2024年10月20日日曜日

ロシア連邦チェチェン共和国のガソリンスタンドで壊滅的な爆発、死傷者9名

 今回は、20241012日(土)、ロシア連邦チェチェン共和国の首都グロズヌイにあるガソリンスタンドで火災があり、石油液化ガス(LPG)タンクが爆発し、死傷者9名を出した事例を紹介します。

< 発災施設の概要 >

■ 事故があったのは、ロシア連邦(Russian Federation)のチェチェン共和国(Chechen Republic)の首都グロズヌイ(Grozny)にあるリオンテック社(LionTek)のガソリンスタンドである。

■ 発災があったのは、バイサングロフスキー地区(Baysangurovsky district)モハメド・アリ通り近くのガソリンスタンドにある石油タンク設備である。

< 事故の状況および影響 >

事故の発生

■ 20241012日(土)午後3時頃、ガソリンスタンドで火災が発生した。

■ 発災にともない、消防隊が出動した。

■ 消防隊が発災現場に到着し、消火活動を開始しようとしたところ、突然、爆発が起こった。大きな爆発音とともに空に真っ赤な炎が噴き上がった。悲鳴を上げながら逃げる人の姿もあった。地元住民によると、最初の爆発の後、2回の爆発があったという。

■ 石油タンク3基が火災になり、爆発が発生したとき、タンクの1つは400m飛ばされた。SNS(ソーシャルネットワーク)に投稿された爆発の瞬間の映像では、煙の中に大きな炎が立ち上がり、爆風で横型タンクが転がってくる様子が映し出されている。石油タンクの内液について、当初はガソリンと報じられていたが、消防隊は液化石油ガス(LPG)と言っている。

■ 爆発直後、横型タンクは猛スピードで近くの住宅の中庭に突入してから道路に沿って転がり、車に衝突し、アパートの建物の窓の下で止まった。

■ 事故の目撃者のひとりは、ガスはすぐには爆発せず、かなり長い間燃え続けていたという。目撃者によると、タンクは隔壁が壊れた最も弱い部分でガスの圧力により爆発したのではないかという。ガソリンスタンドの近くの住民は、数回爆発音を聞いたといい、「爆発は強かったです。数回爆発がありました」と語っている。

■ 事故に伴い、9名の死傷者が出た。内訳は死亡者が4名で、負傷者が5名である。このうち、何回目かの爆発では、住宅の中庭に転がりこんできた燃え盛るタンクによって母親とこどもふたり(5歳と6歳)が死亡した。ガソリンスタンドでは、負傷や火傷を負った5名の死傷者が出た。ガソリンスタンドではひとりが死亡した。

■ 複数の爆発による被害は、爆発地点から半径50m以内のものが破壊され、1km離れた建物でも窓ガラスが割れた。ガソリンスタンドの建物は完全に破壊された。

■ チェチェン非常事態省は、1012日(土)、グロズヌイのガソリンスタンドで起きた爆発のビデオ(消防士のボディに装着したカメラで撮影)を公開した。燃え盛るガソリンスタンドで、最初に高さ約3mの火柱が見え、その後爆発が起きた。ビデオから判断すると、消防士がすでに現場で活動している間に爆発したことが分かる。「消防士たちは危険に直面してもひるむことなく、石油タンクの爆発で燃えた破片が飛んできも、炎の要素と戦い続けた」と非常事態省は声明で述べた。

 消防隊到着時の確認では、発災場所について、リデル社(Lider)とガズテック社(GazTek)のガソリンスタンドの間にあるリオンテック社(LionTek)のガソリンスタンドで爆発が起きたという。火災が近くの建物や近隣のガソリンスタンドに延焼することは避けなければならなかった。火は早期に制圧できたが、捜査当局による捜査が行われることになる。

■ ユーチューブでは、事故の火災の状況が投稿されている。主なものは、つぎのとおり。

 Youtube「 【子ども含む4人死亡】ガソリンスタンドで大規模爆発 ロシア南部チェチェン共和国」2024/10/13

 ●Youtube Massive petrol station explosion throws tanker 1,000ft in inferno with children among four dead2024/10/13

 ●Youtube VIDEO: Russia’s Gas Station Turns Into Massive Fireball In Chechnya | Moment Of Explosion On Cam2024/10/13

YoutubeВзрыв на заправке в Грозном / пожарный в критической ситуации восхваляет Всевышнего  2024/10/15)・・・消防隊が撮影したビデオ

