2019年6月10日月曜日

千葉県市原市に消火ロボット・システムが実戦配備

 今回は、千葉県市原市消防局において2019年4月10日(水)に消防用ロボット・システムによる特殊装備小隊が編成され、その状況が5月24日(金)に公開された情報を紹介します。
(写真はCity.ichihara.chiba.jpから引用)
< 全国初!最新鋭の消防部隊発足!その名もスクラムフォース!>
■ 千葉県市原市では、2019410日(水)に消防ロボット・システムによる特殊装備小隊が編成され、その状況が524日(金)に公開された。

■ 開発の背景; 石油コンビナートにおける特殊な災害では、災害現場に近づけない課題があった。 その例としては、20129月の「日本触媒姫路製造所の爆発・火災事故」では、 死者1名(消防職員)、負傷者36名(うち消防職員24名)の大きな人的被害が発生した。消防庁消防研究センターでは、2014年に情報収集から放水活動までを自動・自律的に行える消防ロボット・システムの研究開発に着手した。
 注;日本触媒の事故は当ブログの「日本触媒でアクリル酸タンクが爆発・火災、死傷者37人」を参照。

■ 市原市に配備された背景; 総務省消防庁は、東日本大震災における市原市でのLPG貯蔵施設の爆発・火災や、姫路市の製造所での爆発火災の教訓を踏まえ、石油コンビナート等において特殊な災害が発生し、消防隊員が現場に近づけない状況において、災害の拡大抑制を行う消防ロボットシステムの研究開発を、2014年から5年計画で進めてきた。実戦配備型の消防ロボット・システムが完成し、国の無償使用制度により、全国で初めて市原市に配備された。
 注;市原市でのLPG貯蔵施設の爆発火災についてはつぎの当ブログを参照。

■ スクラムフォース車両概要; スクラムフォースは、飛行型偵察・監視ロボット、走行型偵察・監視ロボット、放水砲ロボット、ホース延長ロボットおよび指令システムで構成され、すべてが1台の車両に積載されている。それぞれのロボットが自律的に活動し、収集したデータを指令システムが解析して消防隊員に最適な消防活動を提案してくれる。
 ● 開発した各ロボットの概要の映像は、YouTube「消防ロボットシステムを開発…消防庁」を参照。
消防ロボットシステムの活動イメージ 
写真はCity.ichihara.chiba.jpから引用)

■ 飛行型偵察・監視ロボット「スカイ・アイ」(開発;消防研究センター、AileLinx

● 最初に現場上空を飛行し、災害の状況や放水砲ロボットが走行できる経路の状況を偵察する。
● 放水開始後には、放水の軌跡を上空から撮影し、目的の場所に放水が到達しているかを監視する。
● 二重反転機構による安定した飛行を実現し、自動離着陸により飛行できる。
● 主要仕様:
  機   体; 長さ1.5m×0.5m×高さ1.0m プロペラ径2.5m、質量 69kg
  飛行方式; 同軸二重反転(上下のプロペラが逆向きに回転)、バッテリーによるモーター駆動
  最高速度; 時速約60km(秒速16.0m)(マニュアル操作時)、時速約15km(秒速4.0m)(自律飛行時)
  搭載機器; カメラ、熱画像カメラ、可燃ガス検知器、放射熱量計
  情報伝送; 無線
  制御センサ; 高精度GPS、移動速度および向きを計測するセンサなど
  自律機能; 地図上の指定位置まで飛行。飛行中に2台のカメラを常に目標物を撮影 (ジンバル機構搭載)
  機体性能; 耐輻射熱8.0kW/㎡  耐風性能12m/s 飛行時間13分間(1飛行当たり)
         (輻射熱に強く、複雑な気流の中でも安定して飛行でき、自動飛行が可能)
         (テールローターの無い、いわゆるドローン型で、プロペラによる風は本体を冷やすように設計されている)
● 飛行状況の映像は、YouTube「消防用飛行型偵察・監視ロボット 自動離陸」を参照。
(写真はPc.watch.impress.co.jpから引用)

