2024年10月24日木曜日

米国ユタ州の油田掘削施設で爆発、貯蔵タンクなどが火災、負傷者1名

 今回は、2024814日(水)、米国ユタ州ダッシェーン郡マイトンにあるユインタ・ワッ​​クス・オペレーティング社の油田掘削施設で爆発があり、掘削装置と油タンクが完全に炎にさらされ、負傷者1名を出した事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 事故があったのは、米国ユタ州Utahダッシェーン郡DuchesneマイトンMytonにあるユインタ・ワッ​​クス・オペレーティング社Uinta Wax Operatingの油田掘削施設である。 

■ 発災があったのは、マイトンの町から東に約4.3マイル(6.9km)離れたところのスコウファス・トライバル・ウェストSkoufus Tribal West油田掘削基地にある油井装置やタンク設備である。


 
< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 2024814日(水)午前640分頃、マイトンにある油田掘削施設の油井で爆発があり、火災が発生した。 

■ 発災にともない、ひとりの男性作業員が爆発に巻き込まれた。男性はすぐに近くにいた別な作業員に助けを求めた。緊急作業員がすぐに現場に駆けつけ、油井敷地の主要機器を巻き込んだ激しい火災と闘いながら、男性を助け出した。消防の救急隊員が現場に到着する前に、作業員らは男性を地元の病院に運んでいたが、火傷の程度がひどかったため、救急ヘリコプターでソルトレークシティーの病院に搬送された。事故にともなう負傷者は他にはいなかった。 

■ ダッシェーン郡消防緊急管理局が午前7時頃に電話を受け、消防隊が出動した。

■ 消防隊は、現場に到着すると、掘削装置、貯蔵タンク、油井地区で火災が発生しているのを確認した。消防士18名が消防車4台と水タンク車3台で対応した。

■ 火災発生後、一時、掘削装置と油タンクが完全に炎にさらされ、油井地区が部分的に油に浸かった。

■ 火災発生時、現場には、掘削装置(リグ)2台、ホットオイラーHot oilerと呼ばれる油加熱ユニット車1台、クルード・オイル・ハウラーCrude oil haulerと呼ばれる原油運搬車1台が置かれ、13名の作業員が通常業務の準備中だった。ホットオイラーは、原油を加熱するために使用され、専用のトラックなどに搭載されている。寒冷気候では、油井の温度が低いため、重質原油がワックス沈殿を起こしやすくなるため、ホットオイラーは油井の上部の坑井部分からワックス堆積物を除去するために日常的に使用される。

■ ユインタ・ワッ​​クス・オペレーティング社はユタ州東部のダッシェーン郡とユインタ郡に600以上の稼働中の油井を保有している。 

■ユーチューブでは、事故について報じているニュースが投稿されている。

 YoutubeWorker severely burned in Duchesne County oil field explosion2024/08/16

殺された

■  掘削装置2台、ホットオイラー、原油運搬車、貯蔵タンクなど油田掘削施設が一時的に火災にさらされ、被災した。 

■ 負傷者1名が出た。 

< 事故の原因 >

■ 火災の原因はわかっていない。

< 対 応 >

■ 消防隊は、午前9時までに油田掘削施設のすべての設備と油井地区から火災を制圧し、現場は安全になった。対応した消防隊員に負傷者はいなかった。

■ ユインタ・ワッ​​クス・オペレーティング社の社長はつぎのような声明を発表した。

「今回、油井で事故が発生し、当社の油田チームのひとりが重傷を負ったことを心からお詫び申し上げます。負傷者とその家族に心からお見舞い申し上げます。当社は、現在、情報収集と調査を続けており、事故の原因を解明しようとしています。現場にいた油井チームは迅速に対応し、負傷者の手当をし、現場は落ち着きました」


