今回は、2025年9月20日(土)、米国ワイオミング州シンクレアにあるHFシンクレア社の シンクレア製油所でアスファルトタンク火災が起こった事例を紹介します。
< 発災施設の概要 >
■ 発災があったのは、米国ワイオミング州(Wyoming)カーボン郡(Carbon County)シンクレア(Sinclair)にあるHFシンクレア社(HF Sinclair Corp.)の シンクレア製油所(Sinclair Refinery)である。シンクレア製油所の精製能力は94,000バレル/日である。
■ 事故があったのは、シンクレア製油所内にあるアスファルトタンクである。
<事故の状況および影響>事故の発生
■ 2025年9月20日(土)正午頃、製油所のアスファルトタンクで火災が起こった。
■ 黒煙が立ち昇り、何マイルも離れた遠い場所からも濃い煙が見えた。
■ 住民の間には、町や製油所が危険にさらされているのではないかという不安が広がっていた。一方、カーボン郡緊急管理コーディネーターはメディアに対し恐れる必要はないと語った。
■ 発災にともない、消防隊が出動した。
■ 当局は、製油所付近のワイオミング州道76号線の東側を封鎖した。
■ この地域の元ボランティア型消防署長は、「製油所内やその付近で火災が発生することは稀です。ここ数年、ここで火災があったという話は聞いていません」といい、「臭いがきつい。あまりいい匂いじゃないね。煙が人に危険でないことを願っています」と語った。
■ 緊急管理当局は、煙が町まで到達しない限り、火災による健康被害はないと発表した。
緊急管理当局は、国立気象局と協力して、この地域の風速を監視し、3時間ごとに煙が移動する速度と方向をモデル化して予測した。緊急調整官らは、シンクレア製油所とシンクレアの町とも直接連絡を取っており、「現時点では懸念はない」と語った。
■ 消防隊は泡消火剤を使って消火活動を行った。
■ 事故にともなう負傷者はいなかった。
■ 当局は火災の原因を調査中だという。
■ ユーチューブでは、タンク火災の状況を伝える動画は投稿されなかった。
被 害
■ アスファルトタンク1基が焼損した。
■ 負傷者はいなかった。
< 事故の原因 >
■ 爆発・火災の原因は調査中である。
< 対 応 >
■ 消防隊は泡消火活動によって午後1時までに火災を鎮圧した。シンクレア警察は緊急警報で午後1時10分に鎮火したと報告した。
■ シンクレア製油所はメディアに対し、消防隊員が午前11時15分にタンク火災の現場に駆けつけ、対応計画に従って消火したと語った。また、シンクレア製油所は、「人々と地域社会の安全は依然として私たちの最優先事項です」と述べた。
補 足
■「ワイオミング州」(Wyoming)は、米国西部の山岳地域に位置し、人口約57万人に州である。
「カーボン郡」(Carbon County)は、ワイオミング州の南部に位置し、人口約14,500人の郡である。
「シンクレア」(Sinclair)はカーボン郡の中部に位置し、人口約400人の町である。
■「 HFシンクレア・コーポレーション」(HF Sinclair Corp.)は、ガソリン、ディーゼル燃料、ジェット燃料、再生可能ディーゼル、特殊潤滑油、特殊化学品、特殊アスファルト・改質アスファルトなどの製品を製造・販売するエネルギー会社である。米国テキサス州ダラスに本社を置いている。同社は7つの複合製油所を運営しており、総原油処理能力は1日あたり678,000バレルである。ワイオミング州シンクレア(94,000バレル/日)のほか、ワイオミング州シャイアン(52,000バレル/日)、カンザス州エルドラド(135,000バレル/日)などである。
■ タンク火災と報じられているが、タンクの仕様や被災写真は無く、「発災タンク」は分からない。アスファルトタンクということなので、容量はそれほど大きくなく、1,000~3,000KL程度の固定屋根式円筒タンクと思われる。
所 感
■ タンク火災の状況は分からない。事故の写真を見れば、結構大きな炎が出ており、タンクは大きな損傷が発生しただろう。黒煙の幅が大きく、タンクから防油堤に漏れ、堤内火災になっていることも考えられる。
アスファルトは重質分であり、火災を起こしにくいと考えがちであるが、アスファルトタンクで注意すべきことは、水による突沸、軽質油留分の混入、運転温度の上げすぎ、屋根部裏面の硫化鉄の生成などにより火災を引き起こすことの多いタンクである。最近の事例を下記に示す。
●「米国イリノイ州の石油プラントでアスファルトタンクが爆発、死傷者2名」(2023年5月)
●「米国ワシントン州のアスファルト・プラントで爆発・火災、タンクへ延焼」( 2020年10月)
●「米国ミズーリ州セントルイスでアスファルトタンクが火災」 (2022年6月)
■ 一方、消火活動は消防隊が出動し、泡消火活動を行ったという。消火活動は1時間程度で制圧したと報じられている。大容量泡放射砲システムは必要なく、放水能力3,000リットル/分の大型化学消防車で消火できると規模だったとみられる。通常、消火活動は泡放射後20分以内に制圧できなければ、難しいタンク火災だとみられるが、この点、適切な消火活動だったと思われる。ただ、炎が大きく、本当に1時間程度で消火できたか疑問は残る。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Cowboystatedaily.com, Asphalt Tank Catches Fire At Sinclair
Refinery, Black Smoke Seen For Miles, September 21, 2025
・Timesnownews.com, Sinclair Refinery Fire Captured On Video, Thick
Black Smoke Seen For Miles | Watch, September 21, 2025
・Bigfoot99.com, Black Smoke Plume Concerns Residents of Sinclair,
September 22, 2025
後 記: 今回の事例は歴史のある製油所のタンク火災です。住民約400人のシンクレアという町で起こったもので、グーグルマップで見ると、製油所の隣に住宅地があり、おそらく住人は製油所に勤務していると思われます。2・3年前に従業員の一部が解雇され、住民数は350人程度に減っているようです。日本から見れば、こんなところに製油所があるの?という気がします。安価な原油を通油できるから成り立っているので、日本だったらとうの昔に無くなっているでしょう。世の中、景気が良くなると、事故が増えるように感じていますが、今回の事故はそうではなく、モチベーションの下がった人為的な要因があるのではないでしょうか。それにしても、製油所のタンク火災でありながら、ドローンによる空撮画像が無いのは久方ぶりのニュースです。
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