2023年4月19日水曜日

関西電力㈱ 舞鶴発電所でバイオマス燃料がサイロ内で自然発火して火災

 今回は、2023314日(火)、京都府舞鶴市にある関西電力㈱の舞鶴発電所でバイオマス燃料を保管するサイロ(タンク)から火災が発生した事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、京都府舞鶴市にある関西電力㈱の舞鶴発電所である。舞鶴発電所は、石炭とバイオマスの木質ペレットを燃料とし、12号機の合計出力は180kWである。

■ 事故があったのは、火力発電所のバイオマス燃料の木質ペレットを保管するタンクである。保管施設はバイオマスサイロと呼ばれ、延べ面積が490㎡あり、2基ある。


<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2023314日(火)午後10時頃、火力発電所バイオマス燃料を保管するサイロから火災が発生した。舞鶴市に設置しているNHKのカメラでは、発電所から突然爆発したような火の手が上がり、2回ほど赤い大きな炎が瞬間的に広がる様子が撮影されていた。

■ 関西電力舞鶴発電所から消防署にバイオマスサイロから火が出たという通報があり、公設消防が出動した。消防隊が消防士とともに消防車23台が現場へ出動した。

■ 発災に伴い、関西電力自衛消防隊が出動し、ただちに消火活動を開始した。314日(火)午後1154分、公設消防が現場での消火活動を始めた。

■ 発災当時、舞鶴発電所の2基ある発電設備のうち1号機は修繕工事のため停止中で、2号機は木質ペレットをベルトコンベヤでボイラに供給する作業が行われており、稼動中だった。火災の影響によって2号機も停止した。

■ この火災で施設内にあるサイロ2基が全焼し、ベルトコンベヤなど周辺の設備も焼損した。

■ 発災に伴う負傷者はいなかった。

■ 関西電力によると、他の電源を稼働させることなどにより、必要な電力の供給に影響はない見通しだという。

被 害

■ 施設内にあるバイオマスサイロ2基が全焼し、ベルトコンベヤなど周辺の設備も焼損した。延焼面積は約2,000㎡であった。

■ 火災により電力の供給ができなかった。

■ 事故に伴う負傷者は出なかった。

< 事故の原因 >

■ バイオマスサイロ内にあるバイオマス燃料の一部が発酵・酸化して発熱するとともに可燃性ガスが発生した。この可燃性ガスがサイロ内とバイオマス燃料をボイラへ移送する設備内に滞留した。発熱が進んだサイロ内のバイオマス燃料が自然発火し、可燃性ガスに引火して火災に至った。


< 対 応 >

■ 火災は、約10時間後に消し止められ、315日(水)午前826分に鎮火が確認された。

■ 317日(金)、関西電力は、 発電所2号機のバンカ(燃料を供給するために一時的に貯蔵する設備)  内の一酸化炭素濃度が上昇傾向で、バンカ内の燃料の発熱が進む可能性 があることから、燃料を全て消費するために318日(土)に一時的に2号機を運転することとしたと発表した。

■ 320日(月)、関西電力は、石炭サイロからボイラへ石炭を運搬する設備の健全性を確認できたので、2号機を運転することとしたと発表した。

■ 43日(月)、関西電力は、発生経緯などについてつぎのような発表を行った。

 ● バイオマスサイロ内にある燃料の一部が、発酵・酸化して発熱し、サイロ内 および燃料をボイラへ運搬する設備内に可燃性ガス(一酸化炭素とメタンガス)が発生・滞留した。

 ● その後、発熱が進んだサイロ内の燃料が自然発火し、可燃性ガスに引火して 火災に至ったものと考えられる。

 ● 幅広い知見を取り入れた火災の原因究明と再発防止対策の具体化・推進を行うため、「舞鶴発電所バイオマス設備火災事故対策検討会」 を設置した。

 ● 火災はバイオマス燃料供給設備のほぼ全域で、燃料受入設備の一部の計約2,000㎡が延焼した。

■ バイオマス発電からの火災事故は、202311日(日)に大阪ガス㈱運営による千葉県の袖ケ浦バイオマス発電所で燃料サイトから火災が発生したほか、各地で相次いでいる。202010月には北九州市若松区のオリックスグループの響灘エネルギーパーク合同会社運営のバイオマス発電所で火災が起きている。20229月には、茨城県東海村の常陸那珂火力発電所で輸入バイオマス燃料による火災事故が発生している。