 ■ 労働安全衛生局The Occupational Safety and Health AdministrationOSHAが事故の調査を主導している。現場の作業者はリスクを十分に認識しており、リスクを防ぐための訓練を受けている。今回のような事故は極めて稀である。ユタ州の経済にとって石油産業は重要であり、徹底的な調査が必要である。 

■ 地元では、マイトン東部の油田掘削現場で起きた爆発・火災で重傷を負った男性作業員が病院で命の危機と闘い続けており、地域住民が家族を支援するためにまとまっているという。

■ 被災したのはクルード・オイル・ハウラーと呼ばれる原油運搬車の運転手だった。2024827日(火)、重度の火傷を負った油田掘削の男性作業員の家族によると、被災者は重傷からゆっくりと回復しているという。この情報を伝えるニュースがユーチューブに投稿されている。Youtube‘We’ve seen a lot of miracles : Crude Oil hauler injured in explosion slowly recovering2024/08/24) 

■ 火傷で病院のベッドに横たわる被災者とその家族のためにGoFundMe(ゴーファンドミー)が立ち上げられた。 GoFundMeは、20105月に運営開始した米国のクラウド・ファンディング・サイトで、イベントや事故・病気などの困難な状況に対する支援などのために資金を集めることができる。

 被災者と妻にはふたりの幼い息子がいる。GoFundMeのページには被災者の妻が募金活動を企画し、 「夫の回復と子供たちの世話に集中できるよう、経済的負担を少しでも軽減するために、この GoFundMe を立ち上げました。寄付、シェア、祈りなど、どんな形であれ、皆さんからのご支援は、私たちにとって今、とても大きな意味を持ちます」 といい、「私たちのふたりの息子にとって、何よりも彼を愛する最高の父親です。息子たちが父親に何が起こっているのか理解しようとしているのを見るのは、本当に胸が張り裂けそうです。私は息子たちのためにも強くいようと最善を尽くしていますが、これからの道のりは計り知れません。夫の回復には長い時間がかかり、困難が伴うというのが現実なので、皆さんに助けを求めています。夫は複数回の手術、広範囲にわたる治療、リハビリを必要とします。すでに費用はかさんでおり、それに加えて、息子たちのために家計を維持する必要があります」と語っている。

■ 専門家は、油田掘削施設に関する危険性について、つぎのように指摘する。 

 ● 爆発と火災; 油田掘削装置は、原油や天然ガスなどの非常に可燃性の高い物質を扱っている。揮発性化学物質の存在と高圧の掘削機械が組み合わさると、漏れ、火花、機器の故障が発生した場合、壊滅的な火災や爆発につながる可能性がある。小さな故障でも大規模な爆発を引き起こし、現場の作業員全員を危険にさらすことになる。

 ● 重 機; 油田掘削施設には、デリック、ポンプ、掘削装置などの重量のある複雑な機械が必要である。これらの機器の操作とメンテナンスには、特に機械が適切にメンテナンスされていない場合や安全規則が無視されている場合に、大きなリスクが伴う。重機に関連する業務では、機器の故障、圧迫損傷、高所からの落下などの事故が発生する恐れがある。

 ● 高圧システム; 油田採掘には、高い圧力下で地表を掘削する作業が含まれる。これらの圧力システムが不安定になったり、適切に管理されなかったりすると、噴出や漏れが発生し、爆発、有毒ガスへの曝露、火災につながる可能性がある。高い圧力を安全に管理するには、高度な知識・技能と経験を備えた作業員が必要ある。

 ● 有毒化学物質やガス; 油田掘削装置からは、硫化水素などの有毒化学物質やガスが頻繁に放出される。これらは吸入すると有害であり、命にかかわることがある。こうした物質に長時間さらされると、呼吸器系の問題、化学火傷、その他の長期的な健康障害を引き起こす。適切な安全装備を装着していない作業員や換気の悪い場所で働く作業員は、重大な健康リスクに直面する。

