< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、米国テキサス州(Texas)ラボック郡(Lubbock
County)ラミーサ(Lamesa) にあるマスルホワイト運送会社(Musslewhite
Trucking Company)のタンク・ステーションである。
■ 発災があったのは、マスルホワイト運送会社のタンク・ステーションにある貯蔵タンクである。タンク・ステーション構内には小型タンクが10基ほど設置されていた。
ラボック郡ラミーサにあるマスルホワイト運送会社のタンク・ステーション
(写真はGoogleMapから引用) |
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2009年5月14日(木)、テキサス州ラボック郡のラミーサ地区は激しい天候に見舞われており、あちこちで落雷があった。
■ 5月14日(木)午後11時頃、マスルホワイト運送会社のタンク・ステーション内のウィチタ水処理式塩水浄化装置(Wichita Water LLC Saltwater Disposal Unit)のタンクに落雷があり、火災が発生した。黒煙は10キロ先からも見えた。
■ 発災に伴い、ボランティア型のラミーサ消防署とアンドリュース消防署の消防隊が出動し、消防車による消火活動が行われた。
■ 火災発生から約2時間後、タンク・ステーション構内に設置されていた貯蔵タンク群のうち、高さ約25フィート(7.5m)のタンク1基が爆発して噴き飛んだ。タンクの安全弁が開いて火を噴き出してから3秒後にタンクが空中へ飛び出した。この状況は真にロケットの発射のようだった。タンクから漏れた油に火がついて火災は大きなファイアボールを形成した。そして、その5秒後には、別のタンクの頂部が壊れて飛んだ。損壊した頂部は落下すると、地面を約10秒ほど転がった。
■ 火災は、9時間以上続いたのち、消えた。
■ この爆発を伴った火災の消火活動に従事していた消防隊は、奇跡的に軽傷者が1名のみだった。負傷者は、一人の消防士が両足首を過伸長ということで、怪我の程度は軽かった。
■ ニュースチャンネル11のストーム・チェイサー(嵐追跡者)でカメラマンのデイビット・ドラモンド氏は、前夜、テキサス州ドーソン郡で雹(ひょう)の嵐を取材した後(雹は1時間15分も降り続いた)、落雷に伴って起こったラミーサのタンク火災現場へ行くように連絡を受け、現地へ飛んだ。現場到着後、タンクが爆発して噴き飛ぶ様子がビデオカメラで撮影され、インターネットを通じて紹介されたため、全米で話題になった。
(動画はYouTube「05/15/09INCREDIBLE **SLOW MOTION** TANK BATTERY EXPLOSION Lamesa,TX (in West Texas)」を参照)
被 害
■ タンク・ステーションの設備は壊滅的な被害を受けた。推定損害額は、清掃費用を含まないで、約725,000ドル(約8,000万円)程度と見込まれる。
■ 事故に伴って1名の負傷者が発生した。
< 事故の原因 >
■ 最初の事故原因は、落雷による貯蔵タンクの可燃性ガスへの引火とみられる。
< 対 応 >
■ ラミーサ消防署のケンドール・エイモス署長は、爆発時についてつぎのように語った。
「タンクは “ロケットのようにファイアボールを残して離陸して” 爆発しました。 私は火災の最前線からおよそ20ヤード(18m)のところにいました。私は一組の消防士が倒れるのを見ました。そして、私は彼らを助けようと駆け出しました。ところが、塩水浄化装置のまわりには金網フェンスが設置されており、これが飛んでくる破片から消防士を守っていたのです。爆発は爆弾が破裂したようなものですから、人がケガしなかったのは信じられないことです。実際、私の頭の中をよぎったことは、死ぬことはないだろうが、火傷を負うかもしれない。しかし、生き抜かなければならないということでした。生きてここにいることは、神が私たちに手を差しのばされたということだと思っています」
■ 爆発を撮影したデイビット・ドラモンド氏は、つぎのような語っている。
「事故の状況を撮影し始めてから約45分経過し、火災は消防隊に制圧されているように見えました。ところが、タンクの安全弁が作動したかと思うと、引火して、そのタンクと隣のタンク群が猛烈なファイアボールを伴った爆発を起こしました。
私は200ヤード(180m)ほど離れた所にいたのですが、口径4インチの長さが1フィート半(45cm)の遮断弁の付いた配管断片がミサイルのように高い孤を描いて飛んできました。パイプ断片は途中にあった送電線を越え、こっちの方に飛んできて、私の車のフロント部に衝突し、大きく壊しました。私は車に当たった箇所から4フィート(1.2m)のところに立っていました。私の周辺には他の破片が雨のように落ちてくるのが聞こえました。
