タジキスタンの石油貯蔵施設でタンク爆発、死者４名

　今回は、2015年10月13日（火）午後6時頃、タジキスタンのルーダキーにあるガスプロム・ネフチ社の石油貯蔵施設でタンク1基が爆発して、4名の死者、数人の負傷者が発生した事故を紹介します。

（写真はAvesta.tjから引用）

< 発災施設の概要 >

■　事故があったのは、タジキスタン（Tajikistan）の首都ドゥシャンベ（Dushanbe）の近くにある石油企業：ガスプロム・ネフチ社（Gazprom Neft）の石油貯蔵施設である。施設はロシアのガスプロム・ネフチ社が燃料油を貯蔵するために使用していた。ガスプロム・ネフチ社は、ロシアの巨大エネルギー会社であるガスプロム（Gazprom）社の傘下にある子会社である。中央アジアにある旧ソ連の国だったタジキスタンは、燃料油の輸入の大半をロシアに依存している。

■　発災は、首都ドゥシャンベから南へ10kmのところにあるルーダキー（Rudaki）のアルボブホツン（Arbobhotun)村にある石油貯蔵施設のタンクで起った。施設の規模や発災タンクの大きさなどはわからない。

タジキスタンのドゥシャンベとルーダキー付近　

（写真はグーグルマップから引用）

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■　2015年10月13日（火）午後6時頃、ルーダキーにある石油貯蔵施設のタンク1基が爆発した。石油貯蔵施設の構内では工事が行われれて、多くの作業者が従事していた。

■　この爆発事故に伴い、死傷者が発生し、病院に緊急搬送された。 4名が死亡、数人の負傷者が出た。負傷者も重傷といわれているが、詳細は分かっていない。

被　害

■　事故に伴い、4名が死亡、数人の負傷者が出た。

■　貯蔵施設のタンク1基が爆発によって被災している。その他の設備にも影響を及ぼしたと思われるが、被災の程度や範囲はわかっていない。

< 事故の原因 >

■　爆発の原因は溶接作業時の安全基準を遵守しなかったことによると、タジキスタン内務省は発表した。

< 対　応 >

■　爆発後の対応については報じられておらず、どのような措置がとられたかわからない。

補　足

■　タジギスタンは、正式にはタジキスタン共和国といい、中央アジアに位置する共和制国家である。1991年に旧ソビエト連邦から独立し、人口は約710万人である。南にアフガニスタン、東に中国と国境を接する。首都は「ドゥシャンベ」で、人口約68万人である。

　「ルーダキー」は、ドゥシャンベの南にある人口約15,000人の町である。

（写真はグーグルマップから引用）

■　ガスプロム・ネフチ（Gazprom Neft）は、1995年に設立されたロシアの石油企業である。前名はシブネフチと称しており、ロシア国内の石油精製会社としては5番目の規模を誇る。2005年にロシアのエネルギー企業であるガスプロム（Gazprom ）の傘下企業となり、ガスプロム・ネフチに改称した。ガスプロム・ネフチの株式は96％をガスプロムが保有している。ロシアのサンクトペテルブルクを本拠地に、ロシア国内だけでなく、旧ソ連から独立したタジキスタンなどの周辺国にも進出している。

　ガスプロム・ネフチはタジキスタンのルーダキー近くに石油貯蔵施設を保有しているが、グーグルマップで調べても、施設の場所は分からなかった。

所　感

■　タジギスタンにおけるタンク事故の情報は初めてである。事故の状況はわからないが、溶接作業に関連しているとみられるので、米国CSB（化学物質安全性委員会）がまとめた「タンク内外の火気工事における人身事故を防ぐ７つの教訓」の中で紹介されている事例のいずれかと同種の事故であろう。米国内でタンク内外の火気工事における人身事故が減らないために、2010年に教訓としてCSBがまとめたが、その後も当ブログで事例紹介しているように、米国でさえ必ずしもタンク内外の火気工事における人身事故はゼロでない。

■　直接原因は溶接の火気によるものとしても、事故に至るには、背景にいろいろな間接要因が複合しているものと思われる。「タンク内外の火気工事における人身事故を防ぐ７つの教訓」 は読めば、当然の話ばかりであるが、現実には、書かれたとおりの事故がある。「事故には国境がない」と感じる事例である。

備　考

　本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

　 ・Presstv.ir,  Four Kills in Explosion at Russian Oil Depot in Tajikistan,  October 14, 2015　　

    ・Eurasia-online.com,  Oil Storage Explosion in Dushanbe/4 Killed,  October 14, 2015

    ・Avesta.tj,  Explosion at Oil Storage Site Kills 4 near Dushanbe,  October 14, 2015 　　

    ・News.anotao.com,  Oil Depot Explosion Kills 4 in Tajikistan,  October 14, 2015

    ・Dailycapital.pk, Oil Depot Explosion Kills 4 in Tajikistan,  October 14, 2015

    ・NDTV.com, Oil Depot Explosion Kills 4 in Tajikistan,  October 14, 2015

    ・Ubalaert.com, Four Kills, Several Injured in Tajikistan’s Oil Depot,  October 15, 2015

後　記：　最近、新たなタンク事故情報を聞くことがなく、タンク施設は安定していましたが、思わぬ国から人身災害を伴うタンク爆発事故が飛び出してきました。遠い国であり、おそらく、人がケガをしなければ、伝わってこなかったでしょう。しかし、今回の情報（源）は同国内務省からの話だけで、事故状況はよくわかりません。発災写真を掲載したウェブサイトは3つありましたが、うちふたつは当該施設の発災写真ではないと判断しました。残った写真も本当に当該タンク施設のものか確証はありませんが、標題の写真にしました。ロシア語（英語をロシア語に翻訳して）でインターネット検索してみましたが、写真はおろか、それらしい事故情報も発信されていませんでした。（都合の）悪い情報は流さないのでしょうね。