2018年5月23日水曜日

東ソー南陽事業所の特別高圧変電所で感電事故

 今回は、2018年4月6日(金)、山口県周南市にある東ソー南陽事業所の特別高圧変電所で起こった感電事故を紹介します。
< 発災施設の概要 >
周南市と東ソー南陽事業所の位置
(図はTosoh.co.jpから引用)
■ 発災があったのは、山口県周南市にある周南コンビナートの一社である東ソーの南陽事業所である。

■ 事故があったのは、東ソー南陽事業所の第3特高と呼ばれる特別高圧変電所である。
東ソー南陽事業所
(写真はTosoh.co.jpから引用)
<事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2018年4月6日(金)午前10時35分頃、南陽事業所において爆発音のような大きな異音が発生するとともに所内の一部が停電した。 

■ 東ソーによると、自家発電所(動力プラント)から各プラントに電気を送る特別高圧変電所で、電気が地面に流れ出る「地絡」が発生したという。発災当時、作業に当たっていた請負会社の男性(20歳)が感電し、全身やけどの重傷を負った。

■ 当時、変電所では4人が作業に当たっており、火傷を負った男性はボイラーの配電盤に関わる作業を行っていて、何らかの原因で通電していた箇所に接触し、感電したとみられている。男性は病院に搬送されたが、意識はあるということである。

■ 自家発電所は緊急停止に伴う安全装置が作動し、高圧蒸気を外に放出するため、一時的に大きな異音がおよそ1時間半にわたって鳴り響いた。電力供給を受ける関連プラントも安全に停止した。東ソーでは、この事故に伴う有害物質の漏れは無く、周辺住民に避難の必要はないという。

被 害
■ 人的被害として負傷者1名(感電による火傷)が発生した。

■ 物的被害や生産・出荷への影響は調査中(公表されていない)

■ 有害物質の漏洩はなく、環境への影響はない。 

< 事故の原因 >
■ 事故の原因は、男性の持っていた金属製メジャーが電線にある碍子(がいし)と呼ばれる部品に接触し、電気が地面に流れ出る地絡が発生した。

■ 事故の発生時には作業を監視する担当が不在で、東ソーは作業員への研修を徹底するなど再発防止に努めるとしている。

< 対 応 >
■ 4月10日(火)時点、東ソーは運転を停止していた構内にある15施設の稼働を再開したと発表した。残りの5施設も稼働準備中で、4月19日(木)に全面復旧するという。

■ インタ-ネットでは、東ソーで塩酸タンクが爆発したというフェイクニュースが流れた。

■ 東ソーは、5月14日(月)までに原因をまとめた報告書を経済産業省などに提出した。事故原因は、男性が持っていた金属製メジャーが、電線にある碍子と呼ばれる部品に接触したと推定している。事故の発生時に、作業を監視する担当が不在で、東ソーは作業員への研修を徹底するなど再発防止に努めたいとしている。  

補 足
■ 「周南市」は、山口県の東南部に位置し、人口約144,000人の市である。2003年4月「平成の大合併」で徳山市、新南陽市、熊毛町、鹿野町の2市2町のよる合併でできた新しい市である。1980年代後半から
周南地域における市町の合併機運が高まり、下松市、光市、田布施町、大和町を含めた大合併が模索されたが、結局、 2市2町による合併で終わった。周南市の主要産業は重化学工業であり、旧徳山海軍燃料廠から発展した石油コンビナート(周南コンビナート)が形成されている。
周南コンビナートの基本イメージ
(写真はShunan-marketing.jpから引用)
■ 「周南コンビナート」の先駆けは、戦前に日本曹達工業が進出し、その後、徳山曹達、現在の()トクヤマに名称を変更した。東ソーの前身となる東洋曹達は、日本曹達工業の工場長が退職して旧新南陽市に設立したもので、この2社が現在の中核2社となった。その後、徳山海軍燃料廠の跡地に出光興産が進出し、当時日本最大規模の徳山製油所の建設に着手し、周南石油コンビナート形成の口火を切ることになり、続いて、日本ゼオン徳山工場が操業を始めた。

