2013年11月14日木曜日

米国カンザス州で落雷によってタンク3基が損壊

 今回は、2013年10月30日、米国カンザス州レブンワース郡ハッピー・ホロー通り近くにあるデイスター・ペトロリアム社が所有する油井施設に落雷があり、2基のタンクが爆発し、1基が火災となる事故を紹介します。
落雷による爆発・火災で被災したレブンワース郡にある油井施設のタンク
(写真はAmericanNowNews.com から引用)
 <事故の状況> 
■  2013年10月30日(水)午前4時30分頃、米国カンザス州レブンワース郡にある石油施設の貯蔵タンクに落雷があり、爆発・火災を起こす事故があった。事故があったのは、レブンワース郡ハッピー・ホロー通り22312近くのデイスター・ペトロリアム社が所有する油井施設で、落雷によって2基のタンクが爆発し、1基が火災となった。当時、この地域には雷雲を伴う嵐が通過していた。
カンザス州レブンワース郡付近      A点が発災場所付近
(写真はグーグルマップから引用) 
■ 緊急事態管理当局によると、2基のタンクが爆発し、うち1基は空中へ舞い上がり、約200ヤード(180m)先まで飛んで大きなオークの木の下に落下したという。3基目のタンクは屋根が噴き飛び、大半の油がタンク内で燃えてしまったという。タンクは直径20フィート(6m)、高さ15フィート(4.5mどの大きさだという。

■ 火災の炎は5マイル(8km)先でも見えたという。火災発生に伴い、複数の消防隊が出動したが、発災場所が遠く、現場到着は遅くなった。消防隊は、隣接して着火していた容量1,000ガロン(3.8㎥)のプロパンタンクとともに、タンク内の油を燃え尽きさせる戦略をとった。プロパンタンクは火災場所に近すぎて、遮断できる状況ではなく、消防士の安全確保のためガスを燃え尽きさせることとした。一方、デイスター・ペトロリアム社は、対応のため担当者を現場へ派遣し、油井を閉止した。
 
■ 3基のタンクには原油が入っており、1基の容量は8,500ガロン(32KL)であった。タンク所有者は、地面上に漏洩した約2,000ガロン(7.5KL)の原油のクリーンアップ作業を行ない始めた。クリーンアップ作業は2日間ほどかかる見込みだという。現場には囲い込み用の盛り土が構築されていた。しかし、原油が地域の水系に流れ込まないように消防隊は盛り土や溝を掘って対応した。

■ けが人は報告されていない。レブンワース郡緊急事態管理局長のチャック・マガハ氏は、「誰もけがしませんでした。死者も出ていません。状況としては死者が出てもおかしくないほどでした。まったくひどい状態で、すべて爆破されていました」と語っている。マガハ氏によると、現場には避雷針があったが、強烈な落雷には役に立たなかったという。マガハ氏は、レブンワース郡には数多くに油タンクがあるので、郡の消防機関は今回のような火災に対する訓練をたびたび行っていると語った。
■ 州当局は現場に入り、調査を行い、地下水系が汚染されないようクリーンアップ作業が行われることを確認している。
 (写真はAmericanNowNews.comの動画から引用)
噴き飛んで180m先のオークの木の下に落下したタンク残骸 
  (写真はAmericanNowNews.comの動画から引用)
 (写真はAmericanNowNews.comの動画から引用) 
被災したタンクと流出対応で使用した土木用機械 
(写真はAmericanNowNews.comの動画から引用) 
                              
補 足
■ 「カンザス州」は、米国の中西部に位置する州で、ネブラスカ州、オクラホマ州、コロラド州、ミズーリ州と隣接しており、人口約285万人である。 グレートプレーンズの真只中にあって、農業の生産性が高く、また牧畜業が盛んな州である。
 「レブンワース郡」は、カンザス州の東部に位置し、人口約77,000人の郡である。郡庁所在地はレブンワース市であり、人口約35,000人の同郡で最大の都市でもある。
(写真はグーグルマップから引用)
カンザス州レブンワース郡のハッピー・ホロー通り(奥側)の風景
(写真はグーグルマップのストリートビューから引用) 
■ 「デイスター・ペトロリアム社」(Daystar Petroleum Inc.)は、石油・天然ガスの生産を行うエネルギー会社で、カンザス州バリーセンターに本社を置いている。地方の石油・天然ガス生産会社で、詳細はわからない。

所 感
■ 今回の情報の中で注目したのは、施設に避雷針があったのも関わらず、タンクへ落雷し、爆発・火災が起きたことである。避雷針の仕様はわからないが、強烈な落雷時には、避雷針が有効な防護策にならないという事実である。最近の異常気象を鑑みると、強烈な落雷は日本でも起こりうる。避雷針があるから大丈夫だと考えるべきでないことを示唆する事例である。

■ 消防活動とは単に消火作業を行うだけでない。油井施設で燃料源の供給が停止できれば、燃え尽きさせる戦略をとるケースが多い。今回の事例では、プロパンタンクが存在しており、なおさら安易に消火することは危険な状態を作ることになる。結果を見れば当然であるが、公設の消防隊で必ずしも施設を熟知している訳でないと思われるが、火災を起こしている機器にプロパンタンクがあるという判断は見事である。また、消防活動として盛り土や溝を構築している。写真を見ると土木用機械を使用して対応したものと思われる。山火事の多い米国における対応方法だと感じる。
 いずれにしても、情報にあるように「郡の消防機関は今回のような火災に対する訓練をたびたび行っている」ことが緊急事態の対応に役立っており、訓練の大切さを示すものである。

備 考
  本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいてまとめたものである。
       ・KansasCity.com,  Lightning Ignites Oil Tanks in Leavenworth County,  October 30, 2013
       ・LeavenworthTimes.com,  Oil Tanks Explode during Lightning Storm,  October 30, 2013 
       ・Ksffa.WordPress.com, Oil Well Explodes during Lightning Storm,  October  30, 2013
       ・BizJornals.com,  Lightning Led to Oil Tank Explosion in Northeast Kansas,  October 31, 2013
       AmericanNowNews.com, ,  Lightning Ignites Leavenworth Oil Tanks, November  1, 2013




後 記: 秋になったなぁと思っていたら、急に冬の気候になりました。夏日から冬日の気温になるまでに30日しかなかったといいます。地元山口県では、まだ紅葉しきっておらず、もう少し秋を楽しみたいものです。
 (切り抜きは朝日新聞11月7日山口東版から引用) 
 ところで、今回の事例は訓練の大切さを示すものでしたが、先日11月6日に山口県周南市の港でテロ対応の訓練を行なったという記事が新聞に載っていました。水際のテロ防御の訓練を徳山海上保安部、周南署、コンビナート企業など30団体160名が参加して行われたそうです。山口県宇部市でも同様な訓練が行われています。アルジェリア人質事件に関するスタトイル社の調査報告の中でも、反省事項として「訓練」「演習」という言葉が出てきています。このような訓練はテロへの抑止力にもなり、良い方向だと思いつつ記事を読みました。


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