被 害

■ 石油タンク3基が壊れた。内液の石油液化ガス(LPG)が焼失した。うち1基の横型タンクは爆発で噴き飛んで転がっていき、住民3名が犠牲になった。

■ ガソリンスタンドが全壊した。 

■ 9名の死傷者が出た。内訳は死亡者が4名で、負傷者が5名である

■ ガソリンスタンドに駐車していたトラックや車が全壊した。  

■ 隣接していた建物が被災した。

< 事故の原因 >

■ 火災の原因は調査(捜査)中でわかっていない。捜査当局は安全規制の規則に違反したとみて捜査している。

< 対 応 >

■ 消火活動が行われ、爆発後に発生した火災は消し止められた。消火活動には消防車7台と消防士35人が投入された。火災の総面積は900㎡に達した。消火後、20名以上の消防士たちが、散水と構造物の解体作業を行った。

■ 現地当局などによると、ガソリンスタンドにあった燃料タンクが爆発したという。爆発の原因は分かっておらず、地元当局が捜査中である。火災は、カマズ(KAMAZ)のタンクローリーからガソリンスタンドのタンクにガスが送り込まれたときに起こっており、燃料受入れの際の安全規則が守られていなかった可能性があるという。

■ 爆発と火災によって、駐車中の車数台が全焼し、ガソリンスタンドの建物の破片と混じって車が横たわていた。停まっていたトラックは車輪と車軸の鉄部分だけを残して全壊していた。

1015日(火)、捜査当局はタンカー運転手の逮捕を発表した。予備データによると、ガソリンスタンドでの爆発は、 燃料を注入する際の安全規制違反が原因で発生したという。ガソリンスタンドのオーナーは捜査官の要請を受けて拘留されていたが、 1016日(水)、オーナーが火災危険施設を運営する際の安全要件に違反したということで逮捕された。

■ 複数メディアによると、20249月にも、隣国のダゲスタン共和国のガソリンスタンドで同様の爆発が発生し、13人が死亡している。

補 足

■「ロシア連邦のチェチェン共和国」;通称ロシアと呼んでいるロシア連邦は、ユーラシア大陸北部に位置する人口約14,080万人の連邦共和制国家である。ロシア連邦は89の連邦構成主体に分かれるが、そのうち24が共和国を称する。

「チェチェン共和国」は、北カフカース(北コーカサス)地方の北東部に位置し、ロシア連邦北カフカース連邦管区に属する人口約153万人の共和国である。設立はロシア連邦と同じ1991年で、北カフカースの先住民族のひとつのチェチェン人が住民の多数を占める。

 第一次チェチェン紛争は、1994年から1996年にかけて、ロシア連邦からの独立を目指すチェチェン共和国独立派武装勢力と、それを阻止しようとするロシア連邦軍との間で発生した紛争である。 

 第二次チェチェン紛争は、チェチェン独立派勢力と、ロシア連邦への残留を希望するチェチェン共和国のチェチェン人勢力との間で発生した紛争で、1999年に勃発した。2009年に国家対テロ委員会は独立派の掃討が完了したとして対テロ作戦地域からの除外を発表、10年の長きにわたった紛争は終結したとされたが、実際には独立派残党による北コーカサスの乱が2017年まで続いており、政局は不安定である。

「グロズヌイ」は、チェチェン共和国の首都で、人口は約33万人である。気候は内陸性の亜寒帯湿潤気候で寒暖の差が激しい。冬は寒く、1月の平均気温は-3.2℃、過去に-31.5℃を記録したこともあり、-20℃を下回る日もあり、積雪もある。夏季は暑く35℃を超える日も多く、過去に41.4℃を記録している。

■「発災タンク」は、石油液化ガス(LPG)用の横型タンクである。発災のあったガソリンスタンドをグーグルマップで調べると、場所は特定できたが、横型タンクの詳細は分からなかった。横型タンクは3基あったといい、直径を23m、長さを56mと仮定すると、1基当たりの容量は1542KL程度である。ガソリンスタンドに石油液化ガス(LPG)用のタンクがある理由は報じられていないが、ガス充填施設を兼ねていたのではないかと思われる。

所 感

■ 前回、「米国アイダホ州のガソリンスタンドで壊滅的な爆発・火災、死傷者4名」(202410月)を紹介したところ、今度はロシア連邦チェチェン共和国で同じようなガソリンスタンドの壊滅的な爆発・火災が起こった。要因は、タンクローリーによる燃料受入れ用タンクへの補給時に発生したもので、横型タンク1基が噴き飛んだのも同じ状況である。今回の火災原因は調査(捜査)中であるが、捜査当局は安全規制の規則に違反したとみている。

