の消防署や他社からの消防士が参加して行われた。 415日日(金)の夕方までの最初の数時間で火災は消火できそうなところまで来たが、翌16日土曜に風が強くなり、午前5時頃、火災の勢いが増した。炎の高さは100mに達するほどだった。

■ 消防士は、ときには炎が数メートルの高さに達した火を消すために戦った。

■ 消火用の泡薬剤が不足し、他地区のカデレイタ製油所(Cadereyta)、ヌエボレオン製油所(Nuevo León)、ミナティトラン・ベラクルス製油所(Minatitlán Veracruz)が泡薬剤の供給を要請された。メキシコ海軍には、消火に必要な泡薬剤の移送が要請され、空輸を行った。

■ 住民からは石油の燃焼で排出される有害物質による大気汚染の深刻さを訴えられている。

■ 消火活動によって一旦火災は消えた。その後、416日(土)午前5時頃、消えた火災が再燃した。その後、消火するまでに発災から30時間かかった。

■ タンクの火災によって内部のガソリンが33,000バレル(5,200KL)焼失した。

■ 418日(月)時点で、製油所で停止したプラントは26装置である。

■ 火災事故に伴う負傷者は発生しなかった。



補 足

■「メキシコ」(Mexico)は、正式にはメキシコ合衆国で、北アメリカ南部に位置する連邦共和制国家で、人口約13,000万人の国である。

 「サリナ・クルス市」(Salina Cruz)は、「オアハカ州」(Oaxaca)の南東部の太平洋側にあり、人口約76,000人の港湾都市である。

■「ペメックス社」(Petroleos Mexicanos Pemex)は1938年に設立された国営石油会社で、原油・天然ガスの掘削・生産、製油所での精製、石油製品の供給・販売を行っている。ペメックス社はメキシコのガソリンスタンドにガソリンを供給している唯一の組織で、メキシコシティに本社ビルがあり、従業員数約138,000人の巨大企業である。

 オアハカ州サリナ・クルス市には、1979年に操業を開始した精製能力330,000バレル/日のサリナ・クルス製油所(Salina Cruz Refinery)がある。サリナ・クルス製油所では、20176月に火災事故が起こっている。

 なお、ペメックス社の関連事故については、つぎのような事例がある。

 ● 20147月、「メキシコのペメックス社でタンク火災、負傷者も発生」

 ● 20147月、「メキシコで原油パイプラインからの油窃盗失敗で流出事故」

 ● 20173月、「メキシコのペメックス社の石油ターミナルで爆発、死傷者8名」

 ● 20176月、「メキシコのペメックス社の製油所で浸水による火災で死傷者9名」

■ 「発災タンク」をグーグルマップで調べてみると、貯蔵タンク地区北側にある直径約42mの浮き屋根式タンクであることが確認できる。発災タンクは、容量10万バレル(15,900KL)で直径約42m×高さ約11.5mほどの大きさである。発災タンクの隣には同様の浮き屋根式タンクが1基あり、さらに隣接して同様の大きさの固定屋根式タンクが4基ある。ペメックス社はこれらのタンクへの延焼を気にしていたとみられる。

所 感

■ 今回の事故は、初期消火の失敗から大きなタンク火災に至ってしまったという印象をもつ。最初の数時間で火災は消火できそうなところまで来たという情報から、当初は屋根火災とみられる。被災写真でも、側板が焼けていない初期とみられるタンク火災の状況は煙の量が薄く、大きな火災ではない。どのような消火活動が行われたか分からないが、この段階では、つぎのような対応をすべきだったと思う。

 ● ドローンまたははしご車(スクアート車)のカメラによる映像を撮影し、火災の箇所やまわりの状況を確認する。

 ● 手持ちの消防資機材の能力から消火が可能ならば、泡モニターで消火活動を行う。

 ● タンク上部へのアクセスが可能な場合、完全防備の消防士がタンクへ上がって、活動する方法があり、この判断の是非を行う。(日本では行われていないが、米国では一般的な対応策である)