 ● 遠隔地および危険な場所; 油田掘削施設は陸上や海上の遠隔地に設置されることが多い。このため、医療施設から遠く離れていることが多く、事故が発生した場合に緊急対応を迅速に行うことが難しい場合がある。 

 ● 疲労と長時間労働; 油田掘削施設の作業員は長時間労働を求められることが多く、12時間シフトが一般的であり、掘削装置の多くは24時間365日稼働している。このため作業員は疲労が蓄積し、人為的ミスや事故の可能性が高まる。肉体的に過酷な作業、限られた休憩時間、さらに孤立による精神的ストレスが相まって、危険な環境が生まれやすい。 

 ● 落下物と高所作業; 多くの油田掘削に関わる作業員は、デリックやプラットフォームの足場など高所で作業する必要がある。このような高所からの転落は重傷や死亡事故に結びつく。さらに、工具や機器または部品の破片が高所から落下する可能性があり、その下の作業員は落下物に当たる危険にさらされている。

 ● 複雑なチーム調整; 油田掘削作業では、掘削装置のオペレータ、エンジニア、保守作業員など、さまざまなチーム間の緊密な連携が必要である。情報の伝達が円滑にいかないと、特にリスクが高くプレッシャーのかかる環境では、事故やミスにつながる可能性がある。

 ● OSHA違反と安全上の欠陥; 労働安全衛生局 (OSHA) によって厳格な規制が定められているにもかかわらず、石油会社や請負業者では安全規則を適切に施行できていないことがある。場合によっては、機器が時代遅れであったり、作業員に安全装備が提供されていなかったりして、事故や怪我の可能性が高まっている。

 ● 緊急避難; 噴出、爆発、ハリケーン(沖合掘削施設の場合)などの緊急事態が発生した場合、作業員の避難経路が限られるため、救助活動が遅れる可能性がある。 

補 足

■ 「ユタ州」Utahは、米国の西部に位置し、人口約327万人の州である。州都はソルトレイクシティで州の総人口の80%以上がソルトレイクシティを中心とするワサッチフロントと呼ばれる地域に住んでいる。このために州内の大半の地域にはほとんど人が住んでいない。

「ダッシェーン郡」Duchesne Countyは、ユタ州の北東部に位置し、人口約18,600人の郡である。ダッシェーン郡は、ダッチェイン、ドゥーシェイン、ダチェスニなどと呼ばれている。            

「マイトン」Mytonは、ダッシェーン郡の東部に位置し、人口約600人の町である。 

■「ユインタ・ワッ​​クス・オペレーティング社」Uinta Wax Operatingは、原油、天然ガス、その他の関連製品を生産・探査する企業で、主にユタ州など米国全土で事業展開している油田掘削会社である。 

■「発災場所」に関してはマイトンから東へ4.3マイル(6.9km)と報じられているが、グーグルマップで調べても特定できなかった。その辺りは石油生産施設が複数あり、発災した油田掘削施設は新しく開発中のものではないだろうか。被災設備の中には貯蔵タンクが含まれており、「発災タンク」の大きさは分からないが、直径を23m、高さを46mとすれば、1基の容量は1242KL程度である。

所 感

■ 油田掘削施設に関する危険性について専門家による指摘があるが、初期の発災状況が報じられておらず、原因を推測する情報はない。今回、油田掘削施設の事故について紹介したが、予想した以上に危険性の高い施設だという印象をもった。 

■ 今回、「作業員が爆発に巻き込まれ、近くにいた別な作業員に助けを求めて、緊急作業員がすぐに現場に駆けつけ、油井敷地の主要機器を巻き込んだ激しい火災と闘いながら、作業員を助け出した」という。この救出活動で二人目の負傷者が出なかったのは不思議である。消火ホースによる水の噴霧をしながら、救出したのではないだろうか。危険性の高い施設であり、自然と防御の方法を身に着けていたのかも知れない。 

