2024年5月30日木曜日

米国オクラホマ州で竜巻警報の中、落雷によるタンクが爆発・火災

 今回は、2024519日(日)、落雷警報が発令された最中、米国オクラホマ州ベサニーにある石油生産施設で落雷によるタンク火災が発生した事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、米国オクラホマ州(Oklahoma)オクラホマ郡ベサニー(Bethany)にある石油生産施設である。この石油生産施設のまわりには住宅地も近い。

■ 事故があったのは、石油生産施設のタンク設備である。施設内には油タンク4基と塩水タンク6基があった。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2024519日(日)夜、石油生産施設で爆発があり、火災が発生してまわりの設備に延焼し、規模の大きい火災となった。

■ 住民によると、爆発音が聞こえた後、空に炎が舞い上がり、空がオレンジ色に染まっているのが見えたという。現場近くに住んでいる人によると、「今まで嗅いだことのない強烈な油の匂いがしました」という。

■ 発災に伴い、ベサニー消防署の消防隊が出動した。このほか、ウォール・エーカーズ消防署とユーコン消防署の消防隊が支援で出動した。  

■ 地元のテレビ会社のKOCO-TVは、ヘリコプターのスカイ5” を現場上空に飛行させたが、パイロットはヘリコプターの中でも火を感じたと語った。

■ 火災の原因は落雷によるものとみられる。

■ ベサニーの現場に近い住民は、住宅近くで落雷によるタンク火災が発生し、竜巻警報が発令される中、自宅からの避難命令を受けた。

■ 石油生産施設の火災現場の近くに住む人々には、ドアと窓を閉め、エアコンをオフにしておくように指示された。住民のひとりは、警備員が戸別訪問して避難を呼びかけており、避難するにつれて恐ろしさが広がり始めたと語っていた。

■ この地域には落雷のほか激しい嵐により被害が発生しており、日曜日には複数の竜巻が発生し、嵐がオクラホマ州を通過し、被害を残している。

■ 激しい炎と爆発があったにもかかわらず、けが人はいなかった。

■ ユーチューブには、石油生産施設の火災を伝えるニュースが投稿されている。

 Youtube.com Sky 5 flies over tank battery fire in Bethany2024/05/20

  ●Youtube.comTank battery fire causes massive flames near Bethany2024/05/20

  ●Youtube.comFirefighters battle tank battery fire in Bethany2024/05/24

  ●Youtube.comFireball erupts at Bethany tank battery after lightning strike2024/05/24

被 害

■ 石油生産施設にあった油タンク4基と塩水タンク6基が損壊した。タンク内にあった油が焼失した。 

■ 負傷者はいなかった。近くの住民に避難指示が出た。

■ 油火災により環境が汚染された。

< 事故の原因 >

■ 爆発・火災の原因は落雷とみられる。

< 対 応 >

■ 消防隊員らは火を消し止めることができ、負傷者は出ていない。

■ 519日(日)夕方には、ベサニーから西へ約20kmにあるギアリー(Geary)で落雷により石油生産施設のタンク設備2基が火災に遭っている。当時、激しい嵐が一帯を通過する中でタンク火災は起こった。発災により消防隊が出動した。ベサニー消防署は2つの石油生産施設での火災に対応している。


 
ユーチューブには、ギアリーの石油生産施設の火災を伝えるニュースが投稿されている。

 Youtube.comWATCH: Tank battery catches fire after reported lightning strike in Geary2024/05/20

 ●Youtube.comFirefighters in Geary respond to a tank battery fire2024/05/20


補 足

■「オクラホマ州」(Oklahoma)は、米国の中部にあり、州の南隣はテキサス州で、人口約400万人の州である。

「オクラホマ郡」(Oklahoma)は、オクラホマ州の中央部に位置し、人口約79,600人の郡である。

「ベサニー」(Bethany)は、オクラホマ郡の西部に位置し、人口約20,800人の町で、オクラホマ・シティ都市圏の一部である。

「ギアリー」(Geary)は、オクラホマ州のブレイン郡とカナディアン郡にあり、人口約990人の町である。ベサニーから西へ約20km離れたところにある。


■「石油生産施設」は所有者が報じられていないが、米国の陸上油田において従来から使用されているタイプの施設である。油井は自噴しないため、往復運動ピストン・ポンプを使用して地下の油を汲み取っている。このタイプのポンプは、サッカーロッド・ポンプやポンプジャックなどと呼ばれている。油井は原油または天然ガスと思われる。汲み取った油井の液体は油分と水分(塩水)に分けられ、油分は鋼製の油タンクに貯められ、塩水タンクはグラスファイバー製を使われることが多い。

■ 被災タンクは10基であり、落雷のあったとみられる「発災タンク」は特定できない。鎮火後も自立しているのが油タンク4基で、火災後に残っていないのが、グラスファイバー製の塩水タンク6基とみられる。鎮火後に2基の油タンクは屋根が噴き飛んでいるので、かなり衝撃の大きい落雷だったと思われる。

