2021年11月1日月曜日

カナダ・アルバータ州の原油生産のタンク施設で爆発・火災

  今回は、20211023日(土)、カナダのアルバータ州エルクポイントにあるセキュア・エナジー社のタンク施設で爆発・火災が起こった事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災施設は、カナダ(Canada)のアルバータ州(Alberta)のエルクポイント(Elk Point)にあるセキュア・エナジー社(Secure Energy)のタンク施設(タンクファーム)である。

■ 事故があったのは、セキュア・エナジー社の陸上原油生産のエルクポイント施設にあるタンク設備である。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 20211023日(土)午後235分頃、セキュア・エナジー社のエルクポイント施設で爆発があり、火災となった。

■ 発災に伴い、セキュア・エナジー社は消防署などに緊急通報を出すとともに、異常事態対応計画にもとづく対応を始めた。

■ 発災があった時、自治体の担当者は、「地元の人たちとしゃべっていたら、オーケストラの打楽器奏者が打ち鳴らす音を聞きました。ほかにも同じように感じた人がいました」と語った。

■ 現場では、カナダ騎馬警察や救急医療サービスとともに、30人以上の消防隊が対応した。

■ 警察は現場近くを走るハイウエイ640を緊急車両の通行を優先して、一般車両を通行制限した。なお、レンジ・ロード62号線や63号線、あるいはタウンシップ・ロード554号線は施設から出る煙のため視界が悪いので走らない方がよいと注意喚起があった。

■ アルバータ州のカナダ騎馬警察は、火災はタンク基地内に限定されており、住民への脅威はないと語った。

■ 当局は、産業爆発の専門家を招集し、火災の抑制と制御を図ることとした。近くに住む人たちは、予防措置として、自宅から避難した。 

■ アルバータ州エネルギー規制当局と大気を監視する機関も敷地内に入った。

■ 事故に伴う死者は無かった。当局によると、怪我をした人はいるが、現時点では怪我の程度は不明であるという。

 

■ 陸上原油生産施設のタンク設備などが火災で被災した。損傷の範囲や程度は分からない。

■ 事故による死者はいなかった。負傷者が出た模様であるが、詳細は分からない。

■ 現場近くを走るハイウエイ640の一般車両の通行が制限された。

■ 近くに住む人たちが予防措置として自宅から避難した。   

< 事故の原因 >

■ 事故原因は不明で、調査中である。 

< 対 応 >

■ セキュア・エナジー社は、「火災は消えました。私どもは当局に全面的に協力し、原因の調査を行っていきます。私どもの最優先事項は、従業員と一般市民の安全、環境の維持です」という声明を発表した。

■ 爆発の原因は現在のところ分かっていない。

補 足

■「カナダ」(Canada)は、北アメリカの北部に位置し、10の州と3つの準州からなる連邦立憲君主国家で、英連邦加盟国である。人口は約3,760万人で、首都はオンタリオ州のオタワである。

 「アルバータ州」 (Alberta)は、カナダ西部に位置し、人口は約444万人である。肥沃な農業地帯が広がるが、第2次大戦後、石油が発見されて産油地域でもある。近年はオイルサンド採掘で得られる重質原油の生産が主力になっている。

 「エルクポイント」 (Elk Point)は、アルバータ州セントポール郡にあり、人口約1,400人の町である。エルクポイントは農業が主の地域であるが、多くの石油関連企業がある。エルクポイントでは、20126月に「カナダのアルバータ州のポンプ・ステーションで原油漏洩」の事故が起こっている。

■「セキュア・エナジー社」(Secure Energy) は、2007年に設立し、アルバータ州カルガリーに本社を置くエネルギー関連のサービスを提供する会社である。原油やオイルサンドの開発・生産に関連する油の処理や末端処理、深井戸注入による水処理、油田廃棄物の処分などを行い、そのためにアルバータ州を中心に47の施設をもっている。セキュア・エナジー社は、最近、同業者のニューワルタ・タービータ社(NewaltaTervita)と合併した。

■ アルバータ州のオイルサンドの生産の概念図はつぎのとおりである。今回のセキュア・エナジー社の施設はオイルサンドの水蒸気攻め法(Steam Assisted Gravity Drainage)による関連設備ではないかと思われる。

■ 火災の状況は遠方から炎が立ち昇る様子を撮影された画像しかない。メディアの記事では発災現場も明確でないが、セキュア・エナジー社のウエブサイトには同社が保有する施設の場所が掲載されており、エルクポイントの場所と施設はハイウエイ640号線沿いにある。グーグルマップでは、最近合併したというタービータ社(Tervita)の名前が付けられている。

所 感

■ 事故の原因は、水蒸気攻め法によるオイルサンドの原油生産施設にある油貯蔵設備が何らかの引火源で爆発し、火災になったものと推測する。オイルサンドの生産は採算の悪い状況が続いていたが、最近の原油高を背景に無理な増産操業を行ったことで事故になったのかも知れない。火災の映像から見ると、火災の規模は大きそうな印象である。陸上原油(オイルサンド)生産施設には防油堤が設置されていないようなので、油が流出していたら、施設の被害はひどいものになったかも知れない。

■ 消防活動はまったく分からない。消火活動を行ったのか、不介入戦略で燃え尽きるのを待ったのかも推測がつかない。最近の火災事故ではドローンによる映像が報じられることが多いが、今回のような事故の場合、消防活動の状況把握や報道による事実把握からドローンの活用に期待したい。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    Tankstoragemag.com, Fire at Secure Energy’s Alberta tank farm,  October 25, 2021

    Globalnews.ca, Industrial explosion left fire crews battling blaze at crude oil tank farm northeast of Edmonton,  October 24, 2021

    Lakelandconnect.ne, Explosion outside of Elk Point; HWY 640 closed,  October 23, 2021

    Edmontonjournal.com, Explosion, fire damage petroleum tank farm in Two Hills County,  October 24, 2021

    News7h.com, Industrial explosion left fire crews battling blaze at crude oil tank farm northeast of Edmonton – Edmonton,  October 23, 2021 


後 記: 今回の事故では、メディアの報道記事よりもその他の関連事項を調べるのに時間がかかりました。まず、カナダのアルバータ州はオイルサンドの掘削の多いところであり、同じような施設がたくさんあり、発災現場がグーグルマップではつかめませんでした。つぎに、セキュア・エナジー社のエルク・ポイント施設なるものがどのような設備なのかはっきりしません。また、セキュア・エナジー社なる会社の形態がよく理解できませんでした。エネルギー会社や油井所有者ではなく、油井の施設を提供して操業管理を行うサービス会社であることが分かりました。オイルサンドを水蒸気攻め法によって生産するプロセスは水などの廃棄物が出てコストと手間のかかることが分かりました。結局、セキュア・エナジー社のウエブサイトで施設の場所を示していましたので、これからエルク・ポイント施設の場所などが分かりました。そして、今回はグーグルマップだけでなく、グーグルアース(Google Earth)が有効でした。


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