2025年8月16日土曜日

米国モンタナ州で貯蔵・廃棄施設のタンク火災からLPガスタンク爆発

 今回は、2025625日(水)、モンタナ州リッチランド郡シドニー近郊にある多くの油井やガス井、貯蔵施設が点在している中、貯蔵・廃棄施設でタンク火災が発生し、延焼した後にプロパンガス・タンクが爆発した事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 発災があったのは、モンタナ州(Montana)リッチランド郡(Richland County)シドニー(Sidney)近郊にある貯蔵・廃棄施設(Storage and Disposal Plant)である。この施設は州境に近い田園地帯に位置し、多くの油井やガス井、貯蔵施設が点在している。

■ 事故のあったのは、シドニーの南約4.8kmにあり、ハイウェイ261号線沿いにある貯蔵・廃棄施設のタンク群である。

<事故の状況および影響>

事故の発生

■ 2025625日(水)午後8時前、シドニー近郊にある貯蔵・廃棄施設で火災が発生した。施設には誰もいなかった。

■ たまたま近くの道路を車で通りかかった人が施設のタンク群が火災を起こしているのを見て消防署へ通報した。通報した人はストームチェイサー(竜巻や嵐などの気象現象を追跡し、観測・記録する専門家や愛好家のこと)で、嵐を追跡するためカナダへ向かう途中だった。通報後、消防隊の到着を待つ間、映像を撮影しようとドローンを飛ばした。

 ドローンの映像を確認しながら見ていたとき、突然、横型円筒タンクが大きな爆発を起こしたという。タンクは噴き飛び、数百フィート(100m)先に地面に落下した。爆発の衝撃波は映像を撮っていた車のところまで及び、ドローンも一時、行方不明になった。

■ 大きな爆発があり、地元住民は爆発音とともに、大きな揺れに見舞われた。地元住民のひとりは、爆発音を聞き、緊急通報の911番に通報した。 通報した人によると、「巨大な火の玉が上がりました。熱を感じましたし、プロパンガス・タンクと思われるものがおそらく200フィート(約60m)以上も空高く舞い上がるのが見え、その後落下しました」と語った。

■ ハイウェイ261号線沿いで火災が発生したという目撃者の通報により、午後8時頃、ボランティア型消防隊が現場に出動した。周辺地域の消防隊も支援で出動した。

■ 発災にともなう負傷者はいなかった。

■ 火災の影響範囲は貯蔵・廃棄施設のあるエリアにとどまった。現場に到着した消防隊によると、「爆発したタンクもあれば、爆発寸前のものもありました」といい、「現場と周辺地域における人命の安全に関わる懸念事項を確認しました。このような状況では、積極的に消火活動を行うことは安全とはいえません。このようなケースでは、通常、エリアを孤立して、火災が燃え広がらないようにし、火が自然に消えるまで待つのが最善策です」と語り、消防隊員の安全を確保した。消防隊の大半は午後11時以降に現場を離れることができた。

■ 消防隊によると、「施設には複数の貯蔵タンクとプロパンガス・タンクがあり、これらのタンクが加熱されて爆発を引き起こしたとみられます。初期の報告では、爆発は10マイル(16km)離れた場所でも感じられたといいます」といい、「火災による被害の大部分は施設自体に限定されています」と語っている。

■ ユーチューブでは、タンク火災の状況を伝える動画が投稿されている。  

   ●YoutubeMASSIVE MONTANA EXPLOSION CAPTURED BY DRONE!! - Sidney, Montana 6/25/252025/06/27

   ●YoutubeNo injuries reported at large explosion at Sidney industrial plant」 2025/06/27

   ●YoutubeEyewitnesses describe explosion south of Sidney2025/06/27

被 害

■ 貯蔵・廃棄施設の複数の貯蔵タンクが火災で損壊した。

■ プロパンガス・タンク1基が爆発して噴き飛び、全壊した。 

■ 負傷者はいなかった。

< 事故の原因 >

■ 火災・爆発の原因は調査中である。  

< 対 応 >

■ 消防隊の一部は夜通し現場を監視し、626日(木)朝7時に現場を撤退した。

■ 複数の貯蔵タンクが燃えたが、消防隊によると、タンクに何が入っていたのか、わからないという。

■ 爆発の原因は調査中である。現時点では、今回の火災が何らかの点で不審であるとする理由は何もないという。しかし、消防署によると、地元の地主であること以外、誰がこの場所を運営していたかは分からないという。