「発災タンク」の大きさなどの情報は報じられていない。発災場所をグーグルマップで調べてみると、火災のあった10基のタンクは、いずれも直径は約4mである。高さを6mとすれば、容量は75㎥となる。ほかの石油生産施設のタンク設備と同じくらいの大きさである。

所 感

■ 今回のタンク火災は、米国の陸上油田の石油生産施設で起こる落雷による爆発・火災の典型的な事例である。

 しかし、これまでの石油生産施設のタンク火災と異なるのは、竜巻警報発令の最中に起こったことである。しかも、オクラホマ・シティ近隣で2か所のタンク火災が発生している。タンク火災が住宅地に近く、激しいタンク火災で避難指示が出ている一方、竜巻警報の避難指示が出ており、記事にあるように住民がおそろしさを感じたことは理解できる。

 これまでブログでは、2015年の「米国テキサス州で相次ぐ落雷によるタンク火災」20155月)において半月に3件の落雷によるタンク火災が多いと思って投稿したが、 20236月にもオクラホマ・シティ周辺で3件続いた「米国オクラホマ州の石油生産施設で相次いで落雷よるタンク火災」20243月)のように、今は落雷の頻度が増え、竜巻警報と重なるような異常気象の状況になってきている。

■ ギアリーでの石油生産施設のタンク火災では、消防隊は放水しており、消火活動を行っている。これは、タンク火災が2基に限定しており、隣接するタンク群に延焼しないようにするためだろう。一方、ベサニーの石油生産施設では、防油堤全体が火災になっており、消防隊も積極的な消火活動を行った様子はなく、燃え尽きるまでの消極的消火戦略だった思われる。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Koco.com,  Tank battery fire causes massive flames near Bethany; Residents shelter in place,  May 20,  2024

     Kfor.com,  Residents react to Bethany tank battery explosion,  May 21,  2024

     Yahoo.com, Residents react to Bethany tank battery explosion,  May 21,  2024

     Okcfox.com,  Firefighters tackle two tank fires Sunday night,  May 21,  2024

     Koco.com, Tank battery catches fire after reported lightning strike in Geary,  May 19,  2024


後 記: 最近、新型コロナが収まってきたためか、メディアのタンク火災の報道が増えてきたように思います。それに従い、油井施設のない日本(秋田など一部の地域を除く)では、石油生産施設におけるタンク火災の記事を取り上げることが少なくなりました。しかし、今回は竜巻警報が発令されている最中に落雷による石油生産施設のタンク火災発生というこれまでにない異常な状況だったため、まとめることとしました。調べている中で、ベサニーだけでなく、ギアリーでも石油生産施設のタンク火災があったことが分かりました。竜巻や落雷が多くなったのは異常気象の所為ですが、ロシアーウクライナ戦争やイスラエルーハマス戦争も人間の判断(力)がまともでなくなったのも異常気象のなせるわざ(?)ではないかと思うほど変な世の中です。 

2024年5月26日日曜日

韓国華城市の廃油リサイクル会社の貯蔵タンクが爆発・火災、死者1名

 今回は、昨年の2024825日(金)、韓国の京畿道華城市にあるトップエコ社の廃油リサイクル工場において廃油貯蔵タンクが爆発して火災になり、死者1名が出た事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、韓国の京畿道華城市(かじょう・し;ファソン・シ)にある廃油リサイクル会社のトップエコ社(탑에코;Top Eco)の工場である。 トップエコ社は、廃油で再生燃料油を製造する指定廃棄物リサイクル会社で、 201510月廃棄物処理業許可を受けて運営している。

■ 事故があったのは、廃油リサイクル工場の廃油貯蔵タンクである。工場は地上1階に延べ面積495㎡の一般鉄骨造建物2棟があり、貯蔵タンクは工場内にある。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2023825日(金)午前11時頃、廃油貯蔵タンクが突然の爆発とともに火災が発生した。

■ 発災に伴い、消防署の消防隊が出動した。

 消防当局は、午前1126対応1段階” (37個消防署で3150台の装備を動員する警報令)を発令したのに続き、午前1135分対応段階を対応2段階814の消防署で5180台の装備を動員する警報令)に上げ、ヘリコプター3台をはじめとする装備80余台と消防士180名を動員した。

■ 当時、廃油貯蔵タンクでは外注業者の従業員が作業していたところ、爆発が発生して火災になったという。

■ 事故に伴い、現場から約100m離れた西海岸高速道路において午前12時から全面閉鎖された。道路は極度の停滞が生じ、車の渋滞は10kmほど続いた。

■ 当局は、近くの住民に対して緊急避難を指示した。また、消防水による周辺環境汚染防止のために周辺に吸着布などを投入した。

■ 消防当局によると、午後230分頃、トップエコ社の火災現場でA(55)が死亡しているのが発見された。A氏は爆発が起きた廃油貯蔵タンク付近で火に包まれて亡くなったとみられる。当時、勤務していた作業員11名(トップエコ従業員9名、外注業者所属2名)が全員避難していたと思われたが、人員確認の過程で外注業者所属のA氏が行方不明になっていた事実が把握されていた。

