2023年9月27日水曜日

米子市のバイオマス燃料発電所の爆発・火災事故の住民説明会

 今回は、 202399日(土)に起きた米子バイオマス発電所の燃料受入搬送設備の爆発・火災事故について922日(金)に行われた住民説明会の状況について紹介します。前半はこれまでの概況と記載し、住民説明会の内容は「対応」の項に記載しています。なお、事故の内容は「米子市のバイオマス燃料発電所で爆発・火災事故」2023918日)を参照。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、鳥取県米子市大篠津町にある米子バイオマス発電所合同会社の米子バイオマス発電所である。

■ 事故があったのは、火力発電所で使うバイオマス燃料である木質ペレットの受入搬送設備である。輸入される木質ペレットは、境港に荷揚げ後、専用のトラック(コンテナ)で運ばれて鉄骨建屋(135㎡)内の受入搬送設備に受け入れる。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 202399日(土)午前925分頃、バイオマス発電所で爆発が起き、火災が発生した。

■ 爆発によって受入搬送設備の建屋の壁が吹き飛び、木質ペレットを燃料貯留槽に運ぶエレベータが燃えた。

■ 発災に伴い、消防署の消防隊が出動するとともに米子バイオマス発電所従業員が消火活動を開始した。約3時間50分後の午後115分頃に鎮火した。

■ 912日(火)、米子市長は、 20235月以降の相次ぐ火災で住民に大きな不安を与えているとし、米子バイオマス発電に対して、つぎのような申し入れを行った。

 ● 安全確保上、必要な場合を除き、運転を停止すること。

 ● 火災などの事故原因の究明を行ない、再発防止策を確実に実施すること。

 ● 事故とその後の対応状況について、地域住民への説明を行ない、信頼回復に努めること。

 ● 上記の対応を終わるまでは、運転を再開しないこと。

■ 912日(火)、バイオマス発電所の所長は、米子市長に謝罪し、「(今回のような爆発は)この事業の中での想定にはございませんでした。ただ、発生した事実がございますので、そこを徹底して追及していくことが必要と認識しています」 と述べ、「(原因については)ガスの充満ですとか、粉塵爆発をキーワードにしていくことになると思います」と語った。米子バイオマス発電所では、20239月中に付近住民への説明会を行い、原因解明と工事のため、少なくとも半年間は運転を停止する見通しを示した。

 火災の原因について記者団から問われたのに対して、所長は木質ペレットから生じた粉塵が原因だという見方を示した。粉砕した木を熱で圧縮させて作られる木質ペレットは、施設に運び入れるときの衝撃で、一部が削れるなどして粉塵になることがあるという。この粉塵が何らかの形で引火し、爆発を引き起こした可能性が高いという見解を示した。

被 害

■ 鉄骨製の燃料受入れ建屋1棟約135㎡とエレベータ1基約75㎡が焼けた。

■ 事故に伴う負傷者はいなかった。

< 事故の原因 >

■ 原因は調査中である。(鳥取県・米子市が専門家による調査チームを立ち上げている)

< 対 応 >

■ 922日(金)、米子バイオマス発電所は周辺住民を対象に発電所近くの大篠津、崎津両公民館で説明会を開いた。同社のほか、出資する三光(境港市)や中部電力(名古屋市)、シンエネルギー開発(群馬県)、三菱HCキャピタル(東京都) 、東急不動産(東京都)の担当者計6人が出席した。説明会では、米子バイオマス発電所は、一連の火災の原因が全て違うことを明らかにしたが、原因の究明や防止策のスケジュールはまだ立っていないと説明した。説明会では、99日(土)の爆発・火災の原因について、木質燃料から異物を取り除くコンベアが火元で、この周りで“粉塵爆発”が起きたとみられるとした上で、燃料の引火の原因になる異物はなく、詳しい原因は調査中だと説明した。

 住民57人が出席した大篠津公民館では、中部電力の担当者が、燃料を受け入れる建屋と燃料を運ぶエレベータで粉塵爆発が起きたと推定されると説明。周辺に部品が飛散したことも明かした。消防からは焼損が激しいコンベアが火元とみられると説明があったと報告した。

■ これに対して住民側は、安全対策の不備やこれまでの対応についての不信感を抱いていた。地元住民からは、「第三者機関を持ってでもいち早く原因を究明して発表して私たちに安心を与えてください」、「バイオマス発電の燃料となっている木質ペレットの品質管理は徹底されているか」、「今後火災が発生した時はどう対応するのか」といった声が聞かれた。説明会では他に「二度と起こさないぞというのが感じられない。予防策をしっかりと考えてもらわないと、不安でたまりません」 、 「当事者意識が全然感じられない。対処していけばいいという意識が丸見え」と語っていた。

■ 説明会が終わったあと、住民のひとりは、 「原因も何もわかっていない状態で、きょうの説明会の意味はあまり無かったのでは」と語っている。

■ ユーチューブには、住民説明会の状況を伝えたメディアの動画が投稿されている。

 YouTube 【相次ぐ火災】米子バイオマス発電所が住民説明会 住民「一早く原因を究明して」(2023/09/22

 ●YouTube「バイオマス発電所火災を受け説明会 住民は怒り爆発も原因分からず2023/09/22

■ 米子バイオマス発電所の事故は今回だけでは無かった。2023517日(水)午後850分頃、燃料貯留槽4基のうちの1基で火災を起こしている。米子バイオマス発電所は、ホワイトペレットが長期間保管されていたことにより自然発酵し、発火に至った可能性があるという。その3日後の520日(土)午前5時過ぎ、従業員から「先日と同じ燃料タンクが燃えて煙があがっている」と消防署に通報があった。火は約1時間後に消し止められ、けが人はいなかった。

