今回は、 2020年11月5日(木)、アフリカのナイジェリアのラゴスにあるOVHエナージー社のタンク・ターミナルで、ガソリン・タンクが火災を起こした事故を紹介します。
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、アフリカのナイジェリア(Nigeria)ラゴス(Lagos)のアパパ地区(Apapa)にあるOVHエナージー社(OVH Energy)のタンク・ターミナルである。
■ 発災があったのは、タンク・ターミナル1にある6,000トンの入ったガソリン・タンクである。
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2020年11月5日(木)午後12時20分頃、タンク・ターミナル1にあるガソリン・タンクで火災が起こった。
■ 発災に伴い、ラゴス州消防署などの消防隊が出動した。
■ 24時間を経過し、消防車25台、消防士100名が動員されたが、火災は継続している。
■ ラゴス州緊急管理局は、火災を制御するための努力が行われている間、ラゴスの地元住民に落ち着いて行動するよう呼びかけた。
■ 火災が始まって1日を経過したが、一部の住民は安全な場所を求めてすぐに避難している。当局は、状況が管理下にあり、安全だといったが、住民はこのエリアから退避するのが最善の選択肢だと考えていた。近くの親類の家に避難した女性は、「火災から出る熱は非常に熱く、実際、耐えることができません」と語った。別な住民は、「このあたりには、多くのタンク基地があり、次に何が起こるかわからないので、本当にこわい」と話した。
■ 事故に伴う負傷者は無かった。
■ タンク火災の状況はユーチューブに投稿されている。(Youtube、「Fire Engulfs Oando Tank Farm In Ijora, Lagos」を参照。
■ タンク1基が焼損し、内部のガソリン6,000トンが焼失した。
■ 負傷者はいなかった。
■ 近くの住民の一部が自主的に避難した。
< 事故の原因 >
■ 事故の原因は調査中である。
■ 目撃者によると、火災発生直前にタンク地区で溶接作業が行われており、溶接の火花が事故を引き起こしたのではないかという推測があるが、これは公式には確認されていない。
< 対 応 >
■ 事故に伴って対応した機関は、ラゴス州緊急管理局、連邦消防署、ラゴス州消防署、ナイジェリア海軍消防署、ナイジェリア警察、フォルテ石油消防署などである。
■ 火災は約45時間続き、11月7日(土)午前9時頃に鎮火した。
■ 火災が消え、ラゴス州緊急管理局は原因調査を始めた。
■ 11月8日(日)、 OVHエナージー社は、「消防活動に従事した各消防隊に計り知れない努力と支援に感謝します。また、住民の方々にはご心配とご迷惑をおかけしました。私ども責任ある企業人として、最優先事項はすべての関係者の生命と財産の安全です。安全衛生の事故ゼロを目指して、火災原因の早急な調査を開始しました」という声明を出した。
■ ナイジェリアの主要石油販売業者協会は、11月9日(月)、OVHエネルギー社で起こったガソリンタンクの火災についてナイジェリア国内の石油供給に影響はないと発表した。
補 足
■「ナイジェリア」(Nigeria)は、正式にはナイジェリア連邦共和国で、西アフリカに位置し、アフリカのほぼ中央にあり、人口約2億人の連邦制共和国である。人口はアフリカ最大で、世界でも7位である。
「ラゴス」(Lagos)は、ナイジェリアの南部に位置し、ギニア湾に接する人口約800万人の都市である。ラゴスと周辺都市を含む大都市圏の人口は約2,100万人といわれている。アフリカ全土の主要な金融センターであり、経済の中心地である。
なお、ナイジェリアの事故としては、つぎのような事例がある。
● 2014年6月、「ナイジェリアの石油ターミナルで落雷、タンク火災、その後油流出」
■「発災タンク」は、6,000トンのガソリンが入ったタンクである。ガソリンの比重を0.7とすれば、6,000トンは約8,500KLである。ナイジェリアのラゴスをグーグルマップで調べると、発災タンクは直径は約29mである。高さを15mと仮定すれば、容量は9,900KLである。タンクにはドーム式とみられる屋根が付いているので、タンク型式はアルミニウム製ドーム型内部浮き屋根式タンクと思われる。発災直後のタンク被災写真によると、タンク側板の塗装は上部しか剥離していないので、タンク内液は一杯に近かった。
■ 発災タンクは、11月5日(木)午後12時20分から11月7日(土)午前9時まで約45時間燃焼し続けた。被災写真では、全面火災のような状況を呈している。しかし、タンクには、アルミニウム製ドームと内部浮き屋根があったと思われるので、障害物あり全面火災ではないかとみられる。しかし、全面火災とみなし、ガソリンの燃焼速度を約33㎝/hとし、発災時のタンク液面を13mと仮定すれば、タンクの燃焼時間は約39時間となる。この推測と被災写真から、タンク火災は内液のガソリンが燃え尽きて鎮火したと思われる。
所 感
■ 今回の事故は、アルミニウム製ドーム型内部浮き屋根式タンクで起こっており、目撃者によると、火災発生直前にタンク地区で溶接作業が行われており、溶接の火花が事故を引き起こしたのではないかという推測がある。しかし、溶接であれば、アルミニウム製ドーム型内部浮き屋根式タンクの浮き屋根付近で溶接工事が行われていたことになり、死傷者が出ていないことを考えれば、原因としては考えにくい。
■ アルミニウム製ドーム型内部浮き屋根式タンクの火災事故としては、 2016年8月に起こった「中米ニカラグアで原油貯蔵タンク火災、ボイルオーバー発生」の事故に類似しているように思う。事故の経緯はつぎのように推測する。