■ A氏らは廃油貯蔵タンクの圧力ゲージを交換する作業をする計画だったというが、正確な内容は確認が必要だという。

■ 工場には、廃油精製施設や貯蔵施設などがあるが、合計810トンの廃油を保管できることが分かった。

< 被 害 >

■ 廃油リサイクル工場の廃油貯蔵タンクなどが損壊した。  

■ 事故により、住民が避難したほか、近くを通る高速道路が、一時、全面閉鎖された。また、火災による環境汚染が出た。

< 事故の原因 >

■ 火災の原因は、廃油貯蔵タンクの圧力ゲージを取り換える作業をしていたというので、何らかのミスにより、引火して爆発・火災になったものとみられる。

< 対 応 >

■ 車両通行の制限は午後135分に解除された。

■ 消防当局は、火災発生から約2時間20分の午後132分に対応段階を1段階に下げた。その後、火災は約3時間20分経った午後239分緊急発令を解除した。

■ その後、発災から4時間余りの午後323分に火災を制圧した。ただ、炎が完全に抑えられたわけではなく、消防活動は続いた。

■ 火災は、発災から8時間を経った午後711分に鎮火した。

■ 警察と消防当局は、目撃者の陳述や現場の証拠などに基づいて火災の原因を調査している。

補 足

■「韓国」は、正式には大韓民国で、 東アジアに位置し、人口約5,170万人の共和制国家である。首都はソウル特別市である。

「京畿道」 (キョンギト;けいきどう)は、朝鮮半島中西部で、韓国の北西部で位置し、人口約1,360万人の道である。

「華城市」(ファソン・し;かじょう・し)は、京畿道の南西部に位置し、人口約94万人の都市である。

■「トップエコ社」(탑에코;Top Eco)は、廃油で再生燃料油を製造する指定廃棄物リサイクル会社で、 201510月廃棄物処理業許可を受けて運営している。工場は地上1階に延べ面積495㎡の一般鉄骨造建物2棟があり、貯蔵タンクは工場内にある。工場には、廃油精製施設や貯蔵施設などがあるが、合計810トンの廃油を保管できるという。

■「発災タンク」は廃油貯蔵タンクと報じられているが、タンク型式や大きさなどの仕様は分かっていない。また、廃油リサイクル施設がどのようなプロセスかについても情報がない。日本国内の一般的な廃油処理施設の例を図に示す。

所 感

■ 廃油リサイクル施設では、圧力ゲージを交換する作業自体は危険性の高い作業ではないし、廃油も揮発性の高いものではないのが通常であろう。しかし、爆発して火災になっており、日本で起こった「千葉県野田市の廃油処理施設の爆発事故(2013年)」 20154月)と同じように原因はガソリンなど揮発性の高い油を投入したのではないだろうか。廃油リサイクル会社が意図して揮発性の高い油を処理したのではなく、廃油を出した側がガソリンを投入してしまったのではないか。

 千葉県の事例では、廃油蒸留施設に投入できないガソリンと軽油の混合物である低引火点油類を投入してしまい、精製過程において気化した可燃性ガスに引火して爆発に至ったと推定されている。事例では、受入側が引火点などの廃油の性状を確認するようにしている。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    Stock.mk.co.kr,  화성 폐유 재활용업체 화재로 1명 사망…8시간 만에 완진(종합2),  August  25,  2023

    Yna.co.kr,  화재로 1명 숨진 화성 폐기물 업체에 폐유 810t 보관시설,  August  25,  2023

    Jeonmae.co.kr, ‘폐유 810t 보관’ 화성 폐기물 업체 화재로 1명 사망,  August  25,  2023

    Kihoilbo.co.kr,  화성 폐유 재활용 업체 화재 발생 외주 업체 직원 숨져,  August  27,  2023

    Namu.wiki,  화성 향남읍 자원순환시설 화재,  November 24,  2023      


後 記: 事故直後の報道では、原因らしい内容が記事になっていましたが、その後の追加記事がありませんでした。3か月後の202311月に、事故の内容をまとめたものがインターネットに投稿されていましたが、事故原因ははっきり示されていませんでした。2024年に入っても、報道記事は削除されずに残っていましたが、新たな情報は投稿されていませんでした。このあたりは日本の報道姿勢と変わらないような気がします。ほとんどの人は中途で情報がプッツンして世の中に活かせてないように思います。情報は活かしてこそ役立つのではないでしょうか。

2024年5月20日月曜日

タイでガソリンタンクが爆発、鎮火後、再着火して火災、死傷者6名

 今回は、202459日(木)、タイ(Thailand)ラヨーン県のマプタプット・タンク・ターミナルにある熱分解ガソリン用貯蔵タンクが爆発して火災になり、消火活動の結果、約1時間半後に鎮火した。しかし、その後、再着火して爆発し、再び火災になったタンク事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、タイ(Thailand)のラヨーン県(Rayong)マプタプット工業地帯で、マプタプット・タンク・ターミナル社(Map Ta Phut Tank Terminal)の貯蔵ターミナルである。同社は商業港と石油化学製品の貯蔵ターミナルを運営している。 