 ● 消防資機材(泡モニターや泡薬剤)の能力が不足と判断すれば、能力を有する資機材の応援を要請し、調達できるまでは消極的消火戦略(冷却など)をとる。

 推測であるが、この初期段階では、浮き屋根が一部沈降している状況ではなかったろうか。この段階で、能力不足の消防資機材(泡モニター)を使用すれば、水を注いで浮き屋根をさらに沈降させ、火災を拡大させてしまう恐れがある。

■ 初期消火に失敗したのち、風も強くなり、タンク全面火災に近い状況になったとみられる。この段階では、タンク直径約42mであり、日本の法令では、放射能力10,000L/分の大容量泡放射砲が必要である。何度か消えそうな状態になったらしいので、浮き屋根の沈降と固着、泡の覆いと途切れを繰返していたのかも知れない。この点、 同じガソリン・タンクで起こった202111月の「インドネシアの製油所でアルミニウム製ドーム型浮き屋根タンクが火災」と類似事例のような印象である。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

   Reuters.com, Mexico‘s Pemex says fire under control at Salina Cruz refinery,  April  17,  2022

    Tankstoragemag.com, Tank fire stops operations at Pemex Salina Cruz refinery,  April  19,  2022

    Stacks921.com,  Mexico’s Pemex battles fire at Salina Cruz refinery,  April  19,  2022

    Infobae.com, Gasoline storage tank caught fire at Salina Cruz refinery due to mechanical failure,  April  16,  2022

    Mexicobusiness.news, Fire Sets PEMEX’s Salina Cruz Refinery Ablaze,  April  18,  2022

    Riviera-maya-news.com, Pemex refinery fire at Salina Cruz burns for nearly 24 hours,  April  18,  2022 

    Ginaserranotv.mx, Incendio en refinería de Pemex de Salina Cruz; el fuego está controlado, hay saldo blanco,  April  18,  2022

    Eluniversal.com.mx, Tras más de 30 horas, controlan incendio en refinería de Salina Cruz, en Oaxaca,  April  18,  2022

    Hoydinero.com, Incendio en refinería Salina Cruz: PEMEX trabaja para sofocarlo,  April  18,  2022

    Nvinoticias.com, Pemex pierde 95 millones de pesos por incendio en refinería de Oaxaca,  April  17,  2022

    Ororadio.com.mx, Semar-Armada de México, dispuso equipo y personal para sofocar incendio en Salina Cruz,  April  18,  2022


後 記: 前回(2017年)の事故時、国営企業のペメックス社はウェブサイトを通じて事故情報(声明)を3日連続で発信しており、情報公開がオープンだと思いました。これに比べると、今回はペメックス社のミスが存在しているようなので、失敗は隠れたがるで情報発信が少なかったと感じます。さらにメディアの情報の質が低下していると思いました。情報の量(数)は結構あるのですが、通信社から発信される1次情報が多く、インターネットで調べていっても、事故状況の時系列が曖昧で、事故の内容はそれほど深まらなかったという感じです。





2022年4月20日水曜日

米国アラスカ州の原油タンクが大雪によって設備損傷

  今回は、2022324日(木)、米国アラスカ州のアリエスカ・パイプライン・サービス社は、バルディーズ・マリン・ターミナルで2月中旬~3月中旬に降った大雪によってタンクの付属設備が損傷したと発表した事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国のアラスカ横断パイプラインを運営するアリエスカ・パイプライン・サービス社(Alyeska Pipeline Service Co)のバルディーズ・マリン・ターミナル(Valdez Marine Terminal)である。

■ アラスカ州(Alaska)バルディーズにあるバルディーズ・マリン・ターミナルには14基の原油貯蔵タンクあり、被害があったのはこの原油貯蔵タンクである。各貯蔵タンクは直径約71m×高さ約19mで、容量は約81,000KLである。


< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2022324日(木)、アリエスカ・パイプライン・サービス社は、2月中旬~3月中旬、バルディーズ・マリン・ターミナルで4フィート(120cm)以上の雪が降り、この大量の降雪によってタンクの付属設備が損傷し、石油ベーパーが環境に放出されたと発表した。

■ アリエスカ・パイプライン・サービス社は、石油貯蔵タンクの上に積もった大量の雪に対処するため、応援人員を呼び出した。アリエスカ・パイプライン・サービス社によると、作業員10人で各タンクから雪下ろしをするのに、最大で2週間かかるが、必ずしもすべてのタンクから雪を完全に取り除くのが目標ではないと語っている。

