2021年2月16日火曜日

放水能力22,700リットル/分を有する大型化学消防車

  今回は、米国の消火装置メーカーのサトフェン社が、これまでの記録を更新すると第三者評価を得た6,000ガロン/分(22,700 L/min)の放射能力を有する新機種の消防車を発表したので、その内容を紹介します。


 
< はじめに >

■ 米国の消火装置メーカーのサトフェン社(Sutphen)は、これまでの記録を更新すると第三者評価を得た6,000ガロン/分(22,700 L/min)の放射能力を有する新機種の消防車の試作機を発表した。 

< 新機種の消防車の開発 >

■ 今回の消防車両は、サトフェン社の頑丈なシャーシに304ステンレス鋼製のボディで、産業火災の現場で遭遇する過酷な条件向けに製造された。 ヘイル社製の6,000ガロン/分(22,700 L/min)のダブルサンダーと呼ばれるポンプと直接注入式の泡システムを備えている。

■ 試作機は第三者評価によって6,000ガロン/分(22,700 L/min)の放射能力があるが、産業用ポンプ装置は供給水が正圧だと6,500ガロン/分(24,600 L/min)以上を流すことができる。

■ サトフェン社の販売・マーケティング担当取締役は、「私たちがこの産業分野で革新を続けていますが、今回、記録した装置はサトフェン社を防火産業界のリーダーとして確固たるものにしました」と述べている。

■サトフェン社は、買い手を待っている間、全土でデモ機の展示を行っている。

< 新機種の消防車の仕様 >

■ Sutphen Industrial Pumper, Demo 479, HS #6739

 ● ホイールベース:250” 6,350 mm

 ● 走行車高:11’ – 4”3,453mm

 ● 走行時全長:37’11,277mm

 ● シャーシ: Sutphen Monarch Heavy-Duty Custom Chassis, 62”cab with 15” Raised Roof

    ・ 4ドア、四人乗り

    ・ ダブル・ドメックス・フレーム・レイル(Double Domex Frame Rails

    ・ フロントアクスル&サスペンション:24,000 lbs.

    ・ リアアクスル&サスペンション:35,000 lbs.

    ・ エンジン:Cummins X 15,600HP

    ・ オルタネータ(発電機):Delco Remy 420 AMP

    ・ トランスミッション:Allison Gen 5, EVS4000

 ● ポンプ: ヘール社

    ・ ダブルサンダー 6,000 ガロン/分 (22,700 L/min

         ・ 泡システム:FoamPro 300ガロン/分(1,135 L/min Accumax-II Fury Pump Module

    ・ディスチャージ: (1) 3” Bumper; (1) 3” Rear; (2) 6” Driver Side; (2) 6” Officer Side;

    (2) 6” Rear Top Corner Monitors; (2) 6” Rear Body LDH Outlets;

    (1) 6” Overhead Pump Module Monitor

    ・スピードレイ: (2) 2” Speedlays, 2” Valves, 1 ½” NSTM

    1,000ガロン泡薬剤タンク (3,780リットル)

 ● ボディ:   サトフェン社

    304ステンレス鋼

    ・ロールアップ型ドア

    ・インダストリアル・ボディ

付加装置:

  ・18” Polished Stainless Steel Bumper Extension

  ・Federal Q2B Siren, Recessed into Centerline Front Grille

  ・Voyager Rear and Dual Side View Camera System

  ・9 Bottle Compartments

  ・FRC Spectra, LED Scene Lights

  ・LED Spectra, Front Brow and Upper Driver/Officer Sides

  ・Whelen M6 Super LED

  ・Whelen 72” LED Lightbar

● 泡モニター: アクロン社

  ・Akron Aero Master 3000-GPM 11,300 L/min, Overhead Pumper, Electric Remote and Manual Wheels (3)



 

■「サトフェン社」(Sutphen Corp.)は、米国オハイオ州ダブリンに本拠を置く株式非公開の家族経営の企業であり、1890年以来、頑丈な特注の緊急対応車両を製造している。


所 感

■ 放水能力 22,700 L/min の大型化学消防車を製作するとは、さすが米国だと思う。ただ、詳細をみると、泡モニターは11,300 L/min 3基設置されており、後部に2基、前部に1基を搭載している。従って、泡の最大放射は11,300 L/min の泡モニター2基を使用するものだと思われる。


■ これを日本の法令に照らし合わせると、この大型化学消防車1台で大容量泡放射砲システムが必要な直径34m60mまでのタンク全面火災に適用できることになる。2台であれば、直径75mまでのタンク火災、3台であれば、直径100mまでのタンク火災に適用できる。大容量泡放射砲システムは、泡放射砲だけでなく、大容量ポンプ、泡原液タンク(トート)、泡混合装置、大口径ホースなどが必要で、これらの配置やホース展張に人と時間を費やすので、従来の大型化学消防車と同じような対応できるメリットは大きい。



備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    Industrialfireworld.com,  Sutphen Corporation Shatters Industry Record, February 08, 2021

      Sutphen.com, SUTPHEN CORPORATION SHATTERS INDUSTRY RECORD,  2021

      Fireapparatusmagazine.com, Sutphen Corporation Breaks Industry Record, October 29, 2020

      Internationalfireandsafetyjournal.com, SUTPHEN CORPORATION SHATTERS INDUSTRY RECORD, October 30, 2020


後 記: 今回はメーカーの宣伝のようになりますが、米国の消防機材の雑誌やインターネットで話題になっているので紹介しました。2003年北海道十勝沖地震後のタンク火災では、三点セットと呼ばれる放水能力 3,000 L/minの化学消防車や高所放水車がまったくかなわない状況でした。当時、世界(米国)をみると、大容量泡放射砲なるものが存在していることがわかりました。これを契機に現在の大容量泡放射砲システムの導入が法令で決まりました。今回の放水能力 22,700 L/min の大型化学消防車を見ると新たな発想というより、大型化したポンプや泡モニターなどをコンパクトに消防車に配置するという技術の革新性にあると思います。実際の運用にあたってはいろいろな課題や改善を要しそうですが、世界的にみれば、大容量泡放射砲システムは今回のような消防車を配備する形になっていくでしょう。

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