■ 事故があったのは、マプタプット・タンク・ターミナルにある化学品貯蔵タンクである。タンクは熱分解ガソリン用(Pyrolysis Gasoline)で、容量2,500KL、直径30m×高さ18mである。同社の熱分解ガソリンは炭化水素化合物 C9+ と呼ばれている。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 202459日(木)午前1030分頃、マプタプット・タンク・ターミナルの熱分解ガソリン用タンクが爆発して火災が発生した。

■ 近くの住民によると、火災が発生する前に大きな爆発音が一度聞こえたという。激しい爆発がまた起こるのではないかという恐怖を誰もが感じ、急いでその地域から避難した。

■ 発災に伴い、消防隊が20台以上の消防車両を動員して出動した。

■ 火災が拡大する可能性があるため、近隣の地域住民に避難を命じ、約400人の作業員と近隣住民が一時避難所に誘導された。

■ 当局は、緊急対応を容易にし、公共の安全を確保するために道路を閉鎖した。また、火災により周辺地域の大気環境が悪化したとみられる。

■ 支援を提供した病院によると、火災の影響を受けたとみられる住民は、ほとんどの人が喉の痛み、目の痛み、鼻の痛みを感じていた。めまいを感じた人は100件以上あり、雰囲気は混沌としていた。

■ マプタプット・タンク・ターミナル社は、声明を発表し、出火原因を調査中で、再発防止策を講じると述べた。また、調査と被害査定が行われている間、施設でのすべての活動は停止された。

■ 発災に伴い、ひとりが死亡、3名が負傷した。さらに、消火活動中にふたりの消防士が負傷した。

■ 事故前に、従業員4名がタンク内の液量(液位)を測定するためタンク上部に昇っていた。測定中、火災が起こる前に煙が見え始めたようにみえたといい、この結果、測定に行った従業員4人が高所から転落して負傷し、負傷者のうち1名が後に死亡した。原因は高所からの落下によるものだった。

■ ユーチューブでは、火災の状況などの映像が投稿されている。主なものはつぎのとおり。

  Youtube Huge fire at a chemical storage tank in Thailand kills one and injures 42024/05/09

 ● YoutubeVideo. Huge gas fire rages through industrial estate in Thailand2024/05/09

 ● Youtubeความคืบหน้า ไฟไหม้ถังเก็บแก๊สโซลีน "มาบตาพุด" .ระยอง | TOPNEWSTV2024/05/09

 ● Youtubeยังควบคุมเพลิงไหม้ถังสารเคมี .มาบตาพุด แทงค์ฯ ไม่ได้ | ทันข่าว | 9 .. 67] 2024/05/09


被 害

■ 熱分解ガソリン用貯蔵タンク1基が損壊した。内部の液が焼失した。

■ 発災に伴う死傷者が6名出た。内訳は従業員のひとりが死亡、3人が負傷した。さらに、消火活動中にふたりの消防士が負傷した。

■ 住民400人が避難したほか、住民の中には喉の痛み、目の痛み、鼻の痛みを感じる人があり、めまいを感じる案件が100件あった。

■ 火災によって道路が閉鎖されたほか、環境汚染が生じた。

< 事故の原因 >

■ 火災の原因は、作業員によるタンク上部でのタンク液位測定時に何らかの引火要因を引き起こしたものとみられる。

■ 一旦、タンク火災は消火したが、泡消火や冷却作業を継続しなかったため、タンクの余熱で再着火して火災になった。

< 対 応 >

■ 消火活動は泡消火と放水による冷却の2つの作業が行われた。

■ 発災から約1時間半の午後12時過ぎに火災は消し止められた。

■ しかし、タンクがまだ高温だったため、午後1時頃に再着火し、爆発があり、火災となった。炎は急速に激しく燃え上がり、簡単には消える気配がなかった。消防隊は再び泡消火と放水を行った。火災が広がり、約15m離れた隣のタンクに延焼しないよう海から水を汲み上げて冷却した。

■ 現場のビデオや写真には、巨大な黒煙と燃え盛る炎が近くに立っていた白いタンクを飲み込む様子が映っている。救助隊員と消防士が消火活動を行ったが、その間、時折爆発音が聞こえた。

■ 発生してから約5時間経過し、近隣の県の消防車も応援に出動したが、消防隊は依然として消火できなかった。遠くからでも炎と黒煙の柱が見え、火災が隣接したタンクに延焼し、さらに3基目のタンクに到達していると報告された。しかし、のちに3基のタンクではなく、被災タンクは1基だけだったと明らかにした。

■ 発災から6時間経過し、午後4時頃、火災制圧に向かったが、消防当局によると、消火には10時間以上かかるとみられていた。

■ 火災は午後6時頃までにほぼ鎮火した。再着火による火災を防ぐために、タンクの温度を1時間ごとにチェックされた。温度は4750℃で、ほぼ平常の熱に戻ったとみられるが、安全であることが確認されるまで監視される。また、タンク内の物質は完全に抜き出される予定である。