■ アリエスカ・パイプライン・サービス社は、複数のタンクを使用停止に追い込まれが、これまでのところ石油輸送に影響は出ていないと話している。

■ 被害拡大を防ぐため、アリエスカ・パイプライン・サービス社は、請負会社に派遣を要請し、呼吸器を装着した作業員数十人による懸命な除雪作業を行った。作業員は24時間体制で作業を行っているが、タンク上部張った親綱で体を固定し、除雪機や電動工具を使えないため、雪のブロックをのこぎりで切り落とし、端から滑らせて雪下ろしをしているという。

■ 積雪により貯蔵タンクのうち少なくとも4基で、屋根の上端に沿って設置されたベントバルブがタンク周囲に向かって押し下げられ、使用不能に陥った。このバルブは、石油から発生するベーパーを管理するために使用されるシステムの一部で、タンク内の圧力が上がり過ぎたり、下がり過ぎたりするのを防ぐ。

■ アリエスカ・パイプライン・サービス社によると、 「損傷したベントバルブはタンク内のベーパー圧力を制御している設備で、 大気圧あるいはタンク外と同じ圧力になるように、あるいはベーパーがタンクから逃げるのを防ぐためわずかに負圧になるように制御している。ベントバルブの漏れが確認されると、オペレーターはタンク内の圧力を大気圧またはわずかに負圧に調整する。これによって大気中に放出されるベーパーを最小限に抑えることができるが、従業員はベーパーを検出できる特別な装置でこれを確認することができる」という。

■ この冬にタンクに積もった雪がバルブを押し下げるのに十分な下向きや外向きの力を生み出したとみられる。さらに、今年の晩冬の雪質は湿っていて、その後凍結したため、ターミナルの建物などへの影響が悪化したという。 バルディーズ地域では、この冬、過去10年間で最も多い降雪量と積雪深さを記録した。バルディーズでは、今年の215日から315日まで期間で、10日間のピーク時の降雪が4フィート(120cm)を記録し、積雪深さは21インチ(68cm)増加した。1985年以来、町は68インチ(172cm)以上の10日間降雪を3回記録している。

■ しかし、この雪の量はここ数年では特に異常であったが、前例がないわけでもない。特にバルディーズは、海抜に近いアラスカの町の中では平均降雪量が最も多い町である。バルディーズの気象に詳しい人によると、「アリエスカ・パイプライン・サービス社の人たちは不意を突かれ、このようなことが起こるとは思ってもいなかったでしょう。しかし、私たちが住んでいるバルディーズはアラスカの雪の中心地ですから、こんなことはありえないとは言えません」と話している。

被 害

■ 積雪により貯蔵タンクのうち少なくとも4基で、屋根の上端に沿って設置されたベントバルブがタンク周囲に向かって押し下げられ、使用不能に陥った。  

■ 雪下ろし中に作業員が転倒して応急処置を行ったことが4件発生した。

■ この雪による設備損傷で原油のベーパーを環境に放出し、アラスカ州の規制当局は大気浄化法違反であるとしている。

< 事故の原因 >

■ 事故の原因は大量の降雪によるタンク付属設備の損傷である。

< 対 応 >

■ ターミナルでの問題に対処するため、作業員は破損したバルブの代わりに仮のキャップを取り付けた。

■ ターミナルのタンクは、もともと、パイプライン内を流れる原油の温度が高く、タンク屋根上の雪が溶けるように設計されていた。しかし、ノース・スロープで生産される原油の量が減少するにつれ、状況が変わってきていた。

■ 冬の終わりに降雪が急増する前に、アリエスカ・パイプライン・サービス社では約40人の従業員で除雪を行っていた。その後、請負会社から80人以上の作業員が昼夜を問わず働いており、さらに追加で人員を投入する予定だという。

■ 雪下ろしをしている作業員は、壊れたバルブからベンゼンなどの炭化水素が放出されるため、呼吸器を装備している。ベンゼンは高レベルの曝露で危険な発がん性化学物質である。