■ 今回の事故では、地元メディアが被災者の支援について報じている。 GoFundMe(ゴーファンドミー)という米国のクラウド・ファンディング・サイトで、被災者の妻が募金活動を企画している。米国らしい独立心の旺盛さを感じる一方、健康保険制度や労災保険制度などについて考えさせられる事例である。


備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    Kutv.com、デュシェーン郡の油田爆発で作業員が重度の火傷を負う、2024年8月16日 

    Kslnewsradio.com、デュシェンヌ石油施設で爆発、作業員が重傷、2024年8月15日   

    Kherkhergarcia.com、ユタ州ダッシェン郡の石油掘削装置爆発で作業員が重傷、2024年8月22日 

    Abc4.com、ユタ州東部の油田で突発火災、作業員が重度の火傷を負う、2024年8月15日   

    Ksltv.com、石油掘削装置の爆発で作業員1人が病院に搬送、2024年8月15日 

    Hoodline.com、ダッシェン郡油田の爆発で石油作業員が重傷、ユタ州で安全基準が精査される、2024年8月16日 

    Isssource.com、石油基地火災、爆発で作業員が重体、2024年9月6日 

    Schmidtlaw.com、ユタ州の石油掘削作業員が爆発で重度の火傷を負う、2024年8月27日   

    Gofundme.com、ベンが壊滅的な火傷から回復できるよう支援、2024年8月17日 

    Basinnow.com、コミュニティが集結し、石油掘削装置の火災で重傷を負ったマーベリックの運転手を支援、2024年8月19日 

    Ksl.com、「私たちは多くの奇跡を見てきました」:爆発で負傷した石油掘削作業員がゆっくりと回復中、2024年8月24日 


後 記: 今回の事例では、地元メディアが被災者の支援について報じており、 GoFundMe(ゴーファンドミー)という米国のクラウド・ファンディング・サイトで、被災者の妻が募金活動を企画しているという米国らしい独立心の旺盛さを感じます。所感の中で健康保険制度や労災保険制度などについて考えさせられると書きましたが、この公助に頼る発想が日本的なのですよね。マイトンは人口約600人の小さな町ですが、米国の石油産業を支える実態が垣間見える気がします。

2024年10月20日日曜日

ロシア連邦チェチェン共和国のガソリンスタンドで壊滅的な爆発、死傷者9名

 今回は、20241012日(土)、ロシア連邦チェチェン共和国の首都グロズヌイにあるガソリンスタンドで火災があり、石油液化ガス(LPG)タンクが爆発し、死傷者9名を出した事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 事故があったのは、ロシア連邦(Russian Federation)のチェチェン共和国(Chechen Republic)の首都グロズヌイ(Grozny)にあるリオンテック社(LionTek)のガソリンスタンドである。

■ 発災があったのは、バイサングロフスキー地区(Baysangurovsky district)モハメド・アリ通り近くのガソリンスタンドにある石油タンク設備である。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 20241012日(土)午後3時頃、ガソリンスタンドで火災が発生した。

■ 発災にともない、消防隊が出動した。

■ 消防隊が発災現場に到着し、消火活動を開始しようとしたところ、突然、爆発が起こった。大きな爆発音とともに空に真っ赤な炎が噴き上がった。悲鳴を上げながら逃げる人の姿もあった。地元住民によると、最初の爆発の後、2回の爆発があったという。

■ 石油タンク3基が火災になり、爆発が発生したとき、タンクの1つは400m飛ばされた。SNS(ソーシャルネットワーク)に投稿された爆発の瞬間の映像では、煙の中に大きな炎が立ち上がり、爆風で横型タンクが転がってくる様子が映し出されている。石油タンクの内液について、当初はガソリンと報じられていたが、消防隊は液化石油ガス(LPG)と言っている。