 千葉・袖ケ浦バイオマス発電所の火災はテレビニュースがユーチューブに投稿されている。(YouTube「火事のような臭い」元日夜から異臭で住民困惑原因はバイオマス発電の燃料木質ペレットの発火か TBS NEWSを参照)

■ バイオマス燃料による火災事故は各電力会社の管理問題とともに、バイオマス発電そのものの安全性問題が課題となっている。バイオマス発電の専門家の中には、つぎのように指摘する人もいる。

 ● バイオマス発電の燃料となる輸入木質バイオマス燃料は、2022年、ベトナム産で不純物等を混在させて増量したうえで認証を偽造して日本に輸出していたことが明らかになった不祥事が起きている。しかし、所管官庁の経済産業省は燃料偽装の実態調査を十分に行わないままの状態を続けている。

 ● 各地で相次ぐバイオマス燃料の火災事故は、こうした不良品燃料が原因とみられるケースのほか、バイオマス燃料からの自然発火による共通要因での火災も起きている。自然由来の燃料を大規模に貯蔵する同発電の仕組み自体に、燃料の偽装のしやすさや、自然発火を招く等の不具合要因があるとの指摘がある。

補 足

■「関西電力㈱」は、大阪市に本店を置く電力会社で、略称として関電(かんでん)KEPCOKansai Electric Power Co.;ケプコ)といわれ、発電施設は170箇所×計3,657kWである。主な略歴はつぎのとおりである。

 ● 188710月、近畿地方における最初の電気事業者として神戸電灯が設立

 ● 19515月、関西配電および日本発送電を廃止し、関西電力が発足

 ● 20048月、関西電力としては30年ぶりとなる石炭火力の舞鶴発電所が運転開始

 ● 20233月、2018年から電力小売りが全面自由化されているにもかかわらず、主に工場や商業施設向けの電力小売り分野でほかの電力会社とカルテルを結び、地盤エリアでの営業活動を展開しないように画策していたことが明らかとなり、公正取引委員会は中国電力、中部電力、九州電力などに総額1,000億円余の課徴金納付を命じた。しかし、カルテルを主導した同社は公正取引委員会にカルテルを自主申告したため、処分が免除されたことが報道された。

■「舞鶴発電所」は、京都府舞鶴市にある関西電力で唯一の石炭火力発電所で、従業員は約420名である。自然のままの地形を利用し、敷地を二段造成するとともに、省スペースで石炭を貯蔵できるサイロ方式を採用している。2004年に稼動した1号機は発電出力90kW2010年に稼動した2号機は発電出力90kWで合わせて180kWの能力である。 2008年に1号機でバイオマス燃料の混焼を開始し、石炭とバイオマス燃料の木質ペレットを混ぜて燃焼させて発電している。

■ 「バイオマス発電所」は、植物などの生物資源(バイオマス)を燃料に使用しながら発電する施設で、植物は生育過程で二酸化炭素を吸収するため、発電プロセスでバイオマス燃料を燃焼したとしても、大気中の二酸化炭素は増えない、いわゆるカーボンニュートラルの持続可能な発電方法として、現在、各地に設置されている。

 バイオマス発電に関して、つぎのような事故を紹介した。

 ●20192月、「山形県のバイオマスガス化発電所で水素タンクが爆発、市民1人負傷」

(●20196月、「山形県のバイオマスガス化発電所の水素タンクの爆発(原因)」

 ●20226月、「山口県の下関バイオマス発電所の焼却灰タンクで人身事故」

所 感

■ 事故原因は、バイオマスサイロ内にあるバイオマス燃料の一部が発酵・酸化して発熱するとともに可燃性ガスが発生し、この可燃性ガスがサイロ内などに滞留していき、発熱が進んだサイロ内のバイオマス燃料が自然発火し、可燃性ガスに引火して火災に至ったという。

■ バイオマス燃料の自然発火は多くの事例や情報が公表されており、まったく未知の事象ではない。舞鶴発電所は、2008年に1号機でバイオマス燃料の混焼を開始し、石炭と木質ペレットを混ぜて燃焼させて発電している。 2号機は2010年に稼動しており、現在の設備になってから1214年の運転実績がある。このような経歴から事故原因を見てみると、設備管理、操業管理、運転管理の面に疑問が出てくる。