■ 一方、アラスカ環境保全省(Alaska Department of Environmental Conservation)は、少なくとも7基のタンクから大気中に石油ベーパーが放出されており、大気浄化法に違反しているとみている。

■ また、作業員は牽引装置を装着し、ロープでタンクに固定することで、転落を防いでいる。しかし、アリエスカ・パイプライン・サービス社によると、雪下ろし中に作業員が転倒して応急処置を行ったことが4件発生しているという。  

10年前、バルディーズで特に雪が多い冬に、2人の作業員がタンク屋根から転落したという。幸い、大きな怪我ではなかった。それ以来、アリエスカ・パイプライン・サービス社では、除雪手順に安全性を重視した変更を加えた。作業員は、タンクの端から上に向かって作業するのではなく、まずタンクの上部から雪のブロックを切り出し、つぎに雪のブロックをシュートに滑らせるようにした。

補 足

■「アラスカ州」(Alaska)は、米国の最北端に位置し、アリューシャン列島を含み、米国本土とはカナダを挟んで飛び地になっており、人口約73万人の州である。

「バルディーズ」 (Valdez)は、アラスカ州の南東部に位置する人口約4,000人の港町である。バルディーズは、 1989324日にプリンス・ウィリアム・サウンドで座礁したエクソン・バルディーズ号による大量油流出事故の近くにある。

■ 「アリエスカ・パイプライン・サービス社」(Alyeska Pipeline Service Co)は1970年に設立し、石油企業のコノコ・フィリップス社(ConocoPhillips)、エクソンモービル社(ExxonMobil)、ヒルコープ社(Hilcorp)によって共有されており、アラスカのノース・スロープ(North Slope)の原油を800マイル(1,287km)のパイプラインを介して約50万バレル/日(79,500KL/日)輸送している。

■ 「バルディーズ・マリン・ターミナル」(Valdez Marine Terminal)はバルディーズにあり、原油の積み出し港で、18基の原油貯蔵タンクがあり、そのうち14基が稼働中である。各タンクの容量は510,000バレル(81,000KL)で、コーンルーフ式の固定屋根が61本の内部支柱で支持されている。貯蔵タンクは、2基がペアとなった防油堤で囲まれており、両方のタンクの容積の110%を保持する容量である。この防油堤は水と雪を溜めることもできる。このタンクは、輸送されてきた原油の一時的な貯蔵の役目を果たすとともに、原油から発生する炭化水素ベーパーが発電施設によって管理され、バルディーズ・マリン・ターミナルで必要な電力の50%をまかなっており、残りは超低硫黄ディーゼルで発電している。また、ターミナルには、2つの荷役用バースやバラスト水処理施設を保有している。

■「被害のあったタンク」は原油用であり、通常、浮き屋根式タンクを使用するが、バルディーズ・マリン・ターミナルの原油タンクは固定屋根のコーンルーフ式タンクである。この設計思想は明示されていないが、アラスカの自然環境に配慮し、ベーパー・リカバリー・システムで原油ベーパーを回収する設備にしたものと思われる。そして、タンクのベントバルブ(ブリーザー弁)には、プレッシャー/バキューム・リリーフバルブ(圧力/真空リリーフバルブ)形式の制御システムを採用しているのではないかと思われる。通常のプレッシャー/バキューム・リリーフバルブではなく、ベーパー・リカバリー・システムの圧力検知の機能をもった計装機器とみられる。雪のない時期に撮影された貯蔵タンク群の写真を見ると、タンク屋根の中心部には、ブリーザー弁やプレッシャー/バキューム・リリーフバルブは見当たらず、タンクの半周に10個ほどの機器が付いている。これらがベーパー・リカバリー・システムとプレッシャー/バキューム・リリーフバルブを兼ね備えた機器とみられる。



所 感

■ この事例そのものは特殊な設備被害だという印象である。 被害のあったタンクは原油用であり、通常、浮き屋根式タンクであるが、バルディーズ・マリン・ターミナルの原油タンクは固定屋根のコーンルーフ式タンクとベーパー・リカバリー・システムを採用している。このため、特殊なプレッシャー/バキューム・リリーフバルブを使用しているため、降雪に対する弱点として顕在化したものと思われる。