■ 貯蔵ターミナルには泡消火設備が設置されていた。すぐに消火作業が始められ、午後12時頃に鎮火するまで消火作業が行われた。しかし、その間、タンク内の温度は下がらなかったとみられ、その結果、午後1時頃に再び火災が発生した。火災が鎮火したのは午後6時頃だったが、当局は依然として水や泡を噴霧する必要があった。タンク温度は1時間ごとに計測されたが、当局は火災が発生しないと確信できるまで状況を監視を続けるという。その後、火災の原因を調査する予定である。

■ 消火排水や化学物質を含む水が海や近くの水源に漏れることはないという。マプタプット・タンク・ターミナル社はダム機能を有する貯水池を設けていた。なお、建物および周囲の状況の修復には約2週間かかるという。

■ マプタプット・タンク・ターミナルでは、202110月にも貯蔵タンクが爆発・炎上する事故があり、3人が死亡、ふたりが負傷した。当時、一時操業停止を命じられた。

補 足

■「タイ」(Thailand)は、正式にはタイ王国で、 東南アジアに位置する立憲君主制国家で、人口約6,600万人である。首都はバンコク(人口約830万人)である。

「ラヨーン県」(Rayong)は、タイの中部に位置し、タイランド湾に面する人口約66万人の県である。

■「マプタプット・タンク・ターミナル社」(Map Ta Phut Tank Terminal)は1995年に設立され、液体および気体の石油化学製品専用の商業港および貯蔵ターミナルである。 タイのラヨーン県マプタプット港の東側に位置しています。同社は、サイアム・セメント・グループ(Siam Cement Group Public Company Ltd.)の子会社のひとつである。なお、サイアム・セメント・グループはタイ王国最大手かつ最古のセメント製造企業で、タイ王室財産管理局が出資している王室系企業である。

 マプタプット・タンク・ターミナル社は4つの海上桟橋と33基の貯蔵タンクで構成され、20種類以上の石油化学製品を貯蔵している。操業は分散制御システム (DCS) によって制御され、DCSはオペレーターがプロセス制御を集中化し、単一の計器室からすべての操作を監視できるように設置されている。このシステムは、運用開始以来、安全性と効率性を確保するために導入されてきた。

■「熱分解ガソリン」(Pyrolysis Gasoline;パイロリンス・ガソリン)は、ナフサ分解などによる分解プラントによって副生される炭素数C5C12の炭化水素混合物で、芳香族系炭化水素の含有量が高く、ベンゼン、トルエン、キシレンの抽出原料になる。マプタプット・タンク・ターミナル社の分解ガソリンは炭化水素化合物 C9+と言っており、ベンゼン、トルエン、キシレンなどのプラスチックペレットの製造における前駆体の製造からの副産物であり、いろいろな産業で溶剤として使用されている。熱分解ガソリンの密度は約0.85/c㎥、引火点はー20℃以下である。

「発災タンク」は、熱分解ガソリン用で容量2,500KL、直径30m×高さ18mで、ドーム型固定屋根式タンクである。

所 感

■ 最初の火災は、事故前に従業員4名がタンク内の液量(液位)を測定するためタンク上部に昇っており、測定中、火災が起こる前に煙が見え始めたという。火災原因は、作業員によるタンク液位測定時に何らかの引火要因を引き起こしたものとみられる。タンク液位測定は確認のための定常の作業であり、検尺孔を開けて行うので、人体の除電など静電気防止策が実施されていただろうが、何かが抜けていたと思われる。

■ 最初のタンク火災の被災状況を画像で見ると、これまでのタンク爆発事例とは損傷状況が異なっている。タンク型式がドーム型固定屋根式でアルミニウム製でなく、屋根には頑丈な梁が設置されていたと思われる。このため、爆発で屋根頂部の一部が損傷したものとみられる。コーンルーフ型では、爆発時に屋根と側板の溶接部が切れて底板と側板の接続部に過大な力が作用しないようになっている。爆発の規模はそれほど大きくなかったと思われるが、底板部が損傷していたら被害は大きくなっていただろう。

■ 最初のタンク火災では、タンク側板部の上部に書かれているタンク番号と油種名が焼けずに残っており、被災は意外に大きくない。これは、タンクに泡消火設備や散水設備が設置されていたと思われ、特に泡消火設備が効果的に働いて1時間半ほどで火災は収まったと思う。

■ しかし、タンク火災の消火後のダメ押しの泡消火放射をやめてしまったために、落下した屋根の部材などの温度が高く、油面を覆っていた泡が切れて、再着火し、2度目のタンク爆発・火災を起こしてしまった。このとき、爆発時の影響で配管部から漏れたか、火災は堤内火災を引き起こしている。隣接タンクも炎の中に巻き込まれ、延焼しているという誤報告があるほど、最初のタンク火災より激しい状況だったとみられる。それにしても、鎮火後のタンク被災状況をみると、タンク側板は座屈していない。タンクの泡消火設備や散水設備が有効だったことが分かる。

■ 今回のようなタンク火災の消火後には、タンク表面の状況を確認しなければならない。日本ではタンク側板の階段を昇って状況を見るという行為は行わないが、米国では、消防士が昇っていき、確認するのが常識である。いまならドローンによって確認する方法があるだろう。危険性があるという理由で確認しないのは、今回のように2度目の爆発・火災を引き起こすことになると思う。  

