(写真はCbc.ca
から引用)
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< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、中東クウェート(Kuwait)のペルシャ湾で、首都クウェート・シティ(Kuwait
City)の南にあるアルキラン(Al Khiran)の海域である。
■ 発災があったのは、クウェート石油公社(Kuwait
Petroleum Corporation:KPC)の関連施設とみられる。
クウェートの首都クウェート・シティ付近
(写真はGoogleMapから引用)
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< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2017年8月10日(木)、クウェート・シティの南にあるアルキラン沖の海域で油が流出していることが確認された。
■ 環境保護団体のクウェート・グリーン・ライン協会(Kuwait‘s
Green Line Society)は、8月10日(木)に油流出が起こっていると当局に連絡した。クウェート・グリーン・ライン協会によると、数日前から油が流出し始めていたという。クウェート政府は、重大な油流出事故が起きていることを住民や漁業者に伝えていなかった。
■ 8月13日(日)、クウェート南の油流出区域には、オイルフェンスが張られ、海域と沿岸を汚染した流出油の回収とクリーンアップ作業が行われた。この地区には発電所と水製造施設があり、汚染による影響が懸念されている。
■ 隣国のサウジアラビアは、油流出対応の緊急アクション・プランを発令し、海域の空中調査を始めた。
■ 8月15日(火)、米国の環境保護団体であるスカイ・トゥルース(Sky
Truth)は、衛星画像の分析によってクウェート海域に流出した油の量が少なくとも34,000ガロン(128KL)だと発表した。油膜の厚さを1μmと仮定しても、油流出面積(131km2)から油の量は34,590ガロンになるという。石油専門家は油の流出量について35,000バレル(5,500KL)と推定している。
スカイ・トゥルースが発表した油流出の衛星写真(8月10日時点)
(写真はSkytruth.org
から引用)
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■ 8月15日(火)、クウェートのサウジアラビア国境近くのラス・アル・ゾール地区で2番目の油流出が確認された。この場所は最初に油流出のあったところから約60km離れている。
■ クウェート石油相は、8月21日(月)、ラス・アル・ズールにある発電所と水製造施設はフル稼働で操業を継続していると語った。なお、ラス・アル・ズールには、現在、中東で最大の精製能力61.5万バレル/日の製油所が建設中である。
■ 8月22日(火)、クウェート石油公社は油流出を封じ込めたと発表した。流出した油の大部分を回収し、残りの油のクリーンアップを行うとともに、空気質と海域のモニタリングを行っているという。
■ クウェート当局は、8月23日(水)、2番目の油流出が1海里(約1,800m)に及んでいると語ったが、最初の油流出の大きさについては言及していない。油流出は封じ込められたと語っており、現在、漏洩源を特定するための調査を行っているという。
被 害
■ 油流出によって海域および沿岸が環境汚染された。最初に流出した油の量はクウェート当局から発表されていないが、5,500KLと推定されている。2回目の油流出は汚染状況や油量について分かっていない。
■ 事故に伴う負傷者は無かった。
(写真はCbc.caから引用)
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< 事故の原因 >
■ 事故原因は調査中という以外、クウェート政府またはクウェート石油公社からの発表はない。
■ クウェートのメディアでは、最初の油流出について、地元の石油専門家の話として、アル・カフジ(Al-Khafji)の古い50kmパイプラインから生じたと報じている。8月15日(火)、スカイ・トゥルースは、油流出のあった海域でパイプライン敷設船が移動していたとし、敷設船が既存の海底パイプラインを損傷した可能性を指摘している。
< 対 応 >
■ クウェート石油公社は、クリーンアップについてサウジ・アラビアン・シェブロン社(Saudi
Arabian Chevron Corp.)と油流出対応の専門会社であるオイル・スピル・レスポンス社(Oil
Spill Response Ltd.)に支援の要請を行った。
(写真はKuwaittimes.netから引用)
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補 足
■ 「クウェート」(Kuwait)は正式にはクウェート国(State
of Kuwait)で、アラビア半島の付け根に位置し、東はペルシア湾に面している立憲君主制の国である。人口約430万人で、首都はクウェート・シティである。1938年に大油田が発見され、1961年6月英国から独立した。
クウェートの位置と周辺国
(図はGoogleMapから引用)
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「アルキラン」(Al
Khiran )は、現在、アルキラン・リゾートとして投資額700百万ドル(770億円)を掛けて開発中の地区で、2019年に完成予定である。完成後、20万人の人口になる計画である。
アルキラン・リゾートの計画 (写真はTradearabia.com
から引用)
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■ 「クウェート石油公社」(Kuwait
Petroleum Corporation:KPC)は、1980 年1月に原油の開発・生産から精製、輸送、販売の一環操業を目指して100%国営の企業として設立された。本社はクウェート・シティ