■ バイオマス燃料による火災事故は各電力会社の管理問題とともに、バイオマス発電そのものの安全性問題が課題となっている。バイオマス発電の専門家の中には、つぎのように指摘する人もいる。

 ● バイオマス発電の燃料となる輸入木質バイオマス燃料は、2022年、ベトナム産で不純物等を混在させて増量したうえで認証を偽造して日本に輸出していたことが明らかになった不祥事が起きている。しかし、所管官庁の経済産業省は燃料偽装の実態調査を十分に行わないままの状態を続けている。

 ● 各地で相次ぐバイオマス燃料の火災事故は、こうした不良品燃料が原因とみられるケースのほか、バイオマス燃料からの自然発火による共通要因での火災も起きている。自然由来の燃料を大規模に貯蔵する同発電の仕組み自体に、燃料の偽装のしやすさや、自然発火を招く等の不具合要因がある。

補 足

■ 「バイオマス発電所」は、植物などの生物資源(バイオマス)を燃料に使用しながら発電する施設で、植物は生育過程で二酸化炭素を吸収するため、発電プロセスでバイオマス燃料を燃焼したとしても、大気中の二酸化炭素は増えない、いわゆるカーボンニュートラルの持続可能な発電方法として、現在、各地に設置されている。

■「米子バイオマス発電所」は、20186月に「米子バイオマス発電合同会社」として設立され、木質バイオマスを燃料とした出力約54,500kWの発電所で、山陰両県(鳥取・島根)最大規模のバイオマス発電施設である。施設は20198月に着工し、202242日に商業運転を開始した。 「米子バイオマス発電合同会社」は、中部電力㈱、三菱HCキャピタル㈱、東急不動産㈱、シンエネルギー開発㈱、三光㈱の5社が出資している。(事業体の構造図を参照)

 米子バイオマス発電所の事業は、シンエネルギー開発㈱が開発を進めてきたもので、バイオマス専焼発電所を建設・運営する。東急不動産㈱と三菱HCキャピタル㈱ が100%出資子会社を通じて、共同で本事業会社のアセットマネジメント(資産運用)業務を行う。また、中部電力㈱とシンエネルギー開発㈱は、本事業会社のプロジェクトマネジメント業務を受託している。そして、運転および保守は中部電力系の㈱中部プラントサービスが行っている。


所 感

■ 報道をみる限り、米子バイオマス発電所が922日(金)に開催した地元説明会はあまり上等な部類ではなかった。

 ● 発災が99日(土)で、米子市への説明が912日(火)であるのに対して、地元への説明会が922日(金)と日にちが遅い。お詫びの説明会であれば、もっと早くやるべきだった。

 ● 発災から2週間になるタイミングであれば、住民から厳しい声や意見が出されることは分かっている。(事故の説明会を住民に限定し、メディアを締め出すところもあるが、その点、報道の自由化に則って正直でよい)

 ● 発災から2週間になるタイミングであれば、まったく未知の原因ではないので、考えられる推定原因(複数)と対策案を説明するのがよい。 (今後進められる正式な調査委員会の意見と異なっても良い) 

 ● 米子バイオマス発電合同会社のほか、出資会社5社が説明会に出席しているが、内向き(社内向け)の対応でしかなく、人数が多く出ればよいというものでない。(地元住民への威圧ととられることもある)

 ● 説明会への出席は所長と実質的に設備の分かっている最小限の人数でよい。

 ● 原因について“粉塵爆発”にこだわっている印象を受ける。

■ 微粉バイオマス専焼技術の発電所であれば、粉塵爆発の可能性は高く、対策をとる必要がある。確かに、木質ペレットの生産状態によっては、港での積込み、海上輸送中、荷揚げ、サイロや倉庫への保管作業、横持ち作業などを繰り返すと、粉化し、粉化したバイオマス燃料には粉塵爆発のリスクがあると言われている。しかし、米子バイオマス発電所では、木質ペレットを使用するほかのバイオマス発電所と同様、粉塵爆発を予期した設備にはなっていないと思われ、なぜ 急に粉塵爆発にこだわるのか。バケットエレベータ系の構造や1年半の運転実績によって粉化の傾向があったのかと思ってしまう。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

      Nnn.co.jp , 住民からは怒りの声 米子バイオマス発電所火災受け説明会,  September  23,  2023

      News.yahoo.co.jp, 相次ぐ火災 米子バイオマス発電所が住民説明会 住民「一早く原因を究明して,  September  22,  2023

      Fnn.jp , 火事相次ぐ「バイオマス発電所」が説明会 再発防止策など示されず住民から憤りの声,  September  22,  2023

      News.yahoo.co.jp, 火事相次ぐ「バイオマス発電所」が説明会 再発防止策など示されず住民から憤りの声,  September  22,  2023


後 記: 前回の後記で、米子バイオマス発電合同会社に関する事業体の構造図を見て、この組織は意思疎通が難しそうだと指摘しましたが、案の定、地元説明会には出資会社5社が出席しています。地元住民は 「原因も何もわかっていない状態で、きょうの説明会の意味はあまり無かったのでは」と語っていますし、「当事者意識が全然感じられない。対処していけばいいという意識が丸見え」という意見が出ており、なにか読まれているという印象です。バイオマス発電は良いことで推進すべき事業ですが、組織やひとを立て直して取り組んでもらいたいものです。 

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