注; タンク火災鎮火後の泡消火剤の投入時間は一律に決められない。タンク内液の性状やタンクの破損構造物などの状態によって決められる。このブログでは、ウィリアムズ・ファイア&ハザード・コントロール社に消防活動を紹介しており、参考になる。たとえば、「米国オリオン製油所のタンク火災ー2001 201110月)は落雷によって火災になったが、鎮火後、雷も消滅しておらず、残液の抜き出しを考慮している。「米国サノコ社のタンク火災における消火活動」201210月)では、火災制圧のために使用した泡薬剤量は約7,600 Lであり、このほか全消火活動に使用した泡薬剤量は30,000 Lに達した。このあとの2日間、消火時にタンク内に残った3m深の油を空にするまでの間、ダメ押しの冷却と蒸気抑制のため、追加で使用した泡薬剤量は13,250 Lだったという。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Newsclip.be, タイ東部マプタプット港で化学品タンク爆発,  May  09,  2024

     News.yahoo.co.jp,  タイ東部工業団地で火災発生 1人が死亡 4人が重軽傷,  May  10,  2024

     Apnews.com, Huge fire at a chemical storage tank in Thailand kills one and injures 4,  May  09,  2024

     Reuters.com, Evacuation ordered after blaze at Thai chemical storage tank facility,  May  09,  2024

    Arkansasonline.com, One person dies, 4 hurt in Thai tank fire ,  May  10,  2024

    ・Thaipbsworld.com, Latest : Blaze in Map Ta Phut reaches the third tank,  May  09,  2024

    Bangkokpost.com, One dead in Rayong gas tank blast,  May  09,  2024 

    Bangkokbiznews.com, เปิดไทม์ไลน์ไฟไหม้ถังเก็บสารเคมีระเบิด 'มาบตาพุดแทงค์เทอร์มินอล,  May  10,  2024

    Mgronline.com, ระทึก!ไฟไหม้ถังเก็บสารเคมีในมาบตาพุด เร่งควบคุมเพลิง-บาดเจ็บ4ราย,  May  09,  2024

    Thairath.co.th, ระเบิดซ้ำรอยระทึก ปี 64 แท็งก์เก็บแก๊สโซลีน ไฟลุกท่วมนิคมมาบตาพุด ,  May  09,  2024

    Thestandard.co, 26 ชั่วโมง เหตุเพลิงไหม้ถังสารเคมีมาบตาพุด .ระยอง เจ้าหน้าที่ฉีดน้ำ-โฟมรักษาอุณหภูมิต่อเนื่อง ด้าน รมว.อุตสาหกรรม-บริษัทเอกชนน้อมขอโทษประชาชน เยียวยาขั้นสูงสุด,  May  10,  2024

    Thaipbs.or.th, แถลงยืนยันไฟไหม้ถังสารเคมีมาบตาพุด 1 ถัง ยังเฝ้าระวังไฟปะทุ,  May  10,  2024


後 記: 最初に今回の事例を調べ始め、被災写真を見ていて思い描いた想像とはかなり違っており、発災状況がよく理解できませんでした。ところが、タイ語で書かれた報道記事(翻訳)を読んで理解できました。爆発・火災は2回あり、1回目のタンク火災は一旦消されていたということが分かり、状況が見え始めました。しかし、報道されている記事がいつの時点のことを指しているのかという疑問が出てきました。これは、このブログが <事故の状況および影響> という項目について書こうとしているからで、メディアの報道は2つの火災事故をひとつにして記事にしているためでしょう。(意図しているのか、2つの火災と認識していなかったかは分かりませんが) それにしてもタイの国情でしょうか、事故に関する関係機関の合同記者会見が発災翌日に行われています。


 

2024年5月13日月曜日

ブラジルのドゥケ・デ・カシアス製油所で球形タンクが爆発、死傷者82名(1972年)

 今回は、いまから52年前の1972330日(木)、ブラジルのリオデジャネイロ州にあるペトロブラス社のドゥケ・デ・カシアス製油所において液化石油ガス球形タンクが爆発し、91名の死傷者を出した事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、ブラジル(Brasil)リオデジャネイロ州(Rio de Janeiro)ドゥケ・デ・カシアス(Duque de Caxias)にあるペトロブラス社(Petrobrás) のドゥケ・デ・カシアス製油所(Refinaria Duque de Caxias)である。製油所は1961年に開設され、1日あたり24,000KLの石油を生産する能力があった。

■ 事故があったのは、製油所内にある液化石油ガス(LPガス)用の球形タンクである。製油所内には、容量1,600トンで直径25mの球形タンクが4基あり、うち3基が被災した。液化石油ガスの総貯蔵能力は7,803トンである。

<事故の状況および影響>

事故の発生

1972330日(木)午前050分頃、ドゥケ・デ・カシアス製油所で液化石油ガス用の球形タンク1基が爆発を起こした。

■ 前日の29日(水)午後5時頃、球形タンクの1基でタンク底から水抜き中、タンクのドレンバルブが氷結して閉めることができず、液化石油ガスが漏洩し続けた。漏れの量は大きくなっていた。この液化石油ガスに何らかの引火源によって火がついた。