 ● 混焼を開始した当時からすでに設備的に原因の事象が潜在していたのではないだろうか。設備を見ると、石炭サイロとバイオマスサイロが最適な配置ではないように感じる。石炭専焼の火力発電所として自然のままの地形を利用した省スペースの配置に、バイオマスサイロやコンベアなどを増設したことが自然発火を引き起こす要因になっていないだろうか。

 ● 操業管理の面でいえば、バイオマス燃料の質的転換をやってしまったのではないか。指摘されているようにバイオマス発電に使用する輸入木質バイオマス燃料が、昨年来、不純物等を混在させて増量したうえで認証を偽造して日本に輸出していたことが明らかになっている。コスト低減を目的に正規のバイオマス燃料から転換したため、自然発火の要因が生まれたのではないだろうか。

 ● 運転管理の面でいえば、バイオマス燃料の自然発火を検知する監視システム(温度検知や一酸化炭素検知など)を装備していると思われるが、この監視システムが正しく管理され、日常で有効に使われていたのだろうか。長年の運転管理で本来の目的が失われ、形だけの監視システムとなり、自然発火の要因を見逃したのではないだろうか。

■ 千葉県の袖ケ浦バイオマス発電所の火災では、消火に苦慮した。今回も消火に約10時間かかっているが、消火活動に関しては出動以外に情報が発表されていない。バイオマス発電所は各所に建設されており、火災も報じられており、どのような消火戦略や消火戦術がとられたか、今後の知見として公表してもらいたい。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

       Nhk.or.jp, 関西電力舞鶴発電所で火事 バイオマス燃料の保管施設2基全焼,  March  15,  2023

      Nhk.or.jp, 関西電力舞鶴発電所で火災 施設の一部焼ける,  March  15,  2023

      Kepco.co.jp, 舞鶴発電所 バイオマス燃料供給設備における火災について(第1報~第5,  March 15April 03,  2023

      Rief-jp.or, 関西電力・舞鶴石炭火力発電所の火災は、混焼のバイオマス燃料からの可燃性ガスへの引火が原因。相次ぐバイオマス発電所の火災事故で、同燃料の安全性確保が課題に(RIEF,  April  03,  2023

      Nikkei.com,  関電火力発電所で火災、10時間半後に鎮火 京都,  March  15,  2023

      Geenproduction.co.jp, 関西電力、舞鶴発電所バイオマス燃料供給設備の火災発生経緯、事故対策検討会の設置を発表,  April  03,  2023

      Mainichi.jp, 鶴発電所の火災、バイオマス燃料のペレットが自然発火 関電,  April  03,  2023

      Kyoto-np.co.jp, 舞鶴発電所火災で関電「出火原因は不明」 12号機とも運転停止続く,  March  15,  2023

      Jiji.com, 舞鶴発電所で火災 けが人なし関電,  March  15,  2023

      Sanyonews.jp, 関電の火力発電所で火災 京都・舞鶴、供給影響なし,  March  15,  2023

      Kyoto-np.co.jp, 「ベルトコンベヤーやサイロから炎」京都・舞鶴の関電発電所で火災,  March  14,  2023


後 記: チャットGPTが話題になっていますが、今回の事故情報をまとめた後、事故について質問してみました。バイオマス燃料の常識的な話とともに鋭い答が返ってきました。(下線部)

質 問: 関西電力舞鶴発電所でバイオマス燃料が自然発火して火災になりましたが、なぜ起きたのですか。

回 答: 私たちは直接的な情報を持っていないので断定的な回答はできませんが、一般的にバイオマス燃料が自然発火する主な原因は、高温や湿気などの外部要因によるものです。バイオマス燃料は、木材チップやペレットなどの形で使用されることが多く、これらの材料は湿度が高いと発火しやすくなります。また、発酵や腐敗などの過程で自然に発熱することがあるため、高温の環境下で保管される場合には、自然発火する可能性があります。

 具体的には、関西電力舞鶴発電所での火災がどのように起きたかについては調査が必要です。しかし、バイオマス燃料が自然発火する可能性があることは、事前に知られていたリスクであるため、それに対する十分な注意が払われていたかどうか、また適切な安全対策が取られていたかどうかが、注目されるでしょう。

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