2017年11月19日日曜日

ロシアのルコイル社の製油所でガソリン用タンク火災

 今回は、2017年10月5日(木)午前11時10分頃、ロシアのニジニ・ノヴゴロド州クストフスキー地区のクストヴォ区(Kstovo)にあるルコイル社系列のノルシ製油所で起ったガソリン用タンクの爆発・火災事故を紹介します。
(写真はNnov.kp.ruから引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、ロシアのニジニ・ノヴゴロド州(Nizhny Novgorod)クストフスキー地区(Kstovsky District)のクストヴォ区(Kstovo)にあるルコイル社(Lukoil)系列のノルシ製油所(Norsi Oil Refinery)である。

■ 発災があったのは、ノルシ製油所の貯蔵タンク地区にあるガソリン用タンクである。タンクの容量は10,000KLである。
ニジニ・ノヴゴロド州クストヴォ地区にあるルコイル社のノルシ製油所付近
(写真はGoogleMapから引用)
  < 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2017年10月5日(木)午前11時10分頃、メンテナンス作業だったガソリン用タンクで爆発が起き、続いて火災が発生した。目撃者によると、炎は約50mの高さに達し、製油所の上空には、大きな黒煙が立ち昇った。

■ 事故発生に伴い、消防署などの緊急対応部隊237名と消防車などの緊急車両50台が出動した。給水装置を備えたMi-8型ヘリコプター2機の出動準備も行われた。

■ ロシア緊急事態省によると、火災のエリアは10,000平方フィート(930㎡)に達したという。爆発して火災になったタンクのほか、別なタンクに延焼したとみられる。

■ 火災は2時間ほど続いたのち、消火されたと報じられている。

■ この火災事故に伴い、請負会社の作業員4名が死亡した。

■ 出動した緊急事態対応部隊によると、事故の原因は産業安全基準の違反による可能性があると語っている。
(写真はFrontnews.euから引用)
(写真はRussia.liveuamap.comから引用)
被 害
■ ガソリン用タンク内1基が焼損したほか、隣接のタンクが延焼する被害が出ていると思われる。被災の範囲や程度は不詳である。

■ 事故に伴い、死者4名の労働災害が発生した。

< 事故の原因 >
■ 事故原因は、ガソリン用タンクまわりの火気作業が要因とみられるが、詳細は分からない。

< 対 応 >
■ 近隣地域の空気質のモニタリングが行われたとみられるが、結果は報じられていない。 

(写真はFrontnews.euから引用)
(写真はNewsnn.ruから引用)
(写真はChelorg.comから引用)
(写真は5-tv.ruから引用)
(写真はRia.ruから引用)
補 足                                   
■ 「ロシア」は、正式にはロシア連邦で、ユーラシア大陸北部に位置する大統領制の共和制国家である。人口は約1億4,300万人で、首都はモスクワである。1991年、ソビエト連邦の崩壊によってロシア連邦が成立した。ロシア連邦は、ソビエト連邦構成国の連合体である独立国家共同体加盟国のひとつとなったが、ソビエト連邦が有していた国際的な権利(国連の常任理事国など)や国際法上の関係を基本的に継承して大国としての影響力を保持している。
 「ニジニ・ノヴゴロド州」(Nizhny Novgorod Oblast)は、ロシア西部の東ヨーロッパ平原中央部で、ヴォルガ川の中流域に位置し、人口約335万人の州(オブラースチ)である。州都はニジニ・ノヴゴロド市である。
 「クストフスキー地区」(Kstovsky District)はニジニ・ノヴゴロド州の中央部に位置し、人口約11万人の地区である。「クストヴォ」(Kstovo)は、クストフスキー地区の行政の中心になる地域で、人口約66,000人の町である。
            ロシアのニジニ・ノヴゴロド州の位置   (写真はJa.wikipedia.orgから引用)
■ ルコイル社(Lukoil)は、1991年に創業され、ロシア国内最大の国営石油会社のひとつで、原油・天然ガス生産、石油精製、石油販売にそれぞれの子会社を統括する石油企業である。
 クストヴォにある「ノルシ製油所」(Norsi Oil Refinery)は、精製能力29.2万バレル/日で、ルコイル社の傘下にある石油精製会社である。

■ 「発災タンク」は、容量10,000KLのガソリン用タンクであるが、そのほかの仕様はわかっていない。発災のあったと思われる貯蔵タンク地区をグーグルマップで調べてみると、直径が46m、34m、23mのタンクがある。直径46mは容量20,000KLクラス、直径約34mは容量10,000KLクラス、直径23mは容量5,000KLクラスであるので、直径34mのタンクが発災タンクと思われる。いろいろな角度からの発災写真があるが、タンクを特定できる確実な情報は無かった。一方、これら一連のタンクにはドーム式屋根がみられる。油種がガソリンであるので、内部浮き屋根式タンクまたは浮き屋根式タンクにアルミニウム製ドームルーフを設置したものではないかと思われる。
              ノルシ製油所の貯蔵タンク地区   (写真はGoogleMapから引用)
所 感
■ この事故の詳細は分からないことが多いが、発災写真を加味して類推すれば、つぎのとおりである。
 ● 「タンク内外の火気工事における人身事故を防ぐ7つの教訓」が活かされていない事例が続いているが、本件もそうだと思われる。
 ● 火災はタンク本体だけでなく、地上火災になっているとみられる。このことから、発端はタンクに接続している配管からの漏洩ではないだろうか。それも防油堤内を覆うくらいの大量漏洩のプール火災ではないかと思う。
 ● 報道では、火災は2時間ほどで消されているので、地上火災に有効な中・高発泡放出ノズルによる泡放射が行われたのではないかと思われる。ロシアでは、過去に中・高発泡放出ノズルによる泡放射を行ったとみられる「ロシア・シベリアの石油施設でタンク火災」(2013年8月)の事例がある。


備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである
    ・Firedirect.net, Russia – Refinery Explosion 4 Dead,  October  19,  2017 
    ・Frontnews.eu,  In Russia Was an Explosion at "Lukoil" Plant,  October  05,  2017 
  ・Unian.info, Explosion at Russian  Oil Refinery Kills 4,  October  06,  2017
    ・5hotnews.com, The Fire at the Nizhny Novgorod Refinery Killed Four People,  October  06,  2017  
    ・Chelorg.com, In the Nizhny Novgorod Region after the Explosion at the Refinery Lost a few People,  October  05,  2017



後 記: ロシアのタンク事故の中でも、これほど事故の状況がはっきりしない事例は無いように感じました。死者が出ているのも関わらず、最初の情報では、けが人の報告はないというものでした。死者の人数も4名としましたが、10名という情報もあり、よくわかりません。別なタンクへの延焼や消火時間なども実ははっきりしません。ルコイル社はウェブサイトを持っていますが、ニュース・リリースでの発表はありません。また、ロシアには、政府系のRT(旧ロシア・トゥデイ)というメディアがあり、よく海外の事故を報道していますが、今回はまったく報じていません。ロシア国内でも、詳しい報道はされていないようです。辛うじて(?)発災写真は出ていますが、構外から撮影されたものが多く、消防車だけの写真などは発災タンクの写真を避けているのではないかと疑ってしまいたくなります。箝口令(かんこうれい)が出されているとは思いたくないですが、メディアも情報を掘り下げようという意思を感じない事例でした。


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