■ この事例から設備に関する一般的な教訓はないが、最近の異常気象に関していえば、日本でも大量の降雪によってタンク設備に被害が起こらないか北国のタンク貯蔵所では考えておく必要はあろう。日本でも、20211月に起こった「岩手県のシオノギファーマで貯蔵タンクの排出弁が落氷で開になり、漏洩」といった思わぬ事故がありうる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Ktoo.org,  Snow pileup damages Alaska pipeline company’s massive Valdez oil tanks,  March  25,  2022

     Kinyradio.com,  Heavy snow in Valdez causing damage to oil tanks,  March  26,  2022

     Alaskapublic.org,  Crews remove snow from damaged Alaska pipeline oil tanks,  March  25,  2022

     Usnews.com,  Crews Remove Snow From Damaged Alaska Pipeline Oil Tanks,  March  25,  2022

     Tankstoragemag.com, Snow damages Alyeska Valdez tanks,  March  25,  2022

     2news.com, Valdez Snow Oil Tanks,  March  25,  2022

     Tankstoragenewsamerica.com, Snow Pileup Damages Alaska Oil Tanks,  March  31,  2022

     Countryjournal2020.com, Valdez Oil Terminal Tanks Damaged By Heavy Snows; Require Digging Out By Hand,  March  25,  2022


後 記: アラスカの万年雪が残るような山の麓にコーンルーフ式の大型原油タンク群があるなどとは思ってもいませんでした。一方、メディアの記事だけでは、タンク設備の損傷状況が理解できませんでした。多くの報道の情報では、バルブがせん断されたとあり、プレッシャー/バキューム・リリーフバルブのような設備がたとえ氷結した降雪でもせん断されることはないだろうとモヤにかかったような気持ちでした。そのような中で、「タンク周囲に向かって押し下げられ、使用不能に陥った」という記事を見つけてやっとモヤが晴れました。しかし、それでも設備が分かっていないので、すっきりした気分ではありません。  

2022年4月11日月曜日

ウクライナ各地の石油貯蔵所がミサイル攻撃によってタンク火災

 今回は、2022310日に紹介したウクライナの石油貯蔵所のタンク火災情報に引き続き、2022325日以降、ウクライナ各地において石油貯蔵所がミサイル攻撃によってタンク火災になった情報を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災施設は、ウクライナ(Ukraine)の各地にある石油貯蔵所である。

■ 2022224日(木)、ロシアがウクライナに侵攻し、軍事衝突が起こり、ウクライナ東部の石油貯蔵所が攻撃された。その後、325日(土)、ウクライナ西部のリヴィウ(Lviv)の石油貯蔵所が長距離ミサイルで攻撃されたほか、西部地区の石油貯蔵所が相次いで攻撃され、さらに東部・中部地区の石油貯蔵所でも攻撃されている。3月上旬までの攻撃による被災状況は、「ウクライナ各地で石油貯蔵所が攻撃によってタンク火災」2022310日)を参照。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 325日(土)の午後430分頃、比較的安全な地域といわれていたリヴィウに空襲警報が鳴り響いた。数発の長距離ミサイルが街を襲った。

■ 長距離ミサイルの1発が、市の東部郊外の住宅地から遠くないところにあるリヴィウのウクライナ軍が使用している石油貯蔵所がねらわれ、爆発した。この爆発によって5人が負傷した。市街地では濃い黒煙が見られた。NATO加盟国のポーランドとの国境からわずか60kmでロシアから遠く、ミサイルは高精度長距離海上発射兵器“High-precision long-range sea-launched weapons” といわれている。

■ 州の消防隊が炎に取組み、火災は326日(日)午前5時頃、制圧され、午前7時に鎮火された。消防隊が炎を消すのに14時間かかった。

■ 米国コロラド州に本社を置く宇宙技術企業であるマクサー社(Maxar)は石油貯蔵所の損傷状況の衛星画像を公開した。

■ 327日(日)午後10時頃、ヴォルィーニ州(Volyn)ルーツク(Lutsk)で15分間に2回のミサイル攻撃があり、企業の石油貯蔵所が炎上した。大きな火災となり、消防隊が消火活動を行い、翌328日(火)の午前8時頃に制圧し、局所化した。しかし、完全に消火するまでに32時間かかり、328日(月)午前6時に鎮火した。

