2020年7月20日月曜日

米国テキサス州の原油生産関連施設のタンク16基が火災

 今回は、2020年4月29日(水)、米国テキサス州コールドウェル郡ロックハートの南にある原油生産関連施設で16基のタンクが火災になった事故を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 事故があったのは、米国のテキサス州(Texas)コールドウェル郡(Caldwell)ロックハート(Lockhart)の南にある原油生産関連施設である。


■ 発災があったのは、ロックハートのヤング・レーン1200ブロック近くの原油生産関連施設内にある16基のタンクである。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2020429日(水)午前716分頃、石油生産関連施設のタンクに落雷があり、またたく間に制御できないような火災になった。


■ テキサス州のロックハート近辺では遠く離れているにもかかわらず、タンク火災の炎が見えた。


■ 現場近くの住民のひとりは、以前、通信塔に落雷があったので、今回も同様だろうと思ったという。家の前に立ち止まった隣の人の話でタンクに落雷したということが分かった。窓の外を見て、原油生産関連施設のタンクが火災になっているのを見た。住民は消防へ通報をするとともに、よく見えるようにドローンを飛ばした。その映像で激しく火災になっているのがはっきり分かった。


■ 当日、朝早くから嵐が通過し、6,000回以上の落雷が発生し、ある時点では、近隣の14郡で雷雨警報が出ていた。


■ 発災に伴い、ロックハートにあるミッドカウンティ消防署(Mid-County Fire and Rescue Department)が出動した。現場に到着したときには、タンク群は火に包まれていた。しかし、タンクのまわりには、防油堤が設置されており、堤外に火災や油が流出するおそれはなかった。 


■ 午前9時頃に火災の勢いが弱まった。午前11時頃には、火が出ているタンクは2基だけになっていた。


■ 4月29日(水)の夕方までには火災は消えたが、夜になってもくすぶっており、消防士が監視した。


■ 発災に伴う負傷者はいなかった。


■ 現場は幹線道路から少し離れており、アクセス道路があったので、幹線道路は影響を受けなかった。


■ ドローンで火災の状況を撮影した住民はフェースブックで映像「OilTank Fire off of Young Lane」を投稿した。

 ( https://www.facebook.com/hodge.paul/videos/3041111919269009/

被 害

■ 原油生産関連施設内のタンク16基が損壊した。


■ 事故に伴う負傷者の発生はない。


■ 幹線道路の交通制限は無かった。

< 事故の原因 >

■ 事故の原因は落雷である。


< 対 応 >

■ テキサス鉄道委員会、コールドウェル郡危機管理庁、コールドウェル郡内の3つの隣接消防署が対応に派遣された。

補 足

■「テキサス州」(Texas)は、米国の南部に位置し、人口約2,900万人の州である。

 「コールドウェル郡」(Caldwell)は、テキサス州の中央部に位置し、人口約38,000人の郡である。

 「ロックハート」(Lockhart)は、コールドウェル郡の中央部に位置し、人口約12,600人の郡庁所在地の市である。


■ 発災した「原油生産関連施設の所有者」は報じられておらず、分からない。


■ 「発災タンク」は16基という基数だけで、あとの詳細仕様は報じられていない。グーグルマップで調べると、発災場所には、確かに16基のタンクがある。うち2基は他の14基と異なるタイプのように見える。タンクの配置から見て、塩水処理設備の塩水タンクと思われ、FRP製だとみられる。しかし、発災後4時間を経過した時点で、2基だけがまだ火が出ていたというので、この2基は油用の鋼製タンクではないかと思う。鋼製タンクであれば、火災になっても原形を残して建っているはずであるが、被災写真はタンク群全体が炎に包まれ、その判別がつかない。

 発災タンクの大きさであるが、グーグルマップによると、タンクの直径は約4.8mなので、高さを約7mとすれば、容量は約126KLとなる。従って、直径約4.8mの容量100KL級のタンクが配置されていたとみられる。

 なお、発災タンクまわりには、土盛り製でなく、コンクリート製の防油堤が設置されている。

所 感

■ 今回の事故は、油混じりの塩水タンクが落雷で火災になったものとみられる。塩水タンクはFRP製であり、火災になれば、座屈していき、隣接タンクへつぎつぎと延焼していくのは、事故例を見ても明らかである。

 ● 201311月、「米国ノースダコタ州の石油施設で爆発、タンク13基が被災」

 ● 2014年5月、「米国テキサス州カーンズ郡で落雷によるタンク爆発・火災」

 ● 2014年6月、「米国テキサス州アタスコサ郡で落雷によるタンク火災」

 ● 2019年2月、「米国ノースダコタ州で塩水処理施設のタンクが爆発・火災」

■ タンクのまわりには、防油堤が設置されており、堤外に火災や油が流出するおそれはなかったと報じられているが、事故前のタンク配置と被災写真を見比べると、明らかに一部は防油堤外に流出して火災になっている。発災タンクの近くに住宅地や水路はないようなので、樹木への延焼に気をつければよいと判断したのだろう。消火戦略は、不介入戦略をとったものと思われる。上記の火災事例では、消火泡が水路に入り、水質汚染の問題が出ることを配慮して、燃え尽きる戦略をとることが多い。今回のタンク火災も燃え尽きるのを待ったものと思う。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    ・Myhighplains.com、上映:2020年4月30日、落雷後にテキサス中央部の石油タンクが発火

     ・Kxan.com、ライトタンクが落雷した後のロックハート近くのファイアボール、16台のタンクが炎上、2020年4月29日

     ・Cbs6albany.com、テキサスの石油タンク火災の原因であると考えられている落雷、2020年4月30日

     ・Kvue.com、2020年4月29日、明らかな落雷後にロックハートで16基のオイルタンクが発火

     ・Firehouse.com、動画:TX消防士、16機の燃焼油タンクからのブレイズ、2020年4月30日



後 記: 今回は少し遅れた事故情報です。ところで、状況が詳しく伝えられていませんが、特にタンク火災の鎮火時間がはっきりしません。メディアによってバラバラです。発災から2時間の午前9時頃には火は見えず、煙だけになっているという報道、午前11時頃には2基のタンクから火が出ているという報道、夜になってもくすぶっており、消防士が監視しているという報道がありました。

 このバラバラの要因は、米国のメディアが現場主義でなく、伝え聞いた話をもとにしているからだと感じます。2・3年前から人をかけない傾向が現れ始めたところに、新型コロナウイルスの影響でますます現場主義から遠くなっていくように感じます。

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