2013年2月28日木曜日

米国ノースカロライナ州で落雷によるエタノールタンク火災

 今回は、2013年2月16日、米国ノースカロライナ州シャーロットにあるエコ・エナジー社の所有するエタノールタンクで、大雪の中、落雷によると思われる火災が発生した事故を紹介します。
本情報はつぎのようなインターネット情報に基づいて要約したものである。
  ・WsocTV.com,  Official: Lightning Strike or Static Possible Cause of Tank Fire, February 16,  2013
      ・NBCNews.com, Tank farm fire possibly caused by lightning strike, February 17,  2013 
  ・FireHouse.com,  N.C. Firefighters Battle Fire in 40K Ethanol Tank, February 17,  2013  
  ・TankTeam.com, Lightning Strike Blamed for Tank Fire, February 18,  2013 

<事故の状況> 
■  2013年2月16日(土)午後4時過ぎ、米国ノースカロライナ州シャーロットにあるタンク施設で、落雷によると思われる火災が発生した。事故があったのは、シャーロット市のポウ・クリーク近くでマウント・ホーリー通り沿いにあるエコ・エナジー社の所有する容量40,000ガロン(150KL)のエタノール用貯蔵タンクだった。
シャーロットのタンク施設のある地区   (写真はグーグルマップから引用)
写真はWscoTV.comから引用
■ 爆発の衝撃は2マイル(3.2km)離れた住宅地でも感じたという。住民のオーエン・フローさんは、そのとき窓がガタガタと鳴ったという。「私は家の外にいたのだが、雪雲から鳴った雷だと思ったよ。そうしたら、市の緑色のトラックが通りを走り過ぎて行ったので、思わず、神よ、飛行機事故でないようにと祈ったよ」とフローさんは語った。
■ 事故発生後、ただちに消防隊が出動し、午後4時15分に現場に到着したときには、タンクから高さ約20~30フィート(6~9m)の火炎が上がっていた。70名を超える消防士が水と泡を使って消火活動を行い、1時間半後に火災を制圧下に入れた。この火災による負傷者はなく、当局によると、住民や環境への危険もなかったという。
写真はWscoTV.comから引用
 シャーロッテ消防署のマーク・バスナイト署長によると、当時、この地区には大雪が降っていたが、消火活動の妨げにはならなかったという。消防隊員はタンク施設での事故を想定した訓練をしていたとバスナイト署長は語った。
■ 調査官は、ナショナル・ウェザー・サービスからのデーターを解析して原因が落雷によるものか確認中である。落雷でなければ、静電気によるものだろうという。

補 足
■  「ノースカロライナ州」は米国東南部に位置し、人口約950万人で、州都はローリー市である。 
 「シャーロット」はノースカロライナ州南西部のメックレンバーク郡にあり、州の最大都市で人口約73万人である。シャーロットは、初期にはゴールドラッシュで沸き、金鉱の街として栄えたが、やがてゴールドラッシュの中心がカリフォルニアへと移って下火となり、その後は綿織物産業が発展した。20世紀後半以降は金融センターとして急成長を遂げている。気候は四季がはっきりしており、最も暑い7月の平均気温は27℃、最高気温の平均は32℃で、日中は30℃を超える日が多い。最も寒い1月の平均気温は5℃、最低気温の平均は0℃で、月の半分は最低気温が氷点下に下がる。冬季には月間3~5cm程度の降雪が見られ、年間降雪量は約14cmである。

■ 「エコ-エナジー社」(Eco-Energy Corp.)は、1990年に設立されたバイオ燃料のエネルギー会社である。テネシー州に本部があり、年間売上高は約30億ドルで、バイオ燃料市場の約10%を占めている。物流部門は、北米に12の支部と600箇所のターミナルを持ち、800,000バレル(127,000KL)の貯蔵能力を有し、年間25,000台の鉄道貨物車と60,000台の輸送用トラックでサプライ・チェーンを操業している。
 2011年、シャーロットに110,000バレル(17,500KL)のタンク・ターミナルを再オープンしており、今回の火災のあったタンクはこの一つだと思われる。
火災のあったエコ-エナジー社シャーロット・タンクターミナル(写真はグーグルマップから引用)
タンクターミナルの風景(写真はグーグルマップのストリートビューから引用)
■ 「エタノール」 (ethanol) はアルコールの一つで、エチルアルコール (ethyl alcohol) とも呼ばれる。化学式はC2H6Oで、揮発性が強く、殺菌・消毒に用いられるほか、近年では産業資源としてのバイオマスから生成したバイオエタノールが自動車燃料として用いられている。米国ではトウモロコシ、ブラジルではサトウキビに由来するモラセス、欧州では甜菜が主な原料となっている。米国では、1970年代から中西部のトウモロコシ生産地帯においてエタノール混合率10%のガソリンが販売され始め、1990年代になると、クリーンエア・アクト(大気浄化法)にもとづき、エタノール混合に優遇措置がとられ、2000年代になってE10とよばれる10%混合ガソリンが広く販売されている。 

■ 「シャーロット消防署」はシャーロット地区を管轄する消防署で、フルタイムの職員1,164名、うち消防士1,044名で、消防車41台、はしご車15台を保有し、2010年には93,000回の出動に対応した。レスキュー隊のほか、4台のハズマット車、6台の航空機火災対応車などを保有している。訓練部門では、延年間60,000時間(2010年)の訓練を実施している。

所 感
オーストラリアのエタノールタンク火災事故(2004年)
■ エタノールタンクの火災事故としては、2004年3月、オーストラリアのニューサウスウエールス州のマニルドラ社のエタノール貯蔵タンクで爆発・火災を起こした事例がある。近年、バイオ燃料としてエタノールの使用が拡大しており、貯蔵タンクの数が増えれば、タンク火災の危険性は高くなる。

■ 今回のタンク火災は大雪の中で起こったという稀な事例であるが、火災は天候や時間にかかわらず、起こるということである。写真では、それほど大規模な火災ではなかったように見えるが、エタノールは揮発性の高い液体であり、消火活動は易しいものではなかったはずである。シャーロット消防署は、73万人の人口を抱える都市の消防署だけに人員・資機材ともに充実し、訓練も行われていたので、的確な消防活動ができたのであろう。


後 記: 近ごろ、為替や株価の話題など経済成長の話が飛び交っていますが、コラムニストの天野祐吉さんが最近書いた文章の中に、「だいたい、経済成長なんてものはしゃにむに追いかける時代はもう終わっている。いまの成長は人間のためでなく成長のための成長だ。『限りある地球で限りない成長が可能だと考えるのはエセエコノミストか愚か者だが、現実はエセエコノミストと愚か者ばかりになっている』とフランスの経済哲学者セルジュ・ラトゥーシュおじさんは毒づいていたが、その通りだとぼくも思う」というのがありました。私もそうだと思います。以前、作家の沢木耕太郎氏が引用したゼロ成長時代の日本は「静かなる世界の中心たれ」だと思いますね。






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