■ 走行型偵察・監視ロボット「ランド・アイ」 (開発;消防研究センター、三菱電機、東北大学)

● 飛行型偵察・監視ロボットからの情報を参考として、放水砲ロボットが走行できる経路を先に自律走行し、経路および災害の状況をより詳しく偵察する。
● 放水開始後には、放水軌跡を横から撮影し、目的の場所に放水が到達しているかを監視する。
● 走行型ロボットとして先行して現場に入るため、走行経路に障害物が飛散していることも考えられるため、 車輪およびキャタピラの2つの走行方式を備え、状況に応じて使い分ける。(車輪:高速で自律走行精度が高い。 キャタピラ:障害物踏破性能が高い)
● 主要仕様:
  機   体; 長さ1.4m×0.9m×高さ1.8m (アンテナ等を含む)、質量285kg
  走行方式; 車輪走行:後輪駆動・前輪操舵、キャタピラ:左右の速度差により方向転換
  駆動方法; バッテリーによるモーター駆動
  最高速度; 時速約5.5km(秒速1.5m
  搭載機器; ロボットハンド、カメラ、熱画像カメラ、燃焼ガス検知器、放射熱量計
  情報伝送; 無線(中継器を搬送設置)
  制御センサ; 高精度GPS、回転式レーザー距離計、車輪回転計、移動速度および向きを計測するセンサなど
   自律機能; 地図上の指定位置まで走行
  機体性能; 耐輻射熱8.0kW/㎡、段差乗越え可能高さ40cm、電子地図生成機能

■ 放水砲ロボット「ウォーター・キャノン」 (開発;消防研究センター、三菱重工業、深田工業、東北大学)

● 世界最高レベルの耐熱性を有する。
● 切替式ノズルで3つの放水を可能とした。(広角放水・セミアスピレート泡放射・ストレート放水)
● 偵察・監視ロボットが得た情報をもとに自律走行して放水位置まで移動し、風の状況を勘案し、放水到達目標位置への最適なノズルの方向を設定する。
● 風の変化などによる放水の外れが出れば、放水を監視している偵察・監視ロボットが得ている情報をもとに、ノズルの向きを修正する。
● 主要仕様:
  機   体; 長さ2.3m×1.4m×高さ2.1m 質量1,700kg
  走行方式; 4輪駆動・前輪操舵
  駆動方法; バッテリーによるモーター駆動
  最高速度; 時速7.2km(秒速2.0m
  搭載機器; カメラ、熱画像カメラ、可燃ガス検知器、放射熱量計、風向風速計
  情報伝送; 有線
  制御センサ; 高精度GPS、回転式レーザー距離計、車輪回転計、移動速度および向きを計測するセンサなど
  自律機能; 地図上の指定位置まで走行、放水目標位置への最適なノズルの制御(上下左右角度)
  耐輻射熱; 20kW/㎡(自衛噴霧機構付)
                   (国内で最大級の火災を想定した場合の活動可能位置の距離と放射熱は表を参照)
(表はRise-nippon.co.jpから引用)
  放水ノズル; 放水時 広角、ストレート
                       泡放射時 セミアスピレート 4,000ℓ/分、1.0MPa(有効射程70m
  その他性能; 電子地図生成機能
● 開発経緯と放水状況の映像は、YouTube「010」(深田工業)を参照。 
 (写真は、左; Emira-t.jp、右;Pc.watch.impress.co.jpから引用)

■ ホース展張ロボット「タフ・リーラー」 (開発;消防研究センター、三菱重工業、東北大学)