信じられないことですが、消防士全員が無事でした。爆発したとき、タンクのすぐ前に消防士がいたにもかかわらずですよ。消防士たちはみんなよくやりました。彼らのほとんどはボランティアとして無報酬です。多くの人は、彼らが毎日私たちのために、いつでもボランティアで活動していることについて知らないのではないですか。私から皆さんへのお願いですが、ラミーサとアンドリュースの消防署に感謝の意を伝えるとともに、ボランティア部署に寄付をしてください。ボランティア部署は少ない予算で運用されているので、寄付が集まれば、本当に助かるでしょう」
事故後のタンク・ステーションの状況 |
補 足
■ 「テキサス州」(Texas)は、米国南部に位置し、メキシコ湾に面する州で、人口は約2,200万人である。
「ラボック郡」(Lubbock
County)は、テキサス州北部に位置し、人口約28万人の郡である。
「ラミーサ」(Lamesa)は、南ラボックにある町で人口9,500名の町である。
米国とテキサス州の位置 (図はGoogleMap
から引用)
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■ マスルホワイト運送会社(Musslewhite Trucking Company)は主にテキサス州、ニューメキシコ州などの油田地域において運送サービスを営む会社である。
ラミーサにはタンク・ステーションを保有していた。タンク・ステーションには油タンクのほか、落雷のあったウィチタ水処理式塩水浄化装置(Wichita
Water LLC Saltwater Disposal Unit)があった。汲上げ水をこの塩水浄化装置で浄化して、構内の浄水に利用していたものと思われる。なお、現在はタンクはなく、タンク・ステーション機能が無くなっている。
所 感
■ 今回の事故では、落雷によるタンク火災の状況(タンクの種類、大きさ、油種など)は分かっていない。注目は加圧タンクとみられる別なタンクが消火活動中に爆発したことに移っている。しかし、タンクが爆発して噴き飛ぶ状況がビデオカメラで撮影され、事故の恐ろしさを疑似体験できる。米国では、都会を除けば、ボランティア型の消防署が多く、このような消防隊の消防士にとって疑似体験できるビデオ映像は有用であろう。
■ 消火活動に関する詳細な状況は不詳であるが、落雷で発災したタンク火災は、ほぼ制圧できる状況だったとあるので、泡消火による積極的消火戦略がとられた思われる。しかし、消防活動のアクセス上の問題あるいは消防資機材不足の問題によって、まわりのタンクへの延焼防止に関する対応がうまく行かなかったものと思われる。つぎつぎと爆発が起こるような状況になり、防御的消火戦略または不介入戦略がとられ、火災は施設を壊滅的な状態にした後、燃え尽きるように消えたものと思われる。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである
・Youtube.com,
05/15/09 INCREDIBLE **SLOW MOTION** TANK BATTERY EXPLOSION Lamesa,
TX (in West Texas)」 , May 15, 2009
・Newschannel11.com, Oil Tank
Battery Explodes Following a Fire in Lamesa, May 15, 2009
・Nationalnews
com, 1 Firefighter Hurt
in Texas Tank Fire, May 15, 2009
・Daviddrummond.
com, Lamesa, TX Tank Battery Fire Explosion, May 15, 2009
・Texas-Fire. com. Oil
Tank Battery Explodes Following a Fire in Lamesa, May 15, 2009
・Statter911.com Slow
Motion of Tank Farm Explosion in Lamesa,
Texas., May 16, 2009
後 記: 最近は事故が起こった場合、監視カメラによる映像が報じられたり、一般市民による動画がインターネットに投稿されたり、以前とは随分様相が変わりました。今回の事故報道では、プロのカメラマンによる爆発映像がとられて報じられたものです。現在の状況のさきがけのように感じます。ということで、昔(といっても8年前ですが)の事故を紹介することとしました。
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