■ 製油所の自衛消防隊が出動し、周辺地区を含め、球形タンクを冷却しながら火災の進行を防ごうと奮闘した。作業の効果はなく、まわりの空気は刻一刻と上昇した。そして、午前050分頃、最初の球形タンク1基が爆発した。球形タンクの一部が2km離れたところに噴き飛んだ。タンクの破片は数km先まで飛び散った。

■ 製油所近隣にあるカンポス・エリセオス地区はパニックに陥った。何百人もの人々が爆発に怯えて家を出た。製油所の周辺では、夜は昼のように明るくなり、空が真っ赤に染まった。炎は300mの高さまで達し、遠くの地区の人も見ることができた。リオデジャネイロの北地区では爆発の揺れを感じることができ、カシアスの中心部では多くの家屋の窓などが壊れた。爆発の圧力は地震のように感じられた。製油所の近くでは、店舗の扉が歪んで壊れ、窓は破られ、木は根こそぎ倒れ、壁は崩れ落ちた。

■ 製油所の現場では、温度が100℃を超え、まさに戦場のような光景だった。住民は赤ん坊を抱え、寝間着のまま家を飛び出し、自転車、車、バイクで製油所からできるだけ遠くへ逃げた。モンガバに到着した列車が住民によって止められ、人々が車内に進入し、あっという間に満員になった。

■ 最初の爆発から数分後にカンピーニョ消防署の消防隊が製油所に到着したが、新たな爆発に見舞われる危険性があり、消防活動ができなかった。ただちに、消防隊は本部に援軍を要請した。最大の難関は高温で消防隊が爆発現場に近づけないことだった。その後すぐに援軍が到着し、メイヤーから5部隊、ラモスから2部隊、中央本部から7部隊がカンピーニョの5部隊に加わり、製油所の自衛消防隊の応援隊も到着した。消防隊は、炎に向かって消火泡を放射した。炎の近くにいる人には離れるようにいい、もし急に炎が大きくなったら地面に身を伏せるように呼びかけた。ほとんどの人は、炎のまぶしさで目が見えなくなり、大きな爆発音で耳が聞こえなくなり、激しい熱さで窒息しそうになりながら、現場から離れざるを得なかった。

■ さらに小規模な爆発的燃焼が続き、 2基目の爆発が午前130分頃、3基目の爆発が午前230分頃に発生した。

■ 午前230分の爆発はさらに危険が差し迫った事態になり、消防士と救急士はすべてを放棄して逃げなければならなかった。爆発するたびに炎が低く噴出し、距離20mほどの範囲にあるものをすべて焼き尽くした。この爆発時に多くの人命が奪われ、多くの人が負傷した。

■ 周辺地区のカルロス・シャガス病院とゲトゥリオ・バルガス病院から40台の救急車で医師と看護師を載せて援助のために出動してきた。

■ 3基目の爆発の後、陸軍の兵士150名が現場に到着し、ドゥケ・デ・カシアス市を国のセキュリティ・エリアとし、周辺一帯を包囲した。この地区にいた医師、看護師、消防士を退去させた。

■ 事故に伴い、38人が死亡し、53人が負傷した。

被 害

■ 球形タンク3基が損壊した。タンク内に貯蔵されていたLPガスが焼失した。

■ 死傷者91人が出た。内訳は38人が死亡し、53人が負傷した。

< 事故の原因 >

■ 事故の初期要因は、タンクの水抜き作業の運転ミスである。

 液化石油ガス中の水はタンク静置中にタンク底に沈降する。この水を除去するため、タンク下部に設置しているドレンバルブを開けて水抜きを行い、液化石油ガスが出てきたらバルブを閉める。液化石油ガス中の水の量によって水抜き時間は異なる。事故当日、オペレーターはドレンバルブを開け、水抜きを開始したが、バルブを開けたまま、休憩所で軽食をとって水が抜けるのを待った。タンクでは水が抜けて、液化石油ガス中が出始めた。オペレーターは走って戻ったが、ドレンバルブはすでに氷結して閉めることができず、液化石油ガスが漏れ続けた。

■ 漏洩した液化石油ガスに何らかの引火源によって火災になった。

■ 爆発は液体の急激な気化による爆発現象で「BLEVE」(沸騰液膨張蒸気爆発)だった。

■ 安全弁は開いていたが、この安全弁は火災状態ではなく通常の動作状態向けに設計されており、壊滅的な規模の爆発を防ぐには不十分だった。 

< 対 応 >

■ 球形タンクの爆発による被害について調べたところ、1基の球形タンク関しては球体がバラバラになり、3つの大きな破片が別々な場所に飛んでいることがわかった。のちに、この爆発は液体の急激な気化による爆発現象で「BLEVE」(沸騰液膨張蒸気爆発)として分類された。 (図を参照)