補 足

■「モンタナ州」(Montana)は、米国の北西部に位置し、人口約108万人の州である。州都はヘレナ市(人口約32,000人)である。

「リッチランド郡」(Richland County)は、モンタナ州の東部に位置し、人口約11,000人の郡である。

「シドニー」(Sidney)は、リッチランド郡の西部に位置し、同郡の郡庁所在地でもあり、人口約6,000人の町である。

 ■ 発災施設は「貯蔵・廃棄施設」(Storage and Disposal Plant)としたが、 「塩水処理施設」と報じたメディアもある。外観は塩水処理施設のように見えるが、消防署によると、地元の地主であること以外、誰がこの場所を運営していたかは分からないといい、判然としない。被災写真では、トラックやタンクローリーの車両が写っているので、稼動されているのだろう。施設は油田に関連したものと思われるが、雑多なタンクが無造作に放置されているようにしか見えない。円筒タンクは、どこかの油田の不要になった貯蔵タンクを並べているようで、内液は油田から出た油や塩水などではないだろうか。

■「発災タンク」は貯蔵タンクと報じられているだけで、タンク仕様の詳細はわからない。爆発を起こしたのは、被災写真によると、横型円筒タンクであり、爆発の状況からプロパンガス・タンクとみられる。通常、塩水処理施設では、横置き円筒タンクを置いているところは無い。油田の軽質油のプロパンやブタンなどを入れていたタンクが不要になって、この施設に受け入れたのではないだろうか。

所 感 

■ 爆発の瞬間をドローンから撮った映像がSNS(ソーシャルネットワーク)で流れたので、多くの人が知った事故であるが、映像以外、施設内容や事業者などは分からない。施設は「貯蔵・廃棄施設」(Storage and Disposal Plant)としたが、 消防署によると、誰がこの場所を運営しているかは分からないという。

 円筒タンクから火災が起こったとみられるが、円筒タンクはどこかの油田の不要になった貯蔵タンクを並べ、内液は油田から出た油や塩水などではないだろうか。しかし、どのようにして油が漏れて引火し、火災になったかは分からない。

■ 消火戦略ははっきりと不介入戦略をとったと報じられている。爆発がプロパンガス・タンクと思われるが、他のタンクの内液の種類も何かは分からない状況であり、消火作業に携わる消防隊員の安全を考えれば、妥当な判断である。 


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

     Kfyrtv.com, Eyewitnesses describe explosion south of Sidney,  June  27, 2025

     Montanarightnow.com, Fire crews respond to large explosion and fire at saltwater disposal site near Sidney,  June  26, 2025

     Apnews.com, Oil field disposal plant in eastern Montana explodes, no injuries,  June  27, 2025

     Montanafreepress.org, Oil field disposal plant in eastern Montana explodes, no injuries,  June  26, 2025

     My1035.com, Big Explosion in Montana,  June  26, 2025

     Isssource.com, Fire, Explosion at MT Oil Storage Site,  June  27, 2025

     Roundupweb.com, (Updated 6-26-25) Saltwater Disposal Plant Fire & Explosions Shake Community,  June  26, 2025


後 記: 今回の事例は今の米国をある面、象徴するような事故です。施設の目的が分からないだけでなく、事業者も分かっておらず、火災が起こっても地元の人たちは知らず、爆発が起こって初めて知ったなんて信じられない事故です。おおらかさというより、石油やガスといったリスクを伴う設備なのに、かなりいい加減な状況です。米国繁栄のベースは豊富な原油・天然ガス生産にあるわけですが、こんな状態がアメリカ・ファーストとは思いませんね。一方、この事故をたまたま通りすがりに見た人がストームチェイサーで、持っていたドローンで撮影したというのも、ほかの国では信じられないことですね。


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