2016年12月12日月曜日

ニュージランドでアスファルトタンクが爆発、死者1名(2009年)

 今回は、2009年9月4日、ニュージーランドのグレイマウスにあるフルトンホーガン社の建設・道路工事用アスファルトプラントで、アスファルトタンクが爆発し、1名の死者を出した事例を紹介します。
(写真はStuff.co.nzから引用)
< 発災施設の概要 >
■ 事故があったのは、ニュージーランド(New Zealand)のグレイマウス(Graymouse)郊外にあるフルトンホーガン社(Fulton Hogan)のアスファルトプラントである。

■ 発災のあったのは、グレイマウス郊外のメイン・サウス通り沿いにある建設・道路工事用アスファルトプラントの容量18KLのアスファルトタンクである。当時、タンクには、15KLのアスファルトが入っていた。
           グレイマウスのフルトンホーガン社付近   (写真はGoogle Mapから引用)
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2009年9月4日(金)午前9時40分頃、フルトンホーガン社のアスファルトプラントでアスファルトタンクが爆発した。爆発の衝撃は半径2kmのところで揺れを感じるほどだった。爆発によってタンク屋根が噴き飛び、数百mのところに落下した。

■ 住民のひとりは、爆発の衝撃で家全体が揺れたと言い、「大きな音がして、壁の額が落ちました。窓の外を見ると、金属のかけらが飛んでいるのが見えました」と語った。また、別の住民は、最初に黒煙がタンクから立ち昇り、タンクの破片が空中に舞い上がったのち、600m離れたグレイ・ブロス・エンジニアリング社の敷地に駐車していた車に破片の一部が当たったといい、まるで戦場のようだったと話した。

■ 発災に伴い、ボランティア型のグレイマウス消防署の消防隊が出動した。

■ 事故に伴い、死者1名が発生した。死亡したのは、タンクの上で作業していたサブコントラクターのキーラン・ジョン・ハドソンさん(21才)である。 ハドソンさんは、アスファルトタンクの上で手すりの溶接作業していたときに爆発が起こり、即死の状態だった。亡くなったハドソンさんの遺体はタンクから約30m離れたところで発見された。 

■ 亡くなったハドソンさんのほかに死傷者はいなかったが、近くの建物の多くで窓ガラスが割れる被害があった。 事故のニュースはたちまち町に広がり、住民が現場近くに集まり、工場地域で働く人の安全が保たれるのか不安そうに様子をみていた。 
■ フルトンホーガン社によると、容量18KLのタンクの上で手摺り(ガードレール)を溶接していたときに、突然爆発が起きたといっている。 

■ 労災による死亡事故を受けてニュージーランド労働省が原因の調査を始めた。 

被 害
■ 爆発によって1名の死者が出た。
 
■ アスファルトプラント内のアスファルトタンク1基が爆発によって損壊した。

■ 施設構外の建物の多くで窓ガラスが割れる被害などがあった。被害の範囲や程度は不詳である。 

< 事故の原因 >
■ タンク内には、カットバック・アスファルト、すなわち揮発性の石油と混合したアスファルトが入っていた。カットバック・アスファルトは温度165℃で加熱されており、タンク内には可燃性フュームが形成されていた。このため、タンク上での溶接作業によって可燃性フュームに引火して爆発したものである。
 注;カットバック・アスファルトには、ガソリンやケロシン(灯油)のような揮発性の高い石油を混合し、低温用途(タップコート、フォグシール、スラリーシールなど)や浸透式工法に用いられる。

■ アスファルトプラントの事業者は、カットバック・アスファルトの入ったタンク屋根部における危険性を認識していたが、溶接作業を止める措置をとらなかった。 

< 対 応 >
■ 出動した消防隊は、その日、現場に待機することになった。壊れたタンクがまだ安全な状態とはいえなかったし、2mほど隣には別なアスファルトタンクがあったためである。グレイマウス消防署の3台、隣町のコブデン消防署の1台、合計4台の消防車が待機した。

■ 2010年9月、フルトンホーガン社は、労働安全衛生法の法令違反によって80,000ドルの罰金とともに、請負会社の従業員への安全確保の義務違反で100,000ドルの罰金が科せられた。

補 足
■ 「ニュージーランド」 (New Zealand)は、南西太平洋のオセアニアのポリネシアに位置し、立憲君主制国家で、イギリス連邦加盟国である。国は二つの主要な島と、多くの小さな島々からなり、人口約440万人である。
 「グレイマウス」 (Graymouse)は、ニュージーランドのサウス島(南島)のウェストコート地方にあり、グレイ川の河口に位置する町で、人口約10,000人である。
     ニュージーランドのグレイマウス(Graymouth)の位置   (写真はGoogle Mapから引用)
■ フルトンホーガン社(Fulton Hogan)は、ニュージーランドやオーストラリアにおいて主として建設・道路工事を営んでいる会社である。 グレイマウスには、ウェスト・コースト事業所があり、建設・道路工事用のアスファルトプラントを保有している。事故後、発災タンクは撤去され、アスファルトタンクは1基のみになっている。
 注; 現地の報道では、事故の起こったタンクをビチューメンタンク(Bitumen Tank)という用語を使っている。北米以外では、石油精製の残渣留分からの製品はアスファルトと称さず、ビチューメンと呼んでおり、特に、オーストラリア英語圏では、道路表面に使用されるアスファルトは一般的にビチューメンという用語を使用しているが、ここでは日本の慣用に合わせ、アスファルトタンクと訳した。
        グレイマウスのフルトンホーガン社付近 (現在)  (写真はGoogle Mapから引用)
所 感
■ 一般に、石油精製プラントのおけるアスファルトタンクの爆発事故は軽質分を誤ってアスファルトへ混入させたものが多い。今回は建設・道路工事用のアスファルトタンクであるが、同様に揮発性の高い石油を混合したカットバック・アスファルトのタンクの危険性について無視したために起った事例である。建設・道路工事用プラントのアスファルトタンクといっても、危険性の高い油種がありうるわけで、火気工事開始時の環境条件を確認しなければならないということを示す事例である。

備 考
 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
     ・TheGreymouthstar.co.nz, Man Dead in Explosion, September 04.  2009  
   ・3News.co.nz, Storage Tank Explodes, Killing a Young Man,  September  04,  2009  
   ・Otagodailytimes.co.nz, Man Killed in Greymouth  Explosion,  September  04 ,  2009
     ・Odt.co.nz, Man Killed in Greymouth Explosion Named, September 11.  2009
     ・Stuff.co.nz, Fatal Bitumen Tank  Explosion on West Coast, September 04.  2009
     ・TheGreymouthstar.co.nz, Man Dead in Explosion, September 04.  2009
     ・Voxy.co.nz, Flammable Fumes and Welding Do Not Mix, September 03.  2010


後 記: 今回の事故情報は2009年当時に入手した情報をもとにしたものですが、新たにインターネット検索してみると、日本と違って2009年の報道記事も検索できるものが多くありましたし、肝心な原因に関する情報が出てきたので、事故情報として完結させることができました。この情報の取扱いに関する違いというのは、日本の国民性(熱しやすく、冷めやすい)ですかね、あるいは情報に関する価値観の違いでしょうかね。


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