2020年5月2日土曜日

兵庫県三田市で搬送タンクが落下して泡消火剤が流出

 今回は、2020年4月15日(水)、兵庫県三田市のモリタテクノス社三田工場で回収した泡消火剤の搬送タンクが落下して破損し、内部の泡消火剤の溶液が流出した事故を紹介します。
王子池(左フェンス奥)の沈砂槽から泡消火剤溶液の回収作業 (写真はKobe-np.co.jpから引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、兵庫県三田市(さんだ・し)の工業団地第二テクノパークにある(株)モリタテクノスの三田工場である。 (株)モリタテクノスは消防車の保守・点検を手掛ける会社である。

■ 発災があったのは、モリタテクノス社の三田工場の泡消火剤の搬送用タンクである。
          三田市テクノパークのモリタテクノス社付近 (写真はGoogleMapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2020年4月15日(水)午後9時頃、モリタテクノス社の三田工場で回収した泡消火剤の溶液約2,000リットルの入ったタンクがフォークリフトから落下し、内部の泡消火剤溶液が流出した。

■ 発災は、放水テストで使用した泡消火剤を搬送タンクへ回収後、溶液処理施設へフォークリフトで運搬中、タンクを落下して破損させたため、泡消火剤溶液が敷地内に流出した。泡消火剤は火災の消火作業に使われ、濃度は10分の1程度に薄められている。

■ 敷地内に流出した泡消火剤の溶液はスポンジに吸わして回収したが、一部は工場内の側溝に漏れた。側溝は社外の雨水系統に通じている。

被 害
■ 消火剤の搬送タンクが破損し、内部の泡消火剤の溶液約2,000リットルが敷地内に流出した。 

■ 一部が敷地外へ流れ、市の調整池の沈砂槽へ流入し、回収作業が必要になった。

■ 事故に伴う負傷者はいない。

< 事故の原因 >
■ 事故の原因は、不適切な搬送作業により、搬送タンクを落下させ、内部の泡消火剤の溶液を流出させた。

< 対 応 >
■ 翌4月16日(木)、三田市立ち合いのもと流出経路を確認したところ、泡消火剤溶液は地下埋設の雨水排水管を経て近くの王子池(調整池)沈砂槽に達していたため、同社は清掃業者を手配し、水を吸い上げて回収する作業を実施した。

■ 三田市は池の水を採取し、専門機関に水質検査を依頼した。

■ 4月18日(土)、 モリタテクノス社は同社のウェブサイトに事故の概要とお詫びを発表した。 
             王子池(調整池)と沈砂槽  写真はGoogleMapから引用)
補 足
■「兵庫県」は、近畿地方の西方に位置し、人口約546万人の県である。県庁所在地および最大の都市は神戸市(人口約152万人)である。
 「三田市」(さんだ・し)は、兵庫県の東南にあり、阪神地域の北に位置し、人口約110,000人の市である。
 「テクノパーク」は、正式には北摂三田テクノパーク(ほくせつさんだ・テクノパーク)といい、都市再生機構により開発された工業専用地域である。 パーク内には高速道路のインターチェンジがあり、大阪市街地に1時間あまりで行くことができ、また京都舞鶴港までも1時間あまりで到着でき、アクセスが良く、工場の立地条件はよい。
            三田市の周辺 (写真はGoogleMapから引用)
■「 ()モリタテクノス」は、消防車の保守・点検を手掛ける会社で、消防関連事業を展開する()モリタの関係会社である。 
         モリタテクノ社三田工場 構内に各種消防車両が見える (写真はGoogleMapから引用)
■ 石油に使用される「泡消火薬剤」は消防法やISO規格によって規定されており、成分構成による分類と定義を表に示す。
 沖縄県の在地米軍普天間飛行場で泡消火剤が基地外に流出して問題になったのは、泡消火剤に含まれる有害なPFOS(通称ピーホス)と呼ばれるペルフルオロ・オクタン・スルホン酸(有機フッ素化合物の一種)だった。このPFOSは、低分子化合物であり、高い親水性・親油性により界面活性能がよく、高い起泡性を持つことから消火剤(水成膜泡消火薬剤など)に使用される。
 今回の泡消火剤は、消防車の放水テスト関連で使用されるものと思われるが、泡消火剤の分類は分からないし、PFOS(通称ピーホス)と呼ばれるペルフルオロ・オクタン・スルホン酸を含むものかも不詳である。
 沖縄県の在地米軍普天間飛行場の泡消火剤の流出事故は、つぎのブログを参照。
■「搬送タンク」の仕様は分からない。2,000リットルの泡消火剤が入っていたというので、少なくとも直径2m×高さ1.5m程度で大きな容器ではないと思われる。

所 感
■ 今回の事故は、泡消火剤の流出という点で沖縄県普天間飛行場における事故と同じであるが、住民や報道メディアの関心の高さによって取扱い方に差があると感じた。有害なPFOS(通称ピーホス)と呼ばれるペルフルオロ・オクタン・スルホン酸(有機フッ素化合物の一種)の問題に関心があれば、沖縄の事故直後であり、事故の起こった時期は悪かったといえよう。

■ しかし、事故が起こった後の対応としては、今回の方が適切だったと感じる。
 ● 社外の調整池の沈砂槽に流入したことを市の立ち合いのもとで確認した。
 ● 汚染水の回収の対応をとった。
 ● 事故状況とお詫びを社のウェブサイトに掲載した。(発表は事故後3日目で、もっと早くすべきだった)
 事故が無いことに越したことはないが、事故が起こったときの異常事態対応はルールに則り、粛々とやれるようにしておかなければならないと思う。 

備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Kobe-np.co.jp,  工場から消火剤が流出 2千リットルのタンク、リフトから落下で,  April  17,  2020
    ・Morita-technos.com,弊社三田工場からの火災用消火溶液流出のお詫びとご報告,  April  18,  2020


後 記: 今回の事故は、沖縄県の在日米軍普天間飛行場における泡消火剤の流出事故についてインタネット情報を調べているとき、たまたま知ったものです。火災以外の通常時に泡消火剤が社外に流出するなんてめったに起こらないと思いますが、重なるものなのですね。
 消火剤メーカーのグループ会社ですので、 PFOS(通称ピーホス)と呼ばれるペルフルオロ・オクタン・スルホン酸の有害性や取扱い法はよく理解している(はず)と思いますので、放水テストで使用された泡消火剤にPFOSは含まれていないでしょう。 PFOSを含むものが製造できなくなって10年余、防衛省自衛隊でも泡消火剤の入れ替えの計画を発表しましたし、この動きは加速されていくでしょう。

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