■ 爆発直後、横型タンクは猛スピードで近くの住宅の中庭に突入してから道路に沿って転がり、車に衝突し、アパートの建物の窓の下で止まった。

■ 事故の目撃者のひとりは、ガスはすぐには爆発せず、かなり長い間燃え続けていたという。目撃者によると、タンクは隔壁が壊れた最も弱い部分でガスの圧力により爆発したのではないかという。ガソリンスタンドの近くの住民は、数回爆発音を聞いたといい、「爆発は強かったです。数回爆発がありました」と語っている。

■ 事故に伴い、9名の死傷者が出た。内訳は死亡者が4名で、負傷者が5名である。このうち、何回目かの爆発では、住宅の中庭に転がりこんできた燃え盛るタンクによって母親とこどもふたり(5歳と6歳)が死亡した。ガソリンスタンドでは、負傷や火傷を負った5名の死傷者が出た。ガソリンスタンドではひとりが死亡した。

■ 複数の爆発による被害は、爆発地点から半径50m以内のものが破壊され、1km離れた建物でも窓ガラスが割れた。ガソリンスタンドの建物は完全に破壊された。

■ チェチェン非常事態省は、1012日(土)、グロズヌイのガソリンスタンドで起きた爆発のビデオ(消防士のボディに装着したカメラで撮影)を公開した。燃え盛るガソリンスタンドで、最初に高さ約3mの火柱が見え、その後爆発が起きた。ビデオから判断すると、消防士がすでに現場で活動している間に爆発したことが分かる。「消防士たちは危険に直面してもひるむことなく、石油タンクの爆発で燃えた破片が飛んできも、炎の要素と戦い続けた」と非常事態省は声明で述べた。

 消防隊到着時の確認では、発災場所について、リデル社(Lider)とガズテック社(GazTek)のガソリンスタンドの間にあるリオンテック社(LionTek)のガソリンスタンドで爆発が起きたという。火災が近くの建物や近隣のガソリンスタンドに延焼することは避けなければならなかった。火は早期に制圧できたが、捜査当局による捜査が行われることになる。

■ ユーチューブでは、事故の火災の状況が投稿されている。主なものは、つぎのとおり。

 Youtube「 【子ども含む4人死亡】ガソリンスタンドで大規模爆発 ロシア南部チェチェン共和国」2024/10/13

 ●Youtube Massive petrol station explosion throws tanker 1,000ft in inferno with children among four dead2024/10/13

 ●Youtube VIDEO: Russia’s Gas Station Turns Into Massive Fireball In Chechnya | Moment Of Explosion On Cam2024/10/13

YoutubeВзрыв на заправке в Грозном / пожарный в критической ситуации восхваляет Всевышнего  2024/10/15)・・・消防隊が撮影したビデオ

被 害

■ 石油タンク3基が壊れた。内液の石油液化ガス(LPG)が焼失した。うち1基の横型タンクは爆発で噴き飛んで転がっていき、住民3名が犠牲になった。

■ ガソリンスタンドが全壊した。 

■ 9名の死傷者が出た。内訳は死亡者が4名で、負傷者が5名である

■ ガソリンスタンドに駐車していたトラックや車が全壊した。  

■ 隣接していた建物が被災した。

< 事故の原因 >

■ 火災の原因は調査(捜査)中でわかっていない。捜査当局は安全規制の規則に違反したとみて捜査している。

< 対 応 >

■ 消火活動が行われ、爆発後に発生した火災は消し止められた。消火活動には消防車7台と消防士35人が投入された。火災の総面積は900㎡に達した。消火後、20名以上の消防士たちが、散水と構造物の解体作業を行った。

■ 現地当局などによると、ガソリンスタンドにあった燃料タンクが爆発したという。爆発の原因は分かっておらず、地元当局が捜査中である。火災は、カマズ(KAMAZ)のタンクローリーからガソリンスタンドのタンクにガスが送り込まれたときに起こっており、燃料受入れの際の安全規則が守られていなかった可能性があるという。

