今回は、2024年5月19日(日)、落雷警報が発令された最中、米国オクラホマ州ベサニーにある石油生産施設で落雷によるタンク火災が発生した事例を紹介します。
< 発災施設の概要
>
■ 発災があったのは、米国オクラホマ州(Oklahoma)オクラホマ郡ベサニー(Bethany)にある石油生産施設である。この石油生産施設のまわりには住宅地も近い。
■ 事故があったのは、石油生産施設のタンク設備である。施設内には油タンク4基と塩水タンク6基があった。
<事故の状況および影響>
事故の発生
■ 2024年5月19日(日)夜、石油生産施設で爆発があり、火災が発生してまわりの設備に延焼し、規模の大きい火災となった。
■ 住民によると、爆発音が聞こえた後、空に炎が舞い上がり、空がオレンジ色に染まっているのが見えたという。現場近くに住んでいる人によると、「今まで嗅いだことのない強烈な油の匂いがしました」という。
■ 発災に伴い、ベサニー消防署の消防隊が出動した。このほか、ウォール・エーカーズ消防署とユーコン消防署の消防隊が支援で出動した。
■ 地元のテレビ会社のKOCO-TVは、ヘリコプターの“スカイ5” を現場上空に飛行させたが、パイロットはヘリコプターの中でも火を感じたと語った。
■ 火災の原因は落雷によるものとみられる。
■ ベサニーの現場に近い住民は、住宅近くで落雷によるタンク火災が発生し、竜巻警報が発令される中、自宅からの避難命令を受けた。
■ 石油生産施設の火災現場の近くに住む人々には、ドアと窓を閉め、エアコンをオフにしておくように指示された。住民のひとりは、警備員が戸別訪問して避難を呼びかけており、避難するにつれて恐ろしさが広がり始めたと語っていた。
■ この地域には落雷のほか激しい嵐により被害が発生しており、日曜日には複数の竜巻が発生し、嵐がオクラホマ州を通過し、被害を残している。
■ 激しい炎と爆発があったにもかかわらず、けが人はいなかった。
■ ユーチューブには、石油生産施設の火災を伝えるニュースが投稿されている。
●Youtube.com、「
Sky 5 flies over tank battery fire in Bethany」(2024/05/20)
●Youtube.com、「Tank battery fire causes massive flames
near Bethany」(2024/05/20)
●Youtube.com、「Firefighters battle tank battery fire in
Bethany」(2024/05/24)
●Youtube.com、「Fireball erupts at Bethany tank battery after lightning strike」(2024/05/24)
被 害
■ 石油生産施設にあった油タンク4基と塩水タンク6基が損壊した。タンク内にあった油が焼失した。
■ 負傷者はいなかった。近くの住民に避難指示が出た。
■ 油火災により環境が汚染された。
< 事故の原因
>
■ 爆発・火災の原因は落雷とみられる。
< 対 応
>
■ 消防隊員らは火を消し止めることができ、負傷者は出ていない。
■ 5月19日(日)夕方には、ベサニーから西へ約20kmにあるギアリー(Geary)で落雷により石油生産施設のタンク設備2基が火災に遭っている。当時、激しい嵐が一帯を通過する中でタンク火災は起こった。発災により消防隊が出動した。ベサニー消防署は2つの石油生産施設での火災に対応している。
ユーチューブには、ギアリーの石油生産施設の火災を伝えるニュースが投稿されている。
●Youtube.com、「WATCH: Tank battery catches fire after reported lightning strike in Geary」(2024/05/20)
●Youtube.com、「Firefighters in Geary respond to a tank battery fire」(2024/05/20)
補 足
■「オクラホマ州」(Oklahoma)は、米国の中部にあり、州の南隣はテキサス州で、人口約400万人の州である。
「オクラホマ郡」(Oklahoma)は、オクラホマ州の中央部に位置し、人口約79,600人の郡である。
「ベサニー」(Bethany)は、オクラホマ郡の西部に位置し、人口約20,800人の町で、オクラホマ・シティ都市圏の一部である。
