2016年12月7日水曜日

米国テキサス州の油井施設で塩水タンクが爆発・火災

 今回は、2016年11月22日、米国テキサス州デウィット郡ノルドハイムにあるベイシック・エナージー・サービス社の油井施設で、塩水タンクが爆発・火災を起こした事故を紹介します。
(写真はBizjournals.com から引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、米国テキサス州(Texas)デウィット郡(Dewitt)ノルドハイム(Nordheim)にあるベイシック・エナージー・サービス社(Basic Energy Services)の油井の関連施設である。

■ 施設は、ノルドハイム東方の国道72号線沿いでティーメ道路の近くにある。発災のあったのは、油井施設の塩水処理設備の塩水タンクである。
デウィット郡ノルドハイム周辺 (矢印が発災施設)
    (写真はグーグルマップから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
(写真はBizjournals.com から引用)
■ 2016年11月22日(火)午後4時過ぎ、ノルドハイムにあるベイシック・エナージー・サービス社の油井施設で爆発があり、火災となった。爆発時にはファイアーボールが発生したという。近くの住民によると、火災によって立ち昇る黒煙は数マイル先からも見えたという。

■ 発災に伴い、ノルドハイム消防署が出動したたほか、ヨークタウン消防署とクエロ消防署が支援で出動した。また、火災から出る黒煙によって国道72号線のヨークタウンとノルドハイム間の約半マイル(800m)が通行止めになった。

■ 火災があったのは施設の塩水タンクで内部に油または油の残渣分が含まれ、これが火災の燃料源になったものとみられる。消防隊は、タンクが難燃性でできていると判断し、内部の燃料源を燃え尽きさせることとした。火災はその後鎮火した。

■ 事故に伴う負傷者の発生は報告されていない。

被 害
■ 爆発・火災によって油井関連施設内の塩水タンクが焼損した。被害の範囲や程度は明らかでない。

■ 事故に伴う負傷者は無かった。

< 事故の原因 >
■ 事故の原因は当局によって調査中である。

< 対 応 >
■ テキサス州鉄道委員会は火災発生の報告を受け、調査に乗り出すという。

補 足
■ 「テキサス州」は米国南部にあり、メキシコと国境を接している州で、人口は約2,700万人である。      
 「デウィット郡」(Dewitt County)は、米国テキサス州南部にあり、人口は約20,000人である。
 「ノルドハイム」(Nordheim)は、デウィット郡の西にあり、人口約300人の町である。  

■ 「ベイシック・エナージー・サービス社」 (Basic Energy Services)はテキサス州フォートワースに本社を置き、原油・天然ガス掘削を行う石油会社であるが、先月(10月25日)、デラウェアでアメリカ合衆国連邦倒産法第11章による破産手続きの申請を出していると報じられている。株価はそれ以前から大幅に落ち込んでいるが、株取引は継続されている。同社のウェブサイトにも、破産手続きの申請の情報が公開されており、財務再建策が講じられているという。

■ 「発災タンク」は難燃性とあるので、鋼製でなく、グラスファイバー製の円筒タンクとみられる。しかし、タンクを含めた施設の詳細はわかっていない。グーグルマップで調べてみると、国道72号線沿いでティーメ道路の近くにある油井施設が該当すると思われる。この施設には、直径約4.6m×9基と直径約3.6m×2基の円筒タンクがある。原油掘削に付帯する塩水タンクは、一般に、グラスファイバー製が多く、直径約4.6mのタンクはグラスファイバー製のように見える。油分を取扱う場合、鋼製が使用され、直径約3.6mで黒色の円筒タンクが鋼製と思われる。従って、発災があったのは、直径約4.6mの円筒タンクではないかと思われる。発災状況の写真では、火災は延焼しているように見える。 

ノルドハイム東方にあるベイシック・エナージー・サービス社の油井施設
    (写真はグーグルマップから引用)
所 感
■ 最近では、水圧破砕法による油井の生産が増えたため、グラスファイバー製の油混じり塩水タンクの火災の起こる事例が多くなっていた。特に、2013年2月~2015年5月にかけて油井関連施設における火災事故が多く、このブログでも、この間で20件の火災事故を紹介している。しかし、2015年6月以降、事故件数が減り、わずか1件(2016年3月)だった。
 この状況について、この間の原油価格の推移と照らし合わせると、相関があるようにみえる。すなわち、原油価格が下がれば、原油(天然ガス)の生産が減って、既設油井の稼働が落ちたり、新規油井の開発が減り、結果として危険なタンク(油混じりの塩水タンクや原油の貯蔵タンク)が少なくなって、タンク火災の発生率が減少するという推論である。

■ 油混じり塩水タンクの爆発・火災の原因は圧倒的に落雷のよるものが多い。今回の事故は、落雷が関与したような状況でない珍しい事例である。このためか、デウィット郡当局のほか、原油生産やパイプライン管理に関係するテキサス州鉄道委員会が火災の原因調査に乗り出すものと思われる。
原油価格の推移 (価格図はEcodb.netから引用)

備  考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである
  ・Isssource.com, TX Saltwater Tank Fire Closes Roads,  November 21,  2016 
  ・Bizjarnals.com,  Explosion, Fire Reported at Saltwater Tank near Nordheim,  November 21,  2016
  ・Hazmatnation.com,  Firefighters Battle Saltwater Tank Fire East of Nordheim,  November 21,  2016  


後 記: 2週間ほどタンク事故情報を調査できませんでした。従って、この間に何件かの事故情報があると思っていましたが、今回の事例の1件だけでした。このところ貯蔵タンク事故(の情報)が少なくなっており、この傾向は続いています。一方、発災事業所のベイシック・エナージー・サービス社が破産手続きの申請を出しており、原油・天然ガスの生産事業者の経営が厳しくなっているという状況も分かりました。このような情報から、油井施設のタンク火災事故と原油価格の推移を調べてみることとしました。

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