■ 爆発と火災によって、駐車中の車数台が全焼し、ガソリンスタンドの建物の破片と混じって車が横たわていた。停まっていたトラックは車輪と車軸の鉄部分だけを残して全壊していた。

1015日(火)、捜査当局はタンカー運転手の逮捕を発表した。予備データによると、ガソリンスタンドでの爆発は、 燃料を注入する際の安全規制違反が原因で発生したという。ガソリンスタンドのオーナーは捜査官の要請を受けて拘留されていたが、 1016日(水)、オーナーが火災危険施設を運営する際の安全要件に違反したということで逮捕された。

■ 複数メディアによると、20249月にも、隣国のダゲスタン共和国のガソリンスタンドで同様の爆発が発生し、13人が死亡している。

補 足

■「ロシア連邦のチェチェン共和国」;通称ロシアと呼んでいるロシア連邦は、ユーラシア大陸北部に位置する人口約14,080万人の連邦共和制国家である。ロシア連邦は89の連邦構成主体に分かれるが、そのうち24が共和国を称する。

「チェチェン共和国」は、北カフカース(北コーカサス)地方の北東部に位置し、ロシア連邦北カフカース連邦管区に属する人口約153万人の共和国である。設立はロシア連邦と同じ1991年で、北カフカースの先住民族のひとつのチェチェン人が住民の多数を占める。

 第一次チェチェン紛争は、1994年から1996年にかけて、ロシア連邦からの独立を目指すチェチェン共和国独立派武装勢力と、それを阻止しようとするロシア連邦軍との間で発生した紛争である。 

 第二次チェチェン紛争は、チェチェン独立派勢力と、ロシア連邦への残留を希望するチェチェン共和国のチェチェン人勢力との間で発生した紛争で、1999年に勃発した。2009年に国家対テロ委員会は独立派の掃討が完了したとして対テロ作戦地域からの除外を発表、10年の長きにわたった紛争は終結したとされたが、実際には独立派残党による北コーカサスの乱が2017年まで続いており、政局は不安定である。

「グロズヌイ」は、チェチェン共和国の首都で、人口は約33万人である。気候は内陸性の亜寒帯湿潤気候で寒暖の差が激しい。冬は寒く、1月の平均気温は-3.2℃、過去に-31.5℃を記録したこともあり、-20℃を下回る日もあり、積雪もある。夏季は暑く35℃を超える日も多く、過去に41.4℃を記録している。

■「発災タンク」は、石油液化ガス(LPG)用の横型タンクである。発災のあったガソリンスタンドをグーグルマップで調べると、場所は特定できたが、横型タンクの詳細は分からなかった。横型タンクは3基あったといい、直径を23m、長さを56mと仮定すると、1基当たりの容量は1542KL程度である。ガソリンスタンドに石油液化ガス(LPG)用のタンクがある理由は報じられていないが、ガス充填施設を兼ねていたのではないかと思われる。

所 感

■ 前回、「米国アイダホ州のガソリンスタンドで壊滅的な爆発・火災、死傷者4名」(202410月)を紹介したところ、今度はロシア連邦チェチェン共和国で同じようなガソリンスタンドの壊滅的な爆発・火災が起こった。要因は、タンクローリーによる燃料受入れ用タンクへの補給時に発生したもので、横型タンク1基が噴き飛んだのも同じ状況である。今回の火災原因は調査(捜査)中であるが、捜査当局は安全規制の規則に違反したとみている。

■ 爆発の要因は、石油液化ガス(LPG)のタンクが BLEVE(沸騰液膨張蒸気爆発) を生じたものだろう。当初の報道では最初に爆発が起こったものと思っていたが、「ガスはすぐには爆発せず、かなり長い間燃え続けていた」という目撃者の話や、消防隊が火災になったときにすでに消火活動を初めていたので、 BLEVE(沸騰液膨張蒸気爆発) 発生のための加熱時間があったと思われる。