「ギアリー」(Geary)は、オクラホマ州のブレイン郡とカナディアン郡にあり、人口約990人の町である。ベサニーから西へ約20km離れたところにある。
■「石油生産施設」は所有者が報じられていないが、米国の陸上油田において従来から使用されているタイプの施設である。油井は自噴しないため、往復運動ピストン・ポンプを使用して地下の油を汲み取っている。このタイプのポンプは、サッカーロッド・ポンプやポンプジャックなどと呼ばれている。油井は原油または天然ガスと思われる。汲み取った油井の液体は油分と水分(塩水)に分けられ、油分は鋼製の油タンクに貯められ、塩水タンクはグラスファイバー製を使われることが多い。
■ 被災タンクは10基であり、落雷のあったとみられる「発災タンク」は特定できない。鎮火後も自立しているのが油タンク4基で、火災後に残っていないのが、グラスファイバー製の塩水タンク6基とみられる。鎮火後に2基の油タンクは屋根が噴き飛んでいるので、かなり衝撃の大きい落雷だったと思われる。
「発災タンク」の大きさなどの情報は報じられていない。発災場所をグーグルマップで調べてみると、火災のあった10基のタンクは、いずれも直径は約4mである。高さを6mとすれば、容量は75㎥となる。ほかの石油生産施設のタンク設備と同じくらいの大きさである。
所 感
■ 今回のタンク火災は、米国の陸上油田の石油生産施設で起こる落雷による爆発・火災の典型的な事例である。
しかし、これまでの石油生産施設のタンク火災と異なるのは、竜巻警報発令の最中に起こったことである。しかも、オクラホマ・シティ近隣で2か所のタンク火災が発生している。タンク火災が住宅地に近く、激しいタンク火災で避難指示が出ている一方、竜巻警報の避難指示が出ており、記事にあるように住民がおそろしさを感じたことは理解できる。
これまでブログでは、2015年の「米国テキサス州で相次ぐ落雷によるタンク火災」(2015年5月)において半月に3件の落雷によるタンク火災が多いと思って投稿したが、 2023年6月にもオクラホマ・シティ周辺で3件続いた「米国オクラホマ州の石油生産施設で相次いで落雷よるタンク火災」(2024年3月)のように、今は落雷の頻度が増え、竜巻警報と重なるような異常気象の状況になってきている。
■ ギアリーでの石油生産施設のタンク火災では、消防隊は放水しており、消火活動を行っている。これは、タンク火災が2基に限定しており、隣接するタンク群に延焼しないようにするためだろう。一方、ベサニーの石油生産施設では、防油堤全体が火災になっており、消防隊も積極的な消火活動を行った様子はなく、燃え尽きるまでの消極的消火戦略だった思われる。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Koco.com, Tank battery fire
causes massive flames near Bethany; Residents shelter in place, May 20,
2024
・Kfor.com, Residents react to
Bethany tank battery explosion, May
21, 2024
・ Yahoo.com, Residents react to Bethany tank battery explosion, May 21,
2024
・Okcfox.com, Firefighters
tackle two tank fires Sunday night, May
21, 2024
・Koco.com, Tank battery catches fire after reported lightning strike
in Geary, May 19, 2024
後 記: 最近、新型コロナが収まってきたためか、メディアのタンク火災の報道が増えてきたように思います。それに従い、油井施設のない日本(秋田など一部の地域を除く)では、石油生産施設におけるタンク火災の記事を取り上げることが少なくなりました。しかし、今回は竜巻警報が発令されている最中に落雷による石油生産施設のタンク火災発生というこれまでにない異常な状況だったため、まとめることとしました。調べている中で、ベサニーだけでなく、ギアリーでも石油生産施設のタンク火災があったことが分かりました。竜巻や落雷が多くなったのは異常気象の所為ですが、ロシアーウクライナ戦争やイスラエルーハマス戦争も人間の判断(力)がまともでなくなったのも異常気象のなせるわざ(?)ではないかと思うほど変な世の中です。