●  放水砲ロボットに自律的に追従し、放水位置まで移動する。
  (堅牢な足回りで高い走破性を持つ農業用小型バギーを改造した専用車体にGPSやレーザーセンサーを搭載し自律制御可能な移動台車とした)
● 水源(ポンプ)方向へ自律走行する。移動中にリールを制御し、消防隊員が活動可能な安全な領域まで、直径150mmの大口径ホースを300mまで自動繰り出しができる。
● ロボット本体だけでなく、高耐熱性能を有するホースを装備している。
● 主要仕様
  機   体; 長さ2.4m×幅1.7m×高さ2.1m、質量2,800kg
  走行方式; 4輪駆動・前輪操舵
  駆動方法; バッテリーによるモーター駆動
  最高速度; 時速7.2km(秒速2.0m)
  搭載機器; カメラ
  情報伝送; 有線
  制御センサ; 高精度GPS、回転式レーザー距離計、車輪回転計、移動速度および向きを計測するセンサなど
  自律機能; 地図上の指定位置まで走行。150mmホース延長敷設。先行車追従自律走行
      (曲がり角を含む目的の経路上に、硬くて重い(2kg/m)ホースを適切に敷設できる
       よう、ロボットの走行に合わせてリールを自動制御してホースの送り出しと
       巻き取りを実現した。高耐熱性能を持つホースも新たに開発した)
  耐輻射熱; (放水砲ロボットに準ずる)
  搭載ホース; 口径150mmホース×300m(高耐熱性能の新たに開発)
  その他性能; 電子地図作成機能
(写真は、左;Rise-nippon.co.jp、右;Pc.watch.impress.co.jpから引用)

■ 指令システム (開発;消防研究センター、三菱重工業、三菱電機)
 消防ロボットシステムの自律および協調連携という高度なロボット制御を行う中心的システムである。
● 各ロボットから伝送される画像や計測データを解析し、各ロボットの活動を消防隊員に提案する。
● 消防隊員の判断にもとづき、各ロボットに活動指令を伝送する。
● 指令システムは搬送車両のコ ンテナ内に設置している。
● ロボットの遠隔操縦も可能である。
● 主要仕様
  構成; ディスプレイ32インチ、27インチ×
       メインPC + ラップトップPC×
       GISエンジン(SIS社製)
       ディスプレイの録画機能
       UPS 3.0KVA(10分間)
  機能; 放水位置自動算出システムおよび画像処理による着水位置推定システムを搭載している。
       飛行型および走行型偵察・監視ロボットへの指令部分はそれぞれ取外し可能で、
       自律機能を含め、単体での運用も可能である。
(写真はCity.ichihara.chiba.jpから引用)

■ 搬送車両 (開発;消防研究センター、三菱重工業、三菱電機)
● 消防ロボットシステムの搬送だけでなく、消防ロボットシステムの中心的な拠点の役割を担えるつくられている。
● 発動発電機を搭載しているので、外部給電無しで、消防ロボットシステムの稼働が可能である。
● フックロール機構によりコンテナを積み卸しできる。
● 主要仕様
  シャシー; 10トン車両
  車 体; 長さ11.4m×2.5m×高さ3.8m (コンテナ下降時全長18.8m)、質量 25,300kg(各ロボット積載状態時)
  変速機; ATMTモード有)
  発動発電機; 40KVA、単相100V200V、三相200V
  装備品; AVM(車両動態管理システム)、消防無線、全国対応ナビなど
  コンテナ; 長さ7.61m×幅:2.44m×高さ:2.58m
● フックロール機構によるコンテナやロボットの積み卸し状況の映像は、YouTube「三菱重工消防ロボット 実戦配備型機」を参照。
(写真はCity.ichihara.chiba.jpから引用)

< 日本のメディアによる記事の例 >
■ 2019年6月5日(水)、「毎日新聞」はつぎのように報じている。
 ● 石油化学コンビナートなどの特殊災害に対応する消防用ロボットを全国で初めて実戦配備した市原市消防局は、5月24日(金)、八幡消防署に消防ロボットシステム部隊「スクラムフォース」(隊員11人)を発足させた。
 ● 同市では、2011年の東日本大震災の際、石油化学コンビナートのLPG貯蔵施設が爆発炎上し、消火活動が手間取った経験がある。消防庁は、こうした特殊災害の教訓を生かすため、消防ロボットシステムの研究開発を2014年から民間企業と進めて来た。