■ 火災の状況がユーチューブに投稿されている。(YouTube Волинська область: ліквідовано пожежу на території одного з промислових підприємств2022/03/28)を参照)

■ 327日(日)には、このほかハリコフ(Kharkiv)、キーウ(キエフ;Kyiv )、ジトーミル(Zhytomyr )の燃料貯蔵所への攻撃が報告されている。

■ ロシアの侵攻が5週目に入り、ミサイル攻撃がウクライナの石油施設や石油貯蔵所に向けられており、ロシアの戦略(戦術)が変わってきている。

■ 328日(月)の夕方、ウクライナのリブノ(Rivne)にある石油貯蔵所がロシアのロケット攻撃により、火災が発生した。

■ 火災は拡大せず、局所化しているが、329日(火)午前10時時点では消防隊による消防活動が続いている。その後、火災は制圧され、消火された。

■ さらに、328日(月)の夜、リブノにある別な石油貯蔵所がロシアのミサイル攻撃によって火災が発生した。

■ この火災では、消防士67人が消防機材17台を使用して24時間体制で消火活動に従事した。火災は、2日間続き、330日(木)午後1時頃に消火された。

■ 42日(土)、ロシアによってポルタバ州のクレメンチュク製油所(Kremenchug Refinery)と周辺にある燃料貯蔵所が砲撃された。企業のインフラが破壊され、プラント自体が機能していないとみられる。 クレメンチュク製油所は、ウクライナで唯一稼働している製油所だった。 

■ 43日(日)、ロシアの攻撃により、港湾都市オデッサ(Odesa)付近の石油貯蔵所などの重要施設で火災が起こった。オデッサはマリウポリ(Mariupol)と並んでウクライナ海軍の重要基地である。

被 害

■ 各地の石油貯蔵所などの石油タンクが砲撃を受け、火災となった。 

■ 石油タンクなどの石油施設への砲撃による死傷者は分かっていない。

< 事故の原因 >

■ 戦争による軍事行動としか言いようがない。(平常時の“故意の過失”に該当)

< 対 応 >

■ 中東カタールのメディアであるアルジャジーラ(Al-Jazeera)は、「4週間以上にわたる戦闘にもかかわらず、ロシアはこれまでウクライナの大都市を占領できていない。国連によると、この紛争によって数千人が死亡し、380万人近くが海外に避難し、ウクライナの子供たちの半数以上が自宅から追い出されている」と報じている。

補 足

■ 「ウクライナ」(Ukraine)は、東ヨーロッパに位置し、南に黒海と面する人口約4,500万人の国である。天然資源に恵まれ、鉄鉱石や石炭など資源立地指向の鉄鋼業を中心として重工業が発達している。20143月に、クリミア半島についてロシアによるクリミア自治共和国の編入問題があり、世界的に注目された。

その前年の2013年に同国内で親ロシア派と親欧米派の対立が激化し、2014年に州庁舎を占拠した親ロシア派が一方的にドネツク州の一部を「ドネツク人民共和国」の樹立を宣言した。同5月に行われた住民投票では独立支持が多数を占めたが、ウクライナ政権や欧米は投票の正当性を否定しており、情勢は混乱していた。

 なお、ウクライナのタンク事故で過去に紹介したのは、つぎのとおりである。

 ●「ウクライナの石油貯蔵施設でタンク火災後に爆発炎上、死者5名」20156月)

 ●「ウクライナの石油貯蔵所でドローン攻撃によるタンク火災か」20219月)

 ●「ウクライナ各地で石油貯蔵所が攻撃によってタンク火災」20223月)

所 感

■ ミサイル攻撃による石油貯蔵所の火災について従来の事故やテロ攻撃によるタンク火災と異なる点はつぎのとおりだと思う。

 ● 被災は複数タンクに及んでいる。今回の石油貯蔵所のタンク容量は報じられていないが、被災写真を見ると、2,0005,000KLほどのタンクと思われるので、タンク配置による影響があるのかもしれない。

 ● 火災は、タンクが炎上している場合もあるが、主として堤内火災である。従来のタンク火災では、熱によってタンク側板が座屈するが、このような座屈の見られるタンクは少ない。