● アルミニウム製ドーム型内部浮き屋根式タンクの浮き屋根上で可燃性混合気が形成し、何らかの引火要因で爆発が起り、引き続いて火災となった。
● 火災が拡大し、アルミニウム製ドームルーフが焼損するとともに、内部浮き屋根が沈下または部分的に沈下し、(障害物あり)全面火災のような状況に至ったものと思う。アルミニウム製の簡易型浮き屋根(浮き蓋)であれば、容易に内部浮き屋根が沈下することはあり得る。
● 当初は消火活動を実施していたが、手がつけられないほど火災が続き、消火を断念し、燃え尽きる判断をしたものと思う。こうして、45時間を経過して火災は燃え尽き、鎮火したとみられる。
■ 直径約29mのタンクの全面火災であれば、日本の法令では、大容量泡放射砲システムは必要でなく、三点セット(最大放水能力3,000リットル/分)で良いことになっている。 現地では、大型化学消防車が数台配置され、消火活動を行っている。直径34m以下のタンクであっても、全面火災になれば、大容量泡放射砲システムが必要になる事例である。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Tankstoragemag.com, Large fire at Apapa tank terminal
extinguished, November 09, 2020
・Today.ng, Lagos tank farm fire finally extinguished after 69
hours, November 07, 2020
・Nairametrics.com, Tank farm in Iseri Iganmu reportedly on fire, November 05,
2020
・Energyvoice.com, Fire strikes Oando tank farm in Lagos, November 05,
2020
・Guardian.ng, Panic as fire guts Oando tank farm in Lagos, November 06,
2020
・Melodyinter.com, Fire guts petrol tank farm in Apapa (video), November 05,
2020
・Autoreportng.com, Moment When Oando Tank Farm In Apapa Went On
Flames, November 06, 2020
・Nairametrics.com, Tank farm Fire: Incident will not disrupt product
supply, November 09, 2020
・Thisdaylive.com, Fire Guts Tank Farm in Lagos, November 06,
2020
・Dpr.gov.ng, OVH ENERGY DEPOT FIRE HAS BEEN CONTAINED, November 07,
2020
・Oraclenews.ng, OVH counts losses as tank farm rises in flames, November 05,
2020
・Thelagostoday.com, OVH Energy Appreciates Stakeholders for Combating
Gas Tank Inferno, Reassures Commitment to Safety of Residents, November 05,
2020
・Maritimefirstnewspaper.com, IJORA: Fire guts product tank farm,
prompting OVH Energy’s investigation,
November 05, 2020
・Autoreportng.com, After 48hrs Of Fire, Oando Farm Fire Finally Put
Out In Apapa , November 07, 2020
・Slynewsng.com, Residents flee as OVH petrol tank farm razes for over
20 hours, November 06, 2020
・Theglittersonline.com.ng, Panic As Fire Guts Oando Tank Farm In
Lagos, November 06, 2020
後 記: 10月はタンク火災事故が多かったですが、その後、事故情報を聞きません。コロナ禍で報道が縮小していますので、事故が無くなったというより、事故情報が発信されなくなったと思っています。そのような中、アフリカのタンク火災の情報が出てきました。アフリカ最大の街のひとつにおけるタンク火災が3日にわたって続いた割にローカルなニュース扱いでした。そこで、ナイジェリアのコロナ感染状況を調べてみました。5月から6月にかけて感染者が増え、1日790人を記録しましたが、その後、100人前後に低下しました。しかし、最近、また200人を超え、増加傾向にあるようにみえます。日本の東京か大阪くらいの感染状況です。メディアの取材は抑制的で、今回の事故でも、ドローンによる映像など被災写真が無ければ、事故の緊迫感は伝わらなかったでしょう。
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