■ 2019年3月22日(金)、パソコンなどのテクノロジー情報を配信している「PC Watch」はつぎのように報じている。
 ● 消防庁は2019年3月22日、石油コンビナート等の大規模火災時のために開発している消防ロボットの実演を、東京都・調布市にある消防庁消防大学校消防研究センターで公開した。総務省消防庁が「エネルギー・産業基盤災害対応のための消防ロボットシステムの研究開発」として2014年度から5年計画で開発中のロボットシステムで、複数のロボットから構成されている。消防隊員が現場に近づけない状況で災害の拡大抑制を行う「実戦配備型の消防ロボットシステム」だという。
 ● ロボットは「飛行型偵察・監視ロボット」、「走行型偵察・監視ロボット」、「放水砲ロボット」、「ホース延長ロボット」、そして「指令システム」で構成される。各ロボットは自律技術、協調連携技術、耐放射熱技術を活用しており、1台の車輌に積載して出動する。いずれもロボットが銀色なのは熱を反射させるための布で覆われているからだ。95%の熱を反射することができ、透過してくる残り5%の熱も今回開発した特殊な自衛噴霧機構で処理できるという。
 ● 「放水砲ロボット」は、放水または泡放射を行うノズルを備え、1分間に4,000L、圧力1.0MPaで放射できる。放水口は特殊形状で、中心部を泡、周辺部を液状で放射する「セミアスピレート泡放射」をすることで目標に届きやすい泡水流を放出することが可能である。
 ● 「ホース延長ロボット」は、画像認識を使って前を走行する放水砲ロボットに自動追従するロボットである。口径150mmの消防用ホースを最長300m搭載可能である。曲がり角を含む目的の経路上に、硬くて重い(2kg/m)ホースを適切に敷設できるよう、ロボットの走行に合わせてリールを自動制御してホースの送り出しと巻き取りを実現した。高耐熱性能を持つホースも新たに開発した。
 ● この2つのロボットは、堅牢な足回りで高い走破性を持つ農業用小型バギーを改造した専用車体にGPSやレーザーセンサーを搭載して自律制御可能な移動台車としたものである。互いに消防用ホースを接続した状態で、自動運転によって火元へ向けて走行できる。
 ● 今回のロボットの耐熱性能は、日本で最大の石油コンビナートで大火災が起きたときに50m程度離れたところで計測される発熱量から決められた。石油コンビナートのタンク火災は、通常、「リング火災」だが、その浮いている屋根の部分が沈んでしまうと、直径100mの油の池が燃える全面火災も起こり得る。そのときの熱量と射程から、20kW/㎡という値を決めたとのことである。

■ 2019年4月24日(水)、「読売新聞」はつぎのように報じている。
 ● 総務省消防庁は、人が近づけない危険な現場で消火活動を行う「消防ロボットシステム」を開発した。空撮や地上探索、放水などをそれぞれ担う複数のロボットを連携させ、人工知能(AI)で制御する仕組みだ。石油コンビナートなどで起きる大規模火災での活用を想定しており、量産化に向けて同庁は今年度、1セットを千葉県市原市消防局に配備し、改良点を検討する。
 ● 開発のきっかけは、2011年3月の東日本大震災だ。市原市の製油所でLPG(液化石油ガス)タンクが連続爆発し、高温の現場に消防隊員は入れず、対応が後手に回った。この火災を教訓に2014年度から、同庁は約13億8,000万円を投じて開発を進めてきた。

■ 2019年3月22日(金)、「日本経済新」聞はつぎのように報じている。
 ● 消防庁は3月22日(金)、工場の石油タンクなどの大規模火災向けロボット消防システムを都内で公開した。偵察用のドローンや放水するロボットなど4台が連携し、人の代わりに危険を伴う現場の消火活動にあたる。2019年度から千葉県市原市の消防局に配備し、有効性を確かめながら活用を進める。
 ● ドローンやロボットの指示は指令機能を備える車両から行う。ロボットから伝送される画像や測定データを指令システムが解析し、適した移動ルートや放水位置を自動で導き出して提案する。消防隊員の最終的な判断に基づき、各ロボットに指令を伝送して消火活動をする。  

■ 2019年3月22日(金)、「千葉日報」はつぎのように報じている。
 ● 総務省消防庁は、石油コンビナート火災など人間が近づきにくい現場に出動する「ロボット消防隊」を開発した。4種類のロボットが連携し、現場の状況把握から放水までを担うことが可能で、3月22日(金)に消防研究センター(東京都調布市)で報道関係者を前に実演した。
 ● 消防隊は、①上空から偵察、②地上で情報収集、③自走して地上から放水、④送水ポンプから放水現場までホースをつなぐ4種類のロボットと、指令システムで構成。1台の車両に全てを収容できる。
隊員は安全な場所に止めた車内にある指令システムの画面で、偵察機から送られてくる映像や周辺温度を確認する。

■ 2019年5月24日(金)、「NHK」はつぎのように報じている。
● 大規模な火災が発生した石油コンビナートなど人が近づけない危険な現場で複数のロボットが連携して消火に当たるシステムが、全国で初めて千葉県市原市の消防局に配備された。
● 8年前の東日本大震災では市原市の製油所で火災が発生し、消防隊員が近づいて消火できなかったため10日間にわたって燃え続けた。消防ロボットシステムは、こうした事態を教訓に、総務省消防庁などが開発したもので、全国で初めて市原市消防局に配備されて、5月24日(金)、部隊の発足式が行われた。
● 「ドローン型ロボット」と「偵察ロボット」が、上空と地上から状況を確認して、消火の必要な場所を判断し、障害物を避けて現場に近づけるルートを探る。その情報を基に「放水ロボット」が現場に向かい、風向きなどを考慮したうえで最大で1分間に4トンの放水を行って延焼を防ぐという。放水ロボットは500℃の熱にも耐えられるため、火元に接近して効果的に活動することが期待されている。

< 海外のメディアによる記事の例 >
■ 2019年6月4日(火)、英国の「ファイヤー・ダイレクト」(Firedirect)はつぎのように報じている。 
(写真はFiredirect.netから引用)
 ● JXTGエネルギー社の千葉製油所で披露された“スクラム・フォース”は、4台のロボットで構成され、上空から監視し、ホースを展張したり、放水砲で放射できる。
 ● このシステムは、消防士による活動が難しい危険な場所でも火災との戦いができるようになる。
 ● 関係者を含む約400名が、JXTGエネルギー社の千葉製油所でシステムのユニットを設置する式典に出席した。式典では、消防ロボットのデモンストレーションが行われた。
 ● システムは4つのロボットから成り立っている。すなわち、上空からの観測と監視を行うロボットの“スカイ・アイ”(Sky Eye)、地上の監視ロボットの“ランド・アイ”(Land Eye)、ホースを配置するロボットの“タフ・リーラー”(Tough Reeler )(これはホースの展張を行う)、それに放水を行うロボットの“ウォータ・キャノン”(Water Cannon)の4つである。
 ● ユニットは“スクラム・フォース”と名付けられた。これは各ロボットのそれぞれの能力を結合し、スクラムを組んで仕事を行うことを意味する。
 ● ユニットの開発は、2011年東北地方太平洋沖地震のあと、市内にある石油コンビナートで起こった火災をきっかけに行われた。当時、消防士は高温のため火災に近づくことができなかった。
 ● この問題に対処するため、総務省消防庁は、5年の期間と13億8千万円をかけて消防ロボット・システムの開発を行ってきた。この装置は、市原消防局の八幡消防署に保管されることになっている。
 ● 消防庁は、全国の工業地帯の消防署にロボット・システムを配備する計画である。市原市でロボット・システムを実際に運用して改善を行い、配備地域を考慮することなる。
 ● 式典時に、ユニットの名前とロボット・システムが発表され、消防庁黒田長官からユニットのリーダーへ旗が授与された。続いて、ロボットによる現場監視から放水までの一連の活動が披露された。黒田長官は、「システムを活用し、以前より消防活動がより迅速に且つより的確に実行されるようになることをユニットに期待する」と述べた。
 注;この記事は、日本の読売新聞系の英字新聞である「ジャパン・ニュース」(Japan News)から転載されたものである。

■ 2019年6月5日(水)、ロボット情報の「エールロボット」(YeelRobot)はつぎのように報じている。
 ● 2011年、東日本は大地震に見舞われた。この地震は、日本国内で記録された中で最も激しいものであり、最大133フィート(40m)の高さに達する巨大な津波を引き起こした。また、大規模な火災の要因にもなり、そのうちのいくつかは石油コンビナートで起こった。炎による高温のため、消防士は多くの火災に近づくことができなかった。消防当局は解決策の検討を始めた。この解決策が消防用ロボットを活用するものだった。JXTGエネルギー社千葉製油所で最近行われた式典の中で、「スクラム・フォース」と呼ばれる新しい消防隊が発表された。
 ● 「スクラム・フォース」は4つのロボット系から成り立っている。上空監視用のドローンは空から観測する一方、地上用ロボットは陸上での監視をする。これらの監視用ロボットは、ホース展張用ロボットと放水砲を行うロボットと通信で結ばれている。ロボットは火災に対してもっとも効率的に攻撃するよう同調して仕事をする。
 ● この日本の新しい消防システムの開発のため、5年の期間と1,300百万ドル近くかかった。 「スクラム・フォース」は市原消防局の八幡消防署に保管されることになっている。日本の消防庁は全国の工業地帯の消防署にロボット消防士を配置することを計画している。

■ 2019年6月4日(火)、中国の「環球時報」(环球时报)はつぎのように報じている。
 ● 日本の報道によると、日本初の消防ロボットシステムが、沿岸部に工業地帯のある千葉県市原市の市原消防署に配備される。システムは、消防士が火災時に近寄ることの難しい危険な場所で消火活動を実施する。
 ● 関係者を含む約400人がJXTGエネルギー社千葉製油所で行われた式典に出席した。式典ので消防ロボットシステムは、現場での監視から放水までの一連の活動を実演した。消防庁黒田長官は、「これまで以上に迅速で完全な消防活動を行うためにこのシステムを活用することができることを願っている」と述べた。
 ● 報道によると、システムは4つのロボットから構成されている。上空からの監視を行う“スカイ・アイ”(天眼)、地上の監視を行う“ランド・アイ”(陆眼)、ホースを展張を行う“タフ・リーラー”(延伸软管)、放水を行う“ウォータ・キャノン”(水炮)の4つである。
● これらの装置は、2011年東北地方太平洋沖地震のあと、市内にある石油コンビナートで起こった火災をきっかけに開発が行われた。当時、消防士は高温のため火災に近づくことができなかった。

所 感
■ 生産現場をはじめ、いろいろな分野でロボットが活躍をする時代になり、消防設備分野でも消火用ロボットが現れた。ずいぶん前から開発され、インターネットでも状況が紹介されていたが、やっと実戦配備されたことに意義がある。日本では、創造的な開発は苦手であるが、今回のような既存設備の“カイゼン”は得意とするところであり、今後の進展に期待したい。

■ 今回の消火用ロボットを見ると、搬送車両に全部入れることを意識したと思われ、消火能力は放水ノズルが4,000リットル/分で、大型化学消防車(三点セット)の約3,000リットル/分より大きいが、大容量泡放射砲システムの最小能力10,000リットル/分には及ばない。従って、直径34mを超えるタンク全面火災には活用できない。放水能力を大きくしないと、タンク火災の積極的消火戦略(オフェンシブ)に活用するには限界がある。
 一方、防御的消火戦略(ディフェンシブ)には活用できる場は多いと思う。もともと開発のきっかけになった事例が、LPGタンク火災と重合反応に関わる事故であり、人が近づけない発災現場の冷却作業である。実戦配備では、石油コンビナートの火災に限定することなく、一般建物の火災でも出動し、現場での活動を通じて新たな“カイゼン” を指向していくことを望む。

■ 世界では、消防用ロボットがすでに導入されはじめている。2019年4月19日(金)に衝撃を与えたフランスの世界遺産であるノートルダム大聖堂の火災では、数機のドローンと1台の消火用ロボットが投入され、貢献したことが報じられている。これに使われた消火用ロボットは、YouTube「ROBOTCOLOSSUS EN ACTION」を参照。  

備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・City.ichihara.chiba.jp, 全国初!!最新鋭の消防部隊発足!その名もスクラムフォース!!!,June  06,  2019
      ・City.ichihara.chiba.jp, エネルギー・産業基盤災害に対応する 消防ロボットシステムを全国で初めて配備,April  16,  2019
      ・Yomiuri.co.jp, 危険な消火活動、まかせて!ロボットが放水,  April 24,  2019
      ・City.ichihara.chiba.jp, 「消防ロボットシステム部隊(仮称)」の発足式,May  14,  2019
      ・Mainichi.jp, 消防ロボット部隊が発足 ドローンや放水砲で備え 千葉・市原,   June 06,  2019
      ・Nikkei.com, 消防庁、大規模火災向け消火ロボ 19年度から配備 ,  March 22,  2019
      ・Chibanippo.co.jp, 「ロボット消防隊」お披露目 コンビナート火災で出動,  March 22,  2019
      ・Nhk.or.jp, “消防ロボット” 全国で初めて配備 千葉 市原,  May 24,  2019
      ・Firedirect.net,  Japan – First Firefighting Robots Deployed at Oil Refinery, June 04,  2019
      ・Yellrobot.com,  Japan Deploys First Firefighting Robots,  June 04,  2019
      ・Aqsc.cn, 日本部署首套消防机器人,可代替消防员进入危险现场,  June 04,  2019
      ・Pc.watch.impress.co.jp, 消防庁、大規模火災に対応する消防ロボットシステムを開発 複数種類のロボットで構成,  March 22,  2019
      ・Rise-nippon.co.jp, 注目の消防車両 CLOSE-UP! 消防ロボットシステム,  May 22,  2019
      ・News.searchina.net, 災害救助にも大いに生かされる日本のロボット技術、初のロボット消防隊も誕生,  June 04,  2019
      ・Roboticsandautomationnews.com, Mitsubishi develops autonomous firefighting robots,  March 28,  2019
      ・ Ctif.org,  See video of the firefighting robots that helped extinguish the Notre Dame fire,  April 17,  2019



後 記: 実は今回の情報を初めて知ったのは、タンク火災事故を調べるために英国の「ファイヤー・ダイレクト」(Firedirect)を検索して、日本で消火用ロボットが実戦配備されたという記事を読んだからです。日本のメディアによる記事を調べると、5月24日(金)の式典が市原市のウェブサイトのほか、いろいろな報道メディアから報じられていました。このほか、3月22日(金)に公開された消火用ロボットの完成披露を伝える記事がありました。さすがに官庁からのプレス・リリースなので、多くの報道メディアが出席していたようで、たくさんの記事がありました。
 今回の情報はタンク火災事故ではないし、また論文でもないので、どのようにまとめようかと迷いました。特に、報道メディアの記事をどう扱うかでした。結局、消火用ロボットの仕様についてはプレス・リリースの内容を主としてまとめ、報道メディアがどのように報じているのかを抜粋し、プレス・リリースに書かれていないプレゼンでの内容を付加することにしました。今回、改めて消火用ロボットについて調べてみると、フランスのノートルダム大聖堂火災で活用された消火用ロボットのほか、中国での開発が目立ちました。このパターンはAIの開発と同じだと感じました。

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