このブログを検索

2024年1月22日月曜日

ブラジルでエタノール・タンク爆発の瞬間を監視カメラが撮影

 今回は、約2年前の2022928日(水)、ブラジルのアラゴアス州にあるバイオ燃料会社ウシナ・カエテ社)の工場でエタノール用貯蔵タンクが爆発し、火災になった事例を紹介します。この事故では監視カメラで爆発の瞬間がとらえられています。

< 発災地域の概要 >

■ 発災があったのは、ブラジル(Brazil)アラゴアス州サン・ミゲル・ドス・カンポス(São Miguel dos Campos)にあるバイオ燃料会社であるウシナ・カエテ社(Usina Caetés)の工場である。

■ 事故があったのは、工場内のエタノール用貯蔵タンクである。

        

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2022928日(水)、午前750分頃、工場内のエタノール用貯蔵タンクが爆発し、火災となった。

■ アラゴアス軍消防署(Corpo de Bombeiros Militar de AlagoashttpsCBMAL)の監視カメラがとらえた画像には、エタノールタンクが爆発した瞬間の映像が映っていた。







■ 発災に伴い、軍消防局が出動した。消防部隊20人と車両5台が現場に派遣され、消火活動が行われた。工場からは給水車数台が支援に出た。

■ 住民らは発災現場から遠く離れた場所でも揺れを感じたという。市内からはタンクから出る煙と炎が確認された。

■ 同社の従業員2名が負傷した。従業員のひとりは工場の外来診療所で治療を受け、退院した。もうひとりは熱傷を負い、市の緊急治療室に搬送された。

■ ユーチューブなどには爆発の瞬間を含む火災の状況を示す動画が投稿されている。主な動画はつぎのとおりである。(注記;映像に写っている左端の警備員詰所は別の会社の建物の詰所とみられる。また、道路は公道である)

  YoutubeVideo flagra momento exato de explosão em tanque de álcool na Usina Caeté em São Miguel dos Campos2023/09/29

 ● YoutubeCâmera de segurança flagra momento em que tanque de álcool explode em usina de São Miguel dos Campos2023/09/28

 ● Facebook、「CCTV footage shows the explosion of the storage tank at USINA CAETE in Brazil2023/09/28

 ● YoutubeÁrea de tanques de etanol explode na Usina Caeté e deixa duas pessoas feridas2023/09/28

被 害

■ エタノール貯蔵タンク1基が焼損した。タンク内液の燃料油が焼失した。 

■ 2名の負傷者が出た。

< 事故の原因 >

■ 事故の原因は調査中で、報じられていない。

< 対 応 >

■ ウシナ・カエテ社は、爆発後に最初にとられた措置について新たな事故を避けるため、エタノールクとを冷却するとともに、発災区域から避難させることだったと発表した。

■ 現場に出動した軍消防局の消防隊によって鎮圧されるまで、5時間以上かかった。

■ ウシナ・カエテ社は、爆発の原因を調べることとし、「エタノールタンクが爆発したとき、容量は5%になっていた。従業員2名だけが負傷したが、重傷ではなかった。何が起こったのか調査中である」と語った。

■ 労働省は爆発の原因を究明するために調査を開始すると発表した。


補 足                                                                          

■「ブラジル」 (Brazil)は、正式にはブラジル連邦共和国(Federative Republic of Brazil)といい、南アメリカに位置し、国土面積は日本の22.5倍を有し、人口約21,330万人の連邦共和制国家である。首都はブラジリアである

「アラゴアス州」(Estado de Alagoas)は、ブラジル北東部に位置し、大西洋に面しており、人口は約335万人である。

「サン・ミゲル・ドス・カンポス」(São Miguel dos Campos)はアラゴアス州の東部に位置し、人口約61,000人の自治体である。経済は石油、天然ガス、サトウキビ、畜産、砂糖、セメント産業がある。

■「ウシナ・カエテ社」(Usina Caeté)は、砂糖、エタノール、バイオ発電の事業を展開しており、アラゴアス州とサンパウロ州に拠点を置き、ブラジル国内に8,000人以上の直接雇用を生み出している。

■「発災タンク」の仕様は報じられていないが、グーグルマップで調べると、固定屋根式で直

径は約42mである。高さを15mとすれば、容量は約20,700KLとなる。爆発時の動画の映像を見ると、火災になってから3分も経たないうちに、側板の下部近くまでが火炎に焼けて黒くなっている。このことから、タンクには油が下部近くまでしか入っていなかったことを示す。ウシナ・カエテ社は、爆発時、タンクには容量の5%しか入っていなかったと述べており、上記の推測からすれば、タンクには液位約0.75m、油量約1,000KLが入っていたとみられる。

所 感

■ 爆発の瞬間は映像に撮られているが、爆発の原因はわかっていない。爆発状況を見ると、タンク内から燃焼炎がタンク屋根と側板の溶接弱部の破断部から噴出している。このあと、破断したタンク屋根が噴き飛んでいる。このことから、爆発はタンク通気口から外部に漏出したガスに着火したものでなく、タンク内部で発火したものと思う。着火源は、タンク内に存在していたスラッジに含まれていた自己発火性の物質(硫化鉄など)や静電気などが考えられる。なお、エタノール(C2H6O)の爆発限界は下限3.3%~上限19.0ol%であり、エタノールをタンクから抜き出した際、通気口から空気が流入し、爆発限界内に入る可能性は高いとみられる。

■ 消火戦略には、積極的戦略・防御的戦略・不介入戦略の3つがあるが、今回は爆発が起こっていることやタンク内のエタノール量が多くないことを考慮して、近くのタンクや設備などに延焼しない冷却を優先した防御的戦略をとられたと思う。側板が座屈してしまった燃焼終盤に泡放射し、鎮火に至ったものとみられる。しかし、火災は防油堤に生えていた草が燃えるほどだったので、タンク内部にエタノールが一杯に入っていたら、5時間で制圧できていない。直径42mのタンクの全面火災では、10,000リットル/分の大容量泡放射砲システムが必要で、映像を見る限り消防隊の資機材では対応できていないだろう。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである

    Brazil.postsen.com, Video shows moment of tank explosion at power plant in the interior of Alagoas,  September  29,  2022

    G1.globo.com, Tanque de combustível de usina explode em São Miguel dos Campos, AL,  September  29,  2022

    Ojornalextra.com.br, Tanque de álcool explode e provoca incêndio na Usina CaetéTanque de álcool explode e provoca incêndio na Usina Caeté.,  September  29,  2022

    Alagoasweb.com, Após cinco horas de trabalhos bombeiros apagam incêndio em reservatório de álcool da Usina Caeté em São Miguel dos Campos,  September  29,  2022


後 記: 今回の事故は最初に爆発の瞬間を撮った動画を見ました。2年前に起こった事故なので、報道記事は期待せず、既設タンクの爆発の瞬間だけを紹介しようと思いました。爆発原因は分かりませんでしたが、被災写真は割合多く投稿されていました。このブログでは、「ロシアのタタールスタン共和国で工事中の空のタンクが爆発、死者2名」202311月)に続いて爆発の瞬間をとらえた監視カメラの映像です。日本でも監視カメラの設置数が多くなりました。監視社会が良いことかどうかは一概にいえませんが、タンク事故では、これまで考えていなかった実映像を見ることができる世の中になっていると感じます。 







0 件のコメント:

コメントを投稿