■ 今回のような圧力タンク火災は、つぎのような消火戦略を参照するとよい。 

 ●「石油貯蔵タンク火災の消火戦略」(201410月)

 ●「石油貯蔵タンク火災の消火戦略 - 事例検討(その2)」( 201411月)

  今回、消防隊が公表したビデオによると、爆発の前から破損部品が消防隊の方へ飛んできている。非常事態省は「消防士たちは危険に直面してもひるむことなく、石油タンクの爆発で燃えた破片が飛んできも、炎の要素と戦い続けた」と述べているが、負傷者がいなかったのが不思議なくらいである。石油液化ガス(LPG)火災と判断し、防御的戦略を取ろうとしていたのだろうが、ハザード・ゾーンの見極めと対応本部の判断が大きな要素と感じる事例である。


■ 今回、横型タンクが噴き飛び、猛スピードで転がっているが、圧力タンク火災の戦略的思考に「冷却を基本とし、両サイドから冷却する」「冷却作業の位置として円筒端の方からは避ける」という事項がある。これは、円筒端が破裂しやすいためであり、実際に円筒端が破壊しているが、事例では爆発時にどこかにぶつかり飛ぶ向きが変わって横型タンクが転がるという通常ではない動きになっている。事故では3名の死者が出ており、横型タンクが転がるようなケースが起こりうることを認識しておく必要がある。

備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    Newsdig.tbs.co.jp, ロシア ガソリンスタンドで爆発4人死亡 安全規則の違反が原因か,  October 13, 2024

    News.yahoo.co.jp,  ガソリンスタンドで大規模爆発、子ども含む4人死亡 ロシア南部チェチェン共和国,  October 13, 2024

    Euronews.com, At least four people killed in explosion and fire at petrol station in southern Russia,  October 13, 2024

    Apnews.com, An explosion and fire at a service station in Russia’s Chechnya kills 4,  October 13, 2024

    Voanews.com, Explosion, fire at service station in Russia's Chechnya kills 4,  October 12, 2024

    Abcnews.go.com, An explosion and fire at a service station in Russia's Chechnya kills 4,  October 12, 2024

    Themoscowtimes.com, Fire at Chechnya Petrol Station Kills Four, Including Children,  October 12, 2024

    Iz.ru,  Взрыв на АЗС в Грозном полностью уничтожил несколько автомобилей,  October 12, 2024

    Rg.ru, Взрыв на АЗС в Грозном унес жизни четырех человек, двое из них дети. Главное,  October 12, 2024

    Smotrim.ru, SHOT: взорвавшейся АЗС в Грозном владеет местный бизнесмен,  October 12, 2024

    Neftegaz.ru, При взрыве цистерны с газом на АЗС в г. Грозный погибли 4 человека,  October 12, 2024

    Kavkaz-uzel.eu, ПВладелец заправки в Грозном арестован по делу о гибели людейИсточник,  October 16, 2024

    News.rambler.ru, Крупный пожар на АЗС в Грозном унес жизни четырех человек,  October 13, 2024


後 記: 今回のような事例は、ところ変わってもメディアの報道は混乱します。メディアではなく、発表側が混乱しているためでしょう。ガソリンスタンドの事故ということで、爆発はガソリンだという思い込みがあります。私もガソリンか石油液化ガスか最後まで迷いました。しかし、映像を見ると、炎の状況は圧力のある配管などから噴出しているので、石油液化ガス(LPG)と判断して、事故の状況をまとめました。ところで、今回一番時間をとり、悩んだのが、ガソリンスタンドのグーグルマップでの場所でした。モハメド・アリ通りとあるので、通りに面していると思い込んでいましたし、また、ガソリンスタンドの姿も変わっていないことを前提に探していました。しかし、ロシア連邦の5年ほど前のストリートビューでは特定できませんでした。通り名が違っているのではないかと、グロズヌイの主要な道路を探しまくりました。結局、もとに戻って予断せず探してやっとたどり着きました。