■ 爆発の要因は、石油液化ガス(LPG)のタンクが BLEVE(沸騰液膨張蒸気爆発) を生じたものだろう。当初の報道では最初に爆発が起こったものと思っていたが、「ガスはすぐには爆発せず、かなり長い間燃え続けていた」という目撃者の話や、消防隊が火災になったときにすでに消火活動を初めていたので、 BLEVE(沸騰液膨張蒸気爆発) 発生のための加熱時間があったと思われる。

■ 今回のような圧力タンク火災は、つぎのような消火戦略を参照するとよい。 

 ●「石油貯蔵タンク火災の消火戦略」(201410月)

 ●「石油貯蔵タンク火災の消火戦略 - 事例検討(その2)」( 201411月)

  今回、消防隊が公表したビデオによると、爆発の前から破損部品が消防隊の方へ飛んできている。非常事態省は「消防士たちは危険に直面してもひるむことなく、石油タンクの爆発で燃えた破片が飛んできも、炎の要素と戦い続けた」と述べているが、負傷者がいなかったのが不思議なくらいである。石油液化ガス(LPG)火災と判断し、防御的戦略を取ろうとしていたのだろうが、ハザード・ゾーンの見極めと対応本部の判断が大きな要素と感じる事例である。


■ 今回、横型タンクが噴き飛び、猛スピードで転がっているが、圧力タンク火災の戦略的思考に「冷却を基本とし、両サイドから冷却する」「冷却作業の位置として円筒端の方からは避ける」という事項がある。これは、円筒端が破裂しやすいためであり、実際に円筒端が破壊しているが、事例では爆発時にどこかにぶつかり飛ぶ向きが変わって横型タンクが転がるという通常ではない動きになっている。事故では3名の死者が出ており、横型タンクが転がるようなケースが起こりうることを認識しておく必要がある。

備 考

 本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。

    Newsdig.tbs.co.jp, ロシア ガソリンスタンドで爆発4人死亡 安全規則の違反が原因か,  October 13, 2024

    News.yahoo.co.jp,  ガソリンスタンドで大規模爆発、子ども含む4人死亡 ロシア南部チェチェン共和国,  October 13, 2024

    Euronews.com, At least four people killed in explosion and fire at petrol station in southern Russia,  October 13, 2024

    Apnews.com, An explosion and fire at a service station in Russia’s Chechnya kills 4,  October 13, 2024

    Voanews.com, Explosion, fire at service station in Russia's Chechnya kills 4,  October 12, 2024

    Abcnews.go.com, An explosion and fire at a service station in Russia's Chechnya kills 4,  October 12, 2024

    Themoscowtimes.com, Fire at Chechnya Petrol Station Kills Four, Including Children,  October 12, 2024

    Iz.ru,  Взрыв на АЗС в Грозном полностью уничтожил несколько автомобилей,  October 12, 2024

    Rg.ru, Взрыв на АЗС в Грозном унес жизни четырех человек, двое из них дети. Главное,  October 12, 2024

    Smotrim.ru, SHOT: взорвавшейся АЗС в Грозном владеет местный бизнесмен,  October 12, 2024

    Neftegaz.ru, При взрыве цистерны с газом на АЗС в г. Грозный погибли 4 человека,  October 12, 2024

    Kavkaz-uzel.eu, ПВладелец заправки в Грозном арестован по делу о гибели людейИсточник,  October 16, 2024

    News.rambler.ru, Крупный пожар на АЗС в Грозном унес жизни четырех человек,  October 13, 2024


後 記: 今回のような事例は、ところ変わってもメディアの報道は混乱します。メディアではなく、発表側が混乱しているためでしょう。ガソリンスタンドの事故ということで、爆発はガソリンだという思い込みがあります。私もガソリンか石油液化ガスか最後まで迷いました。しかし、映像を見ると、炎の状況は圧力のある配管などから噴出しているので、石油液化ガス(LPG)と判断して、事故の状況をまとめました。ところで、今回一番時間をとり、悩んだのが、ガソリンスタンドのグーグルマップでの場所でした。モハメド・アリ通りとあるので、通りに面していると思い込んでいましたし、また、ガソリンスタンドの姿も変わっていないことを前提に探していました。しかし、ロシア連邦の5年ほど前のストリートビューでは特定できませんでした。通り名が違っているのではないかと、グロズヌイの主要な道路を探しまくりました。結局、もとに戻って予断せず探してやっとたどり着きました。

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