 ● ミサイルの爆発によってタンク設備が変形あるいは倒壊しているものがみられる。

■ ウクライナにおける異常な戦争状態であるが、日本国内のテロ対策について考えるべき事項はつぎのとおりである。 

 ● 複数タンクの火災を考慮すべきである。日本のタンク火災は1基だけに起こるという前提であるが、複数タンク火災が起こった場合の対応について想定すべきである。

 ● 防油堤内の火災を想定すべきである。タンク側板に穴があくような被災を受けると、堤内火災が起こり、被害が拡大する。

 ● 日本では、タンク火災について大容量泡放射砲システムが導入されたが、堤内火災では、このシステムは有効に機能しない。ウクライナの事例を見ても、高発泡の泡消火モニターが使用されている。堤内火災用の高発泡設備を導入すべきである。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

   Euronews.com,  Five people are wounded after fuel storage facility near Lviv was hit,  March  27,  2022

    Jp.reuters.com, Russia hits Ukraine's Lviv with cruise missiles, defence ministry says,  March  27,  2022

    Washingtonpost.com , Russia claims Lviv strikes; Ukraine says it has detained 2 on suspicion of espionage,  March  27,  2022

    Aljazeera.com, Rocket attacks hit Lviv in western Ukraine as Biden visits Poland,  March  27,  2022

    Daytonews.com, Before-and-after images show destruction in ukrainian cities of mariupol kalynivka and izyum ,  March  30,  2022

    Globalnews.ca, Russia causes damage to Ukrainian fuel storage facility, buildings, satellite images show,  March  27,  2022

    Dailymail.co.uk, Russian rocket attacks target Ukraine oil and petrol depots in Lutsk, Kharkiv and Kyiv as Putin tries to starve the defending forces of fuel in ruthless bombardment,  March  28,  2022

    Hindustannewshub.com, Russia-Ukraine War: Russian soldiers blew up oil depot in missile attack, it took 14 hours to douse the fire,  March  27,  2022

    Bbc.com, Ukraine war: Five wounded after explosions hit western city of Lviv,  March  26,  2022

    Zaxid.ne, Пожежу після ракетного удару у Луцьку гасили півтори доби,  March  29,  2022

    Delo.ua, Ракетний удар по нафтобазі під Рівним: пожежа триває,  March  29,  2022

    Volyn24.com, У Рівному після ракетного удару другу добу гасять пожежу,  March  30,  2022

    Reuters.com, Missiles hit Ukrainian refinery, 'critical infrastructure' near Odesa,  April  04,  2022

    Poltava.to , НА КРЕМЕНЧУЦЬКОМУ НПЗ, ЯКИЙ ЗНИЩИЛИ РОСІЙСЬКІ РАКЕТИ, ПОЖЕЖУ ЛОКАЛІЗУВАЛИ — ЗАГИБЛИХ НЕМАЄ,  April  03,  2022

    Zahid.espreso.t , У Рівненській області загасили пожежу на нафтобазі, яка виникла ще 28 березня через ракетний удар,  March 30,  2022

    Zahid.espreso.t , На Житомирщині після авіаударів горить нафтобаза. Відео,  April 07,  2022


後 記: 当初はリヴィウの石油貯蔵所のタンク火災に関わる情報に焦点を当てて調べ始めました。が、インターネットで多くのメディア情報を読んでも、状況の内容が深まらず、発散していきます。もともと、戦争による軍事行動であり、ブログの対象ではありませんし、取り上げるのをやめようかとも考えました。どうするか悩んだのですが、詳細の情報が無くても被災の画像があるものを選び、まとめることとしました。一方、ロシアのベルゴロドの石油貯蔵所がウクライナのヘリコプターによって攻撃され、火災になったという報道があり、被災の画像もあります。しかし、これはロシアのプロパガンダと断言しませんが、事実が曖昧ですので、このブログには入れませんでした。

 ところで、被災画像を見ていたら、消火活動に使用していたはしご車の裏に漢字が書かれていましたが、中国の機械でした。火災の消火活動に寄与するだけでなく、今回の“戦争の火消し” に中国が一肌脱いでもらいたいものです。