■ この事例を受け、ペトロブラス社は球形タンクにつぎのような対応策をとった。

  ● 球形タンクの上部および下から1/3の高さに散水設備を設置

  ● インターロッキング付きの安全弁を2個設置

  ● ドレン弁に解凍用のスチームトレースを設置

  ● 球形タンクの下部に水注入設備を設置

  ● タンク下部に恒設のドレン配管を設置し、遠隔操作式でファイアセーフ型のバルブを2個取付け

■ 事故は液化石油ガス貯蔵エリアに限定されており、ほかの液体製品タンクやプロセス装置には影響がなかった。

■ この事故は6年前の1966年に起きた「フランス フェザンのLPGタンク爆発・火災事故(19661月)」 20151月)と類似しているという指摘があった。

補 足

「ブラジル」(Brasil)は、正式にはブラジル連邦共和国で、南アメリカに位置する人口約21,340万人の連邦共和制国家である。州はブラジル連邦単位(Unidades Federativas do Brasil) から成り立っており、ある程度の自治権 (自治、自主規制、自己徴収を備えた組織で、独自の政府と憲法を備えていて、これらが集まって連邦共和国を形成している。ブラジルには26の州があり、各州政府は行政府、立法府、司法府をもっている。

「リオデジャネイロ州」(Rio de Janeiro)は、ブラジル南東部の大西洋沿いに位置し、現在は人口約1,600万人の州である

「ドゥケ・デ・カシアス」(Duque de Caxias)は、リオデジャネイロ州の都市でグアナバラ湾に面しリオデジャネイロ都市圏を構成する都市で、現在、人口は約92万である。石油精製や石油化学工業などの重要な工業地域を有している。

 ■「ペトロブラス社」 (Petrobrás) は、1953年にアマゾンのウルクー油田開発のために設立され、現在は南半球最大の石油掘削会社で広く石油産業に携わっている。ブラジルのリオデジャネイロ市に本社を置き、慣例としてブラジル石油会社あるいはブラジル石油公社と表記されることのある半官半民企業である。

■「ドゥケ・デ・カシアス製油所」の貯蔵エリアには、総容量5,616,000バレルの石油タンク26基、1,292,000バレルを貯蔵できる中間生成物タンク37基、最終製品2,730,000バレル用の貯槽37基、および7,803トンの液化ガス用の貯蔵施設があった。当時、この貯蔵エリアは南米最大だった。

所 感

■ 今回の事故を読んで思い出したのは、プラントの液化石油ガス設備(タンクや配管)で水抜き(ドレンアウト)をする場合、バルブの氷結に注意するよう言われたことである。いまにして思えば、当時、ブラジルのドゥケ・デ・カシアス製油所の事故やフランスのフェザンの事故の教訓があったからだろう。

■ 液化石油ガスの球形タンク事故では壊滅的な破壊を伴うが、50年前の海外の話だけではない。日本でも記憶に新しい事故は「東日本大震災の液化石油ガスタンク事故(2011年)の原因」20123月)である。この4年後には「中国 山東省の液化石油ガスタンク群で爆発・火災」20157月)が起こっている。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

       Diariodorio.com, O Dia em que a REDUC explodiu,  April  01,  2019

       Wikidata.pt-pt.nina.az, Explosão na Reduc em 1972,  December  17,  2023

       Sindipetrocaxias.org.br, 30 de março de 1972 – A Explosão da Esfera de GLP,  March  30,  2020

       Revista Geográfica de América Central Número Especial EGAL, O MAIOR ACIDENTE DA REFINARIA DUQUE DE CAXIAS (RJ) – BRASIL: UM ESTUDO GEOGRÁRICO-HISTÓRICO,  2011

       Inspecaoequipto.blogspot.com, Caso 007: O Maior Acidente da REDUC (1972),  May  07,  2013

       Zonaderisco.blogspot.com, Explosão na Refinaria Duque de Caxias (Reduc),  December 11,  2014

       Portalc3.net, Memória: Explosão Refinaria Duque de Caxias,  March 30,  2024


後 記: 50年も前の事故だと発災内容が曖昧なことです。大きな事故だったので、繰り返し報じられていますが、事故の経緯がはっきりしません。事故の発端である球形タンクの水抜き作業は、このブログでは29日の午後5時頃ということにしましたが、30日の未明で爆発の直前と報じているところもあります。前日の夕方から漏れ始め、爆発が午前050分であれば、6時間以上も漏れ(火災)が続いているのは長すぎると思うのですが、そのほかの状況をみていくと、30日の真夜中に水抜き作業を始めるのは不自然です。このほか、2回目と3回目の爆発が続きますが、どのタンクが爆発したのか判然としません。それで、 2回目、3回目というのは、2基目、3基目という解釈にしました。

 あとブログにまったく触れなかったのは、「配管工の英雄的な行動のおかげで、事態はさらに悪化しなかった。彼は安全弁を開くために球形タンクに登るのが目撃された。これで水平方向の爆発は防げた」という英雄談です。複数のメディアで扱っていますが、対象のタンクはどれか、いつの時点だったのか、安全弁(締切時の液封だけを対象にしたものだとみられる)は火災時に役立つのかなど疑問があるので、取り上げませんでした。異常時で慌てていれば、人間の記憶はあやふやなものです。