にあり、クウェート国営石油精製会社(Kuwait National Petroleum Company: KNPC)など同国の石油・石油化学、石油製品販売関連の操業会社をすべて所有し、事業活動を管理・統括している。
クウェートにおけるタンク事故として当ブログで紹介した事例はつぎのとおりである。
● 2008年9月、「クウェートの製油所におけるタンク火災」
所 感
■ 油流出の事故状況について、クウェート政府からほとんど発表されていないので、推測して書けば、つぎのとおりである。
● 8月10日より前に、パイプライン敷設船が古い海底パイプラインを損傷させ、内部にあった油が海中に漏洩した。パイプラインにあった5,500KLの油が流出し、海域および沿岸を汚染した。
● 損傷したパイプラインは50年前のもので、現在の所有責任者がはっきりしておらず、対応が遅れた。クウェート石油公社は今から37年前の1980年に設立された国営石油会社であり、50年前のパイプラインに関する詳細情報を把握しておらず、責任部署としての自覚はなかった。
● 責任部署が曖昧なまま、クウェート政府はクウェート石油公社に油流出の対応を指示した。クウェート石油公社は、サウジ・アラビアン・シェブロン社とオイル・スピル・レスポンス社に流出油の囲い込みと回収を依頼した。
● 発災から2週間ほどでクリーンアップ作業の大半が終わったような発表が行われているが、封じ込めの初期対応に失敗した5,500KLの油回収と油処理のクリーンアップ作業は、本来、数か月かかると思われる。
● 8月15日に起った2回目の油流出事故は、対応をクウェート石油公社がとるとしたと思われる。しかし、油流出範囲以外の発表は行われておらず、適切な措置がとられているか分からない。
■ 古い海底パイプラインからの油流出事故は今後もありうると感じる。昔の海底パイプラインの敷設場所は計画時の地図上のものだけだろう。現在のようにGPS(The
Global Positioning System:全地球測位システム)が発達していない時代には、どのようにパイプが敷設されたか分からない。パイプラインは実際には相当蛇行しているとみるべきである。油井の廃棄・新規開発はこれからもあり、古いパイプラインの油抜きや洗浄が行われなければ、油流出の起こるリスクは大きいといえよう。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである
・Cbc.ca,
Kuwait Battles Oil Spill in Persian Gulf waters, August
13, 2017
・Abcnews.go.com, Kuwait Battles Oil Spill in Persian Gulf
waters, August 13,
2017
・Voanews.com, Kuwait Says Oil Spill Strikes its
Waters in Persian Gulf, August 13,
2017
・Indianexpress.com, Emergency Teams Battle Oil Spill
off Kuwait, August 13,
2017
・Thenational.ae, Kuwait ‘Struggling' to Stop Oil
Spill near Southern Ras Al Zour, August
13, 2017
・Maritime-executive.com, Kuwait Cleans Up Oil Spill in
Persian Gulf, August 14,
2017
・Reuters.com, Kuwait Contains Oil Spill, Power and Water
Output Normal – Agency, August 15,
2017
・Skytruth.org,
Satellite Imagery Reveals Scope of Last Week’s Oil Spill in Kuwait, August
15, 2017
・Washingtonpost.com, Kuwait
Reports Second Oil Spill in less than a Week,
August 15, 2017
・Oilprice.com, Second Oil Spill Reported in
Kuwait’s Ras Al-Zour Waters, August
15, 2017
・Jordantimes.com, Kuwait Reports Second Oil
Spill, August 15,
2017
・Abcnews.go.com, Group Estimates 34,000 gallons of Oil
Spilled off Kuwait, August 16,
2017
・Reuters.com, Kuwait Says Oil Spills Contained, August
23, 2017
・News.kuwaittimes.net, KPC:
Oil Spill Contained, August 23,
2017
後 記: 貯蔵タンクに直接的な事故ではありませんが、中東クウェートでの油流出事故ということで、調べてみることにしました。しかも、二度も起こっています。調べ始めて、まずはっきりしなかったのが、発災の日にちでした。メディアでは、曜日しか書かれていないものがほとんどでしたし、最初の事故のことなのか、二度目の話か、流出した日なのか、流出が発見された日なのかよく分かりませんでした。場所についても、いろいろな地名が出てくる割に、グーグルマップの地図に掲載されていないので、判然としませんでした。いろいろなメディア情報をもとに落ち着かせました。クリーンアップも何か他人任せという感じですし、結局、クウェートという国はよくわからないということでした。環境保護団体のスカイ・トゥルースがインターネットで写真を公開していなければ、2回目の油流出事故のようにモヤの中の話になったでしょうね。