今回は、2023年6月30日(金)、ロシア連邦タタールスタン共和国にある原油・ガス生産会社のエルホブネフチ社の石油施設において空のクリーニング中の貯蔵タンクが爆発し、2名の死者を出した事例を紹介します。爆発の瞬間は監視カメラで撮影されており、タンク屋根で作業していた被災者のふたりが吹き飛ばされる状況も写っています。
< 発災施設の概要
>
■ 発災施設は、ロシア連邦(Russia)タタールスタン共和国(Tatarstan )スタロエ・マブリノ村(Staroe Mavrino)近くにある原油・ガス生産会社のエルホブネフチ社(Elkhovneft)の石油施設である。
■ 発災があったのは、石油施設内にある貯蔵タンクである。
< 事故の状況および影響 >
事故の発生
■ 2023年6月30日(金)午前10時45分頃、エルホブネフチ社の石油施設内にある貯蔵タンクが爆発した。
■ タンクは空でクリーニング中で、突然爆発を起こし、その後火災が発生した。
■ 発災に伴い、通報があり、ザインスク消防署の消防隊が出動した。
■ 消防隊が現場に到着したときには、タンク周辺で2㎡ほどの小火災が発生していた。消防隊はGDZSユニット1基と給水車を使用して消火活動を行った。
■ 事故に伴い、工事に従事していたふたりの作業員(47歳と36歳)が死亡した。
■ 爆発の瞬間が監視カメラによるビデオで撮られており、この映像が投稿されている。映像には爆風でふたりが吹き飛ばされる様子が映っており、メディアによっては「留意してください! このビデオは、多感なひとや妊娠中の女性の視聴を意図したものではありません」と注意喚起している。
●Iz.ru、「Взрыв на территории нефтегазодобывающего управления «Елховнефть»」(2023/06/30)
●Nevsedoma.com.ua、「Tank for oil products exploded in Tatarstan, two people died」
(2023/07/05)
●Inkedin.com、「Yesterday 30 June 2023 the movement when the storage tank exploded during maintenance at elkhovneft in tatarstan, Russia sadly two worker died immediately」(2023/06/30)
被 害
■ 貯蔵タンク1基が損壊した。
■ ふたりの死亡者が出た。
< 事故の原因
>
■ タンク内の危険物(可燃性ガス)を除去せずに、保全工事前のタンク内の環境確認を行った運転・保全ミスである。
■ 工事に従事していたふたりの作業員が工事前にタンクを調べていて、タンク底の堆積物を測定しようとタンクのハッチ(マンホール)を操作しているときに爆発が起きた。タンク内への酸素の侵入によって、酸素が化学残留物と相互作用して自然発火性の堆積物の発火につながったものとみられる。
< 対 応
>
■ 火災は、6月30日(金)午前11時頃、消された。
■ 初期調査によると、爆発はタンク内への酸素の侵入によって発生した。酸素が化学残留物と相互作用して自然発火性の堆積物の発火につながったという。死亡した現場責任者と作業員はタンクを調べていて、タンク底の堆積物を測定しようとしていた。タンクのハッチ(マンホール)を操作しているときに爆発が起きた。
所 感
■ 3,000KL級固定屋根式円筒タンクの爆発の瞬間をとらえた映像を初めて見た。屋根は爆発の衝撃で側板から外れており、この点は設計どおりである。しかし、屋根が外れた瞬間に側板がゆがみ、タンク本体を浮き上がらせており、想像を越えるすさまじさである。小火災が発生しているが、おそらくタンク本体が浮き上がった際に底板と側板の一部が外れ、タンク底部に溜まっていた堆積物の一部がタンク外に出て火災になったと思われる。映像では、直接見えないが、タンク底部からガスが噴き出し、煙が出ているのが分かる。この底板が一部外れた事象は、タンクが空であったために爆発の影響が大きかったためだろう。
■ 被災者には申し訳ないが、映像には爆風でふたりが吹き飛ばされる様子が映っており、タンク屋根上での作業の怖さを実感する。異常に気がついた1秒後には爆発している。逃げる暇などは無い。このところ、ブログではタンク屋根上における人身事故の事例を取り上げているが、米国CSB(化学物質安全性委員会)がまとめた「タンク内外の火気工事における人身事故を防ぐ7つの教訓」(2011年7月)とともに教訓になる映像事例である。ただし、メディアが指摘しているように
「留意してください! このビデオは、多感なひとや妊娠中の女性の視聴を意図したものではありません」 をよく認識しておく必要がある。
備 考
本情報はつぎのインターネット情報に基づいてまとめたものである。
・Linkedin.com, The moment when storage tank exploded during
maintenance activity at Elkhovneft in Tatarstan, Russia, June 30,
2023
・Linkedin.com, The moment of the explosion of a storage tank at the
oil & gas production site "Elkhovneft" in Tatarstan/Russia., June 30,
2023
・Neftegaz.ru, В НГДУ Елховнефть компании
Татнефть произошло возгорание резервуара, June 30, 2023
・Tvchelny.ru, Уголовное дело завели
по факту гибели
рабочих при взрыве
в «Елховнефть» в Заинском
районеПодробнее, June 30,
2023
・Chelny-izvest.ru, По факту гибели
рабочих на пожаре
в НГДУ «Елховнефть» возбудили уголовное, June 30,
2023
・Tnv.ru, Двое рабочих погибли
при взрыве на
пожарной установке НГДУ
«Елховнефть» в ТатарстанеИсточник, June 30, 2023
・Iz.ru, Взрыв на территории нефтегазодобывающего управления «Елховнефть»,
June 30, 2023
・Nevsedoma.com.ua,
Tank for oil products exploded in Tatarstan, two people died, July 05,
2023
後 記: 爆発瞬間のビデオ映像を紹介するのは三度目です。最初はテキサス州のボイルオーバー事例「原油タンク火災の消火活動中にボイルオーバー発生事例」(2013年9月)です。二度目は「ロシアのふたつの石油貯蔵所でタンク爆発・火災、テロ攻撃か」(2022年4月)ですが、爆発・火災は側板下部でロケットランチャーを使用したテロ攻撃ではないかと思いますので、タンク工事中の事故による爆発瞬間の映像は初めてです。奇しくも二度目と三度目はロシア関係で、いずれもインターネットメディア・マッシュ(Mash)が使われています。今回はマッシュ以外にも投稿された映像がありましたので、ブログの写真ではそちらを使いました。マッシュの画像はMのイラストが大きく、映像を見るのに邪魔になりました。
ところで、今回、テキサス州のボイルオーバー事例で紹介していたビデオ映像は削除されていることが分かりました。しかし、記録好きな米国です。最近になって別なビデオ映像(内容は同じ)がユーチューブに投稿されていましたので、ブログを改訂して入れ替えました。
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