■ 「東ソー株式会社」は、1935年に設立した総合化学メーカーで、本店は周南市にあり、苛性ソーダ、塩化ビニルモノマー、ポリウレタン、石油化学事業や機能商品事業などをコアとして事業展開している。南陽事業所は、単一工場としては日本最大規模となる敷地面積(300万㎡)と自家発電設備(825,000kW)を有し、周南コンビナートの中核をなしている。 
 なお、東ソー南陽事業所では、つぎのような事故がある。
東ソー南陽事業所の配置
(図はTosoh.co.jpから引用)
 高圧変電所などの「感電事故」は少なくない。例えば、関東東北産業保安監督部東北支部による平成27年度電気事故事例(感電等死傷事故)によれば、4件が報告されている。いずれも、感電の怖さをよく知る電気工事士による感電事故である。原因は、装着していた安全帯の一部が接触したり、デジタルカメラの先端が接触したり、他の作業に集中して通電中であることが頭から抜けてしまったりというあとから考えれば、単純なミスである。
 厚生労働省では、職場のあんぜんサイトで「労働災害事例」をデータベース化し、感電事故防止のための啓蒙に努めている。例えば、今回と似た事例としては「キュービクル(受電設備)の高圧盤内をのぞき込んだとき、6,600Vの高圧線に触れて感電」がある。この背景にあるのは、電気は見えないものであり、感電を実体験していないことからきていると思う。
 電気工事士の知っている感電の怖さはあくまでも知識上のものである。この点、YouTubeに「感電事故を合成する!」が投稿されている。このような疑似体験を通じて感電を怖さを知るのもひとつであろう。

所 感
■ 今回の事例は、貯蔵タンクの事故情報と関係はないが、久しく聞いていなかった感電事故が地元企業で起こったので、調べてみると、意外に感電事故は少なくないことを知った。
 今回は、男性の持っていた金属製メジャーが電線にある碍子(がいし)に接触したという。おそらく、何かの寸法を計測しようとしたものではないかと思う。感電の怖さを知る事例である。このようなある種善意の行動による事故は何としても回避しなければならないと思う。


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
  ・Tosoh.co.jp,  南陽事業所における異音発生および感電事故について,  April 06,  2018
    ・Tysnewstime.jimdo.com, 山口県周南市・東ソー感電事故で1人重傷,  April 06,  2018
   ・Anzendaiichi.blog.shinobi.jp, 山口県周南市にある工場の変電所でボイラー配電盤の工事中、作業員が感電・・・,  April 06,  2018
   ・Tosoh.co.jp,  4/6(金)南陽事業所における事故後の生産再開状況について,  April  11,  2018
    ・Pujapan.com,  東ソー 南陽事業所で地絡・感電事故 1名負傷 全面復旧は4月19日,  April  12,  2018
    ・Yab.co.jp,  東ソー作業員の感電大けが事故で報告書提出,  May  16,  2018



後 記: タンク設備ではありませんでしたが、地元テレビで報道された感電事故というので、まとめることにしました。というのも、今回と類似の事例を知っているので、この種の人身事例を無くさなければならないという気がしたからです。当時火傷を負った本人の反省文は、迷惑をかけたこととともに、自分の経験をこれからの後輩に教えていくことを切々と語る心のこもったものでした。随分、昔のことですが、このことを思い出しました。今回の事例でも、被災者はまだ若い20歳の男性ですので、是非立ち直ってくれることを期待しますね。

 話は変わりますが、周南市は合併特例債によって徳山駅ビルに変わって今年(2018年)2月に周南市駅前図書館が完成し、Tsutaya運営の市立図書館や蔦屋書店、スターバックス、フタバフルーツパーラーができました。また、今年度には、市役所の新庁舎が完成します。周南市駅前図書館の評判は良いようですが、駅前のシャッター街になった町が活性化するかどうかは、これからの取組み次第でしょう。  
2018年に完成した周南市駅前図書館
写真は、左; Shunan.ekimae-library.jp 、右;Tabetainjya.com からの引用)
2018年に完成予定の周南市役所